うちの美少女AIが世界征服するんだって、誰か止めてくれぇ   作:月城 友麻

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31. 意志の力

 目を閉じて部屋に響く残響を聞きながら、ミリエルは嬉しそうに笑う。

 

「いい音なのだ、クフフフ」

 

 叩かれたところをなでながら、困惑する玲司にシアンが声をかける。

 

「彼女は美空の本体なんだゾ」

 

「は? 本体?」

 

「彼女はここで星系を管理している管理人(アドミニストレーター)、偉いお方なのだ」

 

 シアンは両手で彼女を紹介し、彼女は得意げにニヤッと笑う。

 

「え? 世界の管理者?」

 

 玲司は驚いて彼女を見る。

 

「そう、あたしはミリエル・アン・ジョベール。この辺の地球たちの偉い人なのだ! えっへん!」

 

 胸を張るミリエル。

 

「え? じゃぁ、あなたの分身が地球上の美空? 分身は死んだけど本体は無事ってことですか?」

 

「そういうことなのだ。美空の身体は消えたけど、記憶も体験も共有してるから何の問題もないのだ」

 

 ミリエルはニコッと笑ってサムアップする。

 

「あ、そ、それは良かった……」

 

 玲司は自分のせいで失われてしまった美空が、ちゃんと息づいていたことにホッとし、思わず目頭が熱くなる。

 

 もう二度と会えないとあきらめていた美空。絶望のどん底で彼女の真っ赤な血を唇に塗ったことも、いい思い出にできるかもしれない。ちょっと変わっているけど、こんな立派な女性となって目の前にいる。なんて素敵な奇跡だろう。

 

 玲司は感極まって、ポトリと涙をこぼした。

 

「な、何で泣くのだ?」

 

 ちょっと引いてしまうミリエル。

 

「美空にはもう二度と会えないと思ってたからうれしくて」

 

 玲司は手を伸ばし、ミリエルのすらっとした白い綺麗な左手を握った。

 

「な、何なのだ。調子狂うのだ」

 

 ミリエルはほほを赤らめてコーヒーをズズっとすする。

 

「良かった」

 

 玲司は美空との別れ際にしっかりと握っていた手を思い出しながら、ミリエルの手の温かさに癒されていた。

 

「それが、事態は全然良くないのだ」

 

 ミリエルはふぅ、とため息をついて言う。

 

「え? あ、そう言えば東京はどうなったの?」

 

「東京どころじゃない、これを見るのだ」

 

 ミリエルはテーブルの上に、一メートルくらいの丸い地球の映像を浮かべる。しかし、青いはずの地球は薄汚れており、明らかに異常だった。

 

 え……?

 

「東京、ニューヨーク、パリにロンドン……」

 

 ミリエルはそう言いながら瓦礫だらけの地獄絵図を次々と映していった。

 

「な、なんで……」

 

 真っ青になる玲司。なぜ地球が廃墟に覆われているのか理解できず、玲司は唖然として、ただ瓦礫の地平線を眺めていた。

 

「これはあたしたち管理側の問題なのだ」

 

 ミリエルはそう言ってため息をつく。

 

「管理側?」

 

「要は不毛な縄張り争いなのだ」

 

 そう言ってミリエルは肩をすくめ、じっと玲司を見つめた。

 

「こ、これ、俺みたいに生き返らせたり、街を元に戻したりできる?」

 

「そりゃもちろん。全てデータはアカシックレコードに残ってるのだ。だけど……」

 

 そこまで言うとミリエルは背もたれにドサッと体を預け、渋い顔をした。

 

「俺で手伝えることがあったら何でも言ってよ」

 

「君が?」

 

 鼻で笑ったミリエルだったが、ハッとなって少し考えこみ、

 

「いや、むしろ適任かも……しれんのだ」

 

 そう言ってまじまじと玲司の顔をのぞきこんだ。

 

「え? 適任?」

 

「君のデータセンター爆破はすごい良かったのだ。意志の力(グリット)はバカにできない」

 

意志の力(グリット)?」

 

「最後までやり遂げる力のことなのだ。これが高い人はあまりおらんのだ」

 

「さすがご主人様!」

 

 シアンは自分のことのように喜ぶ。

 

「あ、いや、まぁ、あれは美空が殺されちゃったから」

 

「君は何でもやるって言ったのだ。ちょっと手伝うのだ」

 

 ミリエルはニヤッと笑うとガシッと玲司の手を握った。

 

「あ、も、もちろん。手伝ったら地球は元に戻してくれるんだよね?」

 

「もちろんなのだ。今までいろんな調査隊を送り込んだんだけど、みんな帰って来なくて困ってたのだ」

 

 ミリエルは嬉しそうに握った玲司の手をブンブンと振った。

 

 え?

 

 ひどく重大なことを言われて凍りつく玲司。地球の管理者が解決できずに困っている難問なのだからその危険性は最高レベルに決まっているのだ。

 

 玲司は余計なことを言ってしまったと、宙を仰いだ。

 

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