入団試験の翌朝、アキラは早くに目を覚ました。まだ、他の団員たちも起きる時間ではないだろうと思い、アキラは長年使っているヴァイオリンを手にし、中庭へと出た。
ヴァイオリンを構えた時、少し冷たい風が吹き、アキラの頬を撫でた。
『♪〜♪〜』
柔らかで綺麗な音色が中庭に響く。
「そろそろ、弦変えないと駄目かなぁ……」
〈アキラ〜。もう起きてたの?〉
「んー。おはよう、レム」
ヴァイオリンを弾くのをやめたアキラに、欠伸をしながらレムが声を掛ける。その後、数分2人で雑談を交わしていると段々と団員達が起きて来るのを見て、アキラは部屋に戻り金色の夜明けのローブを羽織り外に出た。
アキラが廊下を歩いていると、前からユノとミモザが歩いてきており、アキラは立ち止まると2人へ声をかけた。
「ユノ、ミモザ、おはよう」
「おはようございます、アキラさん」
「おはようございます…」
「2人とも昨夜は良く眠れた?」
「はい、とっても良く眠れましたわ」
「大丈夫です」
ミモザは笑顔で答え、ユノは無表情で答えた。
アキラは、ユノを見上げると口を開いた。
「ユノ、私魔法帝の娘だけど、無理に敬語使う必要はないよ。同じ歳で同期なんだし」
「いいのか?」
「うん。どちからと言うと、そうして欲しい」
「分かった」
アキラがそう言うとユノは了承した。
その後、ユノとミモザはクラウスと共に任務に行き、アキラもウィリアムに呼ばれていた為、ウィリアムの所へと向かった。
「失礼します」
「待ってたよ、アキラ」
アキラが団長室へと入ると、ウィリアムは微笑んでアキラを迎えた。
「アキラに頼みたい任務があってね」
「はい。単独任務ですか?」
「うん。大丈夫かな?」
ウィリアムは団長用の椅子に座りながら目の前にいるアキラへと少し心配するように声を掛けた。
「特に問題ないと思います…。レムも居るので」
とアキラは答える。アキラの返答を聞き、ウィリアムは任務内容を口にした。
「最近、クローバー王国内で100人以上の盗賊が行動しているらしい。その裏には貴族が関わっていると言う話も出ている。これが襲われた村々とその盗賊たちの資料だよ」
ウィリアムから資料を渡されたアキラは、ざっと資料を見ると
「無差別じゃなく、騎士団が巡回を終えた時を見計らって襲撃してるみたいですね」
「その通りだよ。お願い出来るかな?」
「はい」
アキラは返事をすると、目的の場所へと向かった。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
アキラは次襲撃されるであろう村の近くの森に降り立った。
〈アキラ、ここであってるの?〉
「うん。ここはこの前"紫苑の鯱団"が巡回し終わった所だし、どうやら盗賊たちは同じ村は襲わないみたいだから」
レムに答えながら、アキラは木の枝に座る。
〈何か策はあるの?〉
「ないよ。策考えるのは専門じゃないし…。それに、私はその場で臨機応変に対応できるから、策を練ったとしても実践しないしね」
そう言い、アキラは盗賊たちが現れる夜まで待つ事にし、木の上で仮眠をとるように目を瞑った。
そして、時間が経過し、夜の23時頃。下の方で人の気配がしたアキラは目を開け、木の上から下を覗き込むと、黒いローブを身にまとった盗賊たちの姿を捉えた。
「来たね……」
そう言うと、アキラは箒に乗り村の方へと向かった。
「金と食料をありだっけ出しやがれ!!」
「少ねぇな、これだけか?」
「も、申し訳ありません。今期は不作が続きこれだけしか御座いません……」
「んな事などうでもいいんだよ!!足りない分は女共で手を打ってやるよ」
「そ、それだけは、どうか !!」
「うるせぇよ、ジジイ」
そう盗賊は言うと、村長の男を蹴り倒した。
盗賊たちが、村の女達を攫うと、近づくと数人の盗賊たちが光の刃で貫かれ、倒れた。
「おい、お前らどうした?!」
「こんばんは♪とりあえずお聞きしたいんですけど、魔法騎士団の情報を売っている貴族さんを差し出して欲しいんですが、宜しいですか?」
アキラは魔導書を開いたまま、笑顔で盗賊に話し掛けた。
「なんだ貴様は?」
「あ、もしかして、ボスの方ですか?今、貴方にあまり用はないので、下がっていただきたいです。なので、情報流してる貴族の方を出して頂けると、幸いです♪」
「お前ら、何やってる!相手はガキ1人だ!さっさと殺れ!!」
「どうやら、聞く耳は持って頂けないようですね」
盗賊たちが、魔導書を出しアキラへと臨戦態勢を取り、魔法を撃ってきた。
―――光創世魔法・光の城壁―――
アキラは撃ってくる魔法を金色に輝く壁で防いだ。
―――光魔法・光神の刃―――
光り輝く刃が飛び掛ってくる盗賊たちを容赦なく貫く。
魔法騎士団には星取得数による称号がある。
新人団員は全員、五等下級魔法騎士の称号で、五等下級から一等下級魔法騎士、五等中級から一等中級魔法騎士、五等上級から、一等上級魔法騎士。
そして、大魔法騎士と魔法帝という称号に上がっていく事になる。
だが、これには、任務によって得られる星を個人がどれ程取得したかによって称号が上がっていく事になる。
だが、これは称号の始まりが新入団員が全員五等下級魔法騎士から始まるというだけで、称号は実力というのは大半がそうであっても、ごくまれにその法則から外れた者が現れる。
その例外がアキラである。
恵外界出身でありながら、魔法帝の娘であるアキラは、王族、貴族をも凌ぐ魔力を身に秘めているのだ。魔力量だけを見れば、アキラは上級魔法騎士としての実力が存在していると言っても過言ではない。
そして、アキラは幼き頃から魔法騎士団達の戦いを間近で見てきた経験を活かし、今期の新人達より優れた戦闘力を持っていた。
盗賊達の中には下級は勿論のこと、中級魔法騎士や上級魔法騎士が数名ほどは居たが、アキラはそんなこと関係なしに、敵を戦闘不能へと追い遣っていた。
そして、残ったのは貴族の男と盗賊の男だけになった。
「なんでだ…上級魔法騎士以上の盗賊だって居たんだぞ!なのに何で……お前は一体…」
「魔法騎士団"金色の夜明け団"所属。アキラ・ノヴァクロノ」
そういったアキラを見て、顔をみるみるうちに青ざめさせる盗賊のボスと貴族の男。月明かりがアキラを照らし、アキラの纏っているローブを見て、更に顔を青ざめさせる。
「さてと、じゃあ、一度死にましょうか♪」
アキラは笑顔でそう言うと魔導書を開いた。
―――光魔法・光神の逆鱗―――
ドッガァァァン!!!!!と轟音が村中に鳴り響く。煙が晴れ、そこに居たのは、目を回し気絶した盗賊たちと貴族の男が残っていた。
アキラは盗賊たちと貴族の男を拘束魔法で拘束し、アジトへと連絡する。そして、魔法騎士団の本部へと連絡して、牢屋の準備をさせた。
騎士団本部の人達に盗賊たちを任せると、アキラは金色の夜明け団アジトへと戻って行った。
そんなアキラを、村の近くにある森で見ている男がいた。首より下の部分は白八割と黒二割の配色を持ったローブに、三つの目の様な装飾が付けられている服を着用した男は笑みを浮かべるとこう呟いた。
「さすがだね……。もっと強くなってね、私の愛しい
そう言うと、男は光となって消えた。