俺達はミョルマイルと冒険者数名を連れて、事情説明を受けるために会議室へと場所を移した。
ベニマル曰く、最初の襲撃者は人間の男女三名で、衛兵の一人が絡まれ、そこから交戦に至ったそうだ。
シュナやゴブタ達、少し後にハクロウが応援に加わったそうだが、戦闘が始まってすぐに、町が結界で覆われて、"
その後、エムルが応援に駆け付け、襲撃者達を追い返す勢いで戦ったのだが、ファルムス王国の騎士達が現れ、エムルと襲撃者の戦いを見て、剣を抜いたそうだ。
エムルは止めようとしたそうだが、騎士達は無茶苦茶な理由で、魔物達だけではなく、同族であるエムルに襲い掛かったそうだ。
"
しかし、エムルが居なかったらもっと酷い状態になっていただろうとリグルドが話していた。
そして、ベニマルの次の言葉に、俺は驚愕した。
「……エムルが…人間を殺した…だと…?」
町で虐殺が始まった後、それに対して激怒したエムルが、次々と騎士団を殺したそうで、エムルが殺した騎士の数は四十人以上だそうだ。
「…エムル様は…俺達が何もできない状態の中、お一人で騎士達の相手をしていました……俺達にもっと力があったら…! エムル様が同族を殺す必要がなかったんだ…!!」
ベニマルが自身に対する怒りで、机を叩いた。
エムルが、同族の人間を殺した…なんでこうなったんだ………そうか、俺の甘えがエムルに同族を殺させるハメになったのか…
そして、エムルによって撤退せざず状況になった、ファルムス王国の騎士団は去り際に、こう宣言したらしい。
『我らが神ルミナスは、人類を脅かす魔物の国など認めぬ! 故に、西方聖教会の助力を受け武力をもって制圧するものなり! 時は今日より一週間の後、指揮官は英傑と誉れ高いエドマリス王その人である! 恭順の意を示すならば良し、さもなくば神の名の下に貴様らを根絶やしにしてくれようぞ!』
「…茶番だな」
それを聞いた俺が呟いた。
だが、魔物の殲滅を掲げている西方正教会は、ともかく、ファルムス王国の動向が気になる。
俺が考えていると、ミョルマイルが発言の求めた。
ミョルマイル曰く、ファルムス王国は元々、貿易で潤っていた王国なのだが、危険地帯だったジュラの森に
そんな
「エムル様は伏せと聞き及んでおります……ワシはこの町に残る商人の代表として、ここ居ります。ファルムス王国を迎え撃つのならば協力は惜しみませんぞ…!」
「オレぁブルムンドの冒険者だ。 最近はずっとこの町を活動拠点にさせてもらってた。 戦力が必要なら、手を貸すぜ?」
「わ、私も力になります!」
エムルが人間達を殺した事実を隠さず伝えてあるのに、商人や冒険者達は俺達に力を貸してくれるそうだ。
だが、これは俺達の問題だ。他国の人々を巻き込むわけには行けないと俺は判断し、ファルムス王国が彼らを口封じする可能性があったため、街道で空間転移で帰って貰った。
全員を見送った後、怪我人が治療されている建物へ向かった。
皆の様子を見ながら、俺は奥の部屋へ移動した。
「リムル様! お帰りだったのですね。 よくご無事で…」
「リムル様…ご無事で安心しましただ」
奥の部屋では、シュナとクロベエが働いており、シュナに関しては、両手が血で染まっていた。
部屋のベッドにはハクロウとゴブタが寝かされており、二人とも、切り傷からは血が滲んでいた。
ハクロウは意識があるが、ゴブタは意識がないらしい。
普段なら、回復薬や治癒魔法で回復させることが出来るのだが、二人に傷を負わせた襲撃者は、空間属性のスキルを使う者だったらしく、そのせいで回復薬や治癒魔法が効きにくく、傷口に直接働きかけることしかできないんだそうだ。
だが、俺なら
(大賢者、
《解。 問題ありません。 個体名ヒナタとの戦闘で切り離した分は、復元完了しています。 空間属性の影響を確認しました。「
(もちろん、YESだ)
優秀な大賢者のお蔭で、ヒナタとの戦いで切り離していた
空間属性を捕食したことにより、二人に回復薬が効くようになり、ハクロウは傷の癒えた身体を起こし、意識がなかったゴブタも起きたが、ハクロウに対して失言をしたため、また重症に戻りそうになっていた。
「…シュナ、エムルはどこにいるんだ?」
「エムル様は…上の部屋で寝ておられます…」
寝ている? アイツがこの状況で呑気に寝てるのか?
そもそも、アイツは
「…そこは俺が説明するぜ」
「お前は…」
扉の方から声がし、声の方を見ると、そこには獅子王が居た。
「エムルのスキル、
皆が黙り込む中、獅子王がエムルの状態を説明してくれた。
……無茶をしたのか、エムル…
俺は、自分自身への怒りで頭がどうにかなりそうだった。
自身を落ち着かせ、俺はもう一つ、疑問になっていたことを聞いた。
「…なぁ、ベニマル…あいつはどこだ?」
俺がベニマルに訊ねると、ベニマルは質問に答えず、ただ一言、
「付いて来てください」
とだけ言うと、魔物達の遺体が安置されている広場に向かって歩き出した。
広場を進むたびに、胸騒ぎが増した。
白い布を掛けられている者の前で、ベニマルが止まり、布を取った。
そこには、角が欠け、身体を貫く剣の傷跡と、そこから出た血でシャツが赤く染まっているシオンが居た。
目の前の状況に、俺は信じることが出来なかった。
その場で、立ち尽くす俺の近くに、同じように横たわるゴブゾウを見付けたゴブタが泣き始めた。
ゴブゾウは、ゴブタの部下で、
ゴブゾウはシュナを守って、その命を奪われたそうだ。
そして、シオンは…
「シオンは、子供達を庇おうとしたエムル様を守るために……」
その言葉を聞き、エムルが激怒した理由が分かった。
俺は聞いただけで、理性が弾け飛びそうになるのに、エムルはその光景をまじかで
見たうえに、自分のせいでシオンが死んだとなると相当苦しかっただろ。
シオンを殺した者に対しての怒り、エムルを強く苦しめ皆を危険な目に遭わせた自分に対する怒り…
様々な感情が俺を襲ってき、俺はつい、強い
「すまん、しばらく一人にさせてくれ」
俺の言葉に、皆が去って行った。
シュナが、去り際に、俺にハグをしてくれた。
《告。弱体化した魔物にとって、強すぎる
大賢者に言われ、俺は複製した抗魔の仮面を付けた。
泣きたいのに、俺は涙の一筋も流せなかった、シズさんの時は涙が出たのに…
そうか………俺はもう…心から魔物になっていたのか
広場に横たわるシオンやゴブゾウ達を前に、俺は大賢者を使い、何度も…何度も…蘇生をする方法を検索した。
そんな中、時間だけが過ぎていった。
《告。検索結果該当なし。 完全なる死者の蘇生に関する魔法は、検出されませんでした》
「…そうか」
俺は冷たい風が吹く中、ゆっくりと立ち上がった。
いつまでここでこうしてはいられない。
遺体はやがて朽ち、魔素に還元されて消えてしまうのだろう……消えて…
周りの見渡すと、全員との記憶が蘇ってき、押し込めていた怒りが、湧き出て来た。
そのせいで、抗魔の仮面にヒビが入った。
俺が
「リムルさん!」
俺の下にエレン達が来てくれた。
だが、今は…
「…来てくれたのか、ありがとう…だけど少し待ってくれ…そろそろ、眠らせてやらないと」
少しの間があったのち、エレンが振り絞ってた声で
「…あのね、リムルさん…可能性は低いけど…ううん、ほとんどないかもしれないんだけど。 でも、あるのよ! 死者が蘇生したという、お伽噺が」
死者が蘇生したお伽噺?
普段なら、所詮は作り話だと思って、軽く聞き流す話……だが、今の俺にとってそれは希望だった。
こいつらのために、俺に出来ることがまだ残されていると……こいつらのため? 本当にそうなのか? ……違う、俺が失いたくないんだ。
「所詮は作り話だって、思うかもしれないけどぉ…でも、これは史実に基づいた伝説なの…だから──」
「ふ、ははは」
「リムルさん?」
「いや、悪いな…つい嬉しくて、死者の蘇生か、まるで夢物語だな。 可能性が零じゃないだけで十分だ…詳しく聞かせてくれ、エレン」
俺は抗魔の仮面を外しながら、エレン達の方を見た。
次回も、多分リムル視点になります。
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