SPIDER-MAN Quintessential Quintuplets 作:まゆはちブラック
「大変だったな……」
《ああ、散々だったよ。事情聴取やら何やらで………何が何だかわかんない》
「でも、無事で良かったよ。怪我も無かったみたいだし」
《全くだ。警察に止められるくらいだったら、さっさと帰ればよかった》
電話越しの涼介のくたびれた声にほっと安堵する
遊園地でのパレード襲撃事件の夜。襲撃犯のグリーン・ゴブリンを追い払い、
帰ったきた際、叔母の
そして、今は親友の涼介の安否を確認するために電話をかけている。
グリーン・ゴブリンのことは気がかりだが、まずは知り合いの安否が優先だ。
ちなみに中野家の五つ子にも事前に安全であることは確認済みだ。
涼介がいることは彼本人から聞いていたが、戦いの最中に見かけなかった。
もしや、大怪我を負ったのではないかと不安だったが、普段の軽口を言える調子だったので杞憂だったようだ。
《……アイツは何だ?》
”アイツ”……それが差す相手が”グリーン・ゴブリン”であることは
突如、空から現れるなり破壊工作を仕掛けてきた。その行動の意図は読めず、目的を達成するために行ったというより、破壊を楽しんでいるように見えた。
しかも、これを白昼堂々で行っている。とても正気の沙汰ではない。
涼介の問いに
「わからない……何にしても、誰かが止めないと………」
と、ハッキリとした口調で答える。
今はグリーン・ゴブリンの正体が”誰”で、”どこに”いて、”何のために行動している”かはわからない。
実際に戦ってわかったことだが、強さも今までのスーパーヴィランとは比較にならない存在になるということは容易に予想できる。
常に背中にくっついている背後霊のような不気味な存在だ。
だが、騒ぎを起こし、人を大勢殺した相手を見過ごすわけにはいかない。警察の手を超えた相手なら尚更だ。
一方、緑川邸では涼介の父――
パチパチと音を立てて燃える暖炉は冷えた
透明のグラスに注いだウイスキーはオレンジ色に照らされる暖炉の灯りを受け、メラメラと不規則に輝いている。
何とも言えない温かい光景に身も心も安らぐところだが、
「(何故だ?一歩も家を出ていないのに、こんなにもくたびれているのは………)」
たった1つの疑問に眉間にしわを寄せる
なので、一日中、家でいる予定で、昼近くまで映画を観ていた記憶がある。
だが、昼間の記憶が全くない。
電源を抜かれたテレビの如く急に意識が途切れ、気付いたときにはもう夜になっていた。
寝ていたのかと思ったが、身体の妙なだるさにその考えは消える。
寝疲れにしては疲れすぎであり、汗も着ていたシャツに肌が張り付くくらい、びっしょりとかいていた。
何をしていたか思い出そうにも思い出せない……。
またもや起きた記憶障害に
「ハッハッハッハ………」
「――ッ!?誰だ!?」
そんな中、自分を嘲笑うかの如く、低くしわがれた男の笑い声が聞こえてきた。
その声を聞いた途端、
聞き覚えのない声から息子や使用人ではないのはすぐ理解でき、そこから導かれる結果は”不審者”というシンプルなものだ。
見知らぬ誰かがいる―――迫る危機感に
「誰かいるのか……?」
「”誰か”だと……?」
「何者だ?」
「今さらとぼけるんじゃない……初めっからわかっているはずだ………」
謎の声と会話しながら、
しかし、周囲には人影らしきものは見えない。特段変わったものもなく、あるのは壁や棚に飾られている世界中から集めた民族の仮面コレクションくらいである。
声の正体が摑めない
「……どこにいる?」
「背中を走る悪寒をずぅぅーっと辿ってみろ……」
壁にある仮面コレクションを目で辿っていきながらゆっくりと視線を感じる背後を振り返ると、
「何が言いたい……?」
振り向いた先――そこにあるのは縦長に設置された巨大な姿見だった。
曇り1つもない鏡面はリビングの風景を映しており、眉間にしわを寄せる
ますます意味がわからないでいたが、次の瞬間、鏡に映る
「ッ!?」
当の
鏡に映る自分が別人のように動き出し、こちらに笑みを返したのである。
それを見た
「単なる偶然だと思うか……?こんなに次々とお前に都合のいいことばかり起きて、おかしいと感じないのか?
「望みは何だ……?」
「お前が言えないことを言い、お前ができないことをして……お前にとっての邪魔者を始末する………」
目を見開き、頬まで口角を上げる不気味な笑みを浮かべる鏡の
鏡の自分と同じ動きを独りでにしていた
その記事には、オズコープの役員が殺害された内容が載っており、自分がよく知る株主と信頼していた役員の写真も添付されていた。
「『オズコープの役員殺害される』……お前だな……!」
「――”俺たち”だよ!」
「俺たち?」
鏡の自分に対して敵意を向ける
すると、鏡の
「忘れたか……?実験室で起きた事故のことを………」
「……ッ!身体増強薬」
「その通り!俺はお前が造り出した………つまり、お前の『欲望の産物』というわけだ」
鏡の
身体増強薬には精神異常を起こしてしまうという欠陥点があった。試しにマウスで投与した際は錯乱状態となって、共食いをする始末だった。
度々記憶がなかったのは、投与実験の事故によって生まれた、もう1つの人格――ゴブリンによる仕業だったのだ。
「古流博士もお前が……!すぐに警察に――」
「おいおい、落ち着け。警察が取り合ってくれるか?全て俺のせいにしたとしても、結局はお前のせいになるんだ。容疑がかからないよう、関係のないゴミ共も殺してやったのに……」
「ッ!」
自首しようとする
仮にもう1つの人格のせいにして自首したとしても、結局は自分が『人殺し』を行ったという罪は消えない。
むしろ、逮捕されれば社会的地位がある
何より、息子の涼介が不憫だ。SNSが発展している今、住所を特定するのは容易い。
嫌がらせや脅迫が自分だけでなく、涼介にも影響が及ぶ可能性は充分に考えられる。
その悪影響を考えれば、自首する道は自然と途絶える。
「俺とお前は運命共同体なんだよ、
追い打ちをかけるように冷たい言葉をかけるゴブリン。
二重人格のせいと言っても、警察がそう簡単に取り合ってくれるとは限らない。
古流や役員、委員会のトップ、さらには無関係の人々をこの手にかけた罪悪感に
そんな
「創造を遥かに超えた力を手にした今こそ、全てが始まる!俺たちにとって、敵は”ただ1人”……!そいつを味方にできたら、どうなると思う……?」
「……ッ」
と、囁くようにゆっくり歩み寄りながら気味の悪い笑みを浮かべた顔を近づける。
真っ白な不揃いな前歯を見せ、口が裂けたように口角を上げる悪魔の如き笑み。
自分のものとは到底思えない凶悪な笑みに、恐怖で震え上がった
「フッフッフッフッフッフッ………!」
天敵を前にした子羊の如く怯える
ゴブリンが持つ新聞記事の見出しは、遊園地で自身と戦っているスパイダーマンの姿が映っていた……。
それから時間が経ち、翌日の夕刻。
9番地区の交差点の間に堂々と立ち構える新聞社――デイリー・ビューグル。
学校が終わった
「『スパイダーマンとグリーン・ゴブリン!仲間割れでパレードを滅茶苦茶に!』……どうだ、傑作だろ?」
ふんぞり返った姿勢で椅子にもたれ掛かりながら、夕刊の一面を読み上げた
当然、納得がいかない
「編集長――」
「俺が付けたんだ!ニックネームが必要だからな」
「ですが、編集長――」
「
「スパイダーマンは――」
「細田君!コーヒーはまだか!砂糖抜き、ミルク抜きのブラックだ!比呂め、こんな忙しいときに有給取りよって……!」
だが、当の
「聞いてください、編集長。スパイダーマンが人を襲ったと書くなど嘘だし、中傷です」
「違うな。中傷は”口”で言うこと。刷印するのは”誹謗文書”だ」
しかも、馬鹿にするように揚げ足を取り、わざわざ協調するように言う始末だ。
これには
「誰も信用しないんですか?」
「………散髪屋だけかな?」
だが、流石に耐えきれないものはある。嘘の情報を流しても反省するどころか、悪気の1つも感じられない……。
このまま見過ごすわけにはいかないと決意した
「
「ッ!?」
と、捲し上げる声が編集長室に響く。
あまりもの声量に不意を突かれた
何だろうと思いながら振り向いた
唐突の警察官の登場に
「(ッ、この人はッ!)」
その警察官の顔を見て、
40代後半の少しくたびれたような顔たちの男性……。そう、パレードの際に
――見知った顔の警察官が何故ここに?
その状況を目の当たりにした
「(何も起きないでくれ……!何も話しかけないでくれ……!)」
相手がただの一般人であれば無視や何とか誤魔化せるだろうが、警察官となれば話が違う。不遜な態度を取れば、ますますややこしくなる。
困ったときの神頼み……
直視なんかはできない……。心臓はバクバクと鼓動を打ち、ギュッと膝の上で握った掌は緊張でべとべとに汗ばんでいることがわかった。
窓から吹くそよ風のように立ち去るのを待った。
だが、
譲治はチラリと自身の視界に
視線に捕らえられた
「驚かせてすまないね」
「は……?」
謝罪だった。
予想外の言葉に一瞬拍子抜けする
「あ、いえ………」
――自分がスパイダーマンの正体であることはバレていない。平凡な10代の少年にしか見えないのだろう。
緊張が和らいだ
視線を
パァンッ!
視界すら入れない不遜な態度の
誰もが驚くだろう騒音に流石の
「……うちの新聞を粗末に扱うとはいい度胸だ。ゴキブリ叩きなら
「
「ふんッ!何事かと思えば、俺の書いた記事にケチをつけにきたか……デイリー・ビューグルは”真実”しか伝えん。記事に書いてあるなら、それが真実だ」
譲治の言い分を跳ね除け、キッパリと言い放つ
どの口が言うか、と
「だが、私は彼に助けられた……警察官であるこの私を。それに転落から女の子を救った。ゴブリンを追おうと思えばできたはずなのにだ。そんな人間が悪党であるはずがない……!」
「大した熱弁だな……調べたところによるとぉ、その娘は1番地区の総合病院で勤務する院長の娘だそうだ。まぁ、助けてもらったお礼で金でもせしめようという魂胆だろうな」
「そんなわけないじゃないか」
「いいや、多いにあり得る……大体、このコスチューム野郎は自分が『善人』だとアピールしたいんだろ!パレードの騒ぎを起こしたのは、そのアピールするための悪質広告だ!医者の娘を助けたのは金のため、お前を助けたのだって警察に指名手配を取り消してもらうための”保険代わり”だ!結局、”自分のため”なんだ!スパイダーマンが悪質な愉快犯に変わりないッ!!!」
それは正論を突きつけられて返す言葉がないというよりも、あまりにも被害妄想染みた暴論に呆れたからだった。
どれもハズレばかりで飛躍し過ぎた
スパイダーマン関連の記事に目を通せば、気が遠くなるほどの訂正箇所があるだろう。
だが、そんなねじ曲がった彼の意見でも当たってるのは1つある。
それは、自分のため……ということ。
力は正しきことに使うべきだ―――
逆に見返りを求め、好き勝手に力を行使すれば、不幸なことが必ず降りかかる。それは叔父の死で充分反省し、学んだ。
だから、愛するものを救えなかったことへの償いも込めて、スパイダーマンとして活動しているのだ。
やれやれと言わんばかりのしぐさを取ったのち、譲治は眉を潜め、切なそうな声で話しかける。
「一片の情報だけが真実じゃないだろう……なぁ、同じ高校で切磋琢磨した私とお前の仲だろ?書き直してくれよ」
「もう何年も前の話だ………警察が発言の自由を奪う権利が許されるのか?何だ、お前ら揃ってアイツの弁護士か?俺を訴えて、金を毟る取る気か?全く、この国の連中は信用ならんッ!」
譲治の泣きおどしも
話は平行線上を辿るばかりで進展の”し”の字も見せなかった。出ると言えば、不平不満だけだ。
譲治自身も頑固者の
――駄目だ、これは……。
何とも言えない感情を抱いた
出ていけと言わんばかりの
ドォガァァーーーーンッ!!
「のぉあぁぁーーーーッ!!?」
「ッ!?」
背後から強烈な崩壊音と共に動揺味が混じった
パレードを襲った凶悪人物の襲撃にデイリー・ビューグル内の社員はパニック状態となり、悲鳴を上げて一斉に逃げ出す。
ただ1人、
「このクズめェ……ヘッヘッヘッ……!」
「うぅああぁぁ………!?」
阿鼻叫喚溢れる光景をよそにグリーン・ゴブリンは床に横たわり、情けない声を上げる
床から宙に浮かんだ
「警察だ!今すぐ、手を離しな――うぐッ!!?」
当然、警察という職業柄、見過ごすわけにはいかない譲治は取り押さえようとするが、グリーン・ゴブリンが振るうもう片方の腕が頬に直撃。簡単に床へ沈んでしまう。
訓練を積んだ警察官が
「ハウス……!」
床に倒れ伏せている譲治にそう吐き捨てたグリーン・ゴブリンは「さぁて……」と呟くと、おぞましい黄色の双眸を
「これから質問する……」
「な、何だ……?」
「スパイダーマンの写真を撮っているカメラマンはどこのどいつだ……?答えろ……」
グリーン・ゴブリンの問いかけに
――スパイダーマンの写真を撮っているのはアイツだ……アイツを差し出せば助かるかもしれない。そんな邪推な考えが脳裏に浮かんだ。
とにかく、不利な状況から一刻も早く抜け出したいのは人間の本質だ。スパイダーマンの居場所を訊くだけなので、
仮に命に支障がきたすことが起きても所詮は『赤の他人』……自己責任だ。
そんな考えが脳裏で張り巡らされた
「と、匿名で送られてくるからわからない……!」
意外にもシラを切ることだった。
本当のことを話せば自分は助かるかもしれないが、
居場所を訊くだけだとしても、相手は人を何人も殺した悪党……
それに
文書で”人を叩く”ことはあっても、”人を売る”ことは
「嘘をつくな……」
「本当だ!たくさんの人間から送られてくるからどれがどれだかわからないんだッ!」
問い詰めるグリーン・ゴブリンに対し、
至近距離から感じる威圧に
だが、ここで屈してしまえば、より大勢の命が失われてしまう……。込み上げる恐怖心を押し殺し、知らない体を貫き通す。
「………それなら用はない」
期待通りの答えが返ってこなかったグリーン・ゴブリンは首を掴んだまま、拳を振り上げる。
痛いだけではすまさない負傷を予見し、
「手を離せ、悪党」
と、グリーン・ゴブリンの背後から制止する声が。
グリーン・ゴブリンはグライダーを方向転換させて振り向くと、蜘蛛糸を垂らして逆さまのスパイダーマンの姿があった。
逃げている社員に紛れ、隠れられそうな場所ですぐさま着替えたのだ。
問い詰められていたとはいえ、グリーン・ゴブリンの注意を引いてくれた
「噂をすれば、か……」
「うわぁぁッ!?」
お目当ての人物を目にしたグリーン・ゴブリンは上機嫌になり、ひっ捕まえていた
向かい合う両者……。互いに仮面で顔を隠し、超人的な力を行使する『異端者』としての繋がりがあれど、違う道を歩む者たち。
睨み合う両者によって、場は一気に深刻な空気へと変わる。
「ほぉ…………ッ!」
情けない声をまたもあげながらも解放された
「スパイダーマン!やっぱりお前らグルなんだ!壁の弁償代はたっぷりと――むぐッ!?」
「ママとパパのお話を邪魔しちゃ駄目だ」
先程の恐怖心はどこへやら。すぐさま、いつもの如く非難を浴びせるが、スパイダーマンの手首から放たれたウェブに口を塞がれる。
いつもなら「はいはい」と聞き流すスパイダーマンだが、ヴィランが目の前にいる状況だ。気が散るのと、日頃のちょっとした仕返しを込めて口を塞いだ。
だが、この間に生まれた僅かな隙。それをグリーン・ゴブリンは見逃さなかった。
グリーン・ゴブリンは両腕を前へ突き出すと、手の甲の孔からガスを噴射する。
「いい夢を見ろよ、蜘蛛坊や………スリ~~プ……」
「ッ!?(催眠ガス!?し、しまっ………た………!)」
顔面に浴びせられたガスから急激な眠気に襲われたスパイダーマンは逃れようとするが、もう時すでに遅し。
油断して眠るには充分の量を吸いこんでしまい、次第に意識が途切れていく………。
「――――起きろ、スパイダーマン。目を覚ませ……まだお前は死んではいない。一時的に身体が麻痺して動けないだけだ………」
「……」
あれから何時間が経ったであろうか。
グリーン・ゴブリンの囁きを耳にしたスパイダーマンは深い睡魔のまどろみの中から重たげに瞼を開く。
先程の催眠ガスに神経ガスも含まれていたのか身体中麻痺しており、指一本すら動かせない。
外はすっかり日が暮れており、夜の闇にポツポツと灯りが灯っているのが確認できる。
そして、自分はどこかのビルの屋上の柵にもたれ掛かって座っており、近くにはこちらを見下ろすグリーン・ゴブリンの黄色の双眸が目に入った。
スパイダーマンが起きたことを確認したグリーン・ゴブリンは黄色のレンズを上げる。
外に晒されたグリーン・ゴブリンの目は仮面同様、氷のように冷徹で、飢えた野獣を思わせる獰猛さを秘めていた。
初めて見た素の目にスパイダーマンがそんな感想を抱いていると、グリーン・ゴブリンは見下ろしたまま話しかける。
「お前には驚くべき力がある。お前と俺は同じ仲間だ」
「……一緒にするな………お前は人を殺した………」
グリーン・ゴブリンの言い分をスパイダーマンは朦朧とした意識の中でもキッパリと跳ね除ける。
自警活動に励む自分と、慈悲もなく、簡単に命を奪う殺人鬼が同類なわけがないからだ。誰がどう見ても、違うのは歴然だ。
意見を跳ね除けられたグリーン・ゴブリンは一瞬目を細めつつも、「まあ、人それぞれだ」とそんなことはどうでもいいと軽く返し、演説のように話を続ける。
「俺は俺の道を選び、お前は『ヒーロー』の道を選んだ。この町の人間はお前の活躍を楽しんでいるようだが、その連中が一番見たがっているのは何だと思う……?”ヒーローが力尽きて、倒れ、死ぬ姿”だ……!いくら必死に戦っても結局は、”憎まれる”……スキャンダルに遭った著名人のようにな!ファンだと信じた奴らが一斉に叩き出す、自身の欲にまみれた汚らしい連中………なのに、何故助ける?」
「それが正しいからだ……!」
グリーン・ゴブリンの問いかけに迷うことなく、ハッキリと言い放つスパイダーマン。
今は亡き叔父が教えてくれた”正しいことのために力を使え”という精神のもと、戦っており、それが世のためだからと信じているからだ。
そんなスパイダーマンの反論をグリーン・ゴブリンは鼻で笑ったのち、チッチッチッと人差し指を左右に振る。
甘いなと言わんばかりの態度を取ったグリーン・ゴブリンは柵に寄っかかる。
「”正しい”?はっ、お利巧さんだな。だが、よく考えてみろ?この優れた力があれば何でも叶う……!金や名声も思いのまま!気に食わないやつは潰して、欲しい女も思いのままだ……!お前にもそんな相手が1人や2人いるだろう……?」
「……」
グリーン・ゴブリンの言葉にスパイダーマンは一瞬、
転校してきたときから恋焦がれる存在……シャイな
だが、それは間違っていることはスパイダーマン自身わかっている。
自分本位で手に入れたとしても、それは自分や周りのためにはならないからだ。
スパイダーマンの様子から首を縦に振らないとわかったグリーン・ゴブリンは「馬鹿なやつだ」と毒吐いてスパイダーマンの頭を軽く叩くと、友人と駄弁るような姿勢で話す。
「真実を教えてやろう。この町の人口は75万人……!このおびただしい群衆の存在理由はただ1つ……”一握りの特別な者たち”を支えることだ!俺たちのような、特別な者をな……」
そう言うと、グリーン・ゴブリンはスパイダーマンの目線に合わせて腰を下ろすと、顎を親指、人差し指、中指の三指で孟獲類のようにグイッと掴むと、無理やり視線を合わせる。
「お前をここで虫けらのように捻り潰すのはわけないことだが、選択の余地を与えてやる……『仲間』になれ。俺たち2人が手を組んだら、何を創り出せるか想像しろ……!」
囁き声で威圧しつつも勧誘の声をかけるグリーン・ゴブリン。
手を組めば望むものは手に入るかもしれないが、自分の力の意味を正義のために使うと決めたスパイダーマンはその誘いには乗る気はない。
この場でハッキリ「ノー」と言いたいが、意識が朦朧としているので、上手く声が出なかった。
スパイダーマンのうっとおしいほどの謙虚さに苛立ったグリーン・ゴブリンは乱雑に手を離すと、2、3歩離れて、身振り手振りで自論を述べる。
「それとも破壊が望みかッ!?罪のない人々を巻き添えにしながら、繰り返し繰り返し、どちらかが死ぬまで戦いたいのかッ!?それがお前の望みか……?よぉく考えろ!ヒーローッ!!」
忠告を含めた勧誘を告げたグリーン・ゴブリンは呼び出したグライダーに跨ると、エンジンを吹かし、闇夜に包まれた空へと飛んでいった。
1人残されたスパイダーマンは身体中の痺れが取れるまで屋上でぐったりと座り続けた。
翌朝。デイリー・ビューグルの朝刊に書かれた見出しはこう書いてあった。
『スパイダーマン、新聞社を襲う!偽善の蜘蛛男に正義の鉄槌を!』
記事には、先日のデイリー・ビューグルを襲った件は全てスパイダーマンの犯行であり、グリーン・ゴブリンは共犯であると
もちろん、全て
それに加え、待ってましたと言わんばかりに警察も懸賞金を上げ、町中にスパイダーマンの手配書を貼っていった。
街角のスパイダーマンの手配書を見て、
助けたのに、当の
『いくら必死に戦っても結局は、”憎まれる”……』
「……」
昨夜のグリーン・ゴブリンの言葉が脳裏に浮かぶ。
叔父の教えを正しいと信じて戦ってきたが、本当にそれが正しいのか、と
このような誹謗中傷はいくらでもされてきたが、流石に今回の件は
――ヒーローは常に孤独。
社会から逸脱した者は常に忌避される。
それを痛感した
◆イースター・エッグ◆
①グリーン・ゴブリンの二面性
サム・ライミ版「スパイダーマン」(2002)でのノーマン・オズボーンの設定を使っている。
原作のノーマン・オズボーンは冷酷な人物だが、サム・ライミ版ではビジネスマンとして厳しい一面を持ちつつも、比較的善人として描かれている。それが、かえってゴブリンの人格との対象さを引き立てており、今でも人気ヴィランとして語り継がれている。
なお、本来の人格のノーマンは歯並びは良く、ゴブリンの人格は歯並びが悪くなっている。これは監督のサム・ライミの演出であり、「ノーマンのような大企業の社長が歯を矯正していないはずがない」という理由から。
演者のウィレム・デフォーは歯を矯正しておらず、撮影の際は本来の人格を演じる際は矯正した偽の歯を着けてもらい、ゴブリンの人格の際は外して撮影した。
シンビオートを登場させる?
-
さあ、ノッていこうぜ…(YES)
-
じゃあな、マヌケ(NO)
-
何だよ、ゴブリンJr.…泣くのか?