ありふれた職業で世界最強~破壊の意思~   作:山上真

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16.5話

「探れる範囲で探って来たけど、領主は白だな。ここに来る前に先生が改善した農村も領内にあるんだけど、俺たちが去った後で食い詰めた賊が活発化したらしい。結果、そっちの対処でてんやわんやみたいだ」

 

 立ち寄った農村の村長から、最近村を悩ませている賊の対処を頼まれて早や数日が経っていた。

 進展が芳しくない中、宿の一室にてそう報告したのは浩介だ。素で影が薄い上に、暗殺者の天職により更に気配を薄く出来る彼は、非合法的な情報収集には打ってつけの人材である。念のため、この村の領主を探りに行ってもらっていたのだ。……領主とはいえ、住まいは別の街にあるために時間が掛かったのだ。

 

「チッ、面倒臭いな。こういう場合、賊と領主の結託ってのはありがちなパターンなんだが……」

 

 浩介の報告に舌打ちしたのは清水幸利。クラスメイトの一人で、闇術師の天職を宿す少年だ。

 周囲には内緒にしているが、ハジメと同じようにオタク趣味がある。先ほどのセリフはライトノベルや漫画、アニメにゲームでのパターンを前提にしたものだ。

 

「まあ、確かにそうね。悪代官ってのは時代劇のお約束みたいなところがあるし……」

 

 清水の言葉に同意したのは雫である。

 本人の剣に懸ける思いはともかく、家族と過ごす時間は好きな彼女だ。一緒に時代劇を鑑賞することはままあった。

 そして雫の言葉通り、勧善懲悪型の時代劇では悪代官の登場は欠かせない。『弱きを助け、強きを挫く』ためには、相手に一定の権限や立場が求められるのだ。その所業の中には悪徳商人や賊との癒着も珍しくはない。

 雫にしろ清水にしろ、あくまでフィクションによる知識ではあるが、異世界に召喚されたり魔法が使えたりと、そもそも現状がフィクションじみている。確認もせずに『有り得ない』と断ずるには根拠が薄かった。

 だからこそ、浩介に探ってきてもらったのだが――

 

「領主は白ですか……。となると、益々以て厄介ですね。単純に賊のリーダーに知恵があるだけなら良いのですが、そうでない場合は裏に何者かがいる可能性が高いです。それが領主であれば図式は割と分かりやすかったのですが、違うとなれば、現状見当がつきません」

 

 難しい顔でアマリが言った。

 

「実は私たちの考えすぎだった……ってパターンなら良いんだけどね。まあそれはそれとして、遠藤君も戻って来たことだし、次は現場検証としゃれ込まない? このまま考え込んでも埒は明かないでしょ。――あ、遠藤君は体力大丈夫? 休んだ方が良い?」

 

 そこへ、鈴が殊更明るい調子で提案した。

 それは尤もなことだった。既に村人たちから聞ける話は聞いており、仕入れられるだけの情報は仕入れているのだ。襲われた場所と、その際の状況についてもまた然り。これ以上聞き込みを続けたところで、得られる情報があるとは思えない。

 ならば、浩介も戻って来たのだし、村の外へ繰り出すには頃合いだろう。

 そう判断したが故の提案だったが、直後に鈴は肝心な部分を忘れていたことに気が付いた。

 現場に赴いたところで、そこから上手く情報を得られそうなのは浩介しかいないのだ。だが、肝心の彼は今しがた戻ってきたばかりである。体力が保つかは分からなかった。

 なので、当の本人に確認を取ってみたのだが――

 

「正直に言えば、少し休ませてもらいたいな。移動には馬車を使って可能な限り体力を温存したとはいえ、流石に領主のいる街との往復は疲れた。自宅と仕事場の両方を探らなきゃいけなかったから尚更だ」

 

 案の定、休息を必要としていた。

 分かりづらいが、首をコキコキと鳴らしているのが見える。

 

(稀有な才には違いないんだろうけどね……。ぶっちゃけ、遠藤君、気配薄すぎ! 魔法の対象に設定してようやく認識出来るってどういうことなの!? ホントに人間!?)

 

 鈴は心中で絶叫した。

 愛ちゃん親衛隊として行動する過程で、鈴もまたアマリから魔力操作を習っていた。習得するまでには時間が掛かったが、覚えてみれば確かに便利である。……愛子の護衛として教会から派遣された騎士も行動を共にしているため、使用には注意を払わなければいけないが。

 結界師たる鈴の得意とする結界魔法には、予めマーキングしておくことで、使用の際に勝手に対象としてくれるものもある。行使の前段階でもそれは機能するため、浩介を探すにはもってこいなのだ。

 つまり、鈴は『浩介がそこにいる』と魔法で認識してから目をやることで、彼の姿を己が目で認識しているのである。

 

「それでは、襲撃地点の探索は明日からにしましょう。何ヶ所かありますし、探索の進み具合によっては野営することになると思いますので、その点はご了承ください」

「了解。野営道具は馬車に積まれているから良いとして、泊まり込みなら保存食は買っといた方が良いわよね? 一週間分もあれば十分かしら?」

「それだけあれば十分だと思います。……すみませんが、買い出しはお願いしてもいいですか? 私は先生に報告しに行きますので」

「おっけー。愛ちゃんによろしく言っといて」

 

 そうして、この場は解散となった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 農村から続く道は幾らかある。アマリたちがやって来た道。領主のいる街へ続く道。そして農村から一番近い、農作物を卸す町へと続く道。

 この、農村と農作物を卸す町は基本的に一本道だ。かつての名残で道自体は今でもきちんと整備されているが、だからと言って通る人数が必ずしも多いとは限らないのが実情である。

 わざわざ好き好んで町から農村へ赴く者は少ない。それは商人も同じだった。何せこれといった特産品があるわけでもないのだ。農村なら他にいくらでもある以上、利に敏い商人がわざわざ護衛を雇ってまで行く価値は薄かった。

 早い話、この道を通る者は非常に限られているのが現実だった。

 しかし、それ故にアマリたちにはプラスに働く。

 人通りが少ないということは、襲われた時の痕跡が残っている可能性も高まる。ここ最近は雨も降っていないので尚更だ。

 

「……これはもう確定と言ってもいいでしょうね。賊の中に手練れの魔法使いがいます。少なくとも、王国の魔法師団より腕は上でしょう」

 

 襲われた場所を順繰りに古い方から巡っていき、最新地点を調べたところでアマリが言った。

 

「断言出来るの?」

「ええ、非常に巧妙ですよ。ここで襲われたという前提の上で注意深く調べて漸く分かるくらいですからね。普通に通りがかっただけでは、私でもまず気付きません」

 

 実際――既に痕跡自体が風化した可能性もあるが――古い方では全然気付けなかった。

 疑問を覚えたのは今より二ヶ所前だが、それも気のせいかと首を傾げるレベルだった。

 一ヶ所前で疑問は深まり、ここで確信を抱くに至った。

 

「ふ~ん、『アマリンが注意して調べて漸く分かるレベル』……ね」

 

 アマリの言葉に鈴は目を細めて復唱した。

 所詮は上澄み程度に過ぎないだろうが、アマリの実力は知っている。その上澄み程度でも、魔法師団など歯牙にもかけないということを。

 こと魔法に限って言うならば――

 

(アマリンに勝てる人物っているの?)

 

 と疑問に思うくらいだ。

 それを鑑みれば、決して侮っていい相手ではない。実際に戦えばアマリの勝利に間違いはあるまいが、自分たちが一緒なことを踏まえればどう転ぶかも分からないのだ。鈴とて召喚当初より強くなった自信はあるが、相手が殺生を厭わぬ場合、気圧される可能性は否めない。

 そこらの高校生より冷静である自覚はあるが、平和な日本で生まれ育った価値観の根底はそう簡単に変えられないのだ。他人に冷たく接することは出来るが、殺人行為には忌避感を覚える。この世界で生き抜くためには早いところ払拭しなければならないとは思うものの、そのためには相応の荒療治が必要となるだろう。それこそ、人を相手とした生死の懸かった戦いが必要かもしれない。

 

「ところで遠藤君の方は? 何か分かったことある?」

 

 ブルリと首を振って不安を打ち消し、鈴は浩介に問いかけた。思いの外アマリが役に立っているが、元々は彼の調査こそが本命である。

 

「ああ、荷を強奪した相手の逃走方向が分かった。痕跡が少なすぎて苦労したけどな。ここ以外の逃走方向ともぶつかる計算だ」

 

 浩介が差し出してきたのは手書きの簡易マップだ。道を示す二つの線と、襲われたヶ所を示す黒点が打たれている程度――なお、上端と下端にはそれぞれ『至る農村』、『至る町』と記されている。――の代物だが、幾つかの黒点から引かれた矢印が交差している地点がある。

 現在地と地図を示し合わせ、矢印の向かう方角へと視線をやると――

 

「森だな。これまた賊のアジトにはお約束じみたものがあるが……」

 

 清水の言う通り、森があった。

 村人によると、あの森には野生の動物や低級の魔物が棲息しているらしい。自然の恵みも相応に存在するとのことだが、これといった戦闘力を持たない村人が近寄ることは早々なく、たまに狩人が動物を狩りに赴くくらいだ。その狩人もあまり奥までは入らないため、全容は分かっていない。

 

「これは決まりかしらね。狩人が行くなら森の中に小屋ぐらいあってもおかしくないし、魔物や獣に対処出来る実力があるのなら拠点とすることも出来るだろうし……」

 

 森を見ながら雫が言った。

 実際に小屋があるかは分からないが、あっても別におかしくはない。何せ実際に森へ狩りに行っている者がいるのだから。件の狩人が把握していなくとも、休憩スペースや解体スペースが用意されている可能性は否定出来ないのだ。

 

「それじゃあ行きましょうか。……先導はお願いしますね、遠藤君?」

「あんま期待はしないでくれよ? あくまで天職と技能任せでしかないんだからさ」

 

 アマリが笑顔でお願いすれば、浩介は肩をすくめて答えるのだった。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

 謙遜した浩介だったが、森の探索は思いの外順調だった。街道とは異なり、人の痕跡が分かりやすいほど残っている。

 

「順調だな。順調すぎて怖いぐらいだ。……が、心理を考えれば案外こんなもんなのかもな」

 

 サクサクと森の中を進んでいる現状に、清水が感想を呟いた。

 

「あ~、何となく分かるかも。人通りが少ないとはいえ『街道』と、そもそも寄り付く人が少ない『森の中』だからね。街道の痕跡を消しちゃえば……と思っても無理はないかも」

 

 それに同意したのは鈴だ。

 

「それも間違いではないがね。他にも理由はあるとも」

「ッ……!?」

 

 そこに、一行以外の声が響いた。即座に態勢を整える。

 声のした方向に視線をやると、少し離れた樹上に人の姿が見える。フードを被っており、顔の全容は分からない。

 また、一行を囲むように人の気配が動いている。

 

「教会が声高に喧伝していることもあり、暫く前に勇者とその仲間が召喚されたことは、王都から離れていてもすぐに分かった。そして、『豊穣の女神』に件の仲間たちが護衛としてついていることも……。

 豊穣の女神の働きは著しい。おかげで、君たちの足取りと予想進路は簡単に分かる。……そう、今回の一件は君たちに対する調査なのだよ」

 

 フードの男は声高に叫ぶ。芝居がかった口調と身振り手振りだが、その実、一切の油断は見受けられない。

 

「なるほど、私たちに対する調査ですか……。それで、目的は私たちの勧誘ですか、魔人族の方?」

「ッ……!?」

 

 フードの男に対し、アマリもまた芝居がかった態度で微笑を浮かべて問いかける。懸命に押し殺したようだが、それでも隠しきれない動揺がフードの男を襲ったのが分かった。

 

「これは異なことを仰るお嬢さんだ。なぜ私が魔人族だと?」

「誤魔化さなくても大丈夫ですよ。そもそも、街道の痕跡を確認すれば一発です。王国の魔法師団でも、あれほど巧妙な魔法制御は出来ませんよ。あなたにしてみれば、『この程度は分かるか?』といった感じだったのかもしれませんが、人間族の魔法理解を過大評価していたみたいですね?」

 

 誤魔化そうとするフードの男に対し、アマリは街道の痕跡を持ち上げて封殺した。 

 魔人族は基本的に人間族より高い魔法適性を持つ。これは有名な話だが、だからこそ、最低基準を見誤ったのだろう。

 

「やれやれ、存外難しいものだ。……さて、人柄と調査能力は見せてもらった。次は戦闘力を見せてもらおうか、異教の使徒よ」

 

 アマリの言葉を遠回しに認め、フードの男は続けた。その言葉に従い、取り囲む気配が敵意を放つ。

 

「悪く思わねえでくれよ、嬢ちゃんたちに兄ちゃんたち?」

「俺らだって死にたくはねえんでな」

 

 言葉とは裏腹に、その顔は下卑た笑みを浮かべている。どうやら、こちらは賊で間違いないようだ。フードの男が脅して手駒としたのだろう。

 

「一つ、忠告をしておきます。私は私の自由を阻むモノに容赦はしません。……かつての仲間が言っていました。『討っていいのは、討たれる覚悟のある者だけだ』と。かかって来るのなら相手をしますが、命を捨てる覚悟をしてください」

 

 数を頼みに強気となる賊に対し、普段とは違いすぎる冷然とした表情でアマリは言った。

 それは間違いなく真摯なまでの忠告だったが、どうやら賊にとっては挑発にしか聞こえなかったらしい。

 

「言いやがったなこのアマ!」

「やっちまえ!」

 

 口汚い叫び声をあげ、得物を手に手に駆け寄ってくる。戦闘の開始だ。

 

 ♦♢♦♢♦♢♦♢♦♢

 

「え~と、これで終わり……?」

 

 鈴が思わず呟いてしまうほど、戦闘はアッサリと終わった。――むしろ、予想を遥かに上回る勢いで賊が弱すぎたため、『戦闘の態をなしていなかった』と言う方が正しいだろう。

 

「いや、まあ、冷静に考えれば、これが普通なんでしょうね。ベヒモスと比べるのが間違っていたのよ」

 

 鈴の言葉に続けたのは雫だ。その言葉は『思い違いに漸く気付いた』と言わんばかりだ。

 アマリを除く面々にとって、一番の強敵と言えば間違いなくベヒモスである。ハジメ、香織、恵里の三人と別れる契機となった魔物。苦々しい、敗北の記憶だ。

 だからこそ、『命の懸かった戦い』の仮想敵として、ベヒモスを思い浮かべてしまったのだ。

 しかし、一行はトラップで飛ばされたために思いがけず戦うこととなってしまったが、本来なら六十五階層で登場する魔物だ。四十階層越えで一流冒険者と呼ばれる昨今の事情を鑑みれば、ベヒモスを仮想敵として思い浮かべるのが間違っていたのである。

 直前のアマリの言葉から、『命懸けの戦い』と認識してしまった弊害であった。

 まあ、戦いである以上、『命懸け』なのは別段間違っているわけではない。

 だが、一行の能力がトータスにおける平均を軽々と突き放しているのは否定しようのない事実だ。

 それを踏まえると、まともに戦った場合、そこいらの賊が相手になる筈もないのである。

 

「しまったな……。勢い余って殺してしまった。割と自己嫌悪が激しい」

「こっちも同じようなもんだよ。死んじゃあいないだろうが、廃人にしちまったんじゃないか……?」

 

 鈴と雫が敢えて遠回しに考えることで目を逸らしていた現実へと、浩介と清水の言葉が連れ戻す。

 平均を遥かに上回る能力者が、遥かに下回る相手に対し、自分たちよりも強い相手へ挑む気持ちで攻撃したのだ。

 その差異は、『賊の死亡』という結果で現れた。

 それぞれ、最初の一人を相手取った時点で思い違いには気付いたのだが、だからと言って、曲がりなりにも戦闘している最中に修正出来るほど器用ではない。結局、全ての賊が動かなくなるまで、そのまま相手取るしかなかったのだ。

 そして戦闘中ならば目を背けていられても、その空気が、熱が、収まってしまえば――

 

「う……うっぷ……」

 

 木々に寄りかかり、誰ともなしに嘔吐した。平静なのはアマリくらいなものである。

 トータスに召喚されて既に数ヶ月経過しているが、人生の大半を平和な日本で過ごしてきた少年少女だ。そこで育まれた倫理観も相俟って、『人を殺した』という事実は直視しづらく、認めたとしても激しい自己嫌悪に襲われるものであった。吐いてしまっても無理はない。

 

「人を殺すのは初めてだったか? どうやら、よほど平穏な地から召喚されたらしいな。……酷なことをしたかもしれんが、悪く思うな。こちらにも余裕はないのだ。恨むのならば、お前たちを召喚した異教の神を恨むことだ」

「そこですよ。正直に言って、宗教戦争に一般市民や私たちを巻き込むのは止めてくれませんか? 私たちの最優先目標は元の世界に帰ることなんです。それでも、力のない人に危害を加えるのならば見捨ててはおけませんし、私たちに対してもそれは同じです。……見境がなくなってしまっては、泥沼にしかなりませんよ?」

 

 未だ樹上に姿を残す魔人族が言えば、アマリが返した。

 

「覚えておこう。……だが、期待はするな。我らが生まれる前から連綿と続く敵対の歴史だ。止めようと思って簡単に止まるものではない。それに、幼い頃から人間族への敵対心を聞いて育てば、戦える者とそうでない者の区別などどうでもいいことなのだ。

 私が人間のお前との問答を行っているのは、偏にお前たちがこの世界の者ではないことが大きい。まして、賊程度とは言え、あれだけの数をアッサリと片付ける実力者揃いだ。問答無用でその言葉を遮断し、ムダに敵対するのもバカらしい」

「そうですか……。それでは、一つ手土産を差し上げましょう。――オルクス大迷宮は二百階層まであり、攻略すれば生成魔法が手に入ります。ですが、百一階層からは空間の力がないと撤退は叶いません。死ぬか、攻略するかの二択のみです。

 無論、この情報を信じるかどうかはそちらの自由です」

 

 この情報は、アマリにとってくれてやっても構わないものだ。何せ知ったところで根本的な対策を取るのは難しい。空間魔法がどこで手に入るのかまでは伝えていないのだから。

 魔人族の誰かが氷雪洞窟で変成魔法を手に入れたのは十中八九間違いない。遠からず他の神代魔法も狙って動くだろう。

 しかし、この情報により魔人族の動きは鈍らざるを得なくなる。内容があまりにも具体的過ぎるため嘘八百と断じようにも、敢えてぼかした『空間の力』の部分がそれを躊躇わせるのだ。間違いなく疑心暗鬼に囚われるだろう。

 実際、こんなところにまで魔人族が入り込んでいるのだ。その動きを牽制しようと思えば、この程度の情報は惜しくもない。

  

「まったく、やりにくい相手だ。……先の言、ありがたく上層部へ進言させていただこう」

 

 アマリの狙いを悟ったのだろう。魔人族は深々と溜息を吐きつつも、言外に『その狙いに乗ってやる』と答えて去っていった。

 これが、アマリたちと魔人族のファーストコンタクトであった。

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