オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
「ヴェルフ! リリ! 無事!?」
リヴィラの住人がモンスターと戦い始め余裕ができたベルはヴェルフとリリの安否を確認する。二人ともどうやら無事だ。
「おお、お姫様抱っこぉぉぉ!?」
「潔癖なエルフが抱きかかえさせるたぁやるなぁ、ベル」
「!!」
「わ!?」
その言葉にバッと離れるレフィーヤ。
「へ、ヘスティア様達は?」
「避難してるよ。兎にも角にもあのバケモンをぶっ飛ばさねえ限り安心できねぇが………」
アリーゼやアスフィと戦うデルピュネを見るヴェルフ。ゴライアスすら超える超大型級にして、あの桁違いな破壊力。
「間違いなく深層の階層主級だな…………攻撃も派手だし、そのうちヴァルドさんも気付いて戻ってくると思うが………」
あるいは、上の階層に居る【ロキ・ファミリア】か………。
とはいえあの化け物が目指す上ならともかく、下のヴァルドが何時気づくか……。放置すれば、どれだけの犠牲が………。
「ベル、あの
「う、うん…………」
「なら、私の魔法と同時に放ってください」
ただ暴れるだけで他を寄せ付けず、Lv.3の魔導師が放つ魔法にも堪えた様子はない。
今現在魔力をためている長文詠唱の魔法なら通じるかもしれないが………それでもモンスターの頂点たる竜だ。念には念を入れても入れすぎるということはないだろう。
「グオオオオォォォォォッ!!」
「っ! モンスター!」
「レフィーヤ、魔法撃つ時は合図して!」
「あ!?」
ベルはモンスター達の群れに飛び込む。片手に白い光を灯しリィンリィンと
あのスキルの詳細はわからない。集中力が居るのか、ただの時間なのか………どちらにしろ後方に控えておくべきだろうに………!
「もう! 【ウィーシェの名のもとに願う】」
文句を言ってやりたいが、それは後だ。取り敢えずこの戦いが終わったら説教してやる!
「ブオオオオオ!!」
ミノタウロスが目の前のベルに向けて振り下ろす混棒は、しかし地面のみを砕く。一瞬で背後に回ったベルはミノタウロスの膝裏を蹴り倒れてきたミノタウロスの角を掴むと他のモンスターに向かって投げつける。
「ぶぉ!?」
「ガァ!」「キィィ!」
「【ファイアボルト】!!」
放たれた炎雷がバグ・ベアーを燃やす。下敷きになったミノタウロスは耐久力故に焼け死ぬことはないが、立ち上がれずベルの剣が胸を穿き魔石を砕いた。
「ベル様! 詠唱、終わりました!」
「前衛、ひけぇ!!」
リリとボールスの言葉にベルを含めた前衛達が一気に下がる。逃さぬと追ってくるモンスターに向かい投げられるヘルハウンド。
「【ウィル・オ・ウィスプ】!!」
「ギャウン!!」
即席の爆弾とされたヘルハウンド。自分をぶん投げた人間に向かい吐こうとしていた炎が爆ぜモンスターを巻き込む。
「えげつねぇ………」
冒険者の一部がヴェルフに「お前まじかよ」と言いたげな視線を向けた。
「アリーゼ!!」
詠唱の完成を確認したアスフィがありったけの
意図を察したアリーゼは既にデルピュネに向かい跳んでいた。
「【
放たれる炎。
アリーゼのスキルにより強化された、Lv.6の短文詠唱として破格の火炎が【
ゴガァァァァァァァァァッ!!
「ギュアアアアアア!?」
竜鱗が剥がされ肉が焼かれる。防御力が著しく減った傷跡に、無数の魔法が叩き込まれた。
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】!!」
「【ファイアボルト】!!」
炎、雷、氷の槍、魔力の剣……。
特にエルフの火矢と純白の炎雷が秀でた威力を持っていた。
「やったか!?」
煙が晴れる。顔の半分と胸の一部、片腕を失い倒れ伏すデルピュネ。
「カロロロ………!」
まだ息がある。忌々しげに片目で冒険者達を睥睨するデルピュネ。
「っ! まだ生きて………!」
「虫の息だ! やっちまえ!!」
「
「うおおお!!」
明らかに深層の階層主級のモンスター。そのドロップアイテムともなれば金にもなるし、強い武具防具を作れるかもしれない。
そうとも成れば、勝ちを確信した時点で目の色を変えるのが冒険者。死んでいないだけの死にかけなど怖くはない。
「グギャオオオオオオオオオッ!!」
「「「!?」」」
咆哮をあげ、立ち上がるデルピュネ。口内に炎が灯る。
魔導師の何名かが咄嗟に防御魔法を張った。
ボッ、ボッボボン!! と吐き出される炎弾。狙いは、天井!
「っ!? アスフィ!!」
「〜〜〜〜!!」
ヘルメスの言葉の意図を察したアスフィは直ぐ様飛び、ヘルメスとヘスティアを抱えて階層の端を目指す。
降り注ぐ天井だった巨大な瓦礫の雨。冒険者達は慌てて逃げ出す。
「……グルルル」
デルピュネは
脅威と判断したのだろう。
「ゴアアアアァァァァァッ!!」
片顎が幾つも割れ、体に突起が生え、片腕が肥大化する。さらなる異形とかしたデルピュネは瓦礫の雨を突っ切りながら襲いかかる。
「レフィーヤ!」
ベルが慌ててレフィーヤを突き飛ばすも、デルピュネの腕が迫る。未だ攻撃範囲………。
「っ!!」
盾を持ち割り込む桜花。だが、諸共吹き飛ばされる。
「ベル!」
「桜花ぁ!!」
ヴェルフと千草の叫びが虚しく響く。アリーゼが瓦礫の雨を掻い潜りながらデルピュネに迫る。
「カアッ!」
地面に向かい吐き出される炎。階層全体が激しく揺れ、砕ける。
「う、うおお!?」
「ぎゃあああ!!」
「おわあああ!」
18階層の床が半分以上抜ける。崩落に巻き込まれる冒険者達。体勢を崩すアリーゼに、デルピュネが口を向ける。
「まず───!!」
纏う炎を全力で放ち相殺しようとするも、威力が高すぎる。
「アリーゼ…………」
「これは、まずいな………」
「ベル君、サポーター君…………」
18階層の端でその光景を見て顔を青くするアスフィ。ヘルメスも帽子を深く被り直しヘスティアは心配そうに下を除く。
階層が半壊した。
圧倒的な破壊力。頼みの綱のアリーゼも炎に飲まれた。
「これって、もう………」
「まだだ………ベル君達の恩恵は切れてない、けど…………」
バサッ! バサッ!
羽音が遠ざかっていく。
既に相手する価値もないと思われたのか、見向きもされない。
(畜、生………)
意識が遠のく。
悔しい。見向きをされないことに、安堵を感じてしまうことが何よりも……。
「…………まも……………たれ………しのび………えぬ……めつ……」
声が、聞こえた。
「………いせんの……たから…びき………ぎゃくなる…てを……みこむ……」
この声は………これは──
「至れ……の炎……な猛火………汝は………化身なり………ことごとくを一掃し……」
………歌だ。
「大いなる戦乱に……幕引きを………焼き尽くせ…スルトの剣………」
あの人の、歌。勝利を望む歌。
「【我が名はアールヴ】【レア・ラーヴァテイン】!!」
召喚される妖精の女王の殲滅魔法。巨大な火柱がデルピュネを飲み込む。
「グオオオオオオオオオオォォォッ!?」
翼が焼かれ19階層に落下する。
こんな事ができるのは、この場には一人だけ。
「レフィーヤ……」
「っ! 私、は………」
震える体で立ち上がり、デルピュネを睨むレフィーヤ。
「私はレフィーヤ・ウィリディス……ウィーシェの森のエルフ………神ロキと契りを交わした、
闘志は未だ消えず、レフィーヤは叫ぶ。
「じゃあ、貴方は?」
「グルルルルルゥゥゥッ!?」
「貴方は、誰!?」
モンスターに聞いているんじゃない。
彼女が問いかけているのは、ベルだ。
「私は、こんなところで終わらない! 私は、こんなところで終われない! だから何度だって立ち上がる! やるべきことがあるから! 貴方は、違うんですか!?」
信じている。
ベルが立つことを、信じてくれている。
「貴方は………?」
「僕は………」
「貴方の名前は?」
「僕の名前は……!」
「貴方は、誰!?」
遠のきかけた意識が戻ってくる。力が抜けた体に無理矢理力を込める。
「僕はっ! 僕はベル・クラネル!! 神ヘスティアと契りを交わし、不滅の
「…………そうですか………待っていました」
(………僕を待っていてくれた。嬉しい………でも、たまらなく悔しい)
なんだろうこの気持ちは。沢山悔しい思いをしたのに、今が一番悔しい。
もうこれ以上、情けない姿を見せたくない!!
「グオオオオオオオオオオオオオ!!」
立ち上がった二人を見て叫ぶデルピュネ。
19階層のモンスターが集まってくる。
「うおおお! やるぞお前等! 彼奴等に近づけるなぁ!」
「!?」
現れたのはモルド。倒れた冒険者達に向かい叫ぶ。
「
「っ! うるせぇぞモルド! 偉そうに!」
「その馬鹿に調子のらせんな!!」
冒険者達が立ち上がる。
ベルも立ち上がり、スキルを発動する。
ゴオォン! ゴオォン!
鳴り響く音は
「【ウィーシェの名のもとに願う。森の先人よ、誇り高き同胞よ。我が声に応じ草原へと来れ】」
「グオオオオオオ!!」
ベルとレフィーヤを『敵』と認め迫るデルピュネ。
「やらせないわよ!!」
アリーゼがデルピュネに斬りかかる。回復した片目と反対の目を焼かれ悲鳴を上げる。
「【繋ぐ絆、
レフィーヤの詠唱とベルの
「くそ! くそ! ベルが命張ってんのに、何やってんだ俺は!」
ヘファイストスから渡すようにと頼まれた魔剣をヘスティアが渡す際、メッセージを添えられた。
「意地と仲間を天秤にかけるのはやめなさい」。
魔剣を打ちたくない、使いたくない。それがヴェルフの意地。だが、ここでその意地を通せば仲間が死ぬ。
「あった!!」
瓦礫の中から見つけた魔剣を引き抜く。
込められた力を使い切れば砕ける武器。ヴェルフはこれを武器と認めたくなかった。
「都合がいいってのは解ってる。だけど、力を貸してくれ!」
「ゴアアア!」
「シャアア!」
モンスターが後から後から沸いてくる。終わりが見えない。
チャージと詠唱に集中したベル達は動けない。
「【フツノミタマ】!!」
「「「!?」」」
グシャリと重力の檻がモンスター達を抑え込んだ。魔法を放ったのは命だ。
デルピュネを押さえることは不可能と判断し、ベル達を守るのを優先した。
「グオオオオ!!」
「でかいのが来るぞぉ!!」
「お前等、どけぇ!!」
咆哮を上げ迫りくるデルピュネに冒険者が狼狽える中、響く声。魔剣を掲げたヴェルフが、魔剣の銘を叫ぶ。
「火月ぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
劣化した魔法しか放てぬ魔剣とは思えぬほどの紅蓮の奔流。デルピュネを飲み込み、片翼を焼き払う。
「グギャアアアアアァァァァァァ!?」
「グオオオオオオオ!!」
「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に風(うず)を巻け。閉ざされる光、凍てつく大地。吹雪け三度の厳冬──我が名はアールヴ】 !!」
これまでで一番の威力の炎が放たれる。
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!!」
相対するは純白の吹雪。
炎をも凍らせる吹雪がデルピュネの口を凍らせた。
「ベル!!」
「!!」
レフィーヤの言葉と同時に飛び出すベル。純白の光が尾を引き、まるで白い流星。
「ウオオオオオオオオ!!」
「ゴアアアアアアア!!」
デルピュネが肥大化した腕の爪を振るう。
ベルの剣が振るわれる。
純白の斬撃が、竜の爪を、鱗を、胸を切り裂いた。
「……………どう、なりました?」
【
そんな彼に歩み寄るレフィーヤは魔力を使いすぎ、その場に座り込む。
「……………勝ちましたよ」
「……………」
「私達の、勝ちです」
「……………そっか、良かったあ」
「そうですね………」
へニャリと笑うベルに、レフィーヤも笑みを返した。
カーリー・ファミリアのバーチェがどうなるかは決めてるんですよ。アルガナはどうしよう
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フィンに任せる
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ヴァルドに調き─鍛錬されたティオネが勝つ
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ヴァルド「戦士の作法を教えてやろう」
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船止めるためにぶん投げた石で船ごと沈む