SPIDER-MAN Quintessential Quintuplets   作:まゆはちブラック

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※注意
 時系列は原作漫画4話から5話の間に当たりますが、原作とは日数が異なっているのでご了承ください。




#2 親愛なる隣人、家庭教師へ

(つとむ)が亡くなり、葬儀を終えた3日後の朝5時。

生活の始まりを告げる穏やかな時間に不穏な事件が発生していた。

 

 

「おら!さっさと金を入れろ!」

 

 

コンビニで2人組の男がレジの金を狙って強盗をしていた。

手元でナイフをちらつかせており、抵抗すれば殺されてしまう。

従うしかなかった店員の男性はレジから金を引き出すと、カウンターに投げ渡されたカバンに詰めていく。

 

 

「こ、これで全部です……」

 

「へへっ……よし!ずらかるぞ!」

 

「おう!」

 

 

カバンを受け取った強盗は金がちゃんと入ってるか確認すると、仲間を連れて退散する。

──店長に何て説明すれば……。店員が悩んでいた矢先、空からやってきた赤と青の人影が出入口から出た強盗に迫る。

 

 

ピシュッ!

 

「おぉわッ!?」

 

バキッ!

 

「のわぁぁぁぁーーー!?」

 

「!?」

 

 

その人影は強盗の1人をウェブで近くの電柱に吊り上げ、もう1人の強盗には鉄拳を加えて壁に叩きつける。

突然の出来事に店員は驚いていると、出入口から強盗が盗んだ金が入ったカバンがカウンターに放り投げられる。

店員は赤と青の人影にお礼を告げようと外に出るが、すでに姿をくらましていた。

 

謎の人物がコンビニ強盗を倒した。このニュースは瞬く間に広がり、大きな話題となった。

彼の行動はこれだけにとどまらなかった。

 

ある日。街中で貴婦人漂うショルダーバッグを肩に背負っておばあさんが歩いていた。

すると──

 

 

「いただき!」

 

「あっ!?ひったくりよーーーーー!!」

 

 

後ろから突然バイクが迫りくると、操縦する男はおばあさんのショルダーバッグをひったくった。

おばあさんは周りに助けを求めて大声で叫ぶが、巻き込まれたくない皆は知らないふりを通そうとする。

誰も助けてくれない現実におばあさんは悲観する。

 

 

「へへっ、ちょろいも──おわッ!?」

 

 

ひったくり犯はヘルメットの下でほくそ笑むが、次の瞬間、前方に張り巡らされた巨大な蜘蛛の巣にバイクごと衝突する。

ひったくり犯は逃げようともがくが、蜘蛛の巣の粘着力の前にはビクともしない。バイクもくっついたままタイヤをクルクルと回しているばかりだ。

 

その間におばあさんの手元にショルダーバッグが空から戻ってくる。

誰がやったのか疑問に思っていると、ショルダーバッグの小物入れ用ポケットに名刺サイズの紙が入っていることに気付く。

 

 

「『あなたの親愛なる隣人 スパイダーマン』?」

 

 

おばあさんは紙に書かれている文字を読む。

スパイダーマンと名乗るマスクを被った謎の人物の活躍は暴漢に襲われている女性、かつあげされている男子中学生、ダンプカーに引かれそうになる老人の救助……多岐に渡っていった。

この自警活動はニュース、新聞、SNSといった情報媒体で大きく取り上げられた。

 

 

「見かけは蜘蛛だけど………あんな親切な人はいないわ」

 

「スパイダーマンは俺たち一般市民を守ってくれてんだ」

 

「怪しい人。事件なら警察に任せればいいのに……」

 

「法律違反のイカレた奴だ。俺は認めねぇ!」

 

 

テレビ番組では目撃者の街頭インタビューが連日のように流れていた。

彼を賞賛するものもいれば、逆に否定するものもいる。特に警察は彼を認める姿勢ではなかった。

世間の反応はまさに賛否両論だった。

 

 

ピシュッ!

 

 

そんな人々がいる街中をウェブスイングしながら飛び回る赤と青の人影。人影はオズコープタワーの屋上に設置されている鉄塔の側面に飛びつく。

東から差し込む朝日が全身を照らす。そこにいるのは、鋭い目つきの赤いマスクに、蜘蛛の巣が全身に張り巡らされ、胸元と背中には蜘蛛のシンボルマークがついている赤と青のヒーローだった。

その正体は(まなぶ)だ。あの夜の出来事から彼が決断したことは人々の希望────”ヒーロー”となることだった。

 

いつまでもくじけても叔父はもう帰ってこない。大いなる力を授かったからにはそれ相応の責任を負わなければならない。

深く理解した(まなぶ)は人助けのためのヒーローとして戦う道を選んだ。

それが叔父への贖罪と望みだと信じて……。

天海(あまかい) (まなぶ)は『スパイダーマン』となったのだ。

 

 

ピシュッ!

 

「フォォォォォーーーーーーーーッ!!!」

 

 

スパイダーマンはウェブを近くのビルに引っつけると、高揚感溢れる雄叫びを上げながら今日も空を飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スパイダーマンは誰だ……?フンッ!犯罪者に決まってるだろう!自警団気取りのゴロツキ野郎だ!そいつが何で一面だッ!!」

 

 

スパイダーマンが自警活動を始めて一週間が経った頃。社員が慌ただしく働く新聞社『デイリー・ビューグル』の編集長──紫紋(しもん) 慈英(じえい)は社内の編集室で自社の新聞をデスクへ乱雑に置いて、ふんぞり返る。

デイリー・ビューグルはT市一番の新聞社で様々な情報をいち早く正確に伝えることで有名だ。アメリカ育ちの編集長による豪快な経営もあって、新聞社でのシェアはトップを維持している。

ギラギラとした目つきで自慢のひげをこすりながら不満を漏らす紫紋(しもん)に褐色の太った男──比呂(ひろ) 拓斗(たくと)副編集長は話す。

 

 

「話題の人物です。この前もビルの火災から14人も救い出しました」

 

「自分で火を放ったんだろう。その証拠に何かあるとすぐ現れ……見ろ!急いで現場から逃げてるじゃないか!」

 

「どこかで人を救うためですよ。彼は英雄です!」

 

 

新聞記事に写るブレブレのスパイダーマンの写真を指差しながら指摘する紫紋(しもん)に比呂は異を唱える。

もちろんだが、スパイダーマンこと(まなぶ)は火を放っていない。

それに対して紫紋(しもん)は言う。

 

 

「じゃあ、マスクは何だ?何故、顔を隠す?奴が善人だと言うのなら、堂々と顔を見せればいいじゃないか!」

 

「編集長。彼にもきっと事情があるんですよ」

 

「事情ってのは悪巧みのことか?きっと自作自演をしているに違いない。顔を隠しているのが何よりの証拠だ!覆面をつけている奴は信用ならん!」

 

 

憎々しげに言い放った紫紋(しもん)は気分転換のためにタバコを吸おうとする。

タバコを口に咥え、ライターで火をつけようとすると──

 

 

「編集長。ここは禁煙です」

 

「~~ッ!日本はどこもかしこも禁煙ばかりでろくに吸えんッ!!」

 

 

秘書の細田(ほそだ) 由紀子(ゆきこ) に言われ、紫紋(しもん)は喫煙者に対する現状を嘆きながらタバコをボックスにしまう。

苛立つ紫紋(しもん)に比呂は彼が読んでいた新聞片手に報告する。

 

 

「ですが、編集長。この新聞、()()()()で4回増刷したんですよ?」

 

「……ッ、売り切れ?」

 

1()()()()()()に……。ネットニュースも大繁盛。見逃すには惜しい存在です」

 

 

比呂は耳を止めた紫紋(しもん)に提案する。

スクープのこともあるが、何よりスパイダーマンのことに興味を持ってもらおうと。

それを聞いた紫紋(しもん)の行動は早かった。

 

 

「明日の朝の一面は写真入りのスパイダーマンで行こう!ネットニュースの方もだ!」

 

 

──読者の関心がスパイダーマンに向いているのならそれに応じるのが記者だ。

スパイダーマンのことは気に入らなくても、紫紋(しもん)のジャーナリズムと経営者としての信念が彼を強く後押しした。

やる気に満ちている紫紋(しもん)だが、比呂は困った顔を浮かべながら言う。

 

 

「ところが写真は1枚も無いんです。この1週間、どのカメラマンも街中を駆けずり回っているんですが………」

 

「ほぉう……?シャイなのか。すると、あれか?Tバックの眉八(まゆはち) 黒尾(くろお)は撮れて、そいつは撮れないということか!……一面に広告を打て!『スパイダーマンの写真買います!』………顔を売りたくないのなら、俺がその顔潰してやる!!」

 

 

窓から外の景色を眺めながら、スパイダーマンと報道を使って戦うことを宣言する紫紋(しもん)

敵意を向ける彼の姿に比呂と細田は目を丸くしながら顔を見合わせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、(まなぶ)は旭高校に登校していた。

下駄箱で上履きに履き替え、教室に向かって歩いていた。

廊下ではいつものように行き交う生徒たちが和気あいあいと雑談していた。

 

 

「なぁ、知ってるか?スパイダーマンのこと!」

 

「知ってる、知ってる!」

 

「今朝も車上荒らしを捕まえたんだろ?凄いよな~……」

 

 

色々な話題が飛び交うが、ここ最近の話題は世間と同じく、スパイダーマンのことばかりだった。

学生である彼らもテレビやSNSを通して知っており、スパイダーマンのニュースは1週間、Twitterのトレンド1位を独占している。

どこにいっても自分の活躍する話が聞こえ、(まなぶ)は内心ウキウキしていた。

だけど、有頂天にならない。あくまでそっと微笑む程度だ。

 

 

「スパイダーマンの素顔ってどんななんだろ?」

 

「きっとイケメンよ!レオナルド・ディカプリオ似だったりして!」

 

「ジェイク・ギレンホールに似てるかも!」

 

「(その正体はすぐ近くにいるけどね)」

 

 

廊下の端でたむろしている3人組の女子の会話を聞いて、(まなぶ)は心の中で答える。

──スパイダーマンの正体が自分だと知ったら彼女たちはどんな反応を見せるだろうか?

気になりはするが、自分の正体を明かすわけにはいかない。富や名声を得るために戦っているのではなく、純粋に人助けのために戦っているのだと(まなぶ)は改めて思う。

 

 

「おはよう、(まなぶ)

 

「あ、涼介。おはよう」

 

 

そんなことを思っていると、階段を上がった先で涼介と出会う。リュックを背負っていないことから、早く登校してきたことがわかる。

涼介と(まなぶ)は挨拶を交わすと、並んで歩き始める。涼介は別のクラスだが、教室の前までついていってくれるようだ。

明るい表情を浮かべていた涼介だが、一変して気まずそうな表情でそっと尋ねる。

 

 

「その……もう、平気か?叔父さんのこと」

 

「大丈夫だよ。もう立ち直った。いつまでも引きずってちゃ、叔父さんに怒られるからね」

 

「そうか……俺も母を亡くした。辛いときはいつでも力になる」

 

「ありがとう、涼介」

 

 

親友の気遣いに(まなぶ)は微笑みながら感謝を告げる。

涼介は幼い頃から(つとむ)と親交があり、もう1人の父親として慕っていた。辛い気持ちは痛いほどわかるだろう。

葬式にも父親共々顔を出してくれて、(まなぶ)を励ましてくれた。

友人関係に恵まれていると改めて実感した(まなぶ)は暖かく感じた。

 

しばらくして教室の前につき、涼介と別れた(まなぶ)は『2年1組』に入る。

教室内はいつも通りの光景で、友達と喋っていたり、静かに自習している者がいる。

 

 

「あ、おい……」

 

「?」

 

 

自分の席に座り、リュックから教材を取り出していると、前から昂輝が話しかけてくる。

その様子はいつものガキ大将っぷりは鳴りを潜め、どこか話しかけにくそうだった。

疑問に思った(まなぶ)は次の言葉を待っていると、口を開く。

 

 

「……叔父さんのこと、残念だったな。その………何だ………?元気だせよ」

 

「ッ!?」

 

 

昂輝から出た気遣いの言葉に(まなぶ)は目を丸くする。

普段の彼の態度からは想像がつかない”相手を思いやる”という行動に、嘘じゃないかと一瞬疑った。

しかし、彼は気分は顔に出るタイプだ。物悲しそうな表情をしていることから、本心で言っていることは間違いない。

 

 

「ありがとう昂輝。僕は平気。でも、周りに聞かれても大丈夫?キャラに合ってないよ?」

 

「~~ッ!?馬鹿!勘違いするなよ!これはお前の叔母さんへの伝言だ!お前のことは嫌いだけど、叔父さんも叔母さんも良い人だ!ぜーーーたいッ、勘違いすんなよ!!フンッ!」

 

 

(まなぶ)のからかいを含めた感謝を受けた昂輝は顔を真っ赤にしてそう言い放つと、回れ右して自分の席へと向かっていった。

 

 

「(良かった。昂輝がしんみりするなんてのは似合ってない………。でも、あいつも案外悪い奴じゃないかもな……)」

 

 

元の調子に戻った昂輝を見て(まなぶ)は安堵する。

昂輝をからかった理由は落ち込んでほしくなく、いつも通りの彼になってほしかったからだ。

ちょっと不親切にしてしまったかと思うが、この方が彼には効き目があるだろう。

こうやって気遣ってくれる意外な一面に遭遇した(まなぶ)は、思ってたより悪い奴じゃないかもしれない。

そんなことを考えていると、次は五月(いつき)がやってくる。

 

 

「おはようございます。天海(あまかい)君」

 

「あ!やあ、おはよう……」

 

 

憧れの人に挨拶をされて言葉が詰まりそうになりながらもぎこちない笑顔で挨拶を返す(まなぶ)

変わらぬ美しさに(まなぶ)はときめいていると、彼女は心配そうな面持ちで尋ねる。

 

 

「あの、盗み聞きするつもりはなかったのですが……先程、叔父さまを亡くしたとか………」

 

「ああ、そうだよ。でも、気にしなくていいよ。もう過ぎたことだし………」

 

「そうですか……わかりました」

 

 

(まなぶ)は微笑みながら言うと、五月(いつき)は納得して頷く。

彼女も心配しに来てくれたようだが、この様子だと他にも言いたいことがあるようだ。

(まなぶ)は少し待つと、五月(いつき)は口を開く。

 

 

「……天海(あまかい)君。お昼休みに屋上に来てくれませんか?あなたに大事な話があります」

 

「え?」

 

 

突然のお誘いに(まなぶ)は固まる。屋上に来てほしい。

誰もいない場所で男女2人きりでする大事な話………それは”告白”。

漫画やアニメしかないシチュエーションかと思っていたが、まさか自分が体験することになるとは。

──僕にもついに春が来たか!と今の季節は秋ながらも妄想に浸っていると、中々返事が返ってこない(まなぶ)に疑問に思った五月(いつき)は首を傾げて尋ねる。

 

 

「あの……?他にご予定が?」

 

「あっ!いや、大丈夫!すぐに」

 

「良かったです。では、お昼に屋上でお待ちしてますね!」

 

 

了承を得た五月(いつき)はニコッと微笑むと、自分の席へと帰っていった。

 

 

「(笑顔もやっぱり素敵だ……)」

 

 

五月(いつき)の満面の笑みを間近で見た(まなぶ)は頬を緩ませる。写真に収めたいくらいだ。

その後、HRで担任の先生が色々と話すが、(まなぶ)五月(いつき)に誘われたことで頭がいっぱいだった。

とにかく、早く昼休みが来ることを待ち望んだ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、昼休み。多くの生徒が食堂へ向かう中、(まなぶ)は屋上へと向かっていた。

待ちに待った時間だけあり、その足は軽やかだった。

 

 

「(何て言われるんだろう?『好きです』なんて言われたら僕は………!)」

 

 

告白のシチュエーションを妄想する(まなぶ)は頬を赤らめ、自然とニヤニヤする。

五月(いつき)とはまだ会って一週間くらいしか経っていないが、女の子に呼び出されるなんて期待しないわけがないだろう。

期待を膨らませながら屋上に着くと、彼女はすでにそこにいた。

 

 

「………やあ、話って何?」

 

 

深呼吸して気持ちを落ち着かせてから話しかける。できるだけ平穏を装って。

思っていたことを膨らませていると、期待が外れたときにかえって失望感が大きくなるので、期待半の心構えで臨む。

(まなぶ)の尋ねに対して、五月(いつき)は答える。

 

 

「はい。実は、私たちの”家庭教師”をお願いしたいのです」

 

「ん?家庭教師?」

 

 

同級生同士の会話としては聞き慣れない単語に(まなぶ)の頭上にクエスチョンマークが浮かぶ。

告白じゃないことに若干残念がりながらも、事情を聞くことにした。

 

 

「私たちは今、父が依頼した家庭教師………上杉(うえすぎ)君に勉強を教えてもらっています」

 

「上杉って、あの上杉 風太郎(ふうたろう)?」

 

「はい………ですが、彼酷いんですよ!?勉強できることは尊敬しますけど、性格が酷くて!100点の答案用紙を見せびらかしたり、私が個人的に勉強を教えてくださいと頼んだときは断ったのにお金絡みのこととなると掌を返してズカズカと偉そうに!おまけに………ふ、太るぞって………ッ!!」

 

「そ、そうなのか……」

 

 

恨めしそうに話す五月(いつき)を見て、(まなぶ)は風太郎の悪評に引いた。

風太郎とは同じクラスで、定期テストではいつも(まなぶ)と同じ1位だ。

彼とは1年生のときに話したことはあるが、自分の才能で相手を見下している姿勢に抵抗感があり、それ以来話していない。

悪評は周りから散々耳にするが、優しそうな彼女がここまで言うのだから、相当に酷いのだろう。

五月(いつき)は言葉を失っている(まなぶ)を見て息を整えると、話を続ける。

 

 

「そこで、私は父に家庭教師を変えてもらおうと相談しました。同級生の方からあなたは勉強が得意で、上杉君と同じ学年1位……しかも彼以上に頭が良いかもしれないと聞きましたから。……家庭教師を変えることは反対されました。不服ですが。その代わりに家庭教師を増やすことを提案されました」

 

「はぁ……」

 

「私から話せることはここまでです。詳しいことは父から聞いてください」

 

 

ハイテンポに説明されて圧巻されながらも(まなぶ)五月(いつき)のスマホを受け取る。

すでに通話状態になっており、いつでも話せる状態だった。

通話相手が好きな女の子の父親とあり、緊張する(まなぶ)は恐る恐る電話越しの相手に話しかける。

 

 

「変わりました。天海(あまかい)です」

 

天海(あまかい) (まなぶ)君だね?》

 

「そうです」

 

《僕は中野 マルオ。彼女ら五つ子の父親だ。君のことは五月(いつき)君から聞いているよ。失礼ながら色々と調べさせてもらったが、中々優秀だそうだね。定期試験では1位をキープ、全国共通模試でも1位を独占している。あと、科学については抜群の才能があると……実に素晴らしい》

 

「はい……」

 

 

電話越しのマルオに賞賛されているにも関わらず、何故か(まなぶ)は嬉しい気持ちにはならなかった。

電話から聞こえるマルオは言葉こそ良いものの、声は全く人情味を感じず、まるで機械が喋っているように感じた。それにどこか自分の娘を他人行儀にしてる気がしてならなかった。

不安な(まなぶ)の心中を無視して、マルオは淡々と話し続ける。

 

 

《上杉君に頼んでいるが、5人相手では中々回らず手を焼いていると思う。そこでだ。是非、君には上杉君と協力し、娘たち全員を卒業まで導いてやってほしい》

 

「卒業まで?」

 

《ああ。彼女たちは学力の方は自信がなくてね、高校生活を最後まで過ごせない可能性が非常に高い。せめて高校は卒業してほしい、というのが僕の願い……その手助けをしてほしい。なに、報酬は払う。1人につき5000円───5人を教えるから1日25000円。週3~4日のシフトだから、月に約30万だ。どうかね?》

 

 

マルオに問われた(まなぶ)は今朝、家を出る前を思い出す。

リビングでは叔母である(みこと)が預金通帳の残高を見て頭を抱えているのを思い出した。

元々そんなに裕福ではなかったが、働き手である叔父の(つとむ)が亡くなって以降、収入は全く無くなってしまった。

(みこと)が稼ごうにも、彼女はパートで働けるほどの体と年齢ではない。本人は心配しないでと笑って誤魔化してたが、(まなぶ)にはそれが嘘だとわかっていた。

置かれている状況も考えると、断るという選択肢は彼にはなかった。

それに──

 

 

「(彼女の近くにいれるから……)」

 

 

(まなぶ)はこちらの様子を伺う五月(いつき)の顔をチラリと見る。

上杉 風太郎という嫌な奴がオマケでついてくるが、好きな女の子と親しくなれる可能性がある。

五月(いつき)と仲良くなりながらお金を稼げる最高の環境を逃すはずはない。

 

 

「わかりました。その話、お引き受けします」

 

《そうか、感謝するよ。さっそくだが、今日から取り掛かってくれ。顔合わせも併せて……。君のことは十分に期待しているよ。それでは失礼する》

 

 

承諾を受け取ったマルオはそう告げると、通話を切った。

(まなぶ)は急だなと少し不満を抱くが、すぐに五月(いつき)の家にお邪魔できる嬉しさでいっぱいになった。

(まなぶ)はスマホを五月(いつき)に返す。

 

 

「携帯ありがとう」

 

「いえ………それで家庭教師の件は?」

 

「ああ、やるよ?困ってるのに断るなんてできないからね」

 

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

 

その返事を聞き、五月(いつき)はペコリとお辞儀する。

(まなぶ)が家庭教師についてくれるのが余程嬉しいのか、今までで一番の笑顔だった。

少しは信頼できる人が傍についてくれることは彼女にとって大きなプラスだ。

(まなぶ)は尋ねる。

 

 

「……えーとっ、五月(いつき)って呼んでいいかな?中野だと被っちゃうから」

 

「構いませんよ」

 

「よし……五月(いつき)。よろしくね」

 

「よろしくお願いします!天海(あまかい)君!」

 

 

(まなぶ)を右手を差し出すと、五月(いつき)は笑顔でその手を取って握手する。

細くて白い手が触れて(まなぶ)は胸がドキッとするが、平静を装う。

食堂以来、改めて挨拶を交わした2人だったが……

 

 

ぐうぅ~~~……

 

 

と唐突に大きな空腹音が鳴る。(まなぶ)は自分かと思ったが、特段空腹でない彼からは出るはずはない。

まさかと思って五月(いつき)の方を見ると、彼女は恥ずかしそうに真っ赤になった顔を俯かせていた。

この様子から空腹音の音源は五月(いつき)の腹から出たものだとは明白だった。

 

 

「お昼だし、まずは何か食べよう?」

 

「は、はい………」

 

 

(まなぶ)の提案に五月(いつき)は顔を真っ赤にしたまま頷くと、2人は食堂へと向かっていった。

この後、(まなぶ)は彼女のボリューミーな食事にまたまた驚かされるのはまた別の話だ………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。(まなぶ)五月(いつき)と共に彼女ら五つ子が住まうマンションへと足を運んでいた。

 

 

「高いなーー……」

 

 

(まなぶ)は前方にそびえ立つ高層マンションを見上げていた。

黒薔薇女子校に通っていた経歴、1日25000円ものアルバイト料を考えれば、富裕層であることはわかっていたが予想を遥かに超えている規模に頭が痛くなる。

流石にオズコープタワーほどではないがそれでもかなりの高さで、月に150万円以上はするだろう。

 

 

天海(あまかい)君。早く」

 

「ッ、五月(いつき)。待って」

 

 

先にエレベーターに乗り込んだ五月(いつき)に呼ばれてハッと意識を戻した(まなぶ)は急いで駆け込む。

エレベーターは途中で乗り降りしてくる人もいて止まったりしたが、25階を過ぎてからは2人っきりとなり、あっという間に彼女たちが住む部屋がある最上階──30階へと到着した。

 

五月(いつき)は自宅の扉を開け、(まなぶ)を中に招く。

連れられた(まなぶ)は奥に進んでいくと、リビングにつく。リビングは清潔感がありながらも広々としており、窓際一面がガラス張りでできており、町の景色を一望できる。

親友の涼介の家と似た、いかにも金持ちが住んでいる内装だなと(まなぶ)が思っていると、2階の階段から5組の男女がリビングへ降りてくる。

顔が瓜二つの4人の女子を、目つきが悪い男子が後ろから追うような構図だ。

目つきが悪い男子──上杉 風太郎は催促させる。

 

 

「ほらほら、休憩終わりだ。さっさと始めるぞ」

 

「えー!もう休憩終わり?フータロー君、もうちょっといいんじゃない?」

 

「何が『もうちょっといいんじゃない?』だ!10分間休憩だっつってるのに、お前ら1()()()()()()()()じゃねぇかッ!少しは甘めに見てやろうと思ってたら、これだ!充分休んだろ!!」

 

「ケチー」

 

「あーやだやだ。もう少し静かにするってこと学んでほしいわね」

 

 

ショートヘアーの女子の言い分に風太郎は青筋を立てて拒否する。受け入れてもらえなかったショートヘアーの女子は子供っぽく愚痴り、横にいたロングヘアーの女子はうるさそうに毒を吐く。

困り果てている風太郎を見て、(まなぶ)は悪評通りに滅茶苦茶な指導をしているのではないかという自分の考えが間違っていたことに気付く。

風太郎は相変わらず口が悪いが、それよりも生徒である彼女たちの積極的ではない態度が気にかかった。

 

 

「ただいま帰りました」

 

「あ、おかえりー」

 

「おかえり、五月(いつき)……」

 

 

五月(いつき)の帰ってきた声にウサ耳みたいな黄緑色のリボンをした女子とヘッドホンを首にかけ、目元まで髪を下した女子が出迎える。

一方、(まなぶ)は4人の姉妹を見て、髪型こそ違うが本当に五月(いつき)と顔がそっくりだとしみじみ思っていた。廊下などですれ違ったことが何度かあるが、こう4人揃うと一卵性の五つ子なんだと思い知らされる。髪型を一緒にでもされたら、誰が誰なのかわかる自信はない。

 

五月(いつき)の隣にいる(まなぶ)が気になったロングヘアーの女子は指を指して尋ねる。

 

 

五月(いつき)。誰よ、そいつ?もしかして、その男が2人目の家庭教師ってんじゃないでしょうね?」

 

「はい。その通りですよ。彼も私たちの家庭教師をして下さるんです」

 

『えっ!?』

 

 

その疑問にさらっと答える五月(いつき)に4姉妹と風太郎は驚きの声をもらす。

もっとも、4姉妹は想像していたのと違う反応で、風太郎は不安からくる反応だった。

風太郎は冷や汗をかきながら五月(いつき)に問う。

 

 

「待て待て五月(いつき)、聞いてないぞ?新しくきたってことは、つまり、俺は………”クビ”ってことなのか?」

 

「ご安心ください。父はあなたを解雇するつもりはありません。アルバイト料もこれまでですし、2人で協力するという条件だけ増えただけです。私としては本っ当に不服ですけど………

 

「聞こえてるぞ」

 

 

五月(いつき)が最後の方にボソッともらした不満を風太郎は聞き逃さなかった。

人は自分の悪口ほど敏感になるというものである。

とりあえず風太郎がひと安心したところで、(まなぶ)は自己紹介する。

 

 

「……ど、どうも始めまして。天海(あまかい) (まなぶ)です。今日から家庭教師のアルバイトをさせて頂くことになりました。よろしくお願いします………」

 

『………』

 

 

ぎこちない笑顔で自己紹介をするが、姉妹たちの反応は薄かった。居心地の悪い空気に(まなぶ)は上げている口角をひくひくさせる。

場の悪い空気を察した五月(いつき)は慌て、気分を紛らわそうと姉妹を紹介する。

 

 

「あっ、天海(あまかい)君!私の姉たちを紹介しますね!向かって右から順に長女の一花(いちか)、次女の二乃(にの)、三女の三玖(みく)、そして四女の四葉(よつば)です」

 

 

末の妹から紹介を受けた4姉妹は少しは信頼したのか、それぞれ異なった反応を(まなぶ)に見せる。

一花(いちか)は興味深く品定めするようにジロジロと見て、二乃(にの)は警戒心が強いのか半目で睨め付け、三玖(みく)は興味があるようでないような顔を浮かべており、四葉(よつば)は笑顔で手をひらひらと返してくれる。

この反応から同じ顔でも性格が違うことが(まなぶ)にはわかった。

自己紹介も終わり、これからどうしようかと考えていると、四葉(よつば)は元気そうに挙手して質問する。

 

 

「あまかいさん!あまかいさんってどういう字なんですか?」

 

「え?えーーっと、君は四葉(よつば)でいいよね?」

 

「はい!」

 

「うん。僕の苗字は天の海って書いて、天海(あまかい)だよ」

 

「へー……凄い名前ですね!この辺りじゃあまり見ないです」

 

「ははっ、そうだね。君の妹にも同じこと言われたよ」

 

 

フレンドリーな四葉(よつば)との会話に先程まで固い表情をしていた(まなぶ)もにっこりと笑う。

元気でとっつきやすそうな雰囲気に(まなぶ)五月(いつき)の他に、この()とも仲良くできそうと希望を持つ。

そうしていると、次は一花(いちか)の手が上がる。

 

 

「マナブ君。お姉さんからも質問いいかなー?」

 

「いいよ?どうぞ?」

 

五月(いつき)ちゃんとは()()()()()()かな?」

 

「……ん?」

 

 

質問の意図がわからず、思わず訊き返す(まなぶ)

どういう関係と訊かれた(まなぶ)の頭の中では2つの意味が浮かんでいる。

どっちなんだと首を傾げる(まなぶ)一花(いちか)はもう一度問う。

 

 

五月(いつき)ちゃんとはどういう関係かなって。ほら、さっき一緒に入ってきたし、やけに親しそうだったから。お姉さんの直感だけど、もしかしたらもう、()()()()()()だったりして……?」

 

「……」

 

 

小悪魔な笑みを浮かべながら尋ねる一花(いちか)を見て、(まなぶ)はやっぱりかと納得する。

男女間でのそういう関係。1つは友達関係。もう1つは恋人関係だ。

小学生で男女が仲良くするとはやし立てるアレと同じだ。

一花(いちか)の反応から明らかに後者であることは(まなぶ)にはわかっていた。

 

 

「そ、そういう関係?天海(あまかい)君。どういう意味です?」

 

 

反対に五月(いつき)は何のことかさっぱりといった感じだった。

それはとぼけているのでなく、本当に意味がわかっていない様子で、質問するぐらいだ。

意外な鈍感っぷりに(まなぶ)は内心可愛いと思いながらも、冷静に答える。

 

 

「いや、彼女とはただの友達だよ。同じクラスだからね。アルバイトも彼女の電話を借りて引き受けたんだ」

 

「そうかそうか。でも、本当に()()()友達?」

 

「そうだよ?」

 

「ふーん……そっか」

 

 

それを聞いて一花(いちか)はうんうんと頷く。

しかし、返答が期待通りじゃなかったのか少しつまらなそうだった。

 

一花(いちか)のからかいをかわした(まなぶ)は疑問符を浮かべる五月(いつき)に何でもないと首を横に振っていると、こちらに向けられる鋭く冷たい視線を感じる。

視線が気になり、顔を向けると、二乃(にの)が無言で怪訝そうな目を向けていた。

(まなぶ)は困り顔で訊く。

 

 

「えーとっ………何?気に障ることでもしたかな?」

 

「別に。新しい家庭教師がくるって言うから期待してたけど、あんたみたいなダサい奴でガッカリしてるのよ………。上杉だけでもキツイのにこんなオタクがきたんじゃ、ますますモチベーションが下がっちゃうわ……」

 

「オ、オタクって………」

 

 

二乃(にの)の容赦ない苦言に(まなぶ)は苦い顔を浮かべる。

別人とはいえ、五月(いつき)と同じ顔で言われたんじゃ、まるで彼女本人に言われているみたいで気分が悪い。

この暴言とも言える発言に五月(いつき)は反論する。

 

 

二乃(にの)!流石に言い過ぎじゃないですか!?彼はまだ何もしていないのに……」

 

「何よ、五月(いつき)。あんた、上杉には駄目で、こいつのことは信用するっての!?弱みでも握られたの!?」

 

「違います!確かに上杉君は最低で人としての暖かさは微塵もないですが、天海(あまかい)君は親切で信用できます!食堂で転びそうになった私を助けてくれました」

 

「おい、さらっと俺の悪口言っただろ」

 

 

風太郎がツッコミを入れるが五月(いつき)は無視する。

五月(いつき)の言い分に二乃(にの)はさらに反論する。

 

 

 

「たった一回の恩だけで信用するなんて、見る目がないんじゃない?そんなんだからいつまでも瘦せないのよ!この、肉まんおばけ!」

 

「に、肉ま………!あなただって人のこと言えないじゃないですか!好みのタイプは全部顔でしか判断していないじゃないですか!大事な性格は考えず!二乃(にの)こそ見る目がありませんよ!」

 

「言ってくれるわね……!三段腹予備軍のくせに!」

 

「むぅ~~!もう許しません……!」

 

 

言い争った二乃(にの)五月(いつき)は頬を膨らませると、バチバチと火花を散らすように睨みあう。

今にも喧嘩しそうな2人を一花(いちか)四葉(よつば)がまあまあと宥めている中、呆然と見ていた(まなぶ)の袖がくいくいと引っ張られる。

(まなぶ)は振り向くと、袖を引っ張る正体は三玖(みく)だった。

 

 

「どうしたの?」

 

「マナブにいいこと教えてあげる……。二乃(にの)は面食い、好みのイケメン俳優をとっかえひっかえしてる………。ちなみに、今はアンドリュー・ガーフィールドが好み」

 

三玖(みく)!あんた、余計な情報を教えるんじゃないわよ!」

 

 

三玖(みく)の話に聞き耳を立ててたのか、二乃(にの)の声が飛ぶ。

姉妹のわちゃわちゃと言い争うさまに(まなぶ)は苦笑していると、風太郎が話しかけてくる。

 

 

「なあ、その……よろしくな?」

 

「ああ、よろしく。君、大変だったんだね……」

 

「まあな。勉強しようとしたら逃げられるわ、暴言を吐かれるわ、睡眠薬を盛られるわ………。お前も注意しておいた方がいい。特に二乃(にの)にはな」

 

 

遠くを眺めながら忠告してくる風太郎を見て、(まなぶ)は同情する。

確かに彼の性格は褒められるものではないが、個性が強い彼女たちの扱いには苦労しているようだ。特に睡眠薬を盛るだなんてやりすぎだ。

──これは一筋縄ではいかないな、と(まなぶ)が思っていると、風太郎は手を叩く。

その音に姉妹たちは静かになる。

 

 

「そこまでだ。ただでさえ予定より遅れているんだ。昨日や一昨日の分も含めて勉強するぞ」

 

 

そう言って風太郎はさっそく勉強を始めようとするが………

 

 

「あ、ごめん!バイトがあるんだー」

 

「私もバスケ部のお手伝いがあるの忘れてましたー!」

 

「パス。友達と遊ぶから」

 

 

一花(いちか)四葉(よつば)は申し訳なさそうに、二乃(にの)は純粋に興味がなさそうに上手く断ると、3人は逃げるように外へと出ていった。

残された姉妹は三玖(みく)五月(いつき)だけだった。

(まなぶ)は苦い顔をしながら、心配そうに風太郎へ声をかける。

 

 

「大丈夫……?」

 

「大丈夫、大丈夫。もう慣れた。あははは……」

 

 

そう言って笑う風太郎だが、目は死んだように全く笑っていなかった。

家庭教師初日にして(まなぶ)は不安で頭が痛くなる。

 

 

「(勉強を教える前に、”勉強嫌い”を治さないと……)」

 

 

(まなぶ)は姉妹たちの勉強に対する拒絶反応を見て、根本を解決しなければいけないと思った。

勉強を教えるのは簡単だが、勉強嫌いを治すとなると難易度は変わる。精神的な面での教育をしなければならないとわかった(まなぶ)はこの話を受けて、後悔すら覚えた。

 

しかし、だからといって(まなぶ)はこのアルバイトを辞めるわけにはいかなかった。それも全て叔母である(みこと)のためだ。

いつも苦労をかけている(みこと)への恩返しできる絶好の機会だ。ここで大金を得るチャンスを逃せば次はいつくるかわからない。

生活費や自分の学費のためにも、ここで諦めるわけにはいかない。

(まなぶ)三玖(みく)五月(いつき)に向き──

 

 

「………とりあえず、君たちだけでも勉強しない?」

 

「御意……」

 

「そうですね」

 

 

提案を促すと、承諾した三玖(みく)五月(いつき)は勉強にとりかかることに。

風太郎は三玖(みく)(まなぶ)五月(いつき)の勉強を見ることに。

最初は風太郎と(まなぶ)が一緒に2人の勉強を見ようとしていたが、五月(いつき)が「彼からは教えを乞いません」と風太郎の指導を拒否したため、1人ずつ教えることになった。

ちなみに三玖(みく)には数学、五月(いつき)には英語を教えていた。

 

 

「(眼鏡かけるんだ……)」

 

 

勉強の最中、(まなぶ)はノートに向かって英単語を書いている五月(いつき)が眼鏡をかけていることに気付く。

(まなぶ)も1週間くらい前までは眼鏡をかけていた。蜘蛛の能力を手に入れてからは視力が上がり、かけなくなったが、彼女も眼鏡をかけるとは。

意外な共通点に(まなぶ)は少し嬉しくなっていると、五月(いつき)は教科書に書かれている英文を指指しながら質問する。

 

 

天海(あまかい)君。この、『Go get'em tiger』とは?虎、捕まえてきなさいって意味ですか?」

 

「あー、それね。違うよ。『Go get'em tiger』は変わった言い回しで、”やっつけちゃって”とか、”頑張って”っていう励ましの意味があるんだよ」

 

「なるほど……そうなんですね!ありがとうございます!」

 

 

(まなぶ)の説明を受けた五月(いつき)はすぐにその意味をノートへ書き込む。

不安を感じていた(まなぶ)だが、彼女の勤勉な姿勢を見て、少し荷の肩が軽くなったような気がした。

 

こうして、(まなぶ)は個性豊かな五つ子たちとの家庭教師を務めることになった。

この出会いがまた自分の運命を大きく動かすことになるとは、このときの(まなぶ)は知るよしもなかった……。

 

 




◆イースター・エッグ◆
①レオナルド・ディカプリオ
 ピーター・パーカー/スパイダーマン役の候補だったというネタ。
 スパイダーマンの映画計画は映像化権と共に様々な映像会社の手に渡っていった。
カロルコ・ピクチャーズに渡った際、ジェームズ・キャメロン監督がメガホンを取る予定だった。そのときの主役として指名されたのが、レオナルド・ディカプリオ。
トビー・マグワイアとは子役時代からの親友でもある。
 権利がソニー・ピクチャーズに移り、サム・ライミ版でもレオナルドに主役をやってもらおうとしていたが、彼は申し訳なく思いながらも拒否。レオナルドがサム・ライミ監督に紹介したのが、トビーである。
 サム・ライミ監督は「サイダーハウス・ルール」(1999)という映画で笑顔ながらも哀愁漂う演技がピーター・パーカー/スパイダーマンにふさわしいと考え、彼にオファーを送ったという。

②ジェイク・ギレンホール
 彼もレオナルドと同じく、スパイダーマン役の候補だったというネタ。
 トビー・マグワイアはサム・ライミ版「スパイダーマン」(2002)の翌年の「シー・ビスケット」(2003)という映画で乗馬の際に腰を痛めた。その際にスター病にかかったのではないのかというありもしない噂が広まり、これを受けたソニー・ピクチャーズは制作中だった「スパイダーマン2」(2004)からトビーを降板させ、ジェイク・ギレンホールを主役に据えようとした。
 これを聞いたトビーのエージェント、さらには「シー・ビスケット」の制作会社の社長がトビーを主役から降ろさないように説得して承諾。トビーは腰の治療を終え、無事に撮影へ挑んだ。
 なお、ジェイク・ギレンホールは「スパイダーマン ファー・フロム・ホーム」(2019)にてヒーローになり替わろうと企むヴィラン──ミステリオ役を演じた。

③アンドリュー・ガーフィールド
 マーク・ウェブ監督の「アメイジング・スパイダーマン」シリーズにて、主人公であるピーター・パーカー/スパイダーマンを演じた俳優。彼は幼い頃からスパイダーマンのファンで、ハロウィンで仮装したり、コミコンでコスプレするほど。トビー・マグワイアのスパイダーマンをみたときは感動したという。
 当時はサム・ライミ版が終わってから間もない頃もあり、ピーター・パーカー=トビー・マグワイアのイメージがついていたため、トビーのピーターと比べて明るめでイケメンすぎる彼は多くのファンに批判された。
 しかし、スーツを着たときの彼のシルエットは原作のスパイダーマンそのもので、それに関してはファンからは高評価を受け、『最高のスパイダーマン』と今なお評されている。

④『Go get'em tiger』
 意味は「やっつけちゃって」という明るめの言葉。tigerは虎の他に強い人、親愛なる人のことを指し、虎は負けそうになってもあきらめずに最後まで獲物を得るまで戦い続けることに起因する。
 原作のMJはピーターを励ます際の口癖としてtigerと呼ぶ。この台詞はサム・ライミ版「スパイダーマン2」(2004)にて、MJがピーターを見送る際に使われた。「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」(2021)でもベティ・ブラントがこの台詞を発している。
 ちなみにMCU版のベティ・ブラントの日本語吹き替えと五月(いつき)の声優は同じ水瀬いのり氏が担当している。

スパイダーマンを増やす?

  • YES!(ヒロインなし)
  • YES!(オリジナルヒロイン)
  • YES!(五つ子の中からヒロイン)
  • NO
  • It's Morbin time
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