オラリオに失望するのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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万能ではないもの

「やあ、ベル君。少し良いかい?」

「えっと、ヘルメス様………?」

 

 武器の簡単な手入れをしているベルにヘルメスが話しかけてくる。キョロキョロと周りを見回す。

 

「ヴァルド君は?」

「アミッドさんと下層に……ポイズン・ウェルミスの大量発生の対処に………」

「ふ〜ん、そりゃ丁度いい。ベル君、ちょっと付き合ってくれるかい?」

 

 

 

 

 

 

 18階層に存在する泉。そこで水浴びをするアイズ、ティオネ、ティオナ。そしてヘスティアとリリにアスフィ、命に千草。

 不埒な男どもが近付かないように見張りをしているレフィーヤは何やら考え込んでいる。

 

『誰かを思って悩めるのは、きっと素敵なことだと思う』

 

 ベルの言葉を思い出し、何だか熱くなってる気がする頬に手を当て唸るレフィーヤ。同室のエルフィ・コレットはそんな珍しい様子に首を傾げている。

 

(お祖父さんの教えと言っていましたが、沢山の女性と関係を持ってるあの男の弟子…………まさか悪い影響でも受けているんじゃ…………)

 

 レフィーヤの中ではヴァルドは女好きのイメージらしい。まあ、ヴァルド側から誘うことはないがだからといって誘いを断っていなければそんな評価にもなる。

 命をかけ人を救うヴァルドを尊敬するエルフも多ければ、そういった部分を汚らわしいと唾棄するエルフも多いのだ。レフィーヤは若干後者より。なのでベルへの悪影響を懸念してしまう。

 

(まあでも、女の子と話す時恥ずかしがって目も合わせられないベルに限って────)

「──いいいいいいっ!?」

 

 ドボン! と悲鳴を上げながら誰かが泉に落ちてきた。

 

「………………ぇ?」

 

 乙女達の沐浴に強襲してきた人影は、白い髪をしていた。

 

「あれ〜、アルゴノゥト君! なになに、君も水浴びに来たの?」

「可愛い顔してやるわねえ、あんたも」

 

 と、その手の価値観が他種族とは大きく異なるアマゾネスの姉妹が恥ずかしがる様子もなくベルに近付いていく。

 

「べ、ベル君……君って奴はぁ………」

「何をなさっているのですかベル様ぁ!」

 

 ヘスティアとリリは赤くなりベルを睨み、千草と命は固まっている。アスフィは木の上を睨み、枝が慌てるように揺れた。

 顔を真赤にしながらベルは視線を彷徨わせ、ある一点で止めた。

 

「────ぁ」

「っ…………」

 

 頬を赤く染め恥ずかしそうに体を抱き隠すアイズ。他の女子への反応とは異なり完全に停止したベル。レフィーヤの中で、ブチリと何かがキレた。

 

「ごめんなさああああああああい!!」

「あなたはああああああああああ!!」

 

 羞恥と憤怒の叫びが同時に響く。Lv.2とは思えぬ速度で走り去るベルに、これまたLv.3の後衛とは思えない速度で追いかけるレフィーヤ。

 

「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹、汝弓の名手なり。狙撃せよ妖精の射手、穿て必中の矢】!!」

「駄目ぇレフィーヤ!? その子蒸発しちゃうからぁ!」

 

 怒りにより増幅した精神力(マインド)が放つ魔法の威力を感じ取ったエルフィが慌ててレフィーヤを押さえる。

 ベルはあっという間に森に消えた。

 

「うあうあ……うあああ!!」

 

 レフィーヤの叫び声は、森の中に飲まれていった。

 

 

 

 

 

「僕ってやつは、僕ってやつはぁ!」

 

 自己嫌悪に陥りながら走るベル。きれいな女性の裸は幼少期、義母(はは)のものを見たが家族と明確な異性は違う。ましてや憧れのアイズ・ヴァレンシュタインともなれば……。

 大事な部分は隠されていたが、真っ白な肌は目に焼き付いている。義母のほうが白かった。

 

「ってそうじゃなくて!!」

 

 ポカポカ頭をたたきながら何とか冷静になるベル。そしてふと気付く。ここは、何処だろうか?

 と、歩いていると何かが光っているのが見えた。

 

「………あら?」

「え?」

 

 そこはまた別の泉で、アリーゼが水浴びしていた。固まるベルにニッコリ微笑み、ベルが困惑する。

 

「【花開け(アルガ)】♪」

 

 炎を纏った拳が泉の縁を爆砕した。

 

「あわ、あわわわわ………!」

「駄目じゃないベル君、覗くんなら私じゃなくてリオンにしてあげなきゃ」

「何をいってるんですかぁ!?」

 

 

 

 

「それにしてもヴァルドの弟子が覗きなんてね。ヴァルドがそれぐらい積極的なら良いのに。それこそハーレム作るくらい! あ〜、でもある意味ではハーレムなのかしら?」

 

 付いてきなさい、と言われ着替えたアリーゼの後に続きながらアリーゼの言葉を大人しく聞くベル。

 師匠はもうハーレムを創っているのか。やっぱり凄い!

 ベルの場合義母に「お前の父は一途だった。そこだけは評価している」と言われているが………。

 

「あの、何処に………? というか何でアリーゼさんは一人で………」

「ん〜………お墓参り。あっちの泉のほうが近いのよ」

「お墓参り?」

 

 と、首を傾げながらもついていくベル。木々のトンネルを抜けると、確かにそこには墓があった。アリーゼはすでに添えられている花を見て目を細める。

 

「ヴァルドも来てたのね」

「師匠も此処に?」

「そ、独断専行も多かったヴァルドは、あの頃は【ロキ・ファミリア】の一部隊として動かすより私達と組ませて少数遊撃隊として動かした方が効率がいいって組まされてたの」

 

 私達、というのは【アストレア・ファミリア】ということだろうか?

 アリーゼは道中積んできた花を添え目を閉じた。

 

「………その、死んじゃったんですか? 師匠がいたのに」

「あら、貴方ヴァルドが全能の英雄だとでも思っているの? そんな訳無いでしょ。ヴァルドは戦士としての才能なんて全然ないんだもの。守れなかった人は沢山いる」

「才能が……? え、でも………」

「ないわよ。全部料理洗濯掃除裁縫に持っていかれてるもの」

 

 そう言えばヴァルドは義母が壊した家を片付けて新しく建て直すのが早いし、美味しい御飯も服も作ってくれた。

 でも、才能がないなんて信じられない。現に今彼は世界最強なわけで………

 

「とても頑張ったのよ………」

「それは………他の冒険者もそうなのでは?」

「…………そうね! じゃあ、とてもとても頑張ったのよ!」

「…………………」

「簡単な道のりじゃなかったわ。何時死んでもおかしくなかったし、心が折れてもおかしくない……………それだけやって、最強になれたのよ。それだけやっても、Lv.8だけど」

 

 それってすごいことじゃ、と思う。だって、都市最強だったオッタルもLv.7だった。

 

「ヴァルドは世界が救われてほしいの。そしてそれは、Lv.8じゃ足りない。ヴァルド一人じゃ足りない」

「…………一人じゃ」

「ヴァルドに憧れるのは止めないわ。でも、彼を万能の英雄にしないで。出来ないことも、救えないこともあるんだって知ってあげて………じゃなきゃ、隣に立って力になるなんて出来ないんだから」

「アリーゼさん…………」

「…………あの時の私には、出来なかった。ヴァルドが来て、もう大丈夫だって体から力が抜けちゃって、傷つくあの人のために立つことも出来なかった」

 

 後悔するように、懺悔するようにアリーゼは語る。

 きっとそれが彼女の心残りなのだろう。

 

「さ、戻りましょっか」

「はい………」

 

 

 

 

「ほげぇ………」

 

 アスフィに無理矢理頭を下げさせられ………というか地面に顔面を叩きつけられボロボロになったヘルメス。

 どうやら彼がベルを騙して水浴び場まで連れてきたらしい。戻ってきたベルはそれなのに皆に頭を下げて回ったとか。

 

「……………………」

 

 何の話も聞かずに魔法を放とうとしてしまった。

 他の男がやっても同じことをしただろうが、あそこまでの怒りは沸いただろうか?

 いや、多分怒りは沸くが別物だ。そこらの男なら純粋な怒り。ベルに対しては、失望も混じっていた。

 勝手に女性慣れしてない純朴な少年であるという像を押し付けて、裏切られた気になっていた。けど実際彼は覗きを行う気はなく、話も聞かず燃やそうとしてしまった。

 ちゃんと謝らなきゃ………。

 と、ベルが吊るされているヘルメスに近づいてくのが見えた。レフィーヤも声をかけようと近付き………

 

「ひゃああ!?」

 

 真っ暗闇の中でボロボロのヘルメスの顔を見て幽霊でも見たかのように叫び後に跳ぶベル。背後にはレフィーヤ。

 

「え………」

「うわ!?」

「きゃあ!」

 

 二人揃って地面に倒れる。

 さて、ここで神々が地上に持ち込んだ名詞について話そう。

 それはラッキースケベ。

 幸運、そして助平。意図せず異性とムフフな展開になることだ。そして、幸運………そう、これは『幸運』なのだ!

 

「………………!?」

 

 ムニュリとベルの肘に伝わる柔らかい感覚。聞き覚えのある悲鳴。

 ギギギと錆びついた人形のように振り返るベル。涙目で、真っ赤な顔でベルを睨むレフィーヤ。

 

「あ、あの……………すいませんでしたああああああ!!」

「待ちなさあああああああい!!」

 

 逃げる兎! 追いかける妖精!

 冒険者故にとても素早い二人はあっという間に森の奥の闇に消えていった!

 

「…………面白いことになってきたなあ」

「何処がですか」

 

 ヘラヘラ笑うヘルメスに呆れたような声で近付くアスフィ。縄を切ってやり、ポーションを渡す。

 

「さて、行こうかアスフィ」

「…………本気でやるんですか?」

「保護者からも許可は取ってるさ。『人の悪意に、一度は触れておくべきだ』ってさ………まあなんの効果もなくただ嫌な思いさせただけなら吊るすと脅されたけど」

「その時はどうぞヘルメス様だけで」

「おいおい、俺とアスフィは神と眷属だぜ? 苦しみは分かち合おうじゃないか!」

「ぶっ殺しますよ」

「直球!?」

カーリー・ファミリアのバーチェがどうなるかは決めてるんですよ。アルガナはどうしよう

  • フィンに任せる
  • ヴァルドに調き─鍛錬されたティオネが勝つ
  • ヴァルド「戦士の作法を教えてやろう」
  • 船止めるためにぶん投げた石で船ごと沈む
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