SPIDER-MAN Quintessential Quintuplets 作:まゆはちブラック
中間試験当日の朝。T市9番地区にある一軒家。
ここは
ベッドから起き、身支度を整えた
「
「あ、おはよう……」
低い声の挨拶をしてくる父親に
「
「ッ、はい……」
父親に気圧されて固まっていると、母親に席へ座るよう促される。その声音は冷たく低いもので、母親も父親同様厳格な人物だった。
我に戻った
会話もなく、通夜のように黙々と食事をする
その他にも”風呂は10分以内”、”就寝は食後1時間以内”など厳しいルールが課せられている。
この閉鎖的な環境に
「そういえば、今日から中間試験があるそうじゃないか」
「ッ!」
「対策の方は万全なんだろうな?」
食事中、ふと父親から中間試験について尋ねられた
下手な言い方をすれば、怒られてしまう……この家で長年生活してきた彼にはそうなることが容易に想像できる。
「……もちろんだよ、父さん。事前にバッチリ取り組んだからいけると思うよ」
「
「ッ!?そ、そんな……!違うよ!ちゃんと高得点取れるよ!!父さんに言われた通りに
地雷を踏んでしまったと
それを聞いて納得したのか父親は荒げていた声を潜めると、マグカップに入っているコーヒーを一口飲み、口を開く。
「当たり前だ……。
「……」
父親の口から淡々と出る辛辣な言葉に
「
「……」
気持ちが沈んでいる
当然、伝統に倣うと
「行ってくるよ……」
朝食を食べ終わり、食器を片付けた
自分に振り向いてくれないと悲観した
場面変わって街中。朝の出勤や通学で人々が入り乱れる地上をリュックを背負ったスパイダーマンがウェブスイングで飛んでいた。
いつものようにビルとビルの合間をスイングしているのだが、どこか焦っていた。
「(くそっ!寝坊した!昨日、銀行強盗に通り魔、酔っ払いを家まで連れて行ったから……!)」
スパイダーマンが寝坊した理由……それは自分が学生生活とは別に行っている自警活動にあったからだ。
昨日は夕方頃に立て籠もりの銀行強盗の退治、夜頃には通り魔に襲われる女性を助け、その後には酔い潰れる中年男性を免許証に書かれている自宅まで送り届けた。
それに加えて五つ子たちの家庭教師だ。風太郎と
家から学校まで歩いて約30分。
しかし、今日起きた時刻は8時15分。普通の人間なら走っても間に合わなく、間違いなく遅刻確定だ。
だが、スパイダーマンだったら話は別だ。
空をウェブスイングするスパイダーマンにとっては地上の交通状況は関係なく、早く行くことができる。
つまり、スパイダーマンにとっては空は、渋滞のない専用通路同然なのだ。
「?」
ウェブスイングで飛び回っている最中、スパイダーマンはふと地上のあるものに目が留まる。それはコンビニの前にいる小さな男の子に集まる風太郎と五つ子たちの姿があった。
彼女たちも寝坊したのか急いでいるが、口の動きから男の子は迷子であり、どうすればいいかわからない様子だった。
ただでさえ時間がないのにこのまま留まっていると、風太郎たちは確実に遅刻する。
自分も余裕がないが、見捨てられない……。スパイダーマンは方向を変え、風太郎たちのもとへ着地する。
「やあ、お困りのようだね」
『ッ!?』
「え!本物!?」
スパイダーマンは爽やかな声で話しかけるが、いきなり現れたことで驚く風太郎たち。
空からいきなり現れて驚くのも仕方ないかとスパイダーマンはマスクの下で苦笑すると、彼女たちに尋ねる。
「何があったの?」
「うん。この子、迷子みたいだけど英語で喋ってるからわからなくて……」
「オーケー。僕に任せて」
「Hey, boy. What's the matter with that face?(やあ、坊や。そんな顔してどうしたの?)」
「SPIDER-MAN……. I wanna meet my mommy, but I got lost……(スパイダーマン……。お母さんに会いたいけど、迷子になっちゃって……)」
「Do you know where your mother is?(どこにお母さんがいるのかわかる?)」
「Emma Stone Clinic.(エマ・ストーン診療所)」
「OK. Leave it to your Friendly Neighborhood!(わかった。親愛なる隣人に任せて!)」
英会話で男の子の行きたい場所がわかったスパイダーマンは彼の頭を優しく撫でると、立ち上がって風太郎たちに振り向く。
「この子、診療所にいるお母さんに会いたいみたいなんだ」
「すっごーい。全部わかったんだ……」
「ありがとう」
目の前で繰り広げられた流暢な英会話に目を丸くする
スパイダーマンは軽く感謝を告げると、男の子を抱きかかえる。
「じゃあ、この子は僕が届けるから君たちは学校に行って。今日は大切なテストだろ?」
「あっ!そうでしたー!」
「早く行きませんと……!」
「うん。それじゃ、また会おう」
スパイダーマンはそう告げると、ウェブを高所に飛ばし、男の子と共に空高く飛んでいった。
風太郎は遠ざかっていくスパイダーマンの後ろ姿を見ながら首を傾げて呟く。
「……あいつ、何で今日がテストだって知ってるんだ?」
「そんなこと言ってる場合!?早く行くわよ!」
「お、おう……」
テスト情報はあまり公表されないはずなのに何故か知っている……。疑問に思う風太郎だったが、
「(あの声、どっかで……?)」
道中、
仕事先の人なのかと色々と考えるが、今は学校に着くのが先決なので、考えるのは後回しにした。
そして、朝のHRが終わり中間試験。生徒たちは筆記用具以外の荷物を全て廊下へ出し、教室で答案用紙が全員へ行き届くまで静かに待機していた。
ちなみに
「おいおい!
『ハハハーーーーッ!』
「~~ッ」
だが、HRで昂輝に下靴のままなのを指摘された
けれど、中間試験を受ける資格は守られた。恥はかいてもテストは受けられる……上履きに履き替えた
初日の試験は1限目『社会』、2限目『数学』、3限目『国語』の3教科。
ひしひしと緊張が漂う中、教師の『始め』の合図と共に生徒たちは裏にしていた答案用紙をひっくり返し、ペンを走らせた。
「(難しい問題ばかり……でも、フータローを守らないと……!)」
1限目『社会』。
これも、全ては風太郎と
「(証明?しょうめいって何だっけ?)」
2限目『数学』。平行四辺形の証明問題に取り組む
「(う~ん。もういいかな……………でも不安だし、見直しとこうかな?)」
3限目『国語』。ひと通り終わった
そして、2日目。1限目『理科』、2限目『英語』の2教科。
連日ではあるが、これを乗り越えれば林間学校が待っている……。生徒たちは張り切って取り組んだ。
「(遺伝情報の仕組み?わかんないからパスっと……………あ~!もう!)」
1限目『理科』。
「(あなたたちを絶対に辞めさせはしません)」
2限目『英語』。
自分たちを助けようとしてくれている
そして、一週間後。中間試験の解答用紙の返却が行われた。採点結果に喜ぶ者もいれば、落胆する者もいる緊張の時間だ。
様々な感情が渦巻く返却時間が終わり、放課後。風太郎たちは中間試験の結果報告をするため、図書室に集まっていた。
「……集まってもらって悪いな。さっそくだが、解答用紙を――「見せたくありません」………ッ」
訊きずらい状況だがここで引き下がっても仕方がない。風太郎が五つ子たちへ解答用紙を出してもらおうとしたとき、遮る声が1つ。
「テストの点数なんて他人に教えるものではありません……個人情報です。断固拒否します」
強い口調で答える
一見するとまた意地を張っているように見えるが、本心は届かなかった願いに悔しさを感じている。それによって、
その気持ちが痛いほど伝わった
「気持ちは……わかる。でも、見せてくれないと何も始まらない……」
「……」
そして、五つ子たちは各々の解答用紙を提示した。その結果は……
・
・
・
・
・
と、中々悲惨なもので、流石の風太郎も嘆息して肩を落としていた。その表情は、「2人体制であれだけ勉強を教えたはずなのにこんな穴ぼこだらけの点数を出すとは逆に天才」と言わんばかりだった。
「ま、まあ、成長はしてるんだし……。全員の点数合わせて100点に比べたら……」
「そうだな……スローペースだが確実に成長してる」
苦笑する
以前、風太郎が出したお手製の小テストでは事前に打ち合わせたかのように全員の点数の合計が100点ピッタリだった。ギャグかと思うが、全て真実だ。
それに比べたら全員赤点回避こそならなかったものの、実力が身についているのは歴然だった。
彼女たちの成長をしっかりと肌で感じた風太郎はフィードバックしていく。
「
「……ッ」
今後――。家庭教師を辞める覚悟を決めた言葉に
「
「……は、はい!」
「
「はーい」
「
「ふん」
「
「……」
風太郎は一人一人簡潔にフィードバックしていく。本来なら次回の反省点として意気込むところだろうが、風太郎たちが辞めるとわかっているため、皆、曇った表情をしていた。
その中で
これで彼女たちへの最後の手向けとしては完璧と
プルルル……
悲しみと悔しさが混じり誰も声を発そうとしない中、その静寂を突き破るように携帯電話のコール音が鳴る。
音の発生源は
「父です」
遂にお別れと覚悟を決めた風太郎は
「上杉です」
《……ああ、
「つきませんよ………ただ、次からこいつらにはもっと良い家庭教師をつけてやってください」
「……ッ」
はっきりとした物言いで頼む風太郎。
彼女たちの家庭教師ではなくなるが、せめて卒業だけはしてほしい……。風太郎は教えるうちに彼女たちとはある種の腐れ縁のようなものが芽生えてきたのだ。
金銭関係ない純粋な願いは、静かに聞いていた
《……ということは?》
「……試験の結果は――」
マルオの疑問に風太郎は「期待通りではなかった」と伝えようとした瞬間、
突然の行動に風太郎のみならず、
「パパ?
《僕にも娘を預ける親としての責任がある。上杉君と
「私たちのためってことね。ありがとうパパ……でも、相応しいかなんて、数字だけじゃわからないわ」
《それが一番の判断基準だ》
「あっそ……じゃあ教えてあげる………」
マルオがそう易々と考えを変える人物ではないことをわかっている
「
『!?』
堂々と事実と真逆の結果を伝えた。
当然、突拍子のない
《………本当かい?》
「嘘じゃないわ」
《
ピッ!
疑うマルオだったが、
長くなりそうなので面倒くさくなった
「
皆が唖然とする中、我に戻った風太郎は
疑問に思う風太郎に答えるように
「私は理科、
「な、なるほど……」
「そんなのアリかよ……」
全員5科目で赤点を出さなければセーフ……1人1教科ごと赤点を出してはいけないとは言っていない。
逆手にとった
そんな彼らに
「結果的にパパを騙すことになった。多分、次は通用しない………。次は実現させなさい」
「……やってやるよ」
「頑張ります……」
と、やや挑戦的な励ましに冷や汗をかきながら答える風太郎と
一番非協力的な
「あれ?私、いつの間にか合格してたんですか!?」
「いや、ちょっと違うけど……うん」
「うん~?フータロー君、ひょっとして喜んでる?私たちと離れ離れにならなかったから」
「違う!食いぶちを潰されなくて良かったと思ってんだ!」
「またまたー」
安堵する
「
「うん……」
妹からかけられた言葉に安心した
こうして、
それから数分後。
いつもならテスト後の勉強……と言いたいところだが、皆疲れており、勉強第一の風太郎も勉強する気は起きなかったので、風太郎の提案により、ご褒美のパフェを食べに行くことになった。
「でも珍しいな。彼があんなこと言うなんて……」
「ええ。ですが、上杉君がふっ、ふふ……パフェなんて……。あははっ!」
風太郎は提案したはいいものの、無愛想な彼から出た可愛いスイーツの不似合さがおかしく、
「よーし。お前ら五人で5科目だから一人前だけな!」
「うわーせこー……」
「しょうがないだろ。一人特盛がいるから……」
「そういえば、上杉さんは何点だったんですか?」
「うわっ!?やめろっ!見るな!」
「全部100点……」
「あーめっちゃ恥ずかしい!」
「その流れ気に入ってるんですか……?」
和気あいあいと会話を弾ませる風太郎と五つ子。その距離は以前よりもぐっと縮まった。
その微笑ましい光景に傍で見ていた
「あっ!
「ん?ああ、僕のは………」
思い出したかのように頭頂部のリボンをピンと立てた
自分だけ見せていないのは悪いと思い、リュックから解答用紙を取り出そうとしたとき――
ウウウ――――ッ!
パトカーのサイレン音が近くから鳴り響く。橋から見下ろすと、下の道路で一台のダンプカーを追跡する5台ものパトカーの姿が見えた。
「……ごめん!用事思い出しちゃって!パフェと点数はまた今度!」
「え、
ヒーローに休息はない……。
手頃な物陰に隠れると制服を脱いでスパイダーマンになり、ウェブスイングでダンプカーの後を追っていった。
「フォォォォォーーーーーッ!」
本当は皆と一緒にパフェを食べたかったが、犯罪が起きている以上見逃せない。それがヒーローである自分の”責任”だからだ。
スパイダーマンは己を奮い立たせるように雄叫びを上げながら今日も空を飛んでいく。
同時刻、緑川邸。100階立ての屋敷に住む涼介はとぼとぼとした足取りでリビングに繋がる扉を開けた。
リビングは如何にも西洋の富豪が住んでいそうな造りで、石造りの暖炉や高級そうな絵画、そして奇妙な仮面が壁の所々に飾られてあった。
これは涼介の父――
「ただいまー……」
「おかえり涼介」
涼介が声をかけると、リビングの奥から
涼介は奥にあるテーブルを見ると、ノートパソコンが置いてあるのが見えた。わざわざ作業の手を一旦止めて来てくれたのは一目瞭然だ。
「涼介。中間試験はどうだった?」
「ああ……これだよ。最悪だ」
優しく尋ねてくる
「国語81点、数学72点、理科68点、社会85点、英語80点………悪い点数じゃない。何がそんなに不満なんだ?」
「全然駄目だ。オズコープの社長の息子がこんな平凡な点数じゃ………父さんのメンツ丸つぶれだよ」
普通の家庭なら特に悪い点数ではないのだが、大企業の家庭の場合だったら別だ。社長の息子……ましてや世界的な大企業のオズコープだ。常に優秀な数字を求められる。
涼介はそれがプレッシャーとなっており、毎回返ってくる自分の無力さに落ち込んでいるのだ。
当然、父親である
優しい眼差しで向き合った
「涼介……。そんなに自分を卑下するな。お前はオズコープの御曹司である前に1人の人間だ。周りの評価など気にするな………」
「俺は落ちこぼれだよ……」
「落ちこぼれじゃない。人には向き、不向きというものがある。苦手なものは苦手なんだ………。お前が望むなら、このオズコープも継がなくてもいい。私はお前に自由に生きてほしい」
「ッ、父さん」
励まされて涙ぐんだ涼介は
そんな彼らから離れたテーブルのノートパソコンには、書き途中の1枚の報告書が映っていた。
その報告書に書かれているタイトルは『身体増強薬 《ゴブリン・フォーミュラ》』という薬品の名前だった。
そこに添付されている緑色の薬品の画像は太陽の反射で眩しく輝いていた……。
◆イースター・エッグ
①エマ・ストーン診療所
マーク・ウェブ版「アメイジング・スパイダーマンシリーズ」で主人公ピーター・パーカーの恋人のグウェン・ステイシー役を演じた女優『エマ・ストーン』から。2010年には「アメイジング・スパイダーマン」(2012)にて共演していたアンドリュー・ガーフィールド(ピーター役)と交際関係を築いていたが、お互いの仕事もあり、2015年には破局した。
だが、恋人でなくなってもアンドリューとエマは良い友人関係を継続している模様で、ちょくちょくSNSでやりとりしている。
スパイダーマンを増やす?
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YES!(ヒロインなし)
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YES!(オリジナルヒロイン)
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YES!(五つ子の中からヒロイン)
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NO
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It's Morbin time