SPIDER-MAN Quintessential Quintuplets 作:まゆはちブラック
※注意
本作では五つ子たちが熱で寝込んでいる風太郎の部屋へ侵入する展開はありません。
理由としては、病床の人間なら気分が落ちているのでそっとしてほしいのが常識であり、原作内で風太郎が言っておりますが、うるさくて寝られないからです。
そのままだと、五つ子たちが不自然に動かされているような気がするので、本作では”無し”となりました。
原作の展開が好きな方々、申し訳ございません。
リフトを降りてから数時間後。
外はすっかり夜の戸張が下り、宿舎の外にある広場ではキャンプファイヤーが行われていた。
広場中央でメラメラと燃える焚火は暗闇を赤く照らし、幻想的な雰囲気を醸し出している。
ちなみに風太郎は離室に運ばれ、面会謝絶となっていた。
「最後のダンスどうする~~?」
「俺、今から誘っちゃおうかな!」
周囲からそんな楽しげな声が聞こえる中、隅っこの方で
『……すみません。お気持ちは嬉しいのですが、皆にご迷惑をお掛けしました………。私に踊る資格はありません……』
「はぁ……」
それを思い返した
彼女の意思を尊重して承諾したものの、本心としては一緒に踊りたかった。強く引き留めるべきだったかもしれない。
だが、後悔しても遅い。
既に過ぎたことを考えても仕方がない。
今はただ、キャンプファイヤーが終わるのを待つばかりだった。
その頃、
安静していたおかげか、
「ありがとう、
「まだ寝ててください。完全に治ったと確証がありませんから」
「あははー……そーだね。緑川君には悪いけどね~」
キャンプファイヤーの話題を話してふと気になった
「
「……
そう語る
だが、大騒ぎさせた罪悪感があってGOサインを出せずにいた。
心に従いたいが、主犯の自分が楽しんでは、巻き込んだ皆に悪い。それが許せなかったのだ。
彼女の心情を汲み取り、寄り添うように話しかける。
「……
「……そうでしょうか?」
「そーだよ!
だからこそ、自分が望むことを精一杯楽しんでほしく、説得にかかったのだ。
真意を突いた説得は岩のように固まっていた
揺らぎ始めているが、まだ負い目が邪魔して動けないでいた。
けれど、それもあと一歩というところだ。
「マナブ君は悪い人じゃないし……それに一生に一度の思い出だからさ。行ってきなよ」
「……ッ」
そう言って微笑みかけながら、
「ありがとうございます……行ってきます」
「うん」
そして、振り返り様に告げると、扉を開け、広場の方へ向かっていった。
扉が閉まる音を耳にしながら、
その顔は表情豊かで明るいものだった。
まだぎこちなさはあるものの、先程までの自責の念で押し潰されていた暗いものよりも断然良かった。
そのことを思い返すと、自然に笑みが浮かぶ。
それと同時に別の感情が込み上がる。”後悔”という名の後ろめたい気持ちに。
「(何でこんな気持ちになるんだろ……?)」
――応援しているはずなのに。
自分が取った行動とは相反する気持ちに、
一方、広場ではキャンプファイヤーを囲ってダンスを踊っていた。
選んだ相手と手を取り合い、火の灯りで影が伸びる。周囲には喜びに満ちた男女の笑い声が飛び交っていた。
終盤に近付くにつれ、ヒートアップしていく様を
――もし、
「(誘えただけでも良かった……)」
とはいっても、現実は変わらない。
理想は叶わなかったが、勇気を出して誘っただけでも大成果だった。
曇った感情に包まれる
「
理想を諦めていたとき、ふと、聞き覚えのある声が後ろから。
まさか……と驚き半分、嬉しさ半分で振り向くと、気まずそうにこちらを見下ろしている
一瞬、目を丸くして硬直する
「……どうしたの?」
「先程は断ってすみません……。ですが、自分に問いかけてみたところ、踊ってみたいと思いまして……気分を害すのなら、いいんです。
「――そんなことないよ!こちらこそ、大歓迎だ」
やや食い気味に答えたことに
「僕と踊ってくれますか?」
「はい……」
理想が叶い、
飛び跳ねたいのなら、今すぐ飛び跳ねたい気持ちだった。
――声に出して良かった……!
「「あ……」」
これから視線の先にある集団に混ざって踊ることとなるのだが、その人間は全て自分たちが通う高校の同級生……つまり、見知った顔が多いということである。
その中で踊ることが意味することは、自分たちが踊る姿を見られるということである。
友人ではあるが、一緒に踊った姿を見られて変な噂や熱い目を向けられるかもしれない……。
そのことが一瞬で脳裏に巡り、恥ずかしくなる。
「……ちょ、ちょっと離れたところで踊ろうか」
「……はい」
苦笑する
2人はキャンプファイヤーから離れた場所に移動すると、手を取り合って踊り始める。
「ダンスの経験は?」
「全然。それっぽく踊ってるだけだよ」
2人はフォークダンスを踊っているのだが、お互いにダンスの経験がないので、その動きはぎこちなく、タイミングもずれにずれていた。
ダンス経験者が見れば、鼻で笑われるレベルであろう。
だが、2人にとって技術は問題ではなかった。
この場所で、この時間帯で、心に決めた相手と踊ることが重要なのだ。
「スピード大丈夫?速すぎない?」
「このくらいで平気ですよ」
「そうか」
安心したように微笑む
必要のない気遣いだったが、誰しも心配してくれていると思い、嬉しくなるものだ。
それと同時に、善人の塊である
「(ヤバい……)」
対する
艶々とした長い髪は広場から届く火の灯りで赤く反射し、白くきめ細かな肌も灯りによって陰影を作り出しており、
憧れの女の子と踊っている……その幻想的な光景も相まって、バクバクと鳴る胸の動悸が止まらないでいた。
まだ踊り始めて1分くらいしか時間が進んでいないが、
「フィナーレまで!10……9………」
そんなこんなしているうちに広場の方からカウントダウンをする声が。
まだ早いと思う2人だったが、そもそも踊り始めたのが終盤も終盤だったので、当然の流れだった。
「(……
カウントダウンを耳にして、
この林間学校に伝わる伝説。
キャンプファイヤーの結びの瞬間、手を結んだ2人は生涯を添い遂げる――――。
カップルにはたまらない話なのだが、眉唾物なので、
だが、なれるものならなりたいもの。
しかし、それは自分の場合である。
クラス中で話題にはなってはいたので聞いたことがあるだろうが、彼女は不思議と話題にしなかった。
そもそも、知らないのかもしれない。意外と鈍感なので、あり得る話だ。
では、逆に知っていたとしたら?
好きでもない男と踊るというのはどういう気分なのだろうか。
――義務?それとも……。色々考えるが、
何かしてはいけない気がした
「まだ終わってませんよ?」
「……ッ!」
力が緩んだのを察した
驚く
――結びの伝説については何も知らない、と。
「―――3!2!1!0ーーッ!!」
妙に納得していると、カウントダウンが終わってしまった。
キャンプファイヤーの周囲に囲った吹き出し花火から激しい火花が飛び散る。
吹き出し花火によって、より一層広場の灯りが強まっていく。
飛び散る花火と燃え盛る火……。夜空に赤い火の粉と白色の火花を舞い上がらせる芸術的な光景にすっかり魅了された
「綺麗ですね……」
「……ッ!あ、ああ……」
手を繋ぎながら呟く
広場から発する花火とキャンプファイヤーの光の反射を受けた瞳は何とも言えない煌びやかさを醸し出しており、一種の宝石のようだった。
――君の方が綺麗だよ、と言いたいところだが、自分が言うと鼻がつくので、ぐっと心の中にしまった。
――――結びの伝説。
この思い出は
同時刻。林間学校が行われている宿舎から遠く離れたオズコープの研究所では、オズコープ社長――緑川
大手企業で世界的なシェアもあるオズコープだが、ここのところ、海外の企業に市場を抜かれ、経営難に陥っていた。
この身体増強薬はそれを乗り越えるための起死回生の一手なのだが、未だ完成まで漕ぎ着けていなかった。
それでも期限の日までに完成させようと試行錯誤を繰り返すが、失敗に失敗を重ねるばかり。
耐えに耐えかねた
そのまま備え付けのパソコンに起動コマンドを打ち込んでいく。
「緑川博士、やめてくれ……完成前の薬だ。人体投与できる段階じゃない。頼むからやめてくれないか?まだ危険だよ……!」
「そんなに臆病でどうする?危険は科学実験に付き物だ……」
慌てる古流の制止を無視してキーボードに次々と入力していく
身体増強薬は人間の身体病を治すために開発を目指している。
実現すれば、まさに”万能薬”だが、投与実験は人体どころか、マウスの段階で失敗している。あまりにも危険すぎる。
「医療スタッフを揃えて、新たに実験をやり直そう……まだ3日ある!」
「……3日だ?3日後には、このプロジェクトも会社も消えてしまう。私自身が実験体になるしかない……」
古流が代案を進言するも、
ここで躊躇していれば先へ進めないのは古流もわかっているので、強くは言えなかった。
程よく引き締まった上半身を露わにした
ベッドといっても手術台の形をしており、その端々には金属製の固定具が付いている。手術というよりも、大罪を犯した罪人を裁く処刑台のようだった。
古流は不安を隠せずにいたが、ここまで来たらもう止めようがない。
渋々
「おおっ……!冷たいな……冷めきったカイロより酷いな」
金具から伝わる冷たさに
この言葉の意味は特になく、先の見えない不安から気を紛らわせるために自分自身に言い聞かせたものだった。
「(神様、どうか……!)」
ウィィン……という稼働音が鳴ると、簡易ベッドに拘束された
投与カプセルはヘキサゴン型をした植物園の温室のような外見となっており、外界との繋がりは被検体を入れるためのゲート、研究員用ゲート、ガス排気口の3つしかない。
文字通り、ガラス張りの密室となっていた。
カプセルの中心部へ着くと、ベッドが上へ動き、
”気を付け”の姿勢になった
古流は今すぐにでも中止したかったが、
投与装置に接続された緑色の液体は管を通って気化し、
緑色の気体となった
数秒経つ頃には
備え付けのパソコンに表示されている身体能力値は心拍数と共に瞬きよりも速く上昇していく。
「―――ぅぅうッ!!?うっ、おぉぉあッ!あぁあぁぁ………ッ!!?」
「……緑川?」
古流が不安そうに見守っていると、不安的中とばかりにカプセルから
その声に嫌な予感がした古流は目を凝らして投与カプセルを覗くと、充満する緑色のガスの合間に白目を剥いて痙攣する
「緑川ッ!緑川ッ!」
「あぁぁあああぁぁ―――――ッ」
一瞬で血の気が引いた古流は装置を停止させて、カプセルの中に溜まっているガスを排気させる。
ガスが抜けた途端、痙攣していた
ピーーーー!
ほっとする古流だったが、それも束の間。不吉な警告音が聞こえる。
振り向くと、パソコンに表示されている
「どうなっている……?緑川ッ!緑川ッ!しっかりしろ……!緑川ッ!」
顔面蒼白となった古流は尻に火が付いたが如く走り、研究員用ゲートを開けて投与カプセルの中で生死を彷徨っている
両腕の拘束具を外し、急いで心臓マッサージを始める。
――目標を前に死んではしゃれにならない……。脂汗で手が滑るが、必死に力を込めて、心臓部に衝撃を送り続ける。
だが、古流の奮闘虚しく、
息も全くしておらず、肌の血色も徐々に白くなっていく。
その現状に絶望する古流。投与実験を止められなかった自分への不甲斐なさで泣きそうだった。
――パッパッパッパッ……!
「ッ!?」
だが、そのとき。パソコンから急に心拍数が正常である音が聞こえてくる。
古流が驚いて振り向こうとした矢先、先程まで意識を失っていた
首の圧迫感に目を見開いてパクパクと苦し気に口を動かす古流を
その顔は今まで一緒に研究を重ねてきた古流が見たことがないくらい、おぞましい憤怒の形相だった。
「”一から見直す”……?うぅあぁーーーーッ!!」
「わぁぁーーーッ!?」
ガッシャーーーンッ!
憎々しげにそう呟いた
常人を遥かに超えた力で吹き飛ばされた古流は後ろにあった投与カプセルのガラスを粉々に突き破り、そのまま研究機材にぶつかった。
ぐしゃぐしゃに破壊された機材から火花が散り、古流は白目を剥いて、意識を手放した。
「はぁぁ………!!うぅぉあーーーーーッ!!!」
拘束具を強引に外し、手足が自由になった
両手を広げ、腰を落とし、不気味な程の笑みを浮かべた
その頃、8番地区にある研究委員会本部の立体駐車場から、一台の高級車が走り出していた。
後部座席には、ふくよかな男とへつらった笑みを浮かべる男の2人が座っていた。
どっしりと座る太った男は研究委員会の代表であり、隣にいるのはその部下だ。仕事が終わり、帰路につこうとしていた。
駐車場の階層を下っていく中、ふと気になった部下は恐る恐る尋ねる。
「委員長。オズコープへの資金援助は打ち切るつもりで?」
「うん……ああは言ったが、最初から期待しとらんよ。資金は
「流石、委員長!」
「ふっふっ……」
部下におだてられ、上機嫌に肉の厚い頬を綻ばせる。
委員長は焦る
人間の生まれ持った身体病を治せる薬などできるはずない……。
そんなことはいくらオズコープでも作れないと夢物語で片付けていた。
「何が身体能力薬だ……馬鹿馬鹿しい………」
委員長はそう呟いて、鼻で笑う。
夢を援助するはずの人間が夢を貶す有り様は、形容し難い悪意があり、その顔も醜悪に染まっていた。
そんな話をしながら、車が駐車場の外へと出たときだった。
後ろの空から煙を上げる物体がこちらへ向かってきていた。
「……?何だアレ……?」
気になった委員長は窓から顔を出して、後ろから追ってくる飛行物体を見上げる。
暗くてよく見えないが、煙を上げるものの正体はグライダーであり、その上には何者かが乗っていた。
委員長が怪訝に思うや否や、謎の人物はグライダー底部にあるミサイルを車を狙って発射した。
「お、おい君!スピード上げろ!」
「えっ!?あ―――」
ドッガァァァーーーンッ!!
委員長は必死な形相で運転手に急かすが、もう遅い。
安全運転で走っていた自動車では急にスピードを上げても、発射されたミサイルを避けることなどできない。
緑色の輝きと共に、自動車にいた3人は悲鳴をあげる間もなく、木っ端微塵に爆発四散した。
自動車だったものは跡形もなく粉々に吹き飛んでおり、着弾地点からはごうごうと燃え盛る火炎と爆煙だけが舞っていた。
「アッハッハッハ………!」
この惨たらしい光景を上空から楽しそうに見物する謎の人物。
その態度は憎い奴を殺して清々したと言わんばかりで、その笑い声は人を堕落へと貶める悪魔のようであった。
「アーーーーーッハッハッハッ!!」
謎の人物はグライダーを方向転換すると、真反対へ飛んでいく。
悪魔が発する笑いは静寂に包まれる夜空へ響き渡った……。
翌日の昼。
林間学校も最終日となり、旭高校の生徒たちはバスに乗って、旭高校目指して走らせていた。
「(林間学校、楽しかったな~)」
バスに揺られながら、林間学校で起きた数々の思い出を振り返る
――風太郎をウェブスイングで連れてきたこと。
――肝試しが面白かったこと。
――
――
――
――そして、何よりも、憧れの
様々な出来事がこの3日間に詰まっていた。
苦しいこともあれば、逆に楽しいこともあった。学校行事なのであまり良い印象を持っていなかった
昨夜に
「(修学旅行も楽しみにしとこう)」
いい思い出だったと
学校行事での外泊で良い印象を抱いた
だが、このとき彼は知らなかった。
自身とその周囲の人間に忍び寄る『悪魔』が目覚めたことに………。
◆イースター・エッグ◆
①
シンビオートを登場させる?
-
さあ、ノッていこうぜ…(YES)
-
じゃあな、マヌケ(NO)
-
何だよ、ゴブリンJr.…泣くのか?