オラリオに失望するのは間違っているだろうか? 作:超高校級の切望
温泉。
名の通り、温かい泉。地下から湧き出て、なんか色々効能があるお湯。
それに浸かるベートは天井を見つめる。
なんでこうなった?
突然穴の奥へと走り出した命を追い、たどり着いたのは柄杓や徳利の実を生やす竹が群生した
更に広がる温泉。モンスターの姿は見えない。
「………温泉?」
「はい! 間違いなく温泉です! 自分、温泉のことだけは自信があるんです! す〜〜! はぁ〜!」
温泉の匂いを堪能する命。ベートは獣人なので鼻がとてもいい。何処か落ち着かない様子だ。
「モンスターも見当たりませんね」
「ここなら少しはのんびり出来そうだな」
そう言って荷物を下ろす桜花達。ベートはふん、と鼻を鳴らす。
「そうかよ。俺等は帰らせてもらうぜ。行くぞ、クソエルフ、アイズ」
「は、はい!」
「え?」
と、ベートの言葉に大人しく従おうとしたレフィーヤと異なりアイズは固まる。
「………あ?」
「休んで、行かないんですか?」
本来なら
「おお、【剣姫】殿も温泉にご興味が!?」
「えっと………入って、みたいかも」
「そうでしょうそうでしょう! では一緒に入りましょう!」
「おお、良いねぇ!」
と、ヘルメスが笑う。とたんに乗り気になっていた他の女子達もテンションが下がった。
「ん? なんだい?」
「何だじゃありません。水浴びの件忘れたんですか?」
「ああ、ベル君が良い思いしたあれかぁ!」
「ちょぉ!?」
ヘルメスの言葉にベルが慌て、ベートがハッとベルを見て桜花とヴェルフが首を傾げる。
アイズは顔を赤くして、レフィーヤはヘルメスを睨み付ける。
「とにかく、ボク等はヘルメスが居る限り安心して温泉に入れないよ。アリーゼ君もヘルメスには気をつけなよ?」
と、あの場にいなかったアリーゼに忠告するヘスティア。
「あら、私の場合はベルが一人で覗きに来ましたよ?」
「アリーゼさぁん!?」
「「「!?」」」
アリーゼの言葉にその場の全員がベルに視線を向けた。
「どういうことだいベル君! ボクの時はヘルメスに連れてこられたのに、アリーゼ君は自分からいったのかい!?」
「へ、ヘルメス様に唆されただけって言ってたのに…………変態! 変態! 変態!!」
「ベル様ぁ!? ベル様も手足がスラリと伸びた体型がいいんですか!? ちんちくりんな
ヘスティア、レフィーヤ、リリが叫ぶ。オロオロと周りに助けを求めるベル。アリーゼはバチコーン☆とウィンクしてアイズは…………
「えっち………」
「ごふぁ!?」
色んな意味で衝撃を与えてきた。
「つまり、逃げた先でたまたまアリーゼ君がいたんだね?」
「そうなんですほんとうです! 覗きたくて覗いたんじゃないんです!!」
神の判決、
ヘスティアの言葉にホッと落ち着く女子達。アイズは落ち着いた自分に首を傾げる。
「まあとにかく、ヘルメスがいる以上安心して温泉になんか入れないよ」
「そんな〜!」
ヘスティアの言葉に項垂れる命。よっぽど温泉に入りたいらしい。
「なら水着でも着たら? それで裸じゃなくなるわよ?」
「み、水着ぃ!?」
神々が齎した文化。俗に言う『神器』とされる様々な衣類の中で不変の存在。水辺で戯れるための衣装。水着!
下着と変わらぬ露出もあれば、一応腹も隠すがピッチリ張り付くタイプなど様々。人前で着れるかと羞恥を覚えるものも一定数居る。
「でも水着がないじゃないですか?」
「ふっ! こんな事もあろうかと!」
「きゃあああああ!?」
バッとアスフィのマントとスカートを捲るヘルメス。マントの裏には大量の水着。
スカートの中には水着はなかった。アスフィの拳がヘルメスにめり込む。
ゴス、ガスと数発殴りつけるアスフィ。誰にも止めることはできなかった。
「水着は俺が見立てた特別品だ。遠慮はいらない、貰ってくれよ」
「何で俺等の分まであんだぁ?」
救出隊や救出対象のベル達のぶんならともかく、何故か【ロキ・ファミリア】のメンバーのぶんまで用意されていた水着にベートが眉間にしわを寄せる。
「まあ神の勘というか、これくらいのご都合主義は話の流れ的には仕方ないと言うか、そもそもあったこともないベル君たちのぶんが用意されていた時点でおかしいんだから別にいいっていうか!」
「メタな発言はするなよヘルメス…………」
神々にしかわからない会話をするヘスティアとヘルメス。とにかく、これで全員裸ではなくなった。
「さ、着替えはその岩の向こうで。レディーファーストだよ」
ヘスティア達とともにアイズも向かい、レフィーヤも渋々と岩の陰に消えた。消える前に顔をひょこっと出すレフィーヤ。
「覗いちゃ駄目ですからね、ベル」
釘を刺し、今度こそ岩の向こうに消えた。
「………ベル、覗いたのか?」
「うええ!? だ、だから違うんだって!」
「言い訳は良い! どうして俺達を連れて行かなかった!?」
「え?」
「俺達も覗きたかったって言ってんだ。なあ大男?」
「うむ、そうだな。是非見たかった」
ヴェルフの言葉に力強く頷く桜花。あまり仲が良いようには見えなかった二人の意気投合。覗きは男の浪漫と語る二人にベルは顔を引き攣らせ、ベートはくだらねぇ、と吐き捨てる。なおこの狼男、ベルが覗いたことを知って俺でも出来ねぇことをと呟くムッツリである。
「──解ってるじゃないか、ヴェルフ君、桜花君!」
と、復活したヘルメスも会話に交じってきた。
「当たり前ですよ、俺達だって漢だ。あんな
「うむ」
「フフ、言うじゃないか。因みにヴェルフ君達は、どの娘が好みなんだい?」
「自分は断然ティオナ・ヒリュテ。淫らに見えすぎないあの健康的な色香。伸びやかな肢体も眩しいかぎりです」
「うわ、お前、真っ平らの
「重複してるぞ」
「俺は当然命ちゃんだよ! 【剣姫】も捨てがたいけど、何と言っても黒髪万歳!」
などと下世話な話題で盛り上がる男衆。恋人がいたことがあるベートは冷めた目を向けていた。
「素敵な会話中恐縮だけど、ちょっと来てくれない鍛冶師君」
「うおわぁ!?」
何時の間にかアリーゼがおり、ヴェルフを連れて行く。
「………悪いなベル、大男、狼男」
なお、ベートは獣人なので布が裂ける音とヴェルフに直させよう、という声が聞こえてたりする。暫くして葉っぱを水着代わりにしたヘスティアと水着に着替えた女子達、落ち込んだヴェルフが戻ってきた。
ベルはアイズに見惚れている。
「いやらしい目をアイズさんに向けないでください!」
「ご、ごめんなさ! って、別にいやらしくなんか…………っ!?」
レフィーヤの言葉に慌てて目を逸らすベル。レフィーヤはふん、と頬を膨らませる。
「………レフィーヤも、きれいだね」
「〜〜〜〜!?」
「…………流石ヴァルド君の弟子だなぁ」
「では、よろしいですね?」
男達も着替え終え、ベートも仕方ねぇと付き合う。因みに命は水着を着ずに布を巻くという入浴スタイルだ。
本人は全裸が良かったらしい。極東の作法を教えると二礼二拍手一礼、お賽銭、祝詞など妙なことまでしている。桜花達曰く極東ではなく彼女の文化。温泉が好きすぎて暴走しているらしい。
温泉を飲んだ後、手首足首良く回してかけ湯せずに飛び込んだ。
「……………………」
「………………」
各々がゆっくり浸かったりお湯を掛け合ったりする中、ベートは近くで無言のまま湯に浸かっているベルに目を向ける。
「おい兎野郎」
「え? あ、はい…………!」
「Lv.2になったのか?」
「…………はい」
「………そうか」
嘗てベートが詰った相手。冒険者の質を下げるとか色々言った。
「………俺はあの時の言葉を取り消す気はねえぞ」
「?」
「酒場のことだ!」
なんのこと、と言いたげな顔をするベルにベートは何で俺が説明してんだと思いながら叫ぶ。漸く何のことか理解するベル。
「………取消さなくていいですよ」
「………………」
「実際、あの時の僕は言われても仕方ない奴でしたから。師匠の弟子で、アイズさんと知り合えて………何時かすごい冒険者になれるって思ってた。その何時かが、何時か来る保証なんてないのに」
「…………………」
「悔しいって思ったんです。でも、貴方にじゃない。言い返せない自分自身に………貴方の言葉があったから、僕は走り出せた…………まあ、燻るようなら師匠にぶっ飛ばされたでしょうけど」
あはは、と笑うベルにベートはふん、と鼻を鳴らす。
「一つだけ、訂正してやる」
「?」
「お前は雑魚だが………『冒険者』だ」
ポカンと固まるベル。舌打ちして顔をそらすベート。言葉を理解し、ベルは微笑む。
「ベートさん、色々怖い噂聞きますけど…………僕、ベートさんのこと好きみたいです」
今度はベートが固まった。
「!!? はぁ!? いきなり何をほざいてんだ気持ち
「ベートさんって、優しいんだなぁって………」
その目はとある
「べ、ベル!」
「わっ!? ア、アイズさん!?」
アイズがベルの腕を掴む。
「あっち、凄かったよ。すごく………その、すごかった。ベルにも見せてあげる、行こ!」
「え、あ! ちょっ!?」
何やら慌ててその場からベルを連れて行こうとするアイズ。まるでうさぎの近くに寝ている狼を見つけた少女のようだ。一刻も早くここから離れたがっている。
Lv.6と2。抵抗できるはずもなく、連れて行かれた。
「わぁ……」
そこは正しく泉のように広かった。
浅いところは座れるが、深いところは立っていても顔まで水に沈みそうだ。
発光する水晶が天井や壁に無数に存在し、水面がその光を反射し幻想的な景色を作り出す。
「綺麗ですね、アイズさん……」
「う、うん………そう、だね………」
「………?」
何やら歯切れが悪いアイズ。ベルが奥に向かえばついていこうとして、足場を見て戻る………。
「………あの、もしかして…………泳げないんですか?」
「!? !! !!??」
アイズはわかり易いほど狼狽えた。今彼女の中ではお姉さんぶりたいが過去のトラウマで深いところに近付けない幼いアイズが現実のアイズと変わらぬレベルでワタワタしている。
「泳げないなら、何で………」
「……君が、ベートさんを好きって言ってたから」
「?」
「私の方が、面倒見てるのに………」
なんか、餌を上げていた野生の兎がいきなり現れた犬に懐いて構ってくれない女の子みたいだ、と妙に鮮明なイメージを与えてくるアイズ。
「仕方ないよね………私、泳げないもん」
「いや、それは関係ないんじゃ…………あの、じゃあ泳ぐ練習します?」
「…………石をくくりつけて沈めたりしない?」
「しませんよ、お義母さんじゃありませんし」
母親はやるのか。自分もリヴェリアにやられた。
「最初は足がつくけどちょっと深いところで………水底を蹴りながら進みましょう」
アイズの手を取りながら少し深い場所に移動する。アイズは不安そうにベルを見つめる。
「手、離さないでね?」
「……………………」
可愛い。
心臓が止まるかと思った。
「と、とにかく、水の中で進む感覚を覚えましょう」
「うん………?」
「アイズさん?」
と、不意にアイズが首を傾げる。
ベルもなにかに気付きハッと顔を上げた途端、天井から巨大な何かが降ってきた。
「わぶ!?」
「!?」
ドバァ! 高波のように押し寄せる温泉に流されそうになりながらもなんとか耐えるベルとパニックになって流されるアイズ。
現れたのは鮟鱇のようなモンスター。その体躯は、超大型。
6つの目を持ち触手を生やしている。
「ゴオオオオオ!!」
「っ! このぉ!」
振るわれる触手をなんとか回避するベル。水辺に足を取られる。
「【ファイアボルト】!!」
ボウ! と着弾するも、効果はない。鬱陶しいとばかりに振るわれる触手。かなりの力で水面が波立ち動きを阻害する。
「……ん? って、ええ!?」
何やら温泉が赤くなり始めたと思ったら、服が溶け始めていた。
「〜〜!?」
特に布の面積が少ないアイズの被害は酷い。慌てて体を隠す。
「アイズさん! 一旦温泉から出て──!?」
バッチと何かが弾けるような音。次の瞬間ベル達に襲いかかる激痛。
「──かっ!?」
「あう!!」
覚えのある痛み。これは、ヴァルドと同じ雷……!?
全身の動きが一時的に麻痺する。その隙を逃さず触手がベルを殴り飛ばし………アイズにはそれではダメージが通らないと思ったのか触手が絡みつき水底に引き摺り込んだ。
温泉の主(強化種)
アニメOVAより強化されたモンスター。
柔らかい体に滑った体液。打撃への耐性は
装備を溶かす力も強化されており、第三級装備程度なら溶かしてしまう。なのに人体には影響がない不思議。
温泉魚(強化種)
潜在能力はLv.2〜3。ただし打撃への耐性はやはり食人花を上回る。ヒリュテ姉妹が苦戦したように、素手ではLv.5でも負けこそしないものの苦戦は必至。こちらは電撃は使えない。温泉の主によって統治されており、餌が不足すると下位のものから食われ強化種の糧になる。
多くの迷い込んだ冒険者はリラックスしていて不意をつかれたり、戦闘態勢を取れても装備を失いなすすべもなく食われた。
なお、ヴァルドが異端児と利用する
心も体も癒やされる安らぎの場は何処に?
少なくとも作者は知らないですね
そろそろ100話。さて、どんな話書こう
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