オラリオに失望するのは間違っているだろうか?   作:超高校級の切望

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人の悪意

「はい、これで大丈夫ですよ」

「あ、ありがとうございます」

 

 【ロキ・ファミリア】の治療師(ヒーラー)であるリーネに回復魔法をかけてもらったベル。おかけで破けた鼓膜ももとに戻った。

 

「あの、レフィーヤは大丈夫でしたか?」

「ええ、レフィーヤの方へ先に治療を終えて、今は団長達と現場に向かってます。ポーションも残ってましたからね、跡も残ってませんよ」

「良かった……」

 

 ホッと安心するベルにリーネはニコニコ笑顔を向ける。自分の怪我よりも他人の怪我………いい子だ、とてもいい子だ。

 

 

 

 

「そう、そっちも何も見つけらなかったの」

「ああ、残党を追った君はどうだった?」

 

 朝になりレフィーヤとベルが闇派閥(イヴィルス)をみた水晶の林に移動したが、再生を始めた破壊の跡ばかりで手掛かりは見つけられなかった。残党を追っていたアリーゼはどうか?

 

「さっぱり。途中で黒いローブの仮面の新手に殺されちゃったから。消し飛んで()()()()()()()()

「そうか………なら、一度戻ろう。地上に戻り、装備を整えてから改めて調査する」

「そうね。その時はライラを貸してあげるわよ?」

「あはは、その時はティオネにバレないようにしないとだね」

 

 

 

「兎野郎が居るってどういう事だ!? 聞いてねえぞ!」

 

 せっかく特効薬を持って戻ってきたのにアミッドが来ていたせいで無駄足になり苛ついていたベートは、ベルが来ているという話に苛立ちも吹っ飛んだ。

 しかもアイズ達の水浴びを覗いたらしい。アイズに聞けば頬を染めながら頷かれた。

 

「………ここにいるってことは、Lv.2になったのか?」

「はい………」

「…………そうか。おい、兎野郎は何処に居る?」

「…………えっと」

 

 ベルが憧れている一人がベートなのではないかと思い違いをしているアイズはベルがベートに憧れの目を向ける姿を想像し、別の方向を指さした。

 ベートが去り、丁度入れ違いでベルがアイズのもとに来た。

 

「アイズさん、先に出発するって聞いたんですけど」

「うん………」

「えっと………その、気をつけてください」

「………………うん、ありがとう」

 

 誰かに心配されるなど、何時以来だろう。リヴェリア達は同じ派閥だけど、第一級になったアイズに今更そんな言葉は言わない。懐かしい言葉に、胸が温かくなる。

 

「君も、ね………」

「はい………!」

 

 

 

 本当は先発隊だったレフィーヤ。

 だがヴァルドが階層主(ゴライアス)を倒し、昨夜の一件もあり後発隊に組み直された。

 

「……………?」

 

 と、不意に森の中に向かい走る影に気付く。

 

「………ベル?」

「どうしたのレフィーヤ、もう行くよ〜?」

「あ、はい! あ…………」

 

 エルフィの言葉に我に返る。だけどもう一度ベルが走り去った森を見る。

 

「………すいません、先に行っててください!」

「あ、ちょっと〜!? ああ、もう………どうしよう。まあ、レフィーヤはしっかりしてるし大丈夫かなぁ?」

 

 

 

 何やら慌てていた。焦っていた。

 【ロキ・ファミリア】野営地で滅多なことが起きるとは思えないが、あんな顔を見て放置は出来ない。

 

 

 

 

 見失った。

 方向はこちらであってると思うが、一体何処に?

 と、足音が聞こえた。

 

「貴方達は……ベルの仲間と、【タケミカヅチ・ファミリア】?」

「【ロキ・ファミリア】!? 何でまだ残って………! いや、それよりベルとヘスティア様が………!」

「っ! 場所が解るんですね? 案内してください、話は道中!」

 

 

 

 聞けば天幕から慌ててベルが出ていったのを千草が目撃したらしい。不思議に思い中を見ると、主神を返して欲しければ一人で一本水晶の下まで来いという手紙。

 

「たぶん、街でベルに絡んだっつー冒険者共だ」

「そうですか………あの、その背中の剣、使わないなら貸してくれますか?」

「は、はぁ?」

 

 と、レフィーヤの突然の提案に戸惑うヴェルフ。

 

「確か、Lv.2だったはず。私の魔法じゃ、()()()()()()()()()かもしれないので」

「お、おお………悪いな、これは魔剣なんだ」

 

 ヴェルフの言葉にそうですか、と杖を握る手に力を込めるレフィーヤ。仕方ない、殴り飛ばそう。Lv.3とはいえ後衛だ、ちょっと強めに殴っても問題ない。

 

「すいません、【ロキ・ファミリア(わたしたち)】が油断したばっかりに」

「悪いのはヘスティア様をさらった奴等だ……」

 

 と、一本水晶に向かう一同。途中、見張りなのか冒険者達が数人その場に居てヴェルフ達を見て驚愕する。

 

「くそ、【リトル・ルーキー】の仲間か!」

「やっちまえ!」

 

 有無も言わさず臨戦態勢。明確な敵対行為………理由は、嫉妬だろう。レフィーヤも良く体験した。

 すぐさまぶつかり合い乱戦。ヴェルフが背に担いでいた剣を落としてしまう。

 【タケミカヅチ・ファミリア】は武神の眷属だけありそれなりに戦えているが、数が多い。敵には魔導師も居る。こんな数の冒険者が、嫉妬のために手を組んだ………。

 レフィーヤは知っている。ほんの数日だけど、ベルが努力していた姿を。努力もせず、自分より才能があるものを妬み足を引っ張る者が、彼を傷つけようとしている。

 

「そこをどきなさい!」

 

 杖で思いっきり冒険者を殴り飛ばす。頭に血が上っていた冒険者達も、漸く自分達が相手にしている怒れる妖精(エルフ)の正体に気づく。

 

「サ、【千の妖精(サウザンド・エルフ)】!?」

「なんで【ロキ・ファミリア】が! き、聞いてねえぞ! 俺は降りる!」

「お、俺はそこそこの冒険者相手にして金だけ貰えるって聞いたんだよ!」

 

 都市最強を敵に回せるかと逃げ出す冒険者達。ただ一部は、今更引けないとでも思ったのか顔を青くしながらその場に残る。

 

「く、くそ! 告げ口なんて出来ねぇ体にしてやんよ!」

「【ロキ・ファミリア】つったって強いのは第一級だけだ!」

「あら、第一級がお望み?」

 

 と、現れたのはアリーゼ・ローヴェル。

 

「因みに私達はランクアップしてLv.6よ、フフン!」

 

 さぁ、と蒼を通り越して白くなる冒険者達。蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。

 

「それにしても、都市最強の冒険者の弟子を良く襲おうなんて……」

「そうね、誰かから見逃してもらえるとでも言われたのかしら?」

「誰か?」

「誰かしらね〜?」

 

 

 

 昨夜、ベルとレフィーヤが森で追いかけっこしている頃、リヴィラのとある酒場。

 

「クソ! 【リトル・ルーキー】の野郎、どんな手品使いやがった!!」

 

 ヴァルドが連れてきた? いや、オラリオに戻ってからは基本的に一人で潜っていると聞いている。

 自分の実力だけで潜ったとでも言うのか?

 

「ふざけやがって!」

「あれてんな〜、モルド!」

「ぎゃはは!」

「うるせえ! てめぇ等も他人事じゃねえぞ!?」

 

 冒険者なりたての新人(ルーキー)がもう中層にまで来た。何年も中層で足踏みしている冒険者はいい笑い物だろうというモルドに、一部冒険者が言葉に詰まる。

 

「いや、【不死之英雄(ジークフリート)】の弟子と比べられてもふざけんな、としか言えねえけど」

「「「右に同じ」」」

 

 オラリオの戦力の底上げとなった要因が態々選んだ弟子だ。それと比べられて、お前等は情けないと言われてもぶっちゃけそりゃそうだろうとしか言えない。

 

「けっ、腰抜け共が!」

「じゃあお前等が文句言いに行ってこいよ」

「っ!!」

 

 その言葉に固まるモルド達。彼等もヴァルドに目を付けられたくないのだ。

 

「なら、ヴァルド君達が文句を言ってこないと知ればベル君に手を出すのかい?」

 

 

 

 

 そう言って、面白いものが見たいとヘルメスが彼等に渡したのは『透明化(インビジブル)』の兜。

 土煙で目眩ましをして兜を被り姿を消したモルドはベルの背後に移動して殴りかかり……。

 

「っ!」

「あ?」

 

 拳をベルの後ろ回し蹴りで弾かれる。弾かれた拳の痺れを自覚する間もなく、無数の拳打がモルドに叩き込まれた。

 

「「「……………は?」」」

 

 生意気なルーキーが甚振られるさまを見ようとニヤニヤ悪意に塗れた笑みを浮かべていた冒険者達が固まる。ベルの踵落としが兜を砕き、モルドの顔面を地面に叩きつけた。

 

「ぶふぅ! げ、な、なんで…………!? てめぇ、見えてたのか!?」

()()()。ですが、視線にさらされるのはなれています…………何よりお義母さんに目を瞑ったままでも戦えるよう鍛えられてますから」

 

 何いってんだコイツ?

 

「あらら、助けは必要なかった? 昨日あの後ステイタス更新してたものね」

「ベル! 大丈夫で…………すね」

 

 と、そこへヴェルフやアリーゼ、【タケミカヅチ・ファミリア】の面々に………何故かレフィーヤもいた。

 

「みんな、どうしてここに?」

「て、手紙が置きっぱなしだったので」

「ヘスティア様の方はリリ助が探しに行ってくれたぜ」

 

 ヴェルフの言葉にベルが少しだけ安心する。と、タイミング良くヘスティアとリリも追いついた。

 

「ベル様!」

「ベルく〜ん!」

「リリ、神様! 良かった、無事で………」

 

 今度こそ、完全に安心するベル。レフィーヤやアリーゼまで居るのだ。この件は解決したも同然。

 

「…………ふざけんじゃ、ねえよ」

「お、おい………モルド? もう無理だって、逃げようぜ!」

「ふざけんなぁぁぁ! てめぇ等みてぇに才能がある奴らが寄ってたかって強くなるから、俺等みてぇなのが肩身の狭い思いをするんだろうがぁ!!」

「逆ギレ!? しかもなんて滅茶苦茶な八つ当たり!」

 

 アリーゼが思わず突っ込む滅茶苦茶な理由。しかし本人にとっては重要なのだろう。ベルにボコボコにされたというのに立ち上がり剣を振り上げ………

 

「やめるんだ」

 

 場の空気が、たった一言に支配される。

 いや、支配とも違う。人の言葉で言い表すには難しい、超越存在(デウスデア)の気配。

 

「剣を収めなさい」

 

 人類に逆らうことを許さぬ神の気配に、冒険者達は等々完全に戦意を失い逃げ出した。

 

「…………か、神様?」

「ベル君! 怪我は!? 何処か痛くないかい!?」

「わぷ!?」

 

 何時ものヘスティアがそこに居た。ホッと安堵するベル。

 

「ベル………」

「レフィーヤ………どうして」

「………あんな顔して走っていけば心配になりますよ。置いてかれてしまいましたし、地上に戻る際同行させてもらいますからね?」

「うん、わか────!?」

 

 その時だった。ダンジョンが揺れる。遠くでガラガラと何かが崩れるような音が聞こえた。

 

「な、なんですか!?」

「こ、これって………あの時の? いえ、あの時とは何かが…………」

 

 レフィーヤが思い出すのは厄災の誕生の瞬間。でも、今回のはあの時とは何かが違う。あれは悲痛な悲鳴………これは、寧ろ怒り?

 

「…………()()()?」

 

 ヘスティアが冷や汗を流す中、天井の巨大水晶の奥に黒い影が見える。ビシリと亀裂が走った。

 

「は!? まさか、モンスター!? 18階層で!?」

「しかもあの大きさ………超大型……いや、それ以上…………」

 

 バガァと巨大水晶が砕け、巨大な黒い影とともに地面に落ちる。

 森の一角に落ちた黒い影は土煙を()で吹き飛ばす。

 

「っ! あれは、まさか………」

 

 割けた大顎、歪曲した角。まるで悪魔の仮面のような顔。

 巨大ながら痩せ細っているかのような四肢は、蛇と人の混成種(キメラ)のような印象を与える。

 

「………神獣の触手(デルピュネ)………」

 

 7年前討たれたはずの大最悪(モンスター)。さる邪神の策略により37階層で生れたはずの災禍の獣。

 いま再び、牙を剥く。

 


 

因みに7年前より強化されてる。ダンジョンがめっちゃキレてるからね。

誰だよこれLv.6が一人、Lv.4が一人、後はせいぜいLv.3の集団にこんな化け物放ったの。

まあ神を2度もダンジョンに送ったり厄災を生むような状況を作ったエニュオのせいだね。許すまじ

 

 

 

【フレイヤ・ファミリア】メンバーにクエスチョン、ヴァルドについてどう思う?

 

オッタル

嘗ては見込みのある後進、今は超えるべき壁

 

 

アレン

クソが死ね殺すなめてんじゃねえぞ見下しやがって何見てやがる目ぇ合わせんじゃねえ何処見てやがるてめぇの敵は俺だろうが。

(因みに、とある愚図がヴァルド以外の、特に軽そうな男と話しているのを目撃すると次の日ヴァルドを睨む)

 

 

ヘディン

女神に気に入られて、それを自覚しながら愛を受け取らないムカつく相手。女神の想いから何時までも逃げ続けられると思うな

 

 

ヘグニ

魔法について説明してからなんか残念な生き物を見る目で見られる。根性鍛えろと人の多いところに連れて行かれたことがある

 

二人の共通

正直あの姉妹に目をつけられた時はザマァと思った。

でも黒い方はちょっとだけ罪悪感を感じてる

 

 

4兄弟

あの方の『娘』に膝枕するとかふざけんな

逆にしてもらうこともあるとかぶっ殺してえ

眠る必要ないのにされるとかナメてんのか

でもあの方のあの笑顔は彼奴ぐらいにしか見せないんだよな

「「「それな」」」

 

 

ヘイズ

正直この人が団長になってくれないかなと思ってる。

マナポーション差し入れしてくれるし薬品の買い出し手伝ってくれるし何処ぞの猪共とは大違い。

 

 

とある侍女

は? あれに思うところなんて何もありませんが?

逆に何故あると思うんですか?どれだけ人が心配しようと無視して死地に飛び込み何時死ぬかもわからない愚図に心を割くなど時間の無駄でしかありませんよ。彼に好意を寄せてしまった憐れな女達は今すぐ記憶を消して新しい恋を見つけるべきです。ええ、どうせ何処かで野垂れ死ぬのだからそれが一番です。寧ろ何でまだ生きいるんですか。思わず行かないでと言いたくなるようなとっくに死んでもおかしくない戦いを何度も経験して全部生き残るのはあれが人間ではなくもっと悍ましいなにかの証拠です。実際何のスキルもなく『女神の魅了』に堕ちてから抗っていますしね。それが素晴らしいことのように言われていますが何故その恐ろしさに誰も気づかないのか不思議で仕方ありません。どうせ容姿や偉業で褒め称えるだけで内面などまるで見ていないのでしょうね。あれは狂ってます。死にたくないくせに死ぬことで誰かが立ち上がり剣を取るなら己の死すら容認します。その立ち上がった誰かが悲しみから剣を取っても乗り越えられると本気で思っているんですよ。自分の中で自分の価値が低いからって、周りもそうだと決めつける。いいえ、語弊がありました。自分の死に悲しむと自覚しながらも価値が低いのは変わってない矛盾を孕んだ破綻者。どんな前世を歩めば……いえ、今のは忘れてください。とにかく、あれに惚れる女は見た目だけが好きなのでしょう? ならエルフにでも鞍替えしなさい。たしかにあれの見た目が整っているのは認めます、とても認めがたいことですがね。紫の瞳なんて守るための戦いと倒すための戦いでは別の光を宿しますし日常的にはとても穏やかです。その『ぎゃっぷ』とやらに惑う者も多く居ると聞きますしいっそ抉り出して私の部屋にでも封印しておきましょうか。白い髪もムカつくほどサラサラです。あれで数日ダンジョンに潜り手入れしてないとか………指から擦り抜ける艷やかな髪質は全女性に喧嘩を売ってますよね。世の多くの女性はそんな見た目だけは良いあれに惹かれているだけなのですぐに諦めたほうが身のためです。私は貴方達のために言っています。既に近しい者達は、勘違いでもしているんでしょうね、あれが自分を助けてくれていると。違います、関係ありません。誰でも助けるんです。そのせいで惑わされ、目が曇る。助けてと頼めば何のためらいもなく「解った」なんて何も考えていない証拠なのにそれを嬉しく思………ってしまうならそれもはや洗脳です。ああ、やはりあのクズは今すぐにでも殺さなくては。自分が溺れないなら色を拒まないせいでより多くの女性が毒牙にかかっているし、彼に洗脳されたものがどれだけ居るのか、きっと数えていたらキリがない。それだけアレの行動は眩しい。目を焼くほどに。解りましたか? そんな危険な存在に少しでも思考を割けば脳が焼かれます。頭から離れないほどに鮮明に焼き付きます。何も思わないのが正しい対処法です。だから私もあれに思うところなど何もありません。貴方も何も考えてはいけませんよ、あれは何時か私が殺すから

 

そうですか。なんか、聞いてた話とは違うようでショックですね

 

貴方が彼の何を知って失望しているんですかふざけたこと抜かしていると殺しますよ。人から聞いた程度であれを理解できると思っているなら、なんて傲慢。そもそも私はあれをまるで語りきれていません。良いですか、良く聞きなさい──

 

 

…………これ最後まで読む人は侍女さん大好きやな

カーリー・ファミリアのバーチェがどうなるかは決めてるんですよ。アルガナはどうしよう

  • フィンに任せる
  • ヴァルドに調き─鍛錬されたティオネが勝つ
  • ヴァルド「戦士の作法を教えてやろう」
  • 船止めるためにぶん投げた石で船ごと沈む
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