ダライアス・レポート ~天才と呼ばれたくない技術屋の開発奮闘記~   作:雑草弁士

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File1「其の名はジャック」 & File2「画期的な新型機?」

[File1「其の名はジャック」]

 

 

 ジャックは自分の従機(じゅうき)の中で、必死に死んだふりを続けていた。従機(じゅうき)とは全高4~5メートルほどしか無い、廉価(れんか)版の機兵(きへい)である。その能力は低く、一般からは機兵(きへい)扱いされないほどなのだ。

 

 その操縦槽(そうじゅうそう)に設置してある、性能のあまり良くない映像盤(えいぞうばん)に、自分に興味をなくした敵機……。ジャックの従機(じゅうき)とは比べ物にならないほど強力な、陸戦の王者、戦場の覇者たる全高八メートルの機装兵(きそうへい)がよぎっていくのが映る。

 

 ……その行く手には、抵抗できない徒歩の仲間達がいる。

 

 映像盤(えいぞうばん)に映る照準(レティクル)を、ジャックは一生懸命に敵機の脚間接に合わせる。チャンスはこれしかない。この従機(じゅうき)を作ってくれた、冒険者組合の技師であるダライアス師の言葉が、脳裏によぎる。

 

 

魔導制御回路(トワル・スフィア)を書き換えて、わたしの使ってる照準プログラムを()せておいた。あとは君の腕しだいで、わたしが機兵(きへい)相手にやってる技……。敵機の関節を(つらぬ)いて行動不能にする『間接貫き』が可能だ。あくまでも理論上だがね』

 

 

 ジャックの機体は従機(じゅうき)である。その反応性は低く、動作の精度も甘い。敵機の関節部を狙うのは至難と言うレベルでは済まない。

 

 また射撃武器である『魔導砲(まどうほう)』は普通、装甲の無い魔獣(まじゅう)相手の武器である。装甲を施された機装兵(きそうへい)相手では、関節部以外に命中したところで、効果は望めない。

 

 勝てる可能性はほとんど無い。しかし、彼と仲間が助かる可能性もまた、これしかないのだ。

 

 ジャックは残る魔力を機体に漲らせると、死んだふりをやめて全砲門を撃ち放った。

 

 

 

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[File2「画期的な新型機?」]

 

 

「ちっくしょう、何が新型だ! 従来機とたいして変わらんじゃないか!」

 

 

 煤まみれ、泥まみれになりつつ、チェスターは味方の基地に辿り着いた。徒歩で、である。

 

 彼は自分の乗機たる機装兵(きそうへい)を、魔獣(まじゅう)との相打ちの形で破壊されていたのだ。

 

 なお彼が乗っていた新型機と称する物は、その機体のテストを兼ねて無償供与されていた物である。

 

 チェスターの本来の乗機は大破しており使えない状況だった。そこへテスト機供与の話である。

 

 しかし無償という美味しい話にうかうかと乗った過去の自分を、彼は罵倒したい気分だった。

 

 

「まあ脱出装置は確かな様だけどよ。肝心な戦闘能力が元の機体と大差無いんじゃ……。乗りやすくはあったが」

 

「おう、生きて帰って来たな」

 

 

 整備主任のオヤジが、チェスターに向かい声をかけて来る。

 

 

「済まんが、戦線が押され気味だそうだ。また出てもらえるか?」

 

「鬼かッ!! 機体がねーよ!!」

 

「あるぞ、ほれ」

 

 オヤジが指差す先にはチェスターが先ほどまで乗っていたのとまったく同型の、完全に型にはめたかの様に瓜二つの機体、八メートルサイズの人型兵器、機装兵(きそうへい)が鎮座していた。

 

 

「ま、まてよオイ。機体にゃ一機ごとにクセがある。それに慣れないうちに戦闘になんか……」

 

「つべこべ言わずに、乗れッ!!」

 

 

 チェスターはオヤジと徒弟の整備士達に、強引に操縦槽(そうじゅうそう)へ放り込まれる。ため息を吐きつつも、チェスターは操縦席に着座し、機体を起動した。

 

 

(……!? こ、こいつ、手足の様に動く!?)

 

「おまえが前回乗った時に、データ取っておいて、それをデータカートリッジで移殖したんだよ。

 専用機やらカスタム機やらでは意味無いシステムだし、一般兵用の安物に積むにゃ高価(たか)い。こんな低価格機に搭載してあるなんざ、おどろきだ」

 

『やっぱり安物だったのか!?』

 

「おうよ。だがな、ただの安物じゃねえぞ。値段は従来機の三分の二、しかし機体能力は従来機からなんら劣ってない。しかし問題はそこじゃねえ。

 量産性、整備性、そして稼働率。あらゆる物が桁外れだ。あれを見な?」

 

 

 オヤジが指差す先に機体の頭部、機外の映像を得るための眼である魔晶球(ましょうきゅう)を向けたチェスターは、唖然(あぜん)とする。そこにある大扉からは、この場に搬入されつつある三機の機装兵(きそうへい)……。チェスターの乗っているソレと全く同じ機体が見えていた。

 

 それだけではない。その後ろからは中破、大破した同型の機装兵(きそうへい)が運び込まれて来る。おそらくチェスター同様にテストを任された奴らの機体だろう。

 

 整備士が、いっせいにその損傷機に取りつくと、無事な部分をひっぺがし、それを使ってあっという間に一機の機体を組み上げてしまった。

 

 

『う、嘘だろ? こんな短時間に?』

 

「ほんとも、ほんとだ。ある程度の残骸が残ってりゃ、ニコイチ、サンコイチ、ヨンコイチであっと言う間に機体を復旧できる。個々のパーツの頑丈さが桁外れで、故障が少ない。

 俺たち整備の人間からすれば、夢の新型機だ」

 

 

 チェスターは開いた口が塞がらなかった。

 

 

「ダライアスって奴が設計して、組合が制作、製造した機装兵(きそうへい)なんだがよ。操手(そうしゅ)さえ生きて(かえ)ってくりゃあ、いくらでも再出撃ができる。生きて帰還できるなら、いくらでもブチ壊してかまわんぞ。

 さあ、出撃しろ!」

 

 

 たしかに戦術的、戦略的には大きな意味のある機体だ。特にチェスターの様な中堅操手(そうしゅ)には、ふさわしいのかも知れない。

 

 

(でもなあ……。やっぱり高性能機、乗りたいよなあ……)

 

 

 チェスターはため息を吐きつつ、再出撃した。

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