SPIDER-MAN Quintessential Quintuplets 作:まゆはちブラック
五つ子、友人たちと花火大会へとやってきた
押し寄せる来場者たちによって彼らとはぐれてしまい、近くにいた
だが、そこには誰もいなかった。伝え忘れたことを確信した
準備が整っていない彼らとは裏腹に、花火はすでに始まっていた。
発覚した事実に呆然と立ち尽くす
その衝撃に轟音と共に夜空に美しく咲く花火も目に入らなかった。
そんなとき、
すかさず、
「
通話を切った
しかし、気付いていないのか中々電話に出ない。
「どうして出ないのよ………。ぼさっとしないであんたもかける!」
「はっ、はい!」
強い声色で発する
五つ子たちの連絡先は知らないので、親友の涼介にかけることにした。
プルル……と発信音が3回鳴ったのち、通話相手の涼介が出た。
《
「涼介。出てくれて良かった!僕はカフェ『Jon Watts』にいる!そっちは他に誰かいない?」
《あー……さっきまで
「用事?」
《詳しくは聞いてない。もし妹たちに会えたら”一緒に見られなくてごめん”とは言ってたな……》
涼介から消えた
気になった
「
「用事?そんなの聞いてないわよ」
自分よりも本人の妹である彼女に心当たりがないとするのなら、詳しいことはわからない。
「涼介。今、どこにいるか教えてくれる?」
《焼き鳥の近くだ》
「わかった。そこで待ってて」
涼介にそう言い伝えると、
「(場所はわかったけど、どうやって探せばいいか………)」
心の中でそう思いながら、
下は花火を見ようとする大勢の人でごった返しており、この中に入ってピンポイントに探し出すのは難しいだろう。
『お母さんとの思い出なんだ』
「………」
不安な面持ちの彼女を見て、
毎年楽しみにしている花火……両親との思い出が少ない
「僕に任せてくれない?」
「…え?」
気付いたときには口が動いていた。
不安で押しつぶされそうな彼女を前にして、見てられない心境が
唐突の提案に呆ける
「こういうのにうってつけの助っ人がいる」
「(ど、どうしましょう………)」
その頃、
姉妹たちとはぐれ、どこにいるのかわからない知人を探し歩く。
だが、どこを見ても周りは知らない顔だらけ。おまけに現在位置もわからない。たった1人取り残された
「君が中野
「……ッ、はい!そうですが……………!?」
そんなとき、後ろから声をかけられ、振り向く
赤いマスクに蜘蛛の巣が張り巡らされたようなスーツ………SNSやニュースなど、報道関係を賑わせているスパイダーマンその人だった。
下に降りて大勢の人から探し出すのは困難。だが、スパイダーマンなら話は別だ。スパイダーマンである
その読みは当たり、案の定すぐに
周囲の人も話題の人物の登場に目を丸くしていた。
「あなたは……スパイダーマン?」
「僕のこと知ってくれてるの?そう、僕は正真正銘スパイダーマン。君のお友達の
「
「そうだ。僕は困っている人の声が蜘蛛の巣に振動するように伝わるんだ。
そう言ってスパイダーマンは手を差し出す。目立つ格好をしているのですぐにでも離れ、
その差し出された手を
「いえ、結構です」
と、きっぱり拒否した。
何故と頭の上に疑問符を浮かべるスパイダーマンに
「失礼ですが、あなたが本当に
それを聞いたスパイダーマンはそうだったと頭を抱える。
顔も身元もわからない人間に「はい、そうですか」と承諾してホイホイとついていく人はいない。むしろ、警戒心を抱くのは当然だろう。
「(どうすれば……!)」
彼女をどう納得させるか頭を悩ませるスパイダーマン。
一番手っ取り早い方法はマスクを脱いで、
周りにはたくさんの人の目があり、いつ誰が写真や動画を撮っているかわからない。正体がバレれば、私生活や社会的地位に大きな悪影響を及ぼすことは容易に想像できた。
何か証明できるものは無いかと腰の隠しポケットにある財布を取り出す。
財布を開き、中身を確認する。
「(学生証は身元がバレるからアウト。保険証もアウト。家の鍵は論外。お金は……いや、そんなもの渡せば誘拐犯だと思われる!)」
スパイダーマンはますます頭を悩ませる。どれもこれも正体を隠しながら証明できるものではない。正体を隠しながら相手を安心させるというのは到底難しい話だ。
「そこを動くな!スパイダーマン!」
「!?」
スパイダーマンは振り向くと、それは男2人の警察官だった。この場にいる誰かが警察に通報したらしい。
刻々と過ぎてゆく時間に加え、警察の介入にスパイダーマンは焦りながらも
「君が怪しむのはわかる。でも、お願いだ!僕についてきてくれ!約束を果たす前に捕まるわけにはいかないんだ!」
「言ったじゃないですか!あなたを信用できないって!あなたは誰なんですか!?スパイダーマンかどうかも、友人との知り合いかどうかもわかりません!」
説得を試みるが、眉をしかめた
──焦っても仕方がない。自覚したスパイダーマンは心を落ち着かせる。なら、証明できるものは他にないのかと腰の隠しポケットを探ると、スマートフォンに触れた。
──これしかない!そう判断したスパイダーマンは一か八かの賭けに出る。
「わかった……じゃあ、こうしよう。君に僕の携帯を預ける。もし僕のことが信用できないんなら、警察に届ければいい。僕の正体を突き止められるから」
「……」
「信じてくれ……」
スマートフォンを差し出して懇願するスパイダーマン。
条件を提示された
正直にいうと
「(でも、携帯を差し出すとなると……)」
そこで考えを改める。スパイダーマンがやっているのは個人情報を晒すような危険行為である。
──本当なのかもしれない。マスクのせいで表情こそ伺えないが、必死に頼み込む態度から真剣さが伝わってきた。
そう判断した
「……わかりました。そこまで言うのなら、私も信用しましょう」
「本当?」
「ですが、嘘だった場合は本当に警察の方に渡しますが……?」
「もちろんさ!さあ、しっかり捕まって」
戸惑いながらも指示に従った
ピシュ!
「時間がないから速めに飛ばすよ」
「え?あっ、あぁぁーーッ!!?」
スパイダーマンはウェブを手首から発射して高所につけて一声注意を促すと、まだ心の準備ができてない彼女を連れて空へ飛んで行く。
こちらに向かってきていた警察官の真上をスイングし、
アップダウンする素早いスイングによって、
「……ッ!」
急に怖くなった
怖がってるのを察したスパイダーマンはそっと声をかける。
「ごめんね。怖いだろ?」
「いいえ!これくらいなんとも……」
「強がらなくてもいい。怖かったら目を瞑ってみて」
スパイダーマンに
光が無くなり、スゥーーと風の感触と地上の環境音、花火の轟音が鮮明に聞こえる。
だが、どこにいるかわからない暗闇を浮遊している感覚が逆に怖くなり、目を開けた。
「やっ、やっぱり無理です!」
「そうか……。じゃあ、前だけを向いてて」
「はい……」
指示を受けた
スパイダーマンは押し当てられる柔らかい感触にドキドキしながらも、花火舞う夜空をスイングしていった。
スパイダーマンは屋上に
「お待たせ!」
「……ん?ええ!?スパイダーマン!?
それもそうだろう。空から話題の人物と自分の妹がいきなり現れたのだから。
面白いくらい驚く
「ありがとうございます。さっきはすみません、中々信用しなくて……」
「いや、いいんだ。それだけ警戒心があるなら、詐欺にもひっかからない………。他の子たちも連れてくるから待ってて」
スパイダーマンは謝る
「本当にいたんだ……」
飛び去っていくスパイダーマンを見て、
普段SNSをチェックしている彼女も存在は知っていたが、本当にいるのかは半信半疑だった。
しかし、実物を見てしまった以上、信じらざるを得ないだろう。
呆けていた
「あ。そういや何で電話出なかったの?」
「え……?あ、すみません。機内モードにしてました……」
「あんたねぇ……」
携帯を確認し、テヘヘと笑う
その後、スパイダーマンは次々と姉妹たちや友人を屋上へ連れてきた。
順番としては、
「わぁぁぁああぁあああーーーーーーッ!!!?」
風太郎は情けない声を上げながら到着した。一緒にいたので連れてきた
流石のスパイダーマンもあまりにもうるさすぎるので、ウェブで口を塞いでやろうかと思ったが、鼻に詰まって窒息なんてことがあったら大事なのでしなかった。
屋上に降ろすと、解放された風太郎は床に大の字になって寝転がる。ウェブスイングは彼には刺激が強すぎたのだ。
そんなぐったりしている風太郎に
「フータロー。大丈夫?」
「だいじょばない………。寿命が122年縮んだ………」
「えー?ジェットコースターみたいで楽しかったですよー。ですよね、らいはちゃん!」
「はい!」
血の気が引いている風太郎に反して、
現に彼女たちは遊園地でジェットコースターに乗った感じで、高所を移動する刺激を楽しんでいた。涼介は怖くて無言だったが。
その後、
「
「うん。この会場一帯探し回っているけど……」
「そうですか……」
スパイダーマンの返答に顔を曇らせる
何としてでも探し出してあげたいが、花火も残すことあと10分だ。いくら高所から探せても、建物の中まではわからない。
──もしかしたら遠くへ?その”用事”とやらが遠方であるのなら……。
「会場の外の方を探してくるよ」
「待って。もういい」
そう言って
彼女からの思わぬストップにスパイダーマンは止まる。
「あなたが頑張ってくれたのはわかったわ。けど、もう時間もないし……。後のことは私たちに任せてくれない?」
「でも、それじゃ──」
「いいの。1人いないけど、花火は見れたから……」
苦笑する
────五つ子の誰とも欠かさずに見たい。それが本心だろう。
彼女は姉妹の中で一番楽しみにしていた。それが叶わなかったので、本当は悔しくて泣きたいだろう。
今までマイナスなイメージしか持っていなかったスパイダーマンは、悲しみを堪える
スパイダーマンは
とはいえ、花火終了まで刻一刻と迫っている。どうすればいいか迷っていると──
「ショートメッセージかなんかでメッセージを残しておけばいいんじゃないか?」
「そうか!」
と、見かねた涼介の助言が飛ぶ。確かにショートメッセージやトークアプリなら、通話に出れなくても通知が出るから見る可能性は高い。簡単に思いつくことなのに、焦るあまり忘れていたスパイダーマンはマスクの下で納得の表情を浮かべる。
まさに天からの助け……
「送ったわ!」
「じゃあ、僕はこれで」
自分のお役御免と自覚したスパイダーマン。後は
スパイダーマンは屋上から飛び降りた。
驚いた一同は下を見るが、地上にはスパイダーマンの姿はなく、どこかへと消え去っていた。
《第14回秋の花火大会は終了いたしました。ご来場いただき誠にありがとうございました》
最後の花火が打ちあがると、しばらくしてからアナウンスが鳴った。
花火大会の会場から離れたとあるビルの正面玄関。そこに
彼女の今の服装は浴衣ではなく、Tシャツにショートパンツといったラフな格好だった。
「本日はありがとうございました」
「いや、休みに関わらず急に来てもらって悪かったね。映画の代役オーディションの枠が空いたから……」
「いえ、せっかくのチャンスですのでお断りはできません」
申し訳なさそうにする男に
そう、この話から分かる通り、
ちなみに他の姉妹は彼女が女優をやっているのは知らなかった。
用事というのは映画のオーディション──しかもかなり有名な映画とのことで、今までドラマや映画のモブ役をやっていた彼女にとっては千載一遇のチャンスだったのだ。
「今日の演技は今までの中で最高だった。私としては問題なく受かったと見ている」
「そうですか?」
「ああ。表情も柔らかだったし、台詞も自然さがあった。自信をもっていい」
自覚がない
褒めるところは褒めるべき……上司として最低限の成長の伸ばし方だ。
それを聞いた
「はい。またオーディションがございましたら紹介お願いします。では、失礼します」
「気を付けて帰るんだよ」
去り際に
スマートフォンを取り出して時計を見ると、時刻は20時19分になっていた。すでに花火大会は終わっている。
「(あちゃ~…
姉妹たちが怒っている姿を想像した
自分の夢がかかっている大切なオーディションがあったとはいえ、彼女たちに何も話さず、約束を破ってしまったことは事実だ。長女である自分がしっかりとしないといけないのに場を混乱させてしまったであろう。
「?」
歩きながらどう謝ればいいか考えていると、1件のメールが届いているのに気付いた。差出人は
メールを開くと、本文には『ここに来て』という短い文章に加え、公園の場所を示した地図のURLが添付されていた。
「(行こう)」
──行って全てを話して謝ろう。それで許されるか許されないかは別として、隠していたことを伝えることが大事だ。
道中迷うことなく進み、15分近く歩いた頃、目的地の公園へついた。
どんな顔をして待っているのだろうと気まずい気持ちで角をくぐったとき、目にしたのは──
「わーい!」
「ちょっと、
「夏の風物詩……」
「こういうのも悪くないですね」
和気あいあいと市販の手持ち花火を楽しむ妹たちの姿があった。
こじんまりとしながらも花火は闇夜に光り輝いている。
その光景に
「よお、遅かったじゃねぇか」
「フータロー君。これって……」
「ああ、手持ち花火で仕切り直そうって話になったんだ。一応、条件は満たしてるからな。これ、
「……ッ!」
それを聞いて目を丸くする
──どうして?何で?と頭の中で感情や疑問が錯綜する中、妹たちは
「あ!
彼女たちは待っていてくれたのだ。自分を信じて……。
そのことに
「やあ!」
「
それからすぐに
「
「…ん?ああ!返しておくよ……」
一瞬何のことか忘れていた
渡されたスマートフォンを受け取り、ズボンのポケットにしまう。
スパイダーマンと自分は別人である設定が崩れるところだったが、すぐに思い出せて功を奏した。
「涼介は?」
「門限が近いから帰った」
「そうか……」
今日はからかわれたりはして鬱陶しいと思いはしたが、親友とも花火を楽しみたかったという気持ちはあった。
全員が揃ったところで本格的に花火をしようかという動きに入ったとき、
「みんな、ごめん。勝手なことをして……。実は私────」
そう切り出した彼女は全ての事情と謝罪を告げた。
半年前から女優業をやっていること。急遽映画のオーディションが入ったこと。それらを黙っていたこと。そして、約束を破ってしまったこと……。
これらを隠すことなく明かした。
──責められてもいい。その決意で話した
「いえ、そんな謝らなくても……」
「お店の場所を言い忘れてた私も悪い」
「よくわからないけど、もう過ぎたことだし……ね」
「私も失敗ばかり」
「みんな……」
と、
てっきり不満や怒りをぶつけられると思っていたが、予想の遥か斜め上の展開に感動した
五つ子全員が花火を手に持つと、ふと思い返した
「お母さんがよく言ってましたね。誰かの失敗は五人で乗り越えること……。誰かの幸せは五人で分かち合うこと……。喜びも、悲しみも、怒りも憎しみも、私たち全員で五等分ですから……」
そう口にすると、五人は一斉に花火に火を点けた。
パチパチと点火した花火は彼女らを明るく照らした……。
「……」
幸せそうに花火を楽しむ彼女たち。落ち込んでいた
そんな彼女たちの姿に遠くのベンチから眺めていた
傍から見れば小さい花火だが、その輝きは打ち上げ花火以上のスケールで満たされていた。
花火をしている最中、
「ねぇ、
「何?」
「彼……スパイダーマンとはどこで知り合ったの?」
「え?ああ~……」
そう訊かれた
あくまでスパイダーマンとは自分は別人。正体がバレるようなことは決して避けなければならない。
上手い答えが浮かびあがった
「僕は彼の専属カメラマンみたいなものなんだ。ビューグルの写真も僕が撮ってる」
「へぇ~そうなの」
「え?みんなスパイダーマンに会ったんだー……。ねぇ、マナブ君。お姉さんにも今度紹介してよ」
「うん。でも、連絡先がコロコロ変わるから会えるかわからないけど……」
「う~ん。そっかー」
興味深そうに頷く
彼女たちにもし連絡先を教えたら、自分であることがバレてしまう。
スパイダーマンには正体に近づく証拠を1つも残してはいけないのだ。
その後、花火が少なくなったので線香花火をしてお開きとなった。
「お前ら!置き去りにするなーーーッ!!」
ちなみにベンチで寝ていた風太郎を
もちろんすぐにバレ、カンカンになった風太郎に追いかけられるのは余談だ……(体力がないのですぐに力尽きた)。
◆イースター・エッグ◆
①カフェ『Jon Watts』
MCU版「スパイダーマン」のメガホンをとった映画監督の名前から。ジョン・ワッツ監督もサム・ライミ監督同様に、アメコミ映画を撮る前は、ホラーやスリラー映画といった作品を撮っていた。
②「寿命が122年縮んだ………」
”122”とは原作漫画「五等分の花嫁」の総話数である。話は
③20時19分
2019年はアニメ「五等分の花嫁」第一期が放送された年。可愛い五つ子たちがこれまた可愛らしい声でしゃべって動くとファンからは期待が高まっていた。だが、作画崩壊が……
スパイダーマンを増やす?
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YES!(ヒロインなし)
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YES!(オリジナルヒロイン)
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YES!(五つ子の中からヒロイン)
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NO
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It's Morbin time