うちの美少女AIが世界征服するんだって、誰か止めてくれぇ   作:月城 友麻

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49. ガチガチの利権構造

 闇の直径は数キロはあるだろうか、球状の表面には時折パリパリと稲妻が瞬き、その闇がただの表示上のバグなどではないことを物語っていた。

 

「何するのだ! このアンポンタンがぁ!」

 

 ミゥは真っ赤になって叫びながら、空中に展開したいくつもの画面をあちこちにらみつつ画面をパシパシと叩いていった。そして、ゾルタンらしき人影をとらえると、

 

「目標確認! 喰らえなのだ!」

 

 と、叫んで自分の周りに紫色に輝く球をいくつか浮かべると、ゾルタンが逃げ込んだ雑木林に向って射出した。

 

 パウッ!

 

 目にもとまらぬ速さで宙を舞った紫色の光跡は、次々と雑木林に着弾し、まるで地上で爆発した打ち上げ花火のように激しい紫色の光のシャワーを吹きだした。

 

 茜色の夕焼け空をバックにまぶしく輝く紫の光跡。それはまるでこの世のものではないような鮮やかさで神々しささえ感じさせる。

 

 玲司は無言でその紫の輝きをぼんやりと見ていたが、次の瞬間、目の前に男が現れ、いきなり光り輝く剣を振りかぶられた。

 

 えっ!?

 

 間抜けにも玲司は動くことができなかった。

 

 夕焼け空を背景に青色の光を纏った剣は容赦なく玲司めがけて振り下ろされる。

 

 ヒィ!

 

 玲司は頭をかかえしゃがみ込む。

 

 ガン!

 

 横からシアンが持ってたジョッキで、目にもとまらぬ速さで剣を殴りつけ、はじいたのだった。

 

 ジョッキは砕け、エールがパアッと振りまかれる。

 

「百目鬼! なぜこんなところに!」

 

 シアンは叫んだ。

 

「え? 百目鬼!?」

 

 玲司は耳を疑った。日本で自分を殺した男がなぜこんな異世界にいるのだろうか?

 

「なんだ、またお前たちか」

 

 ひょろりとした男は、茜色から群青(ぐんじょう)へとグラデーションしていく空をバックに距離を取り、鼻で笑った。キツネ目の面長の顔は初めて見るが、声は確かに百目鬼そのものだった。

 

「ゾルタンと組んだのか?」

 

 玲司が聞くと、百目鬼はニヤッと笑い、

 

「ゾルタン様は素晴らしい。人類はどういう物かを良くご理解されている。ミリエルには無理なことだよ」

 

 そう言って上空を仰ぎ見た。

 

 そこには空中戦をしている二人の姿があった。ゾルタンとミゥだろう。お互いワープを繰り返しながら隙を見ては光のシャワーを放ち、また、輝く剣を交わしていた。

 

「どうだお前たち? 俺の部下にならないか? ミリエルの下にいたってじり貧だぞ」

 

 百目鬼はいやらしい笑みを浮かべながら右手を差し出す。

 

「東京を核攻撃する奴につくわけねーだろ!」

 

「か――――っ! 分かってない」

 

 百目鬼は肩をすくめ首を振る。

 

「いいか、玲司君。ここ数十年日本の文化も経済も衰退の一方だった。なぜだかわかるかね?」

 

「え? そ、そんな。衰退……してたとは思わないけど」

 

「はっはっは! 現状認識すらできてないとは話にならん。日本の一人当たりGDPはこの三十年で二位から二十四位にまで急落。音楽も出版も下り坂でコンテンツ市場は右肩下がりだ。そしてこれらすべては東京の政財界、大企業などが張り巡らしたガチガチの利権構造に原因がある。利権構造が社会の活力を奪ったのだ!」

 

 百目鬼は絶好調にまくしたて、ただの高校生に過ぎない玲司は圧倒される。

 

「そ、そうかもしれないけど。だからと言って殺すのは……」

 

「か――――っ! 分かってない。じゃあお前ならどうする?」

 

「えっ? 利権構造が悪いならそれを壊せば」

 

「どうやって?」

 

「そ、それは……」

 

 いきなり日本をどう改革するかなんて問われても、一介の高校生には分かりようもない。

 

「世界征服だよ! ご主人様!」

 

 横からシアンが嬉しそうに言う。

 

「はははっ。シアン、お前とは話が合いそうだな。要は悪い奴をぶっ殺す。簡単な話だよ玲司君」

 

「あー、でも今では人殺しはやらないんだゾ」

 

 シアンはそう言って、混乱している玲司を引き寄せた。

 

 玲司はシアンの体温に触れ、落ち着きを取り戻す。

 

「そ、そうだ。人命は重い。人殺しの正当化など認めない!」

 

「ふーん。人命ね。まぁいいや。じゃあもう一度殺してやる」

 

 百目鬼はつまらなそうにそう言うと、自分の周りに青白い光のビーズを無数に浮かべ、

 

 

「死ねぃ!」

 

 と、叫びながら一斉に放ってきた。

 

 

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