うちの美少女AIが世界征服するんだって、誰か止めてくれぇ   作:月城 友麻

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46. 35.3%だゾ!

 玲司はソファにゴロンと横たわり、天井を眺めながらぼーっと考え事をしていた。そもそも、なぜゾルタンは裏切ったのだろうか? 別にミリエルの下で副管理人だって悪くはないと思うのに。何かケンカでもしたのかな? でもケンカしたくらいでこんなことになるものだろうか? 玲司には見当がつかなかった。

 

「ねぇ、シアン。ゾルタンはなんで裏切ったのかな?」

 

「ん? 人間は裏切るものだゾ?」

 

 シアンはコーヒーをすすりながら不思議そうに答えた。

 

「いやいや、そんなことないって。俺は裏切らないもん」

 

「え? 人間が信頼関係にある人を裏切る確率って知ってる?」

 

 シアンは眉をひそめながら聞いた。

 

「か、確率!?」

 

 玲司はいきなり確率の話を持ち出されて言葉を失う。世の中の人はどれくらい裏切るのだろうか?

 

 玲司は天井の木目の筋を無意味に追いながら、いろいろと考えてみたが全く分からない。しかし、裏切ってばかりなら社会は成り立たないはずだし、信頼してる人同士ならそれなりには低いに違いない。

 

「えーと、0.1%……とか?」

 

「35.3%だゾ! きゃははは!」

 

 シアンは思いっきり笑うと、コーヒーを美味しそうにすすった。

 

 へ?

 

 玲司は唖然とする。人間は信頼で結びつき一緒に暮らす生き物だ。三分の一が裏切るというのは全く納得がいかない。

 

「いや、シアン。それはおかしいよ。人間はそんな軽薄じゃないぞ!」

 

「じゃあ、ご主人様は結婚したとして、絶対浮気しないの?」

 

 シアンはいたずらっ子の目でニヤッと笑う。

 

「う、浮気!? え……と……。多分……しないんじゃ……ないかな……」

 

 玲司はとたんに勢いを失い、うつむいてしまう。もちろん、浮気しようと思っているわけじゃない。でも、十年経ち二十年経ってもずっと妻一人のことだけを見続けられるだろうか?

 

「ゾルタンも浮気したくなったんじゃない?」

 

 シアンの適当な意見に玲司は大きく息をつき、ソファーの上で寝返りを打った。

 

 人間は裏切る生き物だという現実を、自分の中にも見出してしまったこと。それは言いようのない失望を自らに浴びせかけていた。

 

 そうだ、人間とはこういう生き物だったよな。行き場のない不信感を玲司は持て余し、キュッと唇をかんだ。

 

 するとシアンはふわふわと飛んでやってきて耳元で、

 

「でも、僕は絶対裏切らないゾ。なんたってAIだからねっ」

 

 と、言うと、しおれている玲司のほほにチュッと軽くキスをした。

 

 うわぁ!

 

 優しく甘酸っぱい香りに包まれ、玲司は思わず焦る。

 

「僕を信じて」

 

 シアンはそう言うとギュッと背中に抱き着いた。温かい体温がじんわりと柔らかい感触の向こうから伝わってくる。

 

 玲司は自然と湧き上がってくる微笑みを抱き、シアンの手をそっとさすって気遣いに感謝した。

 

 そして、人間と言う度し難い生き物と、ある意味純粋なAI。この組み合わせは実は理想に近いのではないだろうかとぼーっと考えていた。

 

 

      ◇

 

 

 陽も傾いてきたころ、ミゥは二人を街に連れ出した。

 

 大通りには荷馬車が行きかい、わきの歩道を家路につく人たちが歩いている。両脇には三階建ての石造りの建物がずっと連なっていて、夕日を浴びてオレンジ色に輝いていた。

 

「何食べたいのだ? 肉、魚?」

 

 ミゥはちょっとおしゃれに紺色のジャケットを羽織り、グレーのキャスケット帽を目深にかぶって二人を見る。さっきまでの不機嫌さは見えず、玲司はホッとした。

 

「肉、肉ぅ!」

 

 シアンが嬉しそうに宙をクルクル回りながら叫ぶ。

 

「ちょっと! 目立つから歩いて」

 

 玲司はシアンの腕をつかんで地面に下ろす。Everza(エベルツァ)は魔法がある星ではあるが、気軽に宙をふわふわ浮いているような人は見かけない。

 

「歩くの面倒くさいゾ」

 

 シアンは頬をプクッとふくらませてジト目で玲司を見る。

 

「手をつないであげるから」

 

 玲司は親戚の小さな子供を諭した時のことを思い出し、シアンの手を握った。

 

「あはっ! これなら楽しいゾ」

 

 シアンは嬉しそうに腕をブンブン振り、軽くスキップしながら歩き始める。

 

「はいはい、そんな急がないで」

 

 玲司はふんわり柔らかい指の温かさにちょっと照れながらも、楽しそうな癒されていくのを感じていた。

 

「じゃ、肉にするのだ」

 

 ミゥは楽しそうな二人を見ながらちょっと不機嫌そうに言った。

 

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