結局、護衛の話はアキラが根負けし、付けることになった。
だが、流石に忙しい団長はないという話になり、現在、アキラは護衛である『金色の夜明け』副団長『ランギルス・ヴォード』の箒に乗って、魔導書塔に向かっていた。
「君も随分偉くなったよね」
「……」
「ただ授与式に行くだけなのに、魔法騎士団最強と言われる金色の夜明け団副団長の僕を護衛にするなんて。君、いつからそんなに偉くなったの?」
と嫌味を言われていた。アキラは、若干目を逸らしながら口を開く。
「だって、パパがどうしてもって言うから……」
アキラは、そう小さく答える。ランギルスは、後ろを振り返った。若干罪悪感を感じているような顔をしているアキラの頭を別に気してないと言うように、撫でる。
魔導書塔につき、アキラはランギルスの箒から降りた。
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
アキラは、纏っている白いローブのフードを目深に被り、ランギルスに軽くてを降って別れると、魔導書塔へと入った。
魔導書塔に入ると、そこには既に2人来ていた。1人は銀髪に低身長の少年と、もう1人は黒髪長身の少年だった。神父とシスターが居ることから、恐らく教会の子供達だろうと思い、アキラは2人の横へ並ぶとペコリと軽く会釈すると、2人も同様に会釈を返した。
しばらく待っていると、次々に15歳の少年少女が魔導書を貰う為に集まって来た。
そして、ある程度時間が経った時、魔導書塔の管理人が出てきた。
『ようこそ受領者諸君。今日からそれぞれの道を歩む君たちへ……"誠実"と"希望"と"愛"を……!』
管理人は魔導書に関する事を長々と説明していた。
だが、誰1人として管理人の言葉を聞き逃すことは無かった。
『―――それでは…魔導書授与』
魔導塔内にある幾多の書庫から一斉に今年15歳を迎えた少年少女達の元に魔導書が飛んでくる。大きな物から小さなもの、厚いものから薄いものまで様々だ。
周りは、自分の魔導書をもらってはしゃいでいた。ただ、1人を除いて。
「あの~…魔導書が来ないんですけど……?」
呼びかけたのはアキラの横にいた銀髪の少年『アスタ』だった。
彼の呼びかけた内容は自分の元に魔導書が一冊もやってこない事だった。
魔導書塔内に静寂が襲い、管理人は前例のない事に戸惑い、
『え―――…また来年』
「えええええ!!?」
管理人の言葉に驚愕するアスタ。魔導書を手にできないアスタを嗤う他の少年少女達。
誰もがアスタを馬鹿にしている中、2つの黄金に輝く魔導書が降りて来た。
その光を放つ魔導書を手にしていたのはアキラと黒髪長身の少年『ユノ』だった。
アキラの魔導書には気品を有した金色の表紙に四つ葉のクローバーがあり、ユノが手にした魔導書には、緑色に四つ葉のクローバーが描かれていた。
(伝説の四つ葉の魔導書…………)
その場に居たもの達の顔色が一瞬で変わった。
何故、アキラとユノが手にした魔導書が伝説になっているのか……それはハージ村近くにある魔神を倒した初代魔法帝は"幸運"を宿した魔導書を手にしていたらしい。
しかし、彼と同じ四つ葉の魔導書を持つ者はいなかった。
つまり、アキラとユノは初代魔法帝以来の四つ葉の魔導書に選ばれた存在であるという事だ。
伝説の魔導書が目の前に現われた事に言葉を失い呆然と見守る皆。
アキラはそんな中、目深に被っていたフードを取り自分の魔導書をみつめる。
「伝説の四葉……」
アキラは、手にした魔導書を見て小さく呟く。
「俺は……魔法帝になる」
ユノの言葉に歓喜の声が魔導書塔内に広がった。
伝説の魔導書を手にした希望の星だと次々に告げる者達。その中には、下民であるユノが四つ葉の魔導書を手に入れた事に現実逃避する者もいた。
「……いいや、ユノ。魔法帝になるのは、俺だ!!!!」
「……ありえねー」
ユノはそう言ってアスタの隣を通り過ぎ、魔導書塔の外へと歩んだ。
アキラは、置いていかれたアスタを観ると踵を返し、魔導書塔から出た。
「ランギルス副団長〜!!」
「随分遅かったね。貰えた?」
「うん!見て見て!!世にも珍しい四つ葉だよ!四つ葉!」
アキラは、嬉々とした顔でランギルスへ魔導書を掲げて見せた。ランギルスは、アキラから魔導書を受け取ると驚いた表情を見せた。
「…………よかったね」
(間があった。多分、あんまりよく思ってないな)
アキラは、そんなことを思ったが口に出さず魔導書を返して貰った。
その後、ランギルスと共に王都へと帰った。
アキラは、帰りつき、ランギルスと別れると直ぐにユリウスの元へ向かった。
「パパ!マルクス!」
「あ、おかえり。アキラ」
「おかえりなさい、アキラ」
ユリウスとマルクスは、帰ってきたアキラを出迎える。
「見て見て!!世にも珍しい四つ葉だよ!四つ葉!」
アキラは、ランギルスに見せたように2人に魔導書を掲げて見せる。それを見て、2人も目を見開いて驚いていた。
その後、アキラは予定していた通り魔法騎士団最強と言われる『金色の夜明け』への入団が決まった。
(これで…みんなの為に戦える……)
アキラは、そう思いながら、自分の魔導書を見つめた。