俺は来客室でエレンから話を聞くために、ソウエイと連絡を取ったのち椅子に座った。
エレンが語り出したのは、ある少女と
昔、この世に四体のみ存在する"竜種"、その最初の一体が、大地にて人間と子を生した。
我が子に力の大半を譲渡することになった最初の竜種は、残る力を全ての力を結晶化させ、自分の分身体ともいえる子竜を生み出した。
そしてその子竜を我が子──竜皇女へと贈ったのである。
幼い竜皇女はすぐに子竜と仲良くなった。
平和な日々は永遠に続くかと思われたが──ある刻悲劇が起きる。
栄華を極めていた魔法大国が竜皇女を意のままに操ろうと目論み、子竜を手に掛けた。
親友でもあった子竜を亡くし、少女は怒り狂った。
父より受け継いだその力は凄まじく、その魔法大国を十数万の国民もろとも消滅させ、そして、竜皇女は魔王へと進化した。
すると、子竜は少女の魔王進化に伴い、死して尚、進化したのだ。
立ち上がろうとするその姿に竜皇女は喜んだ。
しかし、奇跡は望む形ではなかった。
死と同時に魂を失った竜は邪悪な
友はもういないと理解した竜皇女は、嘆きつつも自らの手で友の亡骸を封じたという。
だが、意思のない怪物になっても意味がない…となると、問題は魂の有無か…
「リムルさん。この町は今、結界に覆われているでしょう? だから、ひょっとしたらだけど……シオンちゃん達、まだここに居るんじゃないかなぁ……」
《告。 絶命した者達の魂は、本来拡散して消滅するのですが、二種の結界に阻まれ、残存している可能性はあります。 その確率──3.14%です》
「円周率かよ!」
俺はつい叫んでしまった。
低い? いや逆だ。 死から蘇生出来る可能性が三%以上もあるのだ。
俺が魔王になりさえすれ…皆は…!
希望が見て来た俺は、エレンから色々と聞いた。
どうやら、エレンは魔導王朝サリオンの貴族のお嬢様らしい。
エレンは、冒険者に憧れて国を飛び出し、エレンの護衛としてカバルとギドは来たそうだ。
ビジネスライクな間柄なのかと思ったが、三人の関係は見た目通り「仲間」なのだろう。
だが、竜皇女のお伽噺はサリオンでも一部の者しか知らないようで、魔法の誕生に協力したとなればエレンの立場は、厳しいものになる上に、国に連れ戻される可能性が高いのに、覚悟の上に情報をくれた彼女が連行されるのを静観するつもりはない。
エレンは、国に連れ戻されるまで、ここに居たいそうで、俺は勿論承諾した。
────────────
俺は再び、皆が眠る広場に立った。
「…魔王、か」
《告。 個体名リムル=テンペストは既に魔王種を獲得してます。》
俺が呟くと、それに答えるように大賢者が答えてくれた。
(魔王種を獲得?どういうことだ?)
俺は大賢者に訊ねる。
《解。魔王種の有無は、魔素量、保有のスキル等が、真なる魔王として覚醒するに足るか否かを指します。
(ホントか!? それで、条件ってのはなんだ?)
大賢者の言葉で希望が見えてきた。
《お伽噺から推測するに、種を発芽させるには養分が必要です。
(それは、俺が一万人以上の人間を殺す必要があるということか?)
《是。 ですが、個体名リムル=テンペストの意思が介在していれば他の者に任せても問題ありません。》
「…そうか」
人間を殺す必要があるのか……考えてみれば酷い話だ。
スライムに転生してからも、俺の判断基準はかつて三上悟だった頃の常識が根底にあった。
…魔物の基本理念は弱肉強食なのにな。
シオンだけでじゃない、この国の者は皆、そんな俺の考えに従って────そして殺されたんだ。
俺は決意した。
今回は、俺自身でケジメをつけるために、人間を殺し、魔王になること……
(リムル様)
俺は次の事を片付けるために、町中を歩いているとソウエイから連絡が入った。
「ソウエイか、何かあったのか?」
(トレイニー殿から連絡が、ファルムスと西方聖教会の連合軍が我らの領土へと進行中とのことです。 その総数およそ三万…一万が先導しており、それを追うように二万が行進しております…)
「三万…そうか、良かった」
(? 良かったとは…?)
「いや、大したことじゃない、十分に足りそうだと安心しただけだ」
そうか、三万人か…良かった、それなら充分足りそうだ。
《告。 町を覆う二種の結界の解析が完了しました。 大魔法「
弱体化を引き起こしている複合結界の方を解除したかったのだが、仕方ない。
《大魔法を解除しますか?》
(いや、まだいい)
大賢者が大魔法の解除を提案してくれたが、俺は提案を却下し、シオン達の魂が拡散を防ぐために、俺は町に三つ目の結界を張った。
俺が三つ目の結界を張ったことに気づいたリグルドとベニマルが俺の下にやって来た。
二人は心配そうにしていたが、俺が張った結界と説明し、リグルドに皆を会議室に集めるように言った。
リグルドは勢いよく走り出して皆を集めに行ってくれた。
「リムル様…エムル様が先程、目覚めたとシュナが申しておりました」
「ホントか!?」
確かに、もう三日も経っているのだ、目覚めていてもおかしくないな。
先にエムルの顔でも見に行くか、
「分かった、エムルの下に案内してくれ」
「承知しました」
俺はベニマルに案内されながら、エムルの下に向かった。
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