「待っていたよヒナタ…」
西方聖教会の聖神殿で、聖騎士団長ヒナタを迎えたのは、法皇役であるルイと呼ばれる者だった。
「何の用かしら?…ルイ」
ヒナタは髪の毛を耳にかけなおしルイを少しばかり冷たい目で見た。
法皇役であるルイと魔王役のロイは双子の吸血鬼の上、聖地では同じ法衣で身を纏うためどっちがどっちなのか分からないことがあるのだ。
「…実はな、昨夜、ロイが殺された」
「!…冗談?」
「冗談で、実の弟を殺す趣味は持ってないよ」
ルイの衝撃的な発言を聞き、ヒナタは目を見開いて驚いた。
一応、ヒナタは冗談かどうかを聞くも、ルイは首を横に振りながら否定した。
「深夜、聖神殿に侵入した何者かにより殺されたようだ…侵入者は
(侵入者…昨日私が遭遇したあの道化師のようね…あの時は誘導の可能性を考えて、追いかけたりしなかったけど……ロイは決して弱くない、偽りの称号であれ、魔王に足りる能力をロイは持っていた。 そうなると、あの道化師は
ルイの言葉を聞いたヒナタは、昨晩に出くわした道化師が犯人だと、決定づけてはその道化師に対して考察を行った。
「貴方はここに居ていいのかしら、衛兵が殺されたとなったら、騒ぎになっているでしょ?」
「ああ、後始末は法皇不在でも問題ない……直にルミナス様がお戻りになられる。 ロイの死、それによって生じる問題をお伝えしなければならない…」
二人は会話をしながら聖神殿の中へと入って行った。
ルイと話しながら、ヒナタは魔王役であるロイが消えることによって、生じる問題について思い浮かべていた。
────────────
しばらくすると、執事であるギュンダーと共にルミナスが
唯一神ルミナス、ルベリオンの秩序を象徴する絶対的存在。
そして、ルミナスはギュンダーが持ってきた、ワインとおつまみを食べ飲みしながら、
「あの邪竜め、どこまで妾の邪魔をしてくれたわ」
邪竜こと暴風竜ヴェルドラに対して、ルミナスは相当苛立っていた。
「ロイもロイじゃ!…妾の目が届く所であれば、生き返らせてやったものを」
ルミナスは持っていたワイングラスをテーブルに強く叩き突けては、残念そうな表情を浮かべた。
「ルミナス様、我が弟が期待に応えられなかった結果です。どうかお気に病まれませんよう」
ルミナスが自身を責めないために、ルイが声をかけた。
「…ふむ、今は喪失を嘆いている場合ではないな。邪竜に新な魔王、そしてその二人と仲が良い魔人、その対策を考えねばならぬ…奴らとの関係は今後のルベリオンの在り方を決めるだろう、忌憚のない意見を述べよ」
「はい」
「仰せのままに」
ルミナスは二人に意見を聞くことにし、そして最初に意見を述べたのはルイだった。
「ジュラの大森林に脅威が出現した…これに対して西側諸国は一丸となることでしょう、人類共通の敵として認識されれば都合がいいのですが」
ルイの意見を聞いたルミナスは、無言で少し考えたのち、ワイングラスを手に取って一口ワインを飲んだ。
「確かにな、ロイが亡くなった今、信仰心が薄れている可能性がある…ならば我らの良き共犯者として迎えるか────否、それは無理じゃな」
ルミナスはワイングラスをテーブルに置いては、今度はおつまみを一つ取り、口へと運び一口食べた。
「リムルとかいう新参の魔王はな、楽しく過ごせる国を作りたいそうでな、そのためには人間の力が、必要不可欠だから守ると、妾達の前で大見得を切りおったぞ」
「ヴェルドラの方はどうでしょう?必要であれば、私が逆鱗に触れて参りますが…」
ヒナタの発言に、ルミナスは目を見開いて驚いたのち、ヴェルドラについて、嫌そうな表情を浮かべながら、説明し始めた。
「ヒナタよ、そなたは確かに強くなった…じゃがな、自然エネルギーとも言えるヴェルドラには勝てぬ…あの邪竜には並みの剣や魔法は通じぬ、そして奴が暴れた衝撃波は下手な魔法以上の力で、地上を蹂躙するのじゃ…ソナタまで失いたくない、自重せよ」
「…はい」
自分が経験したヴェルドラの力についてルミナスは説明した後、ヒナタに気を付けるように忠告した。
「ヴェルドラは今、大人しくしているため、下手に刺激をしない方が賢明でしょう」
「うむ、各国の信者達には事実だけを告げよ、暴風竜ヴェルドラが復活したとな」
ソファに寝転がら、ルミナスはヴェルドラの対処を決定させた。
「…では、彼らの町はどうしますか? "魔物は人類共通の敵"、ルミナス教を信仰する者達にとって、あの町は混乱の招く可能性があります」
ヒナタの質問に、ルミナスは足をパタパタと動かしながら、少し考えたのち、答えを出した。
「幸いにも、まだ"神敵"と正式に出してはおらぬだろう?西側諸国にはうまく誤魔化しておくがよい、リムルとはまた話す機会が出来るであろうし……それに、無視が出来ぬのが、魔人エムルよ…奴が使う力は、最悪の場合あの邪竜に匹敵する可能性があるからの…」
クレイマンとリムル達が戦う際にエムルの実力を見たルミナスは、エムルのスーパー戦隊の力を危険視していた。
「それに、魔人エムルが保有しているスキルの中には、
ファルムス王国が
「
「
会話をしている三人の中、唯一
「そうか、ヒナタは知らなかったな…いいかヒナタ、
「名前でしか存在していなかったスキルだったが、今、こうして存在が証明されたという訳だ」
ルミナスとルイからの説明を受けたヒナタは、
(
自身の技が効かないだろうと推測しているヒナタを置いて、ルミナスはソファから立ち上がった。
「ヒナタよ、もしリムルと敵対することになったら、神ルミナスの正体を明かしても構わぬ…よいな?」
「……善処いたします」
ヒナタとリムルが対峙した際、自身の正体を明かしてもいいと言ったルミナスは、そのまま別部屋へと移動していった。
話を終えたヒナタは、聖神殿を後にした。
階段を降りていく中、ヒナタはふと、綺麗な空を鋭い目で見上げた。
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