東方忘現想   作:残響楓

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主従成立

病室の患者用の寝床の上で1人、少年は眠っていた。しかし、その眠りは穏やかではなく酷く魘されいる。

「ん… ううぅ…」

 

「いただきまーす」

 

 

 

「ああぁぁぁ!!」

自分が他の生物に捕食される。生物にとって最も恐れるべきことを彼は夢として見ていた。 無理もないだろう。なにせ実際に喰われそうになったのだから。彼にとってその夢は現実とは見分けがつかないほど鮮明に描かれていた。実際に起こりかけた夢を見て思わず飛び起きる。周りを見たが夢の中で己を喰らおうとしていた少女の姿はなく、ただ穏やかな病室の様子だけだった。

 

「はぁ… はぁ… はぁ… よ、よかった… 夢かぁ…」

一人部屋で安堵し自分の身の様子を確認した。気絶する要因となった後頭部への衝撃があった部位を触るが特に目立った怪我などはなかったが、右足の部分が包帯で巻かれていた。

 

「誰かが手当てしてくれたのかな…?」

そう一人で呟きながら包帯を取ると、既に抉れた部分が治癒し瘡蓋が出来ていた。 結構な怪我だと思っていたがそこまで大したことではなかったらしい。その様子を見て僕は安堵する。

 

「それにしてもここは…?」

僕の声を聞いてか病室の扉が開かれる。

視線を向けると淡い紫の長髪の女性が立っていた。しかし、その頭の上には人には決してないうさぎの耳が付いていた。

「あ、起きたんですね よかったです。」

彼女はそう言うとほほ笑みを浮かべる。しかし、明らかに人間ではない彼女に対して、夢で見た自身を喰らおうとした少女のことを思い出し彼女もまたそうではないかと思ってしまい、 「ヒッ!」と情けない声を出してしまう。

それを見た彼女は「あぁ!ごめんなさい! 決して襲ったりはしないので安心してください!」と自分の姿に怯えたであろう少年を安心させるように少し慌てながら声をかける。

 

「ま、まあ 兎に角 私が怖いと思うので他の方をお呼びしますね? 師匠〜!!」

 

彼女は言い、部屋を後にする。一人部屋に残された少年は自己暗示をするように自分に語り掛ける。

「大丈夫… さっきの人は悪い人じゃない… 決して僕を襲ったり、食べたりしない…」

自分にそう言い聞かせると少し恐怖心が薄れてきた。落ち着いてきたので冷静に考え始める。

「多分、あの人が手当てしてくれたんだよね… 良くしてもらったのに… それなのに僕は… あんな態度とって… 後で謝ろうか…」

そう考えていると再び部屋の扉が開かれる。そこには先程の女性ではなく赤と青が特徴的な服を着た長い銀髪の女性がいた。十字架の印のある帽子を見る限り彼女は医者なのだろうと思った。そして心の中で人間だと安心しそうになるが、あの時の少女も人間の姿かたちをしていた為油断しきれない。

「あら、思ったより元気そうね。よかったわ。まあ一応聞いておきましょうか 。気分はどう?」

 

「悪くはありませんが、夢のせいで良くもありません。」要は普通だという遠回しにも程がある回答の返すと彼女は「それはよかった」とほほえみながら返す。その手には冊子に向けて鉛筆を走らせていたので患者である僕の記録を取っているのだろう。

 

「あのここは…?」

自身のうちの疑問を目の前の女性に投げかける。

「ここは永遠亭よ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私の名前は八意永琳。 この永遠亭の医者よ」

自己紹介を終えると彼女は先程の女性を呼ぶ。するとすぐにうさぎの耳の付いた女性が姿を現す。 永琳先生が「自己紹介しなさい」というと彼女がこちらを向き、「先程は失礼しました。私の名前は、鈴仙 ・優曇華院・イナバです。鈴仙とお呼びください」彼女が長い名前を言い終えるとこちらにお辞儀をした。

「どうか気にしないでください、むしろ謝るべきはこちらです。鈴仙さん、先程の失礼な態度どうかお許しください。」

 

少年はそう言い、先程お辞儀をした彼女のようにお辞儀をする。それを見た彼女は「いえいえ、仕方ないですよ。妖怪に襲われた後ですもの!」彼女はそう言い快く許してくれた。

 

しかし、彼女の口から気になる単語が出てきて疑問に思った。

「妖怪?」と口に出すと

「ええ、この世界 幻想郷では妖怪が蔓延っているわ」

妖怪とは人ならざる姿かたちをしていると思い込んでいたが、ああも人に限りなく近い姿をしているのを聞かされ少し驚いた。

「そういえば外の世界の方でしたね」

「幻想郷? 外の世界?なんの話です?」

何も知らない僕はその会話には置いてけぼりだった。よくわからない状況を整理するために質問をする。

「まあ、詳しい話は博麗の巫女に聞きなさいな」と僕の問いを断ち切る。

詳しい説明を受けることが出来なかったので 、煮え切らない感情が胸の中に残り少しモヤモヤするが永琳先生の言う通りにすることにした。

 

「わかりました。永琳先生、鈴仙さん ありがとうございました。 」

「そういえば、あなたの名前を聞いてもいいかしら?」

永琳先生の質問を受けたが、記憶を失っている状態の僕に答える名などないことに深い悲しみを覚えた。

「すみません、自分自身と外の世界の記憶が今の僕にはないんですよ」

そう言うと永琳先生は驚いたのか少し顔を強ばらせた。

「そうなの? じゃあ記憶喪失を治す薬を出してあげましょうか?…まだ実験途中だけど 」

なにか嫌な言葉聞こえた気がしたので僕はそれを丁重に断る。というか、どうやってそんな薬を作ることが出来たのだろうか。薬はどのように作るかは知らないが人の脳に直接作用するものなのだろうか。僕程度の脳では決して導き出すことの出来ない答えを考えたがすぐにやめる。疲れるだけだ。

「大丈夫ですよ、僕は気にしていないので。これからゆっくり思い出していこうと思います」

確かに記憶の無いことは不安ではあるが、急いで取り戻す必要は無い。

「師匠、少しいいですか?」

「ええ、何かしら」

二人が何やら大事な話があるようで退室し、部屋に僕一人だけが残される。なにかする訳でもないので話し相手がいなくなると暇で暇でしょうがない。だから、僕は布団に横になり考え事をする。僕の記憶について、妖怪について、あの女神様について。

「あの方にもう一度会いたい…」

そんな虚しい独り言がただ孤独の病室に響いただけだった。

 

 

私は師匠を永遠亭の廊下に連れ出し、あの子についての話をしていた。

「師匠、あの子大丈夫でしょうか?」

「まあ、彼も自分の記憶はゆっくり思い出すって言ってるし、霊夢に外の世界に帰してもらえば意外とすんなり思い出すんじゃないかしら?」

師匠の話はもっともだ。外来人であれば、外の世界へ帰すのが一番だし、元いた場所であれば凍ってしまった記憶を解凍してくれるかもしれない。それに外来人に幻想郷のことを教えるのはあまり宜しくない。

だから、先程師匠は彼からの質問を有耶無耶にしたのだ。それでも私はやっぱり記憶を無くした彼がそのまま元の世界に帰るのはまずいのではないかと思う。仮に無事帰れたとしても、その場所で記憶を取り戻すことが出来なければ彼は間違いなく路頭に迷うことになる。若い身でありながら。自分が何者であるかもわからないまま放り出される。それはあんまりではないかと思い、その事を師匠に伝えた。

師匠は少し考えたあと、ニコリと笑いこちらを見る。

「あなたも患者の事を想うようになったのね」

それはまるで自分の子の成長を喜ぶ御母であるかのようだった。

「と、当然ですっ!」

私は照れ隠しのつもりで咳払いをしたが、師匠はニコニコと私を見ていた。どうやらお見通しのようだ。それから私たちは彼のことで話し合い、最終的に彼の意見を優先しようと結論づけた。

 

しばらくして鈴仙さんと永琳先生が戻ってきて患部の様子を確認し退院の判断を下した。それから二人に連れられ永遠亭の廊下を歩いていた。

「あなたは記憶を無くしているのよね?」

「はい、先程も申した通りゆっくり取り戻すつもりです」

僕がそういうと永琳先生は鈴仙さんと顔を見合せた後、僕に問う。

「あなたはその記憶を取り戻すまでどうするつもり?」

どういった意図の問いなのかは分からなかったが、僕が先程病室で考えたことを言う。

「僕はここで目覚める前にとある方に助けて頂きました。そのお方に恩を返したい。あわよくばそのお方の下で働きたいと思っています」

これが僕の導き出した望みだった。記憶の失くした空っぽの頭で考えた己の為したい事だった。

それを聞いた二人にそのお方の特徴を伝えるとどうやらそのお方をご存知のようだった。

「なら、博麗神社ね」

「博麗…神社…ですか」

「そこまで鈴仙に案内してもらおうかしら」

「でも師匠、午後の薬売りはどうしましょう」

「そうねぇ…」

そんな会話をしながら僕達は永遠亭の出口に向かっていたその時、外から爆発音が聞こえた。僕は驚き永琳先生と鈴仙さんの方を見たが、2人ともまたかぁと言いたげな表情をしていた。

「丁度いいわ、妹紅に案内してもらいましょ」

「そうですね、じゃあ私は姫様に声をかけて来ます」

そう言い、鈴仙さんはどこかへ行ってしまった。全く状況を理解できない僕に対して彼女らはとても冷静だった。ここでは爆発音は日常茶飯事なのだろうか?

困惑している僕に永琳先生は 「大丈夫よ」と声をかけてくれた。それを聞いて安心した僕は永琳先生と共に永遠亭の外に出る。すると、そこには白い服と赤いもんぺを身につけ長い銀髪を赤と白で記号のようなものが描かれたリボンで何ヶ所も付け頭の頂点部分に一際大きな赤白リボンをつけている女性が立っていたが何故か服のところどころがボロボロだった。

「妹紅、この子を博麗神社まで案内してあげて 」

「ん?ああ、その子か」

どうやら妹紅という方は僕のことを知っているようだった。もちろん、僕自身は彼女に見覚えはない。僕はその方に「どこかでお会いしましたか?」と質問する。

 

「ん、まあここまで運んだのは私だしな」

「そうでしたか、それはお手数をおかけしました。」

僕がお辞儀をしながら言うと妹紅さんは「いいよいいよ これが仕事だからね」と言って、手をヒラヒラとさせお礼は結構と言いたげにしていた。

「んじゃ 早速行こうか」

「はい、わかりました」

僕はそう言うと後ろに振り返り永琳先生の方を向き直る。改めて向き直ると八意先生の綺麗なご尊顔に少し胸が高鳴る。

「永琳先生、ありがとうございました。鈴仙さんにもどうかよろしくお伝えください」

僕は感謝の文を述べると深々とお辞儀をした。もちろん、言葉だけでなく後日僕の生活が安定すればお礼を持ってくるつもりだ。

 

「気にしないで、また何かあれば妹紅に案内してもらってまた来なさい」

永琳先生は笑いながらそう言い別れを告げた。

 

 

 

永遠亭を後にして妹紅さんの後ろについて行く形で竹林の道を歩いていた。その竹林はとても深く感じ一人で歩けば遭難してしまいそうな程道が分かりずらい。

「にしても広い竹林ですねぇ〜」

妹紅さんにそう言うとまるで自慢をするかのような口調で答える。

「ああ、ここは迷いの竹林と言ってな竹が早く成長して、早くに朽ちるから道が分かりずらいんだ、あといつも深い霧があるから迷いやすくて私みたいにちゃんと地形を理解してないと遭難してしまうんだ」

竹林で遭難など考えたくもないが、不思議な力がこの竹林に宿っている気がした。それが竹の成長を促しているのだろうと僕は勝手に自分で答えを出してそれに納得することにした。

「へぇ〜 、でもそんな中に永遠亭のような病院があるってなんか変ですね」

当然、こんな往来に問題があるところに病院があるのは不便この上ない事だろう。急患などは大丈夫なのだろうか?

「まあ、元々身を隠すために利用していたらしいしな さてもうそろそろ出口だ」

妹紅さんがそう言うと竹が生えてない平原が見えてくる。それにしても何から身を隠していたのだろう。永遠亭の人達はなにか追われることをしたのだろうか。僕は優しくしてくれた彼女たちがそのような事をしたとはとても思えなかった。そんなことを考えていると突然妹紅さんが立ち止まりこちらに振り返る。

「そうだ、ちゃんと自己紹介してなかったな 私の名前は藤原妹紅 。まあ、しがない(・・・・)案内人だ。 それであんたは?」

またかと思い、頬をかく。

「僕は記憶を失っていて自分の名前を覚えてないんですよねぇ」

自分の名前を忘れていることを少なからず憎み、申し訳なさげに妹紅さんに伝える。

「そうだったのか、悪いな あんたの気も知らないで」

名前という個人の呼称がないとこうも初対面の方を申し訳なさげにさせてしまうのだろうか。もう適当に自分の名でも作ってやろうかとも思ったが、やめた。まるで思いつかない。

「いえいえ、僕の方が伝えてなかったのでお構いなく」

もちろん、彼女に咎はない。あるはずがない。ただ僕は自身の記憶を失っているだけ。只それだけ。

「そういってくれると助かるよ 」

それから僕は妹紅さんの様々な話を聞いていた。どうやら彼女は見た目よりも長く生きているようだ。達者な口ぶりと話の内容からそう思った。

しばらく話している間に目的地に着いたようだ。

「妹紅さん、態々ここまでありがとうございました。」

彼女は僕をここまで導いてくれただけでなく、妖怪に襲われないように護衛も担ってくれたのだと思う。ただの勘だが、彼女には不思議な力がある気がした。でなければ人間を喰らおうとするものから護衛など出来るとはとても思えなかった。そんな彼女に対して僕は頭を下げてお礼をする。

「いいよ、大したことじゃないし またね …記憶、戻るといいね」

「ありがとうございます」

 

「さてと ここが博麗神社だったとはな…」

少女に追いかけられる苦い記憶が蘇りながら階段をのぼる。階段を登りきり境内に出る。するとそこには

「………」

あの方がいた。僕の命を救った方。美しいお姿で妖怪を退治してみせたあのお方。

少年は、その方の下に駆け寄り、

「ここに置いてください!!」とこうべを垂れてその方へと懇願する。

自身は顔を下に向けているため彼女の顔は見えないがおそらくどうしようか思考を巡らしているといるのだろう。 しばらくの静寂が流れる

「いいわよ」

そう言われ顔をあがる 美しきお方がこちらを見ながらそう言う。

「ありがとうございます」 再び顔を下げる

「ただし」

そう言われ顔をあがる

「私の従者になること。 それと…」彼女がそう言うと何かをこちらに放り投げる。

少年がそれを受け止め確認する 木刀だった ただの木で出来た刀。

何故と思い彼女に目線を向けると同時に言われた。

「強くなりなさい」

その言葉を聞いた瞬間少年の顔は彼女の手に持つお祓い棒で殴られた。

 

 

 

 

 

何が起きたか理解出来なかった。 ただ一つ知覚できたのは痛みのみ。

「なっ…」

そう声が漏れ、ただ困惑している。

「ほら、何してるの? 構えなさい」

お祓い棒をこちらに向けそう言う。僕は言われた通りに木刀を構える。すると彼女が距離を詰め、少年目掛けてお祓い棒を振るう。

僕はなんとかそれに対応するが、防がれたと分かるとすぐに他の部位目掛けて振るう。その動きはまるで水が流れるかのように流麗でとても俊敏だった。

戦闘経験のない故、そのような攻撃を防げる道理はなく、ただ痛みが走り僕は苦悶に満ちた声を出す。

「うぐぁ…」

「ほら、ちゃんとしなさい」

彼女はそう言うと再び距離を詰め、僕の頭部を殴ろうとし振るう。

「っ!!」

僕は再びそれを防ぐ。が、重い。彼女の華奢な腕からは信じられない膂力で押され、力負けする。

(なんでこんなにも力が強いんだ!)

そう頭の中で思いながら負けじと両腕に力を込め鍔迫り合いの状態に持ち込む。そうしていると

「本気を出しなさい」彼女はそう言う。だがこれでも必死だ。

「死ぬ気で魂の底から力を出し切るイメージで!!」

彼女はさらに自分に声をかける。僕はもうやけくそだという思いで彼女のいう通りに魂の底から力を出し切る勢いで木刀を握る両手にこれでもかというほど力を込める。

 

その瞬間、体が軽くなり少女の身体を押し返していた。自分でも何が起こったかわからない状態で彼女を見る。

「よくやったわ」美しきお方は満面の笑みでそうこちらに声をかける。

「合格ね、ようこそ 博麗神社へ 私の名前は博麗霊夢。この博麗神社の巫女よ」

僕はどうやら試されていたらしい。そして認められた。従者として。

 

 

僕は霊夢さんに神社の母屋に案内されそこで彼女とちゃぶ台越しでお茶を飲んでいる。

後から事情を聞いたが彼女自身は女神などではなく普通の人間なのだそうだ。なのになぜあのような力を出せたのかと言うと先程自分が少女を押し出した時と同じ力。 名を霊力というらしい。

どうやら彼女は、僕の中の霊力を目覚めされるためにお祓い棒で殴ってきていたらしい。普通に痛かったし、いきなり殴り掛かる必要はなかったであろう。そう心の中で思った。

「んで、あんた名前は?」

この問答は今日で3回目だ。

「ぼくは記憶喪失なので自分のことを覚えてないんですよ」

「えぇ… じゃあ、なんて呼べばいいのよ?」

やはり名前が無いととても不便だ。別に僕はなんと呼ばれても良いが名前は自分で決めるものではなく誰かに名付けて貰うものと思っている。なので、僕は霊夢さんに頼んでみる。

「なんなら霊夢さんが名付けてくれても構いませんよ」

「そんなこと言われてもねぇ」

霊夢さんはそう言いながらお茶を飲む。

「そういえば従者って何をすればいいんですか?」

もちろん、従者として雇われたのだから責務は全うするつもりだ。僕が彼女のそばに居るためには従者という役割を担う必要がある。

「そうねぇ、洗濯、掃除、料理とかの家事全般ね あと私のお世話」

「僕何もできませんよ?」

「なによ!従者失格じゃない!」

霊夢は強めに湯呑みをちゃぶ台に置きながら言う 。その勢いに少し気圧されるが彼女の機嫌を取るためにすぐ「でも教えてくれれば出来ますよ!」と言う。

「従者のお世話するの〜?」

露骨に嫌そうな顔で言う。まあ手伝いのために態々、自分自身が教育を施す。これほど面倒なことはないだろう。

「じゃなきゃ、何も出来ませんよ?」

「んもう! 手間のかかる従者ね!! まあいいわ とりあえず境内の掃除をしてちょうだい?」

「かしこまりました」

僕は霊夢さんの言われた通りに境内を箒で掃除する。桜の花びらが境内に落ちている位でとくに目立ったことはない。

 

霊夢は、掃除をする彼を見ながら思い返していた。

 

「彼は真実の幻想への切り札になりうる存在」

 

(真実の幻想ねぇ)

真実… 幻想… 真… 実… 幻… 想…

真… 想…

 

「そうだ!! 」

「おーい、 ちょっといいかしら〜!」

霊夢さんに呼ばれる。 なにかあったのだろうか?僕は境内にあった落ち葉を一箇所に纏め、霊夢さんの元へ行く。

「はい、なんでしょう?」 神社の母屋の柱に箒を置き、 縁側に座る彼女の前に立つ。

「あなたの名前が決まりました!」まるで子供のように明るい笑顔でそう言う。

「ほんとうですか?」 冗談のつもりで言ったつもりだったので、本当に考えてくれたとは思っておらず確認の言葉を口にする。

「本当よ、本当。 博麗の巫女は嘘をつかないわ!」

 

「すみません、疑った訳ではなく…」少し申し訳なく思い謝罪の言葉を口にする。がそんなことは気にした素振りは彼女は見せず口を開く。

「兎に角、あなたの名前よ!」「はい」

「あなたの名前は、想真よ!今日から想真と名乗りなさい!」

想真。その名が自分の中ですんなりと沈みこんだ。まるで自分に必要だった物を得たかのような満足感が僕の中を駆け巡った。

「お名前、賜りました。僕はこれから想真と名乗らせていただきます。」

「ふふ、よろしく頼むわよ 想真」

「はい、お任せ下さい」

風が吹き、境内に落ちていた桜の花びらがまるで名付けを祝福するかのように舞い上がりどこかへ消えていった。




はい、東方忘現想 2話目でございます。 ようやく出てきました。主人公の名前 これから想真の幻想郷生活が始まる訳ですが前置きが長い気がします。まだまだ書くのが下手な証拠ですね。これからも精進していきたいと思います。これからよろしくお願いします。
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