東方忘現想   作:残響楓

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早速、不定期が発動致しました。
色々日常を描くことがとても難しくて時間がかかってしまいました。



香霖堂と狛犬

僕は霊夢さんに想真という名前を名付けて貰いそれから永琳先生が言っていた幻想郷といわれるこの世界について教えてもらった。

 

幻想郷とは、外の世界で忘れられたり非常識になった人や物が集まり再びこの世界で暮らしをはじめる。忘れられた者にとっての最後の楽園なのだそうだ。

 

そんな不思議な世界、幻想郷に流れ着いてしまった僕はどうやら忘れられてしまった、または非常識になってしまったようだ。しかし、それだけならさっき受けた説明の通りなのだが何故か僕は記憶を失って幻想郷に来たらしい。

 

霊夢さん曰く、幻想郷に来ても外の世界の知識や記憶を失うことはないのだそうだ。しかし、それならば僕は何故外の世界の記憶を失い、その上自分のことも覚えていないのだろう?

 

僕は、縁側でその自分の頭脳では到底理解しきれない問題を考え続けていた。顎に手を添え小さな唸り声を出しながら考えていると霊夢さんに声をかけられる。

 

「想真、ちょっといいかしら?」

僕は霊夢さんに呼ばれ、考えていたことが中断され脳内世界から現実世界へと引き戻される。

「あ、はい なんでしょう?」

「大丈夫?なにか考え事?すごい顔してたわよ?」

霊夢さんにそう言われ自分の顔に手を当てると眉間に皺を寄せていたことに気がついた。

 

「す、すみません… 心配かけてしまって… なんでもないですよ〜 ははは」

僕は自分の悩んでいたことを霊夢さんに話さずに濁す形で話をそらす。

我ながら不器用なことこの上ない。

「ふーん、 そう。 ならいいわ、何かあったら言いなさい。話ぐらいは聞いてあげる」

「ありがとうございます、お心遣い痛み入ります」

そう言い、僕は霊夢さんにお辞儀をする。すると彼女はもとの表情に戻った自分を見て安心したのか微笑を浮かべた。 可愛らしい。

 

(まあ、大体さっき話した幻想郷のことと外の世界のことでしょうね… 記憶を失っているんだから自分がどんな存在だったか分からず不安なんでしょうねぇ)

わかりやすく話を誤魔化した彼を見ながら霊夢はそんなことを思う。

(まあ、それは彼が自分から話してくれることを待ちますか。それはそうと…)

「想真、出かけるわよ」

彼に先程、自分が話そうとしていた内容を思い出し、声をかける。

「はい? どちらへ?」幻想郷のことを右も左も分からないので当然の疑問を彼女に投げかける。

「香霖堂よ、あなたはこれからこの神社に居候するんだから色々買っておかなくちゃでしょう?」

「はい、それで?その香霖堂とは?」

「そうねぇ、簡単に言うと商売に向いてない変わった蒐集家のお店よ 」

霊夢さんは自分の質問に答えてくれたが、自分はさらなる疑問が湧いてきて思わず首を傾げてしまう。そんな僕を見て霊夢さんは

 

「まあ行ってみれば分かるわよ、それじゃ早速行こうかしらね」

そう言い縁側から立ち上がり階段の方へ向かった。僕は仕方なく霊夢さんの後を駆け足で追った。

 

 

博麗神社を出て、しばらく歩き続けること1時間弱ようやく目的地である香霖堂に着いたのだが、ガラクタにまみれた家がそこにはあった。

 

「えーと、ここですかね?」

一応霊夢さんに確認の為の言葉をかける。たしかに商売に向いておらず、変わった蒐集家がいるようだ。

「ええ、残念ながらここよ」

そう言いつつ、霊夢さんは遠慮なく店の扉を開き中へ入って行った。僕は店の入口の上にある香霖堂と書かれたであろう汚れた看板を目にしながら せめて、看板ぐらいは綺麗にしようよ と心の中で思いながら店の中に入った。

 

すると、何やら霊夢さんと誰かが会話しているようだった。

「お邪魔します」僕がそう言うとここの家主がこちらに気づいて顔を向ける。

「霊夢、彼は?」「ええ、私の従者よ」

その問答を終えると店主はこちらに向き直る。

「はじめまして、想真くん 僕の名前は森近霖之助 この店 香霖堂の店主だ」と自己紹介をする。ここに置いてある物とか気になることが色々あるが自己紹介されたら自己紹介をするのが礼儀なので

「はじめまして、霖之助さん 想真と申します。博麗の巫女の従者です。よろしくお願いします」 と自己紹介をした。

 

「にしても霊夢が従者をとるとはね。 ましてや男の子とは」

「そんなに意外かしら?」

「少なくとも僕は考えもしなかったよ」

「ふーん、 そうだ。 霖之助さん 想真の採寸をしてあげてもらえる?」

そう言うと霖之助さんが想真の方を一瞥し「別に構わないけどどうしてだい?」

「神社に彼を置くことになったんだけどうちには私の服しかないのよねぇ、寝巻きも含めてね」

「そうだね、身長は大体同じだけど男の子が女の子の物を着るのはね。

でもそれなら君は雨で濡れた時とかに僕の服を着るじゃないか」

「私はいいのよ」「そういうものなのか?」「そういうものよ」

霊夢たちが採寸の話をしている時 僕、店に置かれているガラクタ…ではなくこの店の商品に目を向けていた。

「なにか気になるものでも見つけたかい?」

僕が興味深そうに周りの商品を見ていると霖之助さんがそう問いかけてくる。

「いえ、何に使うものなのかいまいち分からないものなのがあるので少し気になって」

「ふふ、そうかい 好きなだけ見ていってくれ。それじゃ、僕は採寸の道具をとってくるよ」

霖之助さんは気分良さそうに笑い、店の奥へ行ってしまった。

「確かに霖之助さんの店は、よく分からないもの多いのよねぇ」

「よく分からないといいますと外の世界の道具などでしょうか?」

「そうねぇ 霖之助さんはそういう物を無縁塚ってとこから拾ってきて集める趣味があってね。 それを商品とか言って店に並べてはいるけどそれを買おうとする人はいないし、彼自身も真面目に売ろうとは思ってもないみたい」

「なるほど」

最初に言っていた商売に向いていないと言っていた理由に合点がいった。人が欲しがる物を置かず、自分の趣味、興味のそそられる物ばかり店に置く。それでは買う人も滅多にいないだろう。

「想真くん、ちょっと来てくれるかい?」

霖之助さんがヌッと店の奥の暖簾から顔を出し、僕に来るように言う。

「はい、了解です」

霖之助さんに呼ばれ、僕は店の奥へ行く。ちらりと霊夢さんの方を見るが、霊夢さんはいつの間にかお茶を入れており煎餅を齧っていた。もうここは彼女にとって自宅のようなものなのだろう

 

「採寸をするんでしょうか?」

「そうだね、ここに座って貰えるかい?あと個人的に聞きたいことも幾つかあるかな」

僕は霖之助さんが指を指した木製の椅子に座る。

「はい、なんなりとお聞き下さい」

「それじゃ、ちょっと失礼するよ」

 

そう言って霖之助さんは僕の身体を目盛りの入った紐のようなもので測っていく。それをしながら霖之助さんは僕に質問をする。

 

「君は服装からして外来人だよね?」

「がいらいじん? ああ、はいそうですね 外の世界から来たみたいなんですよ」

僕は聞き馴染みの無い言葉の意味を頭の中で理解し、問いに答える。

「外の世界では何をしていたんだい?」

「それがですね、僕、記憶喪失みたいで外の世界の記憶や知識と自分のことを全く覚えてないんですよ」

「そうなのか、それは失礼したね」

霖之助さんは僕に申し訳なさそうに言う。霖之助さんだけではないが、僕のことを記憶喪失であることを知らずに質問する人はみな同じように申し訳なさそうにする。それを見る度に記憶喪失である自分自身を憎まざるを得ない。

 

「いえいえ、気にしないでください 他に聞きたいことはありますか」

「うーん、そうだね そういえば随分若そうにみえるけど歳は15か16ぐらいかな? 」

「はい、多分それくらいだと思います」「じゃあ、霊夢の2つ下か1つ下だね」

「霊夢さん、17歳なんですね それにしては随分肝が据わってるというかなんというか」

店の暖簾越しに霊夢さんの方を見る。その方向からは煎餅をかじる音が聞こえる。

「そうだね、随分と図々しいけどね。僕の店の物を勝手に持って行って ツケといてって言っても払う気配はないし」

霖之助さんは溜息をつきながらそんなことを語る。

「苦労してそうですね…」

「そうだね、こちらとしてはいい迷惑だよ」そう言い彼は苦笑いをうかべる。

「ごめんなさい」僕は霖之助さんに深々と礼をする。

「なぜ君が謝るんだい?」霖之助さんは少し驚きながら言う。

「霊夢さんは先程のことを聞く限り今回も同じことを申すと思います。ですが、霊夢さんが今回ここへ来た目的は、僕の服などのものを揃えるためにここへ参られました。なので今回のことは僕のせいでありますが、僕はまだ幻想郷に来たばかりで金銭もないゆえ僕自身が払うことはできません。大変虫の良い話なのは承知の上でどうか労働による福祉で今回の件を支払いことはできませんでしょうか?勿論 今後もお返しをするつもりです」

僕は頭を下げたまま霖之助さんにお願いを申し上げる。

「顔を上げてもらえるかい?」霖之助さんは穏やかな声色でそう言う。

僕は顔を上げ霖之助の方に向き直す。

「君の誠意はしっかり僕に伝わったよ それじゃあ、支払いの代わりとしてお店の掃除をしてもらおうかな あと今度来たときでいいから話や愚痴を聞いてもらったりしてもらえると嬉しいよ」

「わかりました、謹んでお受けいたします」

「ほら、まだ採寸の途中だよ 座って座って」

「はい」

霖之助さんに言われ再び椅子に座る。それからも採寸をとっている間僕達は話を続けていた。

「よし、これで終わりだよ じゃあ服が完成したら神社に持っていくよ」

「ありがとうございます 霖之助さん では、霊夢さんのところに戻りますか」

「そうだね ああ、そうだ 一応僕のお古のものでよければ探してみるよ」

霖之助さんは、そう言いながら採寸に使った道具をきちんと箱の中にしまっていた。店の商品の管理はずさんだが、そういった道具に関してはちゃんと整理するようだ。

「本当ですか?ありがとうございます 何から何まで」

「いいんだよ、僕が好きでしていることだしね じゃあ少し漁ってみるよ 先に霊夢のところに戻っていてくれ あと掃除のことだけどそこに

はたきと箒があるから適当にしておいてくれ」

「はい わかりました」僕ははたきと箒を持ち、霊夢さんがいるところに戻る。

「戻りました〜」

「あっ 終わったのね 霖之助さんは何か言ってた?」

「完成したら神社に届けてくれるそうです」

「そう、気が利くわね」

 

霊夢さんは本を読みながらそう言う。なかなかに退屈していたようだ

 

「なんの本ですか?」

話題作りの為に霊夢さんが読んでいる本について質問する

 

「外の世界の道具についての本よ まあ、もっとも私は興味無いんだけどね 話し相手がいなくなって暇だったから読んでみたんだけどよく分からなかったわ 霖之助さんは理解しながら読んでたみたいだけど 」

 

チラッと本の内容を見る。 文面にはよく分からない専門用語らしきものが沢山記載されていた。

 

「まあ、そういう道具の専門の本みたいですしまず道具のことを知らないと理解に苦しむでしょうね」

「まあ霖之助さんが適任でしょうね その手のものは 彼の能力なら道具の名前と用途が理解るし」

「ん? 霊夢さん、能力とは?」

「え? あぁ そういえばまだ言ってなかったわね。この幻想郷では妖怪、神、妖精、幽霊など人外の大体が持ってるのが程度の能力よ。まあ、たまに人間でも能力を持ってる人とかはいるけどね。 私みたいに」

「へぇ〜 なんかすごいですね」

僕は霊夢さんが説明してくれた能力について考える。 不思議な世界では不思議な能力があるものなんだなぁ と思った。

「ところで、霊夢さんの能力はなんですか?」

「私? 私の能力はね〜 空を飛ぶ程度の能力よ 」

霊夢さんは立ち上がり、店の中で少しだけ浮いて見せた。どうやら能力とかの話は本当のようだ。

「それで僕の能力は道具の名前と用途が判る程度の能力だ」

店の奥から霖之助さんが自身の能力を説明しながら出てきた。その手には着物が畳まれた状態で何着か重なっていた。

「想真くん、この着物はどうかな?」

彼はそういい、ひとつの着物を広げて見せてくれた。藍色を基調とした感じの着物だった。落ち着いた色合いで、僕が嫌いではない雰囲気のものだった。

「いいですね、少し着てみても?」

「どうぞ、店の奥で着替えてくるといい」

「では、行ってきます」

僕は霖之助に渡された着物を手に店の奥へ行き服を脱ぎ着物を着る。

「ねえ、霖之助さん」

「なにかな?霊夢」

「木刀を入れる袋はないかしら?3尺ぐらいの木刀が入るくらいの」

「ん〜 あぁ そういえば丁度いいものがあったね。 後で持ってくるよ」

「お願いするわ」

そんな話を霖之助さんとしていると店の奥から想真が「着替え終わりました〜」という声が聞こえてくる。

「出ておいで」

 

僕は霖之助さんに言われて出る。着物を着慣れていないからか着るのに少し手間取ってしまった。

 

「似合いますかね?」

「ああ、似合ってるよ」

「それはよかった ですけど…」

「? 何か問題でも?」

僕は霖之助さんに袖の方を見せる。 手首が少し出ていなかった。それを見て霖之助はクスリと笑う。

「まあ、大丈夫じゃないかな? まだ15、16歳だからね これから大きくなるよ」

霖之助はそう慰めるように言ってくれた。別に不貞腐れてたりする訳ではないけれど。

「ならいいんですが」

「ああ、あとこれを」

「?」

 

霖之助さんになにか手渡される。 細長い黒い布の袋のようだった。

 

「なんですか?これ?」

渡された意図のわからない物品に、当然の疑問が口から湧く。

「霊夢に言われたんだ。木刀の袋が欲しいと」

「あなたはこの幻想郷を守る。博麗の巫女の従者だからね。強くなってもらわないと困るのよ 」

「強くなる……ですか…」

 

僕は言葉を言い淀む。僕が妖怪に勝てる想像がつかない。それよりも昼間に出会った少女に喰らわれそうになったあの鮮明と思い出せる恐怖が僕の神経を底から震わせる。

 

「霊夢さんは…妖怪が……怖くないんですか…?」

僕は途切れ途切れで言葉を紡ぐ。その言葉は蚊の細声のように今にも消えてしまいそうなか弱い声で語っていた。

 

「そうね、私も最初は怖かったわ」

僕の言葉とは対照的に自信に満ちた声で霊夢さんは語った。声の調子に反して言葉が意外なものだったので思わず霊夢さんの方を見ると彼女は笑顔を浮かべていた。

 

「私は小さい頃から博麗の巫女になる身だったんだけどね 昔は、霊力も今みたいに強いものでもなかったし、コントロールの仕方も漠然としてた だから退治できて並の妖怪程度だったわけ 」

「どうやって力をつけていったんですか?」

「ん〜 そうねぇ 保護者である先代と妖怪に色々教わって巫女として修行して異変を解決していく内に今みたいになったかなぁ」

「その妖怪とは?」

「八雲紫 幻想郷の賢者でね。 幻想郷を創った者のひとりなのよ」

「幻想郷を創った?それってどういう?」

僕は幻想郷は忘れられた物や非常識になった物が集まる世界と聞いていたので、幻想郷を創るということに少し疑問が浮かんだ。

「幻想郷は、博麗大結界という外の世界と幻想郷を隔てた結界で覆われているんだ。その博麗大結界を管理しているのが八雲紫だよ」

「物知りね、霖之助さん」

「一応 君たちの何倍も長く生きているからね」

「…霖之助さんって人間じゃないんですか?」

「いや、人間とも言えるしそうじゃないとも言えるね 要は半人半妖だね」

「そうですか…。…一応聞きますけど 人間食べたりしてませんよね?」

「まさか、人間の部分があるんだから食人なんてしないよ。本当に妖怪になってしまうじゃないか」

「少し安心しました」

ホッと僕が吐息を吐くと霖之助さんはやれやれといったふうに首を左右に振る そんな会話をしながら僕は、はたきでちりや埃を落とし、それを箒で集めて掃除をしていた。

 

「さて、こんなもんかな?」ちりとりの中の集めた埃を見ながら言う。

「霖之助さん、掃除終わりました〜」

「おお、ありがとう 大分綺麗になったね 助かったよ」

「ふぁ〜 ようやく終わったの」

霊夢さんは欠伸をしながら眠そうに言う

「霊夢。彼は君がツケばかりしているから申し訳なくなって謝罪と行動をしてくれたんだよ」

「そうなの? なんかごめんね」

「いえいえ、今回の分だけなので後日ちゃんとツケは払ってくださいね?」

僕がニコッと笑顔でそう言うと霊夢は「う〜」と唸るような声を出した。

「さて、そろそろ帰らないと夜遅くになってしまうよ」

「そうね そろそろ帰りましょうか」

「はい 霖之助さん 本日はありがとうございました」

僕は霖之助さんに深々の頭を下げる。大したお返しは出来ていないけれど、せめてものお礼をする。

「こちらこそ 楽しかったよ 君と話が出来て また何時でもおいで」

僕達は別れの挨拶を交わし、香霖堂を後にした。

 

「想真、霊力は残ってる?」

霊夢さんにそう言われ、自身の霊力を確かめる。まだ霊力に目覚めたばかりで理解が十全ではないが、再び霊力を身体に漲らせまだ使える霊力は残っていることは理解出来た。

「まあ、ある程度は」

「ちょっと霊力を出しながら身体を浮かせる想像をしてみて」

「? わかりました」

僕は霊夢さんに言われ、目をつぶり身体を浮かせる想像をする。まだ霊力を目覚めさせたばかりなので少し手間取ったが しばらくすると僕は浮遊感に襲われる。目を開けると、僕の身体は少しばかり浮いていた。

 

「おぉ!!すごい!浮いてます!」

「まあ、 それくらい出来てもらわないと困るけどね じゃ、次は空を飛びまわる感じで霊力を操作してみて」

「うーん 霊力の操作が上手くいかないんですよねぇ…」

まだ霊力の扱い方もまともに理解していないので飛び方もそれに比例して危なげを見せる。

 

霊夢さんは軽々とに空を舞って見せたが、僕は彼女の様に美しく飛ぶことは出来ずどうしてもふらふらとした感じで飛んでしまう。でも歩いて帰るよりは早くつき、まだ夕方だった。

 

「それじゃ このまま帰りましょ」

「ま、待ってくださーい」

僕は覚束無い足取りというより飛び取りで、霊夢さんの後を追いかけるのであった。飛び方に苦戦しながらも空から見渡す景色と沈んでいく夕日はこの地に相応しい幻想的な姿だった。

 

「ただいま 我が家」

「も、戻りました〜」

霊夢さんは何事も無かったかのように神社の境内に舞い降りたが、僕の方は霊力を結構使い疲弊した状態で舞い降りたというより墜落といった感じで着地する。

 

「ただいま、あうん お留守番ありがとうね」

「はい! 霊夢さん、おかえりなさい!今日も怪しいものはいませんでした!」

「そう、それは何よりだわ」

霊夢さんは自分がへたれこんでいる間に小さな女の子と話をしていた。

 

「霊夢さん、その方は?」

「うちの狛犬よ。わたしする事あるから適当に自己紹介しておいて」

そういい、霊夢さんは神社の母屋に入っていった。取り残された2人。

「まあ、とりあえず自己紹介しましょうか」

僕はその少女に向けてそう言う。

「そうですね」

 

「僕の名前は想真。今日から霊夢さんの従者になりました。よろしくお願いします」

「私の名前は高麗野あうんと申します。 この博麗神社の狛犬です」

お互い自己紹介を終え、話をする。

「昼間はいなかったような気がするんですけどどこにいたんですか?」

「霊夢さんに言われて隠れてました。もうすぐある人が来るって」

 

僕は頭の中で考えた。霊夢さんは誰を待っていたのだろう。あうんさんが出てきているのだからもう会ったのだろうか でも僕が来た時にはいなかった

 

あるひとつの結論に至った。

霊夢さんが待っていたのは

 

 

僕だ

 

彼女はどのような異能の力かは分からないが僕がもうすぐ神社に来ることを把握していた。何故?何の為?そのような事を考えると霊夢さんに呼ばれる。

 

「想真ーー! ちょっといーい?」

「……」

僕は考えがまとまらないままどうすればいいか迷ってしまう。

「想真ー?」

「はい、今行きます」

 

僕は思っていた事を胸の中にしまい、霊夢さんのところへ向かう

 

(また今度考えよう 多分、今考えていても仕方ないことだろうから)

 

呼ばれた方へ行くと霊夢さんは割烹着を来て晩御飯を作っていた。台所には美味しそうな匂いが充満していた その匂いを嗅ぎ食欲がそそられる。

 

「なんですか?霊夢さん」

「やっときた」

霊夢さんは呆れた顔をしてこちらを見る。その格好とその顔を見て思わずどきっとしてしまった。

 

「料理の手伝いをして欲しいのよ あなた一応私の従者だしいつかあなた1人で作ってもられるようになって貰うけど」

「はい 料理の勉強をさせて頂きます ところでこれは何を作ってるんです?」

「お味噌汁よ って言ってもお味噌と具を入れるだけだけどね」

霊夢さんが手をつけている雪平鍋には蒸気を発しいい匂いを広げる味噌汁の姿があった

 

「まあ、今日は大したものは作らないわ あとは鮭の塩焼きぐらいね」

霊夢がそう言うと指を指す。そこには網の上で熱されている鮭の切り身があった。

 

「これまた美味しそうですね」

僕は調理されている鮭を見て素直な感想を述べる。

「そう言ってくれると助かるわ。うちは その… あれだから」

霊夢さんは中指と親指をくっつけてこちらに言葉にはしたくない事を手で伝える 僕はそれを見て察する。どうやら生々しい事情なようだ。

「さて想真はお米の釜に息を吹き込んでもらえるかしら」

霊夢さんは火吹竹をこちらに差し出しながらそう言う。それを受け取り竈のを方を見ると少し火が弱かった

「わかりました、火の加減は十分だと思ったら止めてもいいとお声がけください」

「ん、わかったわ」

会話を終えると僕は火吹竹を通して火に息を吹き込む 吹き込む度に火が強まっていくのを肌で感じる。これはなかなか熱いなと思いながら霊夢が声をかけるまでそれを続ける。 何度も、何度も、 炎の中で薪が爆ぜる音をこの身で感じながら息を吹き込み続ける。

「想真、そのくらいでいいわよ」

霊夢さんが声をかける頃には火はだいぶ強まっていて米を炊かせるには十分な火力となっていた。これを他の料理のことを含めて、自分1人で行わなくてはならない。 従者である自分が出来るようにならなくてはならないそれを考えながら炎を見つめる。

しばらくすると釜から米の炊ける時の特有の匂いがしてきたので、蓋を開ける 中の米はふっくらと炊けていて艶やかな光沢を見せていた。

「霊夢さん、茶碗はどこにありますか?」

「居間の食器棚の中にあるわ」

霊夢さんのいう食器棚から茶碗を3つ取り出しているとその棚の中に1寸の大きさあるかどうか茶碗がを見つけ、何に使うのだろうと首を傾げる。

居間のちゃぶ台の上を見るともう既に他の料理は全て準備は出来ているようだった 僕は茶碗を3つ持っていき霊夢さん、あうんさん、自分の席にそれぞれ茶碗を並べる。

「全部揃ったわね あうーん! ご飯よー!」

「はーい!」

霊夢さんは境内にいるあうんさんを呼ぶ。僕はちゃぶ台の上のご飯を見る。白ご飯、鮭の塩焼き、味噌汁、普通だ。 と思った。 僕は外の世界の記憶はないが恐らくこの光景を見て思うことは同じだろう。

「それじゃ食べましょうかね」

霊夢さんは座りながら、そういい両手を合わせる。僕もあうんさんもそれにつられ同じように両手を合わせる。

「「「いただきます」」」

3人は同時に言い、そしてご飯を食べ始める。

「美味しい…」僕は思わず感想がこぼれる。普通と称したご飯はとても暖かく酷く安心する味わいだった。鮭のまろやかさ、味噌のコク、白米のほのかに甘い味わい、それが僕の舌を包み込む。

箸が進み、みるみる内に夕食は平らげていく。といって味わうことを損なったわけではない。一口食べる事にさらにもう一口を渇望するのだ。それを繰り返す事に僕は完食へと至っていた。

「ごちそうさまでした」

僕が食べ終わり、食後の挨拶をすると外から大きな音が聞こえてきた。

獣の遠吠えなどではなく、もっと自然的なまるで小さな火山が噴火したかのような。

「この音は?」

「間欠泉ね うちの神社の近くから昼と夜に吹き出るのよ おかげで温泉にも入れるわ ためしに入ってくれば?」

霊夢さんにそう言われ、僕は神社の裏手の方へ足を進める。そこには温泉特有の色をした湯が何十人も同時に入れそうな野湯の浴槽にはられていた。

「こんな温泉に一人で入れるとは贅沢だなぁ」

独り言を呟きながら着物を脱ぎ、近くにあった岩場に置き身体を軽く洗い温泉に入る。

とても暖かい。体の芯から温まるとはこのことだと心の中で思い、今日あったことを振り返る。

(色々あったなぁ)

森の中で目覚め、少女に襲われ、霊夢さんに助けてもらい、気がつけば永遠亭で目覚め、永琳先生や鈴仙さんと出会い、妹紅さんに案内され、迷いの竹林から博麗神社に案内してもらい、霊夢さんにここに置いてくださいと懇願すると強くなれと言われ突然お祓い棒で殴られ、その後香霖堂へ行き霖之助さんと出会い色々な物をいただき、始めて空を飛び、あうんさんに会い、ご飯を作って食べ現在に至る。本当に1日にあったこととは思えないほどの濃厚な数々を経験した。

温泉の中で色々な事を考えた後、空を見上げ満月を見て月が綺麗だと思った後温泉から上がり身体を拭いて神社へ戻った。

霊夢さんたちはご飯を食べ終えており2人でお茶を飲んでいた。

「おかえり、どうだった?」

「とても気持ちよかったです」

純粋に感じた内容を口に出した。疲れも悩みも残さず洗い清められるような感覚に陥るほどに。

「そう、それならよかったわ それじゃ次は私たちね 行くわよ あうん」

「はい!」

二人はお茶を飲み終わり縁側から立ち上がり大きめの手ぬぐいと寝巻きを持ち温泉の方へ向かうが霊夢さんが途中で振り返り、

「居間に布団敷いてるから先に休んでもいいわよ。どうせ疲れてるでしょう」

「お心遣い感謝します。おやすみなさい」

霊夢さんに感謝の言葉を述べ、居間へ向かうと布団が敷いてあった。寝ようと思った時にふと霖之助さんから貰った黒い木刀の袋の事を思い出し、霊夢さんからいただいた木刀を手に持ち袋の中に入れるとピッタリ収まり木刀の口を糸で結わえることができた。それを見ながら霊夢さんに言われたことを思い出す。

「強くなりなさい」

 

僕なんがが強くなれるのだろうか そんなことを思いながら袋を布団の横に置き、布団の中に入る。温泉に入ったことで身体が火照っていることで布団に入った直後でも暖かく感じすぐに寝てしまった。

 

 

温泉から上がり寝巻きの状態の霊夢が戻ってくる。もう既に寝ている状態の想真に近づき霊力を確認する。

(量はそれほど多い訳でもないし質も高いわけでもない。まあ、外来人として普通くらいね )

私はそう思うと紫がなぜ想真にこだわったのか疑問に思った。

彼のどこが紫を引き付けたんだろう。霊力は普通、能力もまだわかっていない。何故なのだろう。

色々考えたが、今まで奴の奇行に何度面倒かけさせられたか、数えたらきりがない。だからこれもその一つと割り切るしかなかった。

「はー やめやめ。アイツのこと考えなんて理解出来ないでしょうし、無駄ね無駄」

私はそういい考えていた事を消し、あうんに寝ると伝え床に入った。

(明日はどう想真を鍛えようかしら)

そんなことを考えながら目を閉じ意識を夜の闇に委ねた。




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