うちの美少女AIが世界征服するんだって、誰か止めてくれぇ 作:月城 友麻
「なんだ、言葉もないか? 百目鬼君、この優秀なハッカーが作り出した革新的なシールドだよ。これで君らの攻撃は一切通用しない。どうだ? ミリエル、降伏するか?」
くっ!
ミゥはギリッと奥歯を鳴らしてにらみつけ、叫ぶ。
「ミリエルの答えは一つ。死んでも降伏などしないのだ!」
「ふーん、じゃあ君らには死んでもらおうか……。あ、そうだ、シアン君と言ったね。君凄いね。君は死なすに惜しいな。どうだ、ワシの部下にならんか?」
「部下?」
シアンが小首をかしげる。
「君の素晴らしい攻撃力、厚遇で迎えてやろう。ザリォ様もお喜びになるだろう」
「ザリォって誰?」
玲司はミゥに聞いた。
「奴は隣の星系の管理者なのだ。ついに隠す気も無くなったか!」
要はミリエルのライバルの管理者がゾルタンを引き入れて、ミリエルの足を引っ張っり、担当範囲の拡大を画策しているらしい。
「ザリォ様はお前と違って人間というものが何かよく分かっておられる。きっとシアン君の力も存分に引き出してくれるだろう。どうかね、シアン君?」
「だって、ご主人様どうする?」
シアンはそう言って玲司の方を見た。
えっ。
悲鳴にも似た声がミゥから漏れ、ミゥは玲司の袖をつまんでうつむいた。シアンはミリエル側の切り札である。ここでシアンが寝返ってしまったらもはやミリエルは滅ぶしかない。
まさか生殺与奪の判断が自分に来るとは思ってなかった玲司はちょっと驚いたが、ミゥの細かく震える手をぎゅっと握りしめると、
「人命を尊重できない人たちとは絶対組みません!」
と、力強い声で言い放つ。
ミゥは何も言わず両手で玲司の手を包んだ。
「と言うことなので、僕は寝返らないぞ! きゃははは!」
シアンは楽しそうに笑った。
「ふーん、惜しいな。じゃが、仕方ないか。ワシの究極奥義で葬ってやろう」
そう言いながらゾルタンたちは何やら攻撃の準備を始める。
勢いで断ったはいいが、このままでは殺されてしまう。
「シアン、逃げよう!」
玲司が言うと、シアンは不思議そうに返す。
「え? 倒さないの?」
「倒せるの?」「えっ!?」
驚く二人。
「倒せるゾ! でも、この星がどうなるか分からないけどね! きゃははは!」
不穏なことを言うシアンだったが、倒せるのだったらここで倒してしまう以外ない。逃げ続けててもいつかは追い詰められてしまうのだから。
「行ける、大丈夫、これ言霊だから!」
玲司はそう言ってシアンの背中をパンパンと叩いてゾルタンを指さした。
するとシアンはさっき焼け野原で拾った、半分焦げた木の枝を空間の裂け目から取り出すと、ビュンビュンと振り回し、感触を確かめる。そして、ゆっくりと目を閉じると、
「緊急動作モードへ移行します。全リソースをオペレーションへ投入します。周囲の方は十分に距離を取ってください」
と、合成音声みたいに案内文を棒読みした。
ぼうっと光を纏うシアン。
やがて光は強くなり、シアンの色が抜けていき、まるで輝く大理石像のようになると木の枝を高く掲げた。
すると夕闇の空にいきなり暗雲がたちこめだす。雲がどんどんと集まり、渦を巻きだし、時折稲妻がパリッと走り、その禍々しい渦を浮かび上がらせていく。
雲はどんどん厚く、渦はどんどん激しく回り、やがて中心部には台風の目のような穴がポッコリと開いた。
シアンはその穴に向けてツーっと上昇を始めた。
最初は余裕を見せていたゾルタンだったが、台風の目を見ると途端に焦り始め、
「あいつはヤバい。金星の臭いがする」
と、言って一斉にシアンに向けて青色に輝く弾を乱射した。
まるで天使のように神々しく白く光り輝くシアン、次々と襲いかかる弾の青い光跡。
しかし、青い弾はなぜかシアンに近づくと急速に輝きを失い、そのまま消えていってしまった。
「くぅ! なんだあいつは!」
ゾルタンは悪態をつくがツールの効かない相手には打つ手がない。苦虫をかみつぶしたような顔でシアンを見上げ、にらんだ。
シアンは台風の目の近くまで上ると、持っていた木の枝をツーっと台風の目に投げ入れる。
直後、暗雲全体がまぶしく発光し、激しい雷がシアンに落ちた。
ピシャーン!
「あっ! シアン!」
玲司は思わず声を上げる。
激しく光り輝いたシアンだったが、変わらず微笑みをたたえながら右手を高く伸ばした。
やがて降りてくる木の枝。しかし、その枝はメタリックに光り輝き、先端には揺らめく炎のようなものがついている。
玲司は急いでステータスを調べ、その異様な表示に驚いた。
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名称:ロンギヌスの槍
種別:???
攻撃力:???
:
:
機能:???
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名称以外すべての欄が「???」である。今までこんな表示見たことなかった。