オラリオに失望するのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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双子の分身

 58階層。

 【ロキ・ファミリア】の最終到達階層にして、今回の『遠征』の目標手前。新たなる階層到達と、赤髪の怪人(クリーチャー)の言葉の真意の確認、それが『遠征』の目的。

 道中極彩色のモンスターや黒衣の怪人(クリーチャー)の襲撃はあったが無事乗り越え辿り着いた。

 深層のさらなる地獄。足手纏は連れていけるはずもなく、故に選抜メンバーのみ。

 Lv.6。フィン、リヴェリア、ガレス、アイズ。

 Lv.5。レミリア、ベート、ティオネ、ティオナ、椿。

 Lv.4。ラウル、アキ、アリシア、ナルヴィ、クレス、ロイド。

 Lv.3。レフィーヤ。

 最低でもLv.4以上。レフィーヤは例外。

 オラリオでも上澄みも上澄み。小規模どころか大派閥でも団長をやっていてもおかしくない実力者でなくてはここから先に向かえない。

 

「………59階層は氷河の階層………そのはずだったね?」

「? はい、ゼウスとヘラの残した記録通りなら」

 

 唐突な質問に首を傾げながら答えるティオネ。フィンは手袋を脱ぎ階層出口に手を添える。

 

「第一級冒険者を凍てつかせる寒気…………それが全く伝わってこない」

 

 何かが起きている。

 ダンジョン内で気を抜くなどありえないが、それでも何時も以上に警戒したほうがいいだろう。

 休息と食事を取り、59階層へと向かった。

 寒さよりも蒸し暑さが冒険者を襲う。

 

 

 

「…………密林?」

 

 そこは密林であった。

 寒いどころか、暑い。しかしモンスターが襲ってこない。

 そして聞こえる不気味な歌。一同は警戒しながら森の奥へと向かう。

 やがて現れたのは灰の砂漠………否、モンスターが朽ちた『骸の砂漠』。その中央にて歌う美しい2名の女性は………()()()()()()()()()()

 人の物ではない。花や触手を持つ、モンスターの下半身。

 モンスターから生えている様は、寄生したような………。

 

「まさか、女体型なのか?」

 

 モンスターから生えた人型。それは『宝玉の胎児』に寄生された女体型を彷彿とさせる。もっとも、あれはあそこまで美しく、そして悍ましくはなかったが。

 極彩色のモンスターに囲まれ、捧げられた魔石を食い、楽しそうに歌を歌う。上半身だけ見れば英雄譚の精霊の戯れ………。

 

「…………嘘、あれ………精霊?」

「精霊!? あんな、不気味なのが!?」

 

 アイズの呟きにティオナが思わず叫ぶ。歌がピタリと止まり、慌てて口を抑えるも2つの上半身はアイズ達に…………アイズに視線を向けた。

 『血』がざわめく。共鳴している。それは向こうも同じなのか、美しい顔で笑みを浮かべる。

 

『……アリア…………アリア! 会イタカッタ、会イタカッタ!』

『貴方モ一緒ニナリマショウ?』

 

 子供のように辿々しく、無邪気に笑う精霊達。

 

『『貴方ヲ、食ベサセテ?』』

 

 連絡路が緑肉で塞がれ、魔石を捧げていた食人花と芋虫が振り返る。彼女の黒い意志に従い襲いかかってくる!

 

「総員戦闘準備!!」

 

 フィンの号令に団員達は正気を取り戻す。あれが何であれ、敵意を向け襲ってくる以上は戦うしかないのだ。

 モンスター達の頭上を飛び越え迫る触手………ティオネとティオナが弾く。

 

「っ! 重!!」

「どんだけ魔石を食ったのよ!?」

 

 不壊属性(デュランダル)でなければ砕かれていた。そう思わせるほどの重い一撃。それが通常攻撃。

 しかも距離を伴って来るというのだから最悪だ。

 

「【舞い踊れ大気の精よ、光の主よ】」

「リヴェリア? いや、そのまま頼む!」

 

 リヴェリアが唱えたのは攻撃魔法ではなく防御魔法。

 階層主(アンフィス・バエナ)との戦闘経験が、大規模な遠距離攻撃を予感させた。

 そしてその予感は最悪な形で的中する。

 

『【火ヨ、来タレ──】』

「!? モンスターが詠唱!?」

 

 展開される魔法陣(マジックサークル)。溢れ出る規格外の魔力に、誰もが驚愕する。

 

「砲撃っ! 敵の詠唱を止めろ!!」

 

 直ぐ様レフィーヤやアリシアの魔砲、【ヘファイストス・ファミリア】製の魔剣による魔法が飛び出す。

 

『【猛ヨ猛ヨ猛ヨ炎ノ渦ヨ紅蓮ノ壁ヨ業火ノ咆哮ヨ】』

 

 が、無傷。花のような部位が蠢き盾となって魔法の雨をしのいだ。

 

『【氷河ヨ来タレ】』

 

 そして紡がれる新たな呪文(うた)。2つの上半身を持つ精霊は別々の呪文を唱え始めたのだ。

 

「【森の守り手と契りを結び大地の歌をもって我等を包め】」

『【突風ノ力ヲ借リ世界ヲ閉ザセ燃エル空燃エル大地燃エル海燃エル泉燃エル山燃エル命】』

『【吹雪ケ吹雪ケ雪花ノ花吹雪白キ大河純白ノ風】』

「レフィーヤ、リヴェリアの魔法に続け!!」

「っ! 【ウィーシェの名の下に願う】」

 

 フィンの言葉にすぐさま詠唱を始めるレフィーヤ。

 精霊が放つは超長文詠唱。それを、防ぎきれるか!?

 

「【我等を囲え、大いなる森光の障壁となって我等を守れ】」

『【全テヲ焦土ニ変エ怒リト嘆キノ号砲ヲ我ガ愛サシ英雄(カレ)(トキ)ノ代償ヲ代行者ノ名ニオイテ命ズル与エラレシ我ガ名ハ火精霊(サラマンダー)炎ノ化身炎ノ女王(おう)

『【突風ノ力ヲ借リ世界ヲ満タセ停マル風停マル波停マル川停マル時】』

 

 紡がれる詠唱、膨れ上がる魔力。【ロキ・ファミリア】達はすぐさまリヴェリアの後ろに避難した。

 

「【我が名はアールヴ】! 【ヴィア・シルヘイム】!!」

 

 ドーム状の緑光領域が冒険者の全てを包む。物理、魔法攻撃すべてを遮断する結界魔法。込められるだけの魔力を込めた魔法の展開と同時に、精霊の魔法も放たれる。

 

『【ファイアストーム】』

 

 世界を包み込む紅蓮の炎嵐。津波と見紛う炎の氾濫。

 階層を焼き尽くす魔法がリヴェリアの結界に亀裂を入れる。

 

「ガレス! アイズ達を守れ!」

 

 その言葉と同時に結界を突き破る炎に飲まれるリヴェリア。ガレスが盾を持ちアイズ達の前に立つも、盾はあっさり融解しガレスは生身で炎を遮る。

 

『【世界ヲ染メロ汚レナキ白愛シキ英雄(カレ)ニ迫ル死ヨ尽ク(トキ)ヲ止メヨ代行者ノ名ニオイテ命ズル与エラレシ我ガ名ハ氷精霊(アネモイ)氷ノ化身氷ノ女王(オウ)】』

『【ホワイトアウト】』

 

 世界を白く染め上げる純白の波濤。

 

「【ヴィア・シルヘイム】!!」

 

 レフィーヤが張る二枚目の障壁。

 翡翠の障壁は、すぐさま白く染まっていく。凍りついた障壁は吹雪の圧力に耐えきれず砕け散った。

 

「あ、ぐ………」

「くう………」

 

 炎があらゆる障害を焼き払い、灰だけとなった空間を吹雪が凍てつかせる。体中に霜が張り付いた冒険者達は倒れ伏す。

 体が上手く動かない。感覚がない。

 だがそんなものを気にしてくれる敵などいない。

 魔法を使用した証である魔力が満ちた大気から魔力が消えていく。否、吸い込まれていく。精霊へと………

 

『『【地ヨ唸レ】』』

 

 異口同音の詠唱。現れた魔法陣が重なり黒き輝きを増す。

 

『『【来タレ来タレ来タレ大地ノ殻ヨ黒鉄ノ宝閃(ヒカリ)ヨ星ノ鉄槌ヨ開闢ノ契約ヲモッテ反転セヨ空ヲ焼ケ地ヲ砕ケ橋ヲカケ天地(ヒトツ)ト為レ降り注ぐ天空の斧破壊の厄災代行者ノ名ニオイテ命ズル与エラレシ我ガ名ハ地精霊(ノーム)大地ノ化身大地ノ女王(オウ)】』』

「ラウル達を守れぇぇぇ!!」

「【目覚めよ(テンペスト)】!!」

 

 ラウル達を包みこむ暴風の繭。

 

『『【メテオ・スウォーム】』』

 

 降り注ぐ漆黒の隕石。

 繭は容易く踏み潰され、岩盤が爆ぜ上下が掻き混ぜられる。

 倒れ伏した冒険者達に、精霊は楽しそうな笑みを浮かべる。




双子の分身(デミ・スピリット・ジェミニ)
ヴァルド来たし戦力減らそうと考えたエニュオにより2つの宝玉を寄生させららたモンスターの成れの果て。最初から成体であった事から解るように、『開花』してからそれなりの時間が立っている。
連続的な魔法、二重詠唱による強化など、とても厄介
ダンジョンの階層を破壊しまくった
破壊しまくった!!

カーリー・ファミリアのバーチェがどうなるかは決めてるんですよ。アルガナはどうしよう

  • フィンに任せる
  • ヴァルドに調き─鍛錬されたティオネが勝つ
  • ヴァルド「戦士の作法を教えてやろう」
  • 船止めるためにぶん投げた石で船ごと沈む

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