「ハハハっ! 死ねぇ!!」
襲撃者の一人、
「エムル様!!」
衛兵やシュナ達がエムルの下へ走り出すも、明らか間に合わない。
だが、ショウゴの拳は途中で止まり、周辺に居た騎士やショウゴ達は、ビビりながらも、エムルから距離を取った。
それと共に、エムルがシオンを抱えながらゆっくりと立ち上がった。
「エムル様!」
衛兵の一人がエムルの下に駆け寄ると、エムルは無言でシオンを衛兵に渡した。
「エムル様!どうか避難を…!」
エムルからシオンを受け取った衛兵は、エムルに避難するように呼び掛けるも、エムルは無言のまま、騎士達に向かって歩み出した。
エムルが一歩、また一歩と歩くたびに、騎士や襲撃者を含め、周りの者達の多くはエムルに恐怖を感じた。
下を向いているせいで、顔は見えないが、エムルが放っている殺意はおぞましいモノだった。
「本性を現したな!皆の者!あやつは、人の皮を被った魔物だ!! 今こそ、悪を討つのだ!」
ファルムス王国軍騎士団長であるフォルゲンは、副盟主であるエムルを殺せる好機だと思い、騎士達に命令した。
騎士達は、少しビビりながらもエムルを殺すために、エムル目掛けて走り出した。
「…」
騎士達が向かってくる中、エムルは顔をゆっくりと上げた。
エムルの顔を見ることが出来た、多くの者達をまた恐怖に感じた。
エムルの綺麗な瞳は光を失っており、常に微笑んでいる顔は憎悪で悍ましいモノになっていた。
「…っ! 皆の者!行くぞ!!」
流石のフォルゲンでも、エムルの表情に少しばかり恐怖を感じたが、すぐさま騎士団をエムルに向かわせた。
だが、騎士団の前列が、横から飛んできた紫色の
「なんだ!?」
騎士達が混乱する中、紫色の剣はまるで、意思があるように騎士達や襲撃者達を襲った。
紫色の剣はある程度の騎士達や襲撃者を斬ったあと、自身を作り出してくれた主、エムルの下へと飛んで行った。
剣こと、ニンジャークソードはエムルの背中に収まっては、ギアディスクを自動で回転させた。
What's Up!?
待機音が鳴る中、エムルの姿がニンジャークソードと触れている所から、ドンムラサメへと、姿を変え始めた。
DON、MURASAME!!キリステ、Sorry!!
完全にドンムラサメへと姿を変えたエムルは、ゆっくりと歩み出した。
「…」
エムルは無言で歩き続けたが、エムルの目の前に二人の日本人が立ち塞がった。
「はっ!どうせ雑魚だろ?キョウヤ行くぞ!」
「うん、僕達なら余裕だろうね」
ショウゴとキョウヤは二人掛かりでエムルに襲い掛かった。
だが、二人の攻撃はニンジャークソードで受け止められ、エムルは、二人の攻撃を押し返したのち、ニンジャークソードを勢いよく振った。
「うおっ!」
「…っ!」
二人はギリギリで避けては、距離を取り、すぐさま態勢を整えた。
そんな中、エムルはニンジャークソードのギアディスクを一回転させ、トリガーを引いた。
イチシャーク・キリシャーマン
エムルはニンジャークソードを地面に突き立て、その場にしゃがみ込んだ。
しゃがみ込んだエムルは、潜水するかの如く地中に潜り込んでいった。
「なに!?」
「どこに…」
騎士や襲撃者達は最初は警戒していたが、中々現れないため逃げたと判断した。
「ハハッ! 副盟主は随分と腰抜けだな」
一人の騎士が、エムルをバカにし、それを聞いた他の騎士達が笑い始めたその時、最初にエムルをバカにした騎士が、地中から飛び出て来たエムルによって切り倒された。
「がはっ!」
切り倒された騎士は、切口から大量の血を吹き出しながら、その場で倒れて死んだ。
騎士を斬り殺したエムルは、再び地中に潜った。
「よくも、我らが同士を…!」
騎士を一人をやられたフォルゲンは、頭にきたのか、騎士全員に指示を送った。
騎士達は地面に警戒心を強めたが、それの行動は無意味だった。
エムルは地面だけではなく、壁から飛び出たりして、様々な方向から飛び出ては騎士達を次々と斬り殺していった。
「いい加減…ウザいんだよ!」
ショウゴは、襲い掛かって来たエムルの腹を左腕で貫いた。
「ハハッ!ザマァねぇな!!」
高らかに笑うショウゴは、エムルの腹を貫いた左腕を抜こうしたが、いくら動かしても腕は抜けなかった。
「はぁ!?ふざけるなよ!」
ショウゴは更に腕を抜こうと頑張ったが、それでも腕は抜けなかった。
「クッソ!…っ!ギャァァァ! う、腕が! 俺の腕がァァアァア!」
ショウゴが頑張って、腕を抜こうとしている中、エムルはニンジャークソードを使い、自身の腹を突き抜けているショウゴの左腕を切り落とた。
エムルに左腕を切り落とされたショウゴは痛みで、叫びながら地面を転がり回った。
「…」
エムルは自身の腹に、突き刺さったままのショウゴの腕を抜き、そこら辺に投げ捨てた。
ショウゴに貫かれ、穴が開いていた腹は、ドンムラサメのスーツと共に再生していった。
「化物が、我らファルムスの親愛なる民傷つけおって!皆の者!掛かれ!!」
オォオオォォォオ!!
怯える騎士達を置いて、勇敢な騎士達は一斉にエムルに襲い掛かり、剣でエムルを串刺しにした。
エムルから大量の血が溢れ出るが、ユニークスキル、
騎士達はエムルの血だまりを踏みながら、更に深く、エムルに剣を刺し込んだ。
そんな中、エムルはふと思い、血に意識を集中させた。
エムルが意識を血に集中させたその時、血だまりから血と同様の赤さを持つ針が、無数に飛び出て、自身を刺していた騎士達を貫いた。
《確認しました。エクストラスキル「血液操作」を獲得…成功しました》
エムルの頭の中で世界の言葉が鳴り響いた。
エムルは早速、新たに手に入れた血液操作を使い、自身の血で矢のような物を、無数に作り出し、騎士達目掛けて放った。
「ぐうぅ!」
騎士達は盾や建物を使い、血の矢を回避した。
「…撤退するしかないか……この町は魔物に汚染されている!我らが神ルミナスは、魔物の国など断じて認めぬ! 故に! 西方正教会の助力を受け、武力を持って制圧する! 時は今日より一週間の後、指揮官は英傑と誉れ高いエドマリス王、その人である! 恭順の意を示すならば良し、さもなくば神の名の下に、貴様らを根絶やしにしてくれようぞ」
流石に撤退することにしたフォルゲンは、撤退ざまに声を張り上げて言い放った。
それを見たエムルは安心したのか、変身を解除し、その場に倒れ込んだ。
「エムル様!」
シュナがエムルの下に近づくと、エムルは目を瞑って眠っていた。
恐らく、魔素の使い過ぎで
シュナはエムルを安全な場所に運ぶように衛兵に伝え、後から来た、ベニマルとリグルドに状況を説明したのち、自分は怪我人の治療に向かった。
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