【悲報】青獅子の学級俺氏、詰む   作:一般通過アガルタ民

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評価感想お気に入りありがとうございます。 思っていたより反響があって嬉しくて続きを書きました。

主人公の名前、エ↑ーギル公と被ってた。設定厨なんで良い代替案考えたら変えるかもしれないです。

無双は青と赤をクリアして今黄やってます。助けてシェズ



第3話

学級対抗戦は、アーサーの予想通り黒鷲学級の勝利で終わった。

記憶喪失という事情が事情なので、アーサーは勿論学級対抗戦に参加はしなかった。

もし仮にアーサーが記憶を無くす前のアーサーのままであったのならば、学級対抗戦の戦力として数えられていたかという疑問はもちろんあるのだが、生憎その答えは女神すら知らぬ答えである。

 

結果なんて興味無いね…と立ち去ろうとしたアーサーを「でーんか。どこに行くんですか」と捕まえたのは、シルヴァンであった。

アーサーの極めて偏見的かつ主観的な視点で答えれば、シルヴァンの目は笑っていなかった。

シルヴァンの巧みな話術にあれよこれよと乗せられ、結局学級対抗戦を最初から最後まで観戦する羽目になった。 欠伸をかみ締めているうちに帰ってきた学友達に手布と水を渡す。

 

「負けてしまった。流石エーデルガルトは強いな」

「…おつかれ」

 

 

何さわやかにわろとんねん。

 

 

イケメンは汗までイケメンなのかとディミトリに八つ当たりに等しいやっかみを付けながら、ディミトリにも水を渡す。「ありがとう」と爽やかなお礼と共に受け取られた。

 

今回の対抗戦という名の実戦でわかったことは、やはり級長は化け物揃いだということである。

 

エーデルガルトとディミトリは紋章の力だけじゃない。本人の努力の賜物でもあるのだろう。その実力は抜きん出ている。 「力」という観点でみればクロードは劣っているが、その戦略は目を見張るものがある。ローレンツが勝手に進軍していなければ、青獅子が最初に脱落していたのかもしれない。

 

どの学級も、実力は拮抗していた。では勝敗を決した要因は何か。

 

もちろん、それは先生である。

 

黒鷲をアッシュの弓で挑発し、戦場の中央に連れ出す。 そこで一気に攻勢に叩く。

戦力を温存し、統制の取れていた青獅子は、金鹿を倒し、疲弊しているはずの黒鷲に勝てるポテンシャルは、充分過ぎるほどにあった。

 

唯一と言ってもいい実戦に慣れている先生自身も戦闘に参加していたことも要因の一つだろう。

 

しかし先生は、それぞれの生徒の相性を正確に見極め倒してしまったのだ。

前線に出たアッシュを落とし、次に回復役であるメルセデスを狙い、次にディミトリを魔法で一斉攻撃したのである。

 

学級生徒の全員の敗退が今回の敗北条件ではあるが、級長を討ち取れば士気が格段に下がる事を狙ったのだろう。

 

学級対抗戦は負けてしまったものの、青獅子もお疲れ様と言う事で食事を兼ねた親睦会を開くことになった。

 

「殿下。お怪我はありませんか」

「チッ…不甲斐ない…」

「すみません殿下…。僕がもっと踏ん張っていれば…」

「まあまあ、反省はあとにして楽しもうぜ?せっかくの料理が冷めちまうしよ」

「わたしももう少し頑張るべきだったかしら〜?」

「そんなことないよメーチェ!」

 

「皆、よく頑張ってくれた。今回は負けてしまったが…勿論このまま指をくわえているつもりは毛頭ない。鷲獅子戦にむけて、青獅子学級一同共に励んでいこう」

 

 

親睦会と言ったのに、いつからここは反省会場になったのだろうか。

 

学級対抗戦の勝敗が、鷲獅子戦の結末を占うと誰かが言っていた気がする。

しかし、実際はそんなちゃちなもんを占うんじゃない。もっと大きいものだ。

言わば鷲獅子戦こそがグロスタールの三つ巴戦もとい、血の同窓会の前哨戦なのである。

そして、もしかするとファーガス神聖王国の命運そのものであった。

 

 

なんていうのは野暮なんだろう。

 

 

 

「イングリット、肉いる?」

「い、良いのですかアーサー殿下。いえでも…」

「じゃあフェリクスにあげるわ」

「フェリクスに差し上げるくらいなら私が食べます!」

「おい。どういう意味だ」

 

ニコニコと笑うイングリットと噛み付くフェリクスを横目に、アーサーはため息を吐いた。

 

 

 

 

 

後日。

 

「おはよう。よく眠れたか?」

 

「……オハヨウゴザイマス」

 

「こら、二度寝しようとするな」

「今日、週末だよね?」

「ああ。ん?まだ寝衣なのか。ほら、早く起きて着替えろ。まさか着替えまで手伝えなんて言わないだろうな」

「いやいやいやいやいや」

 

休日の朝、部屋に訪れたディミトリに再び被ろうとした毛布をひっぺがされそうになって、しばしせめぎあいが続く。案の定アーサーが負けた。

 

「休みだぞや・す・み!せめて朝食と昼食を兼用するくらいの惰眠を貪るのは許されるべきだ」

「それは惰眠だと認めているじゃないか。今日は俺が午後から用事があるから午前中しか付き合ってやれないんだ」

「いいよぉ…兄上も午前はゆっくりしようよぉ…」

「マヌエラ先生から週明けから実戦訓練の許可も出ていただろう?鍛錬は一日でも空けると元の感覚を取り戻すのには時間がかかる。今からやっておかないと、授業についていけなくなるぞ」

「…」

 

顔を枕に埋めた中で、目が死んでいくのをアーサーは感じていた。

先週は散々で、訓練や運動を伴う課外活動は頭の怪我で絶対安静ということで控えられていたが、座学はほとんど分からず、疲労と困惑の連続だった。

 

自国の王子を放っておく訳にもいかないという事情を踏まえても、青獅子学級の面々は非常に優しくて親切であった。

懇切丁寧に勉強を教えてくれたが、アーサーの貧弱な頭脳では詰め込める知識にも限界がある。むしろ、異世界転生したてでよく頑張ったと言えるだろう。

座学でさえ精一杯なのに、来週からは皆と同じく訓練も追加されれば、さらに遅れをとることになるのは想像に難くない。

寝台から四つん這いになって数十秒静止したあと、そこでようやく寝台から立ち上がった。

 

 

諦めて寝間着から着替え、ディミトリと向かった場所は訓練場である。 案山子として立てかけられている鎧の傷や凹みやらで鈍くなった光の反射が、哀愁を漂わせている。

 

「訓練用とはいえ、怪我をしないように気をつけろよ」

 

アーサーが壁にかけられた旗のセイロス教のマークをぼんやりと眺めているうちに、ディミトリに使い古された木製の長い得物を渡された。

 

「…槍?」

「ああ。お前も得意科目に槍術を記入していたから、槍をやるのとばかりに思っていたが、違ったのか?」

 

何を語ればいいのかわからず、結局開けた口を閉じた。

槍だの剣といった、直接相手を手にかける武器よりかは、弓などの方が良いのでは無いかと考えたから――というのは建前で、前線に出るデンジャラスな槍兵や剣兵なんぞやってられるかという、ふざけた理由をこのクソ真面目な兄に言えるはずもない。

 

「槍術がおれの得意科目って、今知ったから」

「そういえばそうだったな。まあ、とりあえず一度やってみよう。槍ならば俺が教えられるしな」

 

なんとか誤魔化すと、ディミトリにまず構え方と基本の動作の手本を見せてもらう。

「怪我をしないように気をつけろ」という忠告と共に、槍を突き出した。

 

「(――――あれ)」

 

経験の無い素人が振るう分、無様な動きになるという予想とは裏腹に、槍の穂先は綺麗な直線を描いた。

訓練用とはいえ、ずっしりと重いはずの槍は、何故かよく手に馴染む。

 

「良かった、よく出来ているじゃないか」

「おお?」

 

記憶は無くても、この体は覚えているというアレなのかもしれない。

体と心の乖離による違和感と不快感に思う所がない訳では無いが、むしろ祝福すべき事だろう。少なくとも戦えることはこの世界で必要不可欠なのだから。

 

まるでアクションゲームのように体は軽くよく動く。この一週間辟易していたが、ようやく異世界転生らしい要素が出てきた―――といった希望は、隣の青いゴリラによって儚くも散っていいった。

 

「うわぁ…」

 

真っ二つどころか粉々になった槍と、抉れた地面。

どこぞの聖王代理のように訓練場を破壊したのは、アーサーに手本を見せようとしたディミトリである。

 

ブレーダッドの紋章の威力は不遜にも荷物持ちなどをやってもらった時点で痛感していたが、戦闘になればここまで恐ろしいとはアーサーの予想外であった。

 

「ついやってしまった…」

「何?毎回こんなに破壊してんの?」

「普段は出来ているんだが、今日は何故か力の制御ができなかった。槍はともかく、床は教団の者に謝らなければいけないな」

 

ディミトリによって生み出された地面に空いた穴も、衝撃でめくれ上がった隆起も、人間が「つい」で作れる物ではない。

 

紋章持ちのディミトリと同じ槍兵を目指した所で、かなう訳が無いのに、「前」のアーサーは一体何を考えていたのだろうか。

 

やっぱり槍ははやめて、弓や魔道をやろうかなとアーサーはぼんやりとえぐれた地面をつつく。

その後、一国の王子に対して叱ろうにも叱れない微妙な顔をした修道士を尻目に、今度はアーサーがディミトリを食堂に引きずることになった。

 

 

 

「チー…あー、なんだっけ。牛の乳から作られるやつ」

「もしかしてそれは乾酪の事か?」

「あっそれだ」

 

生憎、乾酪を使ったメニューは品切れとなっていた。

 

この世界では基本的にカタカナが通じないので、意思疎通には全く問題ないものの、微妙に困ることも多い。

 

チーズは乾酪、パンは麺麭と表記するのを見るだけでゲンナリする。いかに現代人が横文字に依存していたかがわかるだろう。

 

今はそういった多くの知識の欠如を「ボク記憶喪失デース!」で誤魔化しているが、「アーサー」は腐りきってもファーガス神聖王国の王子である。近いうちに少しでも体裁を取り作れるようにならねばならない。

 

 

「美味そうだな。腹を満たして、英気を養うとしよう」

「食事が日々の楽しみな気がするよ」

 

2人が「好物でもないが、嫌いでもない」食事を取ったような台詞を吐いたところで、ふとディミトリが匙をとめた。

 

「最近乾酪が入った料理をよく食べているよな。お前も乾酪が好きなのか?」

「言われてみれば、まあ確かにそうかもしれない」

 

ここ数日の話ではあるが、メニューにあれば無意識に選んでいたような気もする。

アーサーはストレスが溜まると食欲を無くすタイプでは無いので、自覚的には腹にたまるものを選んでいた。

 

「食堂に追加されることがあれば、ゴーティエの乾酪を食べてみるといい。あれは美味いぞ」

「ふーん…」

 

悪意はないものの、背中に集まる生徒の視線に酷く居心地の悪さを感じながら、ガルグ=マク風ミートパイをモソモソと食べる。

ディミトリはとっくに食べ終わっていたが、席を離れる様子が無いことにアーサーは気付いていない。

 

「先程言った通り、俺は今日の夕食は共に取れない。 俺がいなくともマヌエラ先生の検診にはちゃんと行くように」

「分かった」

「明日の朝は何も―――いや、また少し用事があるが、いつも通り部屋には迎えに行く。少し遅れるが、朝はいつもと同じ時間にちゃんと起きろよ」

 

 

アーサーは15歳で、金鹿学級のリシテアと同じく士官学校において最年少の部類に含まれる。

だからといって、ディミトリのそれはもはや歳を加味しても行き過ぎた物があった。

普段から級長として王子として忙しいだろうに、要介護の弟の世話も追加されたとなれば過労死してしまうかもしれない。

勿論、アーサーもアーサーでのっぴきならない事情があるのだが、嫌な顔ひとつもせずに付きっきりで世話を焼いてくる兄に、流石に心が痛むものがあった。

 

「あのさ。明日からおれ、授業以外は一人でも大丈夫だから。兄上も忙しいでしょ」

「ほう?お前が寝坊もせず、修道院内を迷わず、一日に何度も倒れる事がもう無いと言うなら俺も安心できるんだがな」

「一日に何度も倒れたのは初日だけで…寝坊と迷子は……はい…」

 

 

一日に何度も倒れた事はやむを得ない事情がある。

朝起きたら異世界転生していて、その当日に『おまえは既に死んでいる』と死刑宣告(に等しいモノ)を喰らえば、誰だって正気ではいられない。 むしろ一日に何度もぶっ倒れた程度で済んだ事を賞賛されるべきだ。

 

それはそうとして、朝は起きれずに結局ディミトリに引きずられて、何度教えて貰っても食堂に辿り着けないのは言い訳のしようがない。

 

「すまない。生活に慣れて、マヌエラ先生の許可が降りれば、お前ももう少し自由に動けるだろう。それに―――()()()()()()で一緒に食事を取れて、嬉しかったんだ。とても」

 

お前にとっては鬱陶しいだろうが、もう少し我慢してくれと苦笑するディミトリに、アーサーはその日初めて目を合わせた。

 

 

「別に、これからいくらでも一緒に食べられるだろ」

 

士官学校の終わりまで、少なくともそれなりに猶予はある。しかし、世話になっているのはアーサーの方なのに束縛を謝罪してくるなんて、どこまで聖人なのだろうか。

 

 

「……ああ、そうか。そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

どうやら時間ギリギリまで付き合ってくれていたらしく、ドゥドゥーの呼ぶ声がすると同時に、ディミトリは急いで行ってしまった。

目の前には、見慣れ始めた文字で「明日までに予習するように」と付け足された羊皮紙の束が置かれている。

 

 

「…………よし、殺そう」

 

 

 

パイの最後の欠片を飲み込むと、冷めきった紅茶に砂糖を投げ入れた。

 




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