17日にグランデフェスっぽいですが皆さん石の貯蓄は十分か?
「いい機会だ。団長、依頼をしたいのだが構わないだろうか?」
あなたにフェトルという新しい仲間ができたところでモニカが言った。あなたは快く承諾する。しかし随分と唐突であるなとあなたは思うだろう。
「いやなに、フェトル殿に騎空団の仕事に慣れてほしいと思ってな。急ではあるが簡単な仕事を用意させてもらった」
「おっと。それは気を遣わせてしまって申し訳ない」
「いや構わない。聞けば貴公は異世界人。この世界の秩序も分からないだろう? であるならばそれを指導するのも我々の役目だ。それに団長だって貴公の能力を知りたいだろうしな」
「確かに。俺が何に役に立てるかはこちらの世界の住人でないと分からないか」
言われてみればそうだなとあなたは思う。
フェトル自身は機械技師と名乗ったが、彼の言いようではこちらで言う機械とは全く異なるものを触ってきているように聞こえた。その技術がこちらで使い物にならないのであれば、それ以外で活躍してもらはねばならない。
「だから今回団長には2つのことを依頼したい。まず、フェトル殿が乗ってきたという船の回収を頼む」
「む。それならわざわざ依頼という形にしなくても……」
「まぁ最後まで話を聞け。もう1つはあの周辺の魔物退治だ。……あのような大きな船の回収には台車か荷車が必要だろう? だが運び入れるには危険が多くてな。さける人員も今はいない。早急に解決できるならこちらとしても助かるんだ」
あなたは改めてモニカから依頼を受ける。
早速準備をしに行こうかとフェトルの手を引っ張っていくだろう。フェトルはその勢いの良さに驚きつつも、申し訳なさそうに言った。
「俺の尻拭いのようなことをやらせてしまってすまない。団長の手間をかけさせないように全力であたるよ。……あーそれで頼みがひとつあるんだが、何か剣のようなものはないか? 生憎と武器は持ってなくてな」
◆◆◆
『────』
「わかってるよR6。でもアレをこの星で使うのは危険だ。過ぎた技術は争いを呼ぶ」
クローン戦争時代から、共に修羅場をくぐってきた緑色の頭の相棒が心配そうに言う。だが俺はそう言って彼が見せる”それ”をまだ閉まっていくように伝えた。
辛くも尋問官たちの追撃から逃れジャンプしてきた先で、俺たちは謎の宇宙生命体の攻撃をくらってしまった。
その影響で惑星の大気圏への突入に踏み切らざるを得なくなったわけだが、このアマルティア島に不時着できたのは幸運だったろう。
秩序の騎空団や団長と言った面々に出会えたのは奇跡に近い。おかげさまで大事になる前にスターファイターを回収できそうだ。
「しかし異世界か……。そんな遠くを設定した覚えはないんだけどな」
ここには銀河を覆っていた暗黒面の暗いフォースの影さえも存在しなかった。クローン戦争が終わり銀河帝国が成立してからの5年間、ずっと俺の周りを付きまとっていたというのに、だ。
こんな所にこれるような座標設定はしていない。もしかしたらスターファイターに後付けした、おんぼろのハイパースペース用の装置を使ったせいで、本当に異世界に来てしまったのではないだろうか。
「異世界転生……いやこの場合は異世界転移か? 我が人生で2回も体験することになるとは思わなかったぜ」
『───?』
「なんでもないよR6。とりあえず準備を急ごう。団長が待ってる」
スターウォーズの世界に転生した。そういう経験が無ければ今頃パニックに陥っていたかもしれない。一度あったことなのだ。二度あってもおかしくはないかと考えれたおかげで、すんなりとこの状況を受け入れられていた。
「しかし異世界人が多くやってくるって、どういう世界なんだここは。ファンタジーっぽいのは分かるんだけどな」
団長の発言を思い出す。あの言葉がなければここに留まるという判断はできなかっただろう。
俺は今
だからこうして騎空団に所属する事も出来た。通貨もルールも違う場所で行動の制限がないのはやりやすくていい。おかげで生活には困らなさそうである。
とはいえ長居もしていられない。スターウォーズ世界の技術は絶対にこの世界にとって良いものでは無い。スターファイターかライトセーバー、R6が何者かに盗まれて解析されたりでもしたら大変なことになるだろう。
加えて、尋問官たちが絶対にここに来ないとは言えない。団長の言葉を聞く感じでは異世界人は結構頻繁に来ているようだった。一度つながってしまった世界の住人が、もう現れないなんて言う保証が誰にできるだろうか。そんなことが出来るのは神だけである。
その確率がたとえどんなに低くてもある以上、俺はとっととスターファイターを治してどこか遠くに移動しなければならない。
だからこの騎空団でお世話になるのはスターファイターの修理が完了する間だけだ。技術レベルがよく分からないし、代わりになるようなパーツがあるかも分からないのでどの程度になるか推定することは出来ないが。
「なぁR6、似合ってるか?」
『───!』
「ありがとう。まぁ似合うよな、道着に竹刀だもん」
団長はどうやら武器を集める趣味があるようで、剣や槍、斧といった様々な物を余るくらい収集していた。その中から、できるだけライトセーバーと同じ長さを持った剣を選んで貸して貰った。
それで渡されたのがこの『袋竹刀』だ。多少乱雑に扱っても問題はないらしく、強度があるので防御にも十分使用出来る代物なんだとか。
その分『斬る』というよりかは『叩く』という感じの剣だそうだが、ライトセーバーばかりを使ってきた俺にはそっちの方がいいかもしれない。
あれの斬れ味は良すぎた。あれは刃物と違ってどんな方向から斬っても切断できる武器であったので、刃の向きとか考えずに攻撃と防御を両立できていた。
それに慣れてしまった俺には刃に沿ったキレのいい剣筋とか無理そうである。それなら寸止めに近い感覚で扱える、『叩く』竹刀の方が合っている。それにちゃんと力を込めれば魔物を屠れるくらいには攻撃力はあるらしいし。
「よし。それじゃ行くぞ。車を押すの、頼んだぞ相棒」
『───!』
「おぉ! 随分様になってるじゃねぇか!」
騎空艇の甲板に出ると、ビィという小さな赤い竜がこちらを見てそう言った。それに反応してルリアと団長もこちらを向き、近づいてくる。
「似合っているようで何よりだ。荷車の用意はできてるのか?」
「はい。外で他の団員の皆さんが見てくれてます」
「他の団員?」
「あぁ! でかい機械を運ぶんだろ? だったら人がいるって思ってな」
話しながら甲板をおりると、そこには木製の荷車と、その横で談笑している3人の団員が見えた。
「あ、みんな来たみたい」
「おぉ、貴殿がフェトル殿か某はジンと申す」
「ボレミアだ。こっちが……」
「サラです! よろしくお願いします!」
「フェトル・ナジュムだ。よろしく」
その3人はなんとも多種多様な装いをしていた。ボレミアと名乗った彼女はファンタジーらしい騎士や傭兵然とした格好であるのに対して、ジンは腰に刀をぶら下げた和風……? の服装をしている。
サラはヒラヒラの、どこかの巫女や姫を連想されるような装いだ。ていうかこの子いくつだよ。団長でも若いと思ったけど、彼女に関しては幼さすら感じられるぞ。
「団長から聞いた話だと荷運びを手伝ってくれるという話だったが……ジンやボレミアはともかく、サラも同行するのか?」
「実はなフェトル殿、我々はサラ殿の付き添いなのだ」
「え、本当に?」
「はい! サラちゃんには心強い味方がいるんです」
「ちゃんと紹介しなくちゃですよね。来て───グラフォス!」
そうサラが叫んだ瞬間、強いフォースが彼女の周りを漂い始めた。
暗い気は感じられないが凄まじい力の奔流に思わず目を細めてしまう。サラの方を伺うと彼女の周りに黄金にも似た砂が浮かび始め、集まってひとつの物体を形作った。いや、生物だろうか?
「砂神グラフォス。サラは砂神に仕える巫女だったんだ」
「いやはやこれは……凄いな」
「グラフォスはとっても強くて力持ちなんです。今回のことでお役に立てるかなと思って」
確かにこの力があればスターファイターを持ち上げて運ぶのは簡単に出来るだろう。だがしかし、困ったな。意気込んでいるサラには悪いけど、既にそういう重量問題の解決策はあるのである。
「ありがとう、サラ。もしも俺の試す方法がダメだった時は頼むよ」
「……もしかして迷惑でしたか?」
「───」
ヒェッ。
声には出さないが身震いがした。サラが悲しそうな顔をした途端にボレミアから良くないフォースが感じられたからである。もしかして彼女、かなり過保護なタイプの人なのか……?
「い、いやいや違うんだ。その気持ちはありがたいし、実際に頼るかもしれないから来てくれるとこちらとしても助かる。ただ……」
「ただ?」
「今回の仕事は俺の不始末が原因なんだ。だから、できるだけ皆の手を煩わせたくなくてな」
一応、魔物退治という名目もあるので人手は必要なのだろうが、メインは俺の船の回収である。既に団長や秩序の騎空団に迷惑をかけてしまっているのに、更に団員の手も煩わせたらジェダイの名折れである。
「それにこれは俺たちの最初の仕事だ。団長へのアピールの場も兼ねてると俺は思ってる。だから、みんなと一緒に俺の活躍を見ててくれないか?」
「分かりました。でも……」
「あぁ、本当に困った時は遠慮なく頼らせてもらうよ」
「はい!」
良かった。サラは納得してくれたみたいだ。ボレミアも殺気が収まっているみたいだし、上手くやれたと見て構わないだろう。多分。
「よし、それじゃあ荷車はR6に任せて行くとしようか」
「えぇ!? これとっても大きいですよ!?」
「ルリア、R6を舐めちゃいけないぞ。こいつはこれくらいの物なら難なく運べるさ」
『───』
「おぉ。ワイヤーが引っかかって……」
「凄いねボレミア! 1人でどんどん引っ張ってちゃうよ」
「あぁ、見た目からは連想できないパワーがあるな」
◆◆◆
「……」
「───ッ!」
ジンはただ彼の流れるような動きを目に焼き付けていた。
フェトルはその手に持った竹刀で襲い来る魔物たちを次々と斬り伏せていく。先程彼が言ったように他の誰の手も煩わせることなく。
「……すごい」
「道着の兄ちゃん、もの凄く強ぇじゃねぇか」
団長たちは彼の活躍を見て各々唸る。機械技師とは何だったのか。明らかに体系化されたその剣技に、彼らは魅了されていた。
彼が魔物相手に用いていたのは”フォームI”、【シャイ・チョー】である。
ジェダイの誰もがこの剣技を学ぶ。最も古典的でセイバーテクニックの基礎を形作ったフォームであるが、それ故に荒削りで、時代と共に対セイバーやブラスターを主眼に置くようになった銀河では、あまり実戦的とは言えないものであった。
そのため、このフォームを学んだほとんどのジェダイが、自身のフォースや性格に似合ったフォームへと転向、修行してジェダイ・ナイトとなっていく。それはフェトルも例外ではなく、彼が用いる本来の型もこのフォームではない。
だが、袋竹刀を持った状態で対魔物相手に戦うなら、遥かにこのフォームの方が勝っていた。
ライトセーバー黎明期に発展したこの剣技は、原生生物を相手取る際や、相手を殺傷せず無力化するという点において非常に特化していた。
『斬る』よりは『叩く』。
フェトルはクローン大戦以前の、まだ平和の調停者であった頃のジェダイの在り方に立ち返りながら、その剣さばきをさらに鋭いものにしていく。
その舞にも似た戦いが終わった頃には魔物たちは地に倒れ付していた。しかし、彼らの体からは血の一滴も流れ出ることはなく、彼らの命はひとつとして散ることもなかった。
あなたはそれが気になってしまい、フェトルに問う。
15歳の若者であるあなただが、魔物たちの驚異はしっかりと認識している。
ディアドラが住むアイルストという例外こそ存在すれど、基本的に彼らは縄張り争いをする敵同士であり、故に躊躇えばこちらの命も危うくなる。
彼らが営みの驚異となるからこそ、騎空団に討伐を依頼されるわけである。
騎空団の団長たるあなたは、依頼された以上一切の容赦なくその命を絶たなくてはならないという認識を持っていた。
生き残らせればまた襲わせる機会を与えることとなり、魔物による被害を抑えるという観点から見れば、依頼を達成したとはいえなくなるからだ。
「その理由は主に3つ。ひとつは、今回の仕事の場合は魔物を完全に殺す必要は無いと判断したからだな」
今回のメインはあくまでもフェトルの船の回収である。
その驚異となりえるのが、彼の墜落現場付近に生息する魔物たちだった。だからモニカはその討伐を依頼した訳だが、それは回収作業の邪魔になるからであり、アマルティアの街に被害が出たからというわけではない。
だからこそ回収作業が終わるその時まで眠っていてくれれば十分なのである。
「2つ目はこの辺の生態系を乱しすぎないようにするためだ。下手に介入しすぎて逆に魔物たちが活発になったら怖いからな」
生態系とは絶えず変化するものだ。
野生においては弱肉強食が絶対のルールである。そこには狩るものと狩られるものが存在し、それは魔物同士の関係にも当てはまる。
もし今殺したのが狩られる側の弱者なら、強者は餌を求めて街の方まで行動範囲を広げるかもしれない。
逆にこの辺りを仕切る強者が死ねば、ここは縄張り争いなどで荒れてしまい、その影響は生活に及ぶかもしれない。
だからこそ現状維持に努める。旅に出る前は狩りをして生活をしていたあなたはこの考えにすぐに納得することが出来るだろう。
「そして3つ目。多分、この辺で魔物が暴れてる原因が俺の墜落だからだな。勝手に踏み入って勝手に荒らして勝手に殺す。酷いとは思わないか?」
「それは確かにそうかもしれないが……。フェトル殿はどうしてそのように思ったのだ?」
「彼らからは混乱や恐怖と言った感情が感じられたんだ。モニカからはここ最近この辺りは荒れていなかったと聞いている。なのにそんなものが感じられたってことは、原因は最近この辺りで起こった何かだ」
「それが船の墜落、か。しかしフェトル、お前はどうして魔物の感情が分かったんだ?」
ボレミアの疑問にあなたは首肯するだろう。彼の物言いでは戦いの中それを感じて非殺傷に切り替えたように聞こえる。
あなた自身も多くの経験を積んだことで、戦いの中で殺気や敵意に敏感になったり、人との会話の中から感情を読み取る術を身につけたりしたものだが、流石に先程のような一瞬の攻防の中で、種族の違う生物の感情まで図る術は知らない。
「フォースのおかげさ」
彼はあっけらかんと言った。しかしあなたたちは首を傾げるばかりである。
「フォース、ですか?」
「あぁ。俺は彼らから発せられるフォースを読み取っただけなんだ」
さも当然のことようにフェトルは言うが、あなたたちの疑問は膨らむばかりである。
「えぇと、よく分からないです……」
「そもそもフォースとはなんだ。変なことを言ってサラを困らせるな!」
「わ、悪かったよ。ちゃんと教えるからそう怒らないでくれないか」
とは言っても見せた方がはやいかなーとフェトルは呟きながら歩き、そして足を止めた。
件の船がある目的地に着いたのだ。
「よし。R6、準備してくれ」
「待ってくれよ。まださっきの”ふぉーす”? の話が終わってないぜ」
「それを今から見せるのさ、ビィ。まずはこいつを地中から引っ張り出さないとな」
あなたは彼の視線の先にある船を見る。
真ん中に大きなガラスのドームがあり、その中にはシートが見える。
後ろにある突起はエンジンだろうか。横に広がる羽のような部分は片方が焼け焦げている上に、引きちぎられたような跡がある。
そしてその先端は三角形のように尖っているのだろうか。土が盛り上がって埋まってしまっている。
モニカから聞いた通りの光景に、やはりサラを連れてきて正解だったとあなたは思うだろう。グラフォスがいれば台車に乗せることは容易いはずだ。
「ほんとうにグラフォスの力が無くても大丈夫なんですか?」
「あぁ、大丈夫だ。まぁ見ててくれ」
だがフェトルにその気は無いようで、優しい声でサラに語りかけた後、一歩前に出て両手を船の方に突き出した。その姿に一同は不思議そうにフェトルを見ることしかできなかった。ボレミアからは若干怒気が感じられたがこの際は触れないでおこう。
1、2、3───。
彼が手のひらを広げ、腕を突き出してから、静寂がこの場を支配し、ただ時間だけが過ぎる。
「オイオイ、そんなところで突っ立って一体何をしようって───えええええええええ!!?? 」
堪らず呆れてしまったビィがフェトルに語りかけようとしたところで、それが起こった。
「はわわっ!? 船が宙に浮いてますぅ!」
「これは……っ!? なんと摩訶不思議な」
「フェトルさん、触れてないよね?」
「あぁ、私たちにもそう見える。一体何が……」
その光景を見てあなたの仲間たちは次々と声をあげるだろう。あなた自身も驚き、息を飲んでじっと見つめている。
彼の乗ってきたという船の全貌が明らかになった。思っていたよりも分厚いそれは明らかに人の何倍もの質量を有しているというのに、宙に浮いていた。
しかもそれをしたであろうフェトルはただ目を瞑って手を伸ばしているだけである。彼自身は触れていない。
「────」
深く息を吸い込みながら、彼はゆっくりと腕を横に動かした。R6が引っ張ってきた台車の方へ向けると、それに追従するように彼の船も動く。
まるで見えない大きな手があるようだ。慎重に、丁寧に、ゆっくりと浮いていた船はどんどん沈み、台車の上に置かれた。
「これがフォースさ」
一仕事終えたフェトルは、瞑っていた目を開いてあなたたちにそう言った。
初めての書き方でしたけどどうでしたかね……?
それはそうと土古戦場まであと一週間ですね。
リアル事情と準備のために色々頑張るので、次の更新は未定です。
とりあえずロベリアは取んなきゃね……。