東方忘現想   作:残響楓

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テストで投稿が遅れてしまいましたが、それでも少しずつ合間を縫って書いていました。それ故に少し書き方がおかしい部分もあるかもしれませんがご了承ください。


小人と鴉天狗

僕は夢を見た。見た気がする。それはとても漠然としすぎていて夢といえど夢にも満たないほどあまりに朧気なものだった。確か夢の中での登場人物は僕と1人のある女性だったと思う。 しかし、僕はその女性に見覚えがなかった。なにか僕に話しかけていた気がするがどんなものかは思い出すことはできなかった。夢とはかくも儚いものだと思った。

そう微睡みながら瞼を開かず考えていると、頬をペチペチと触れる感覚に襲われた。

何かと思い、目を開けると眼前に大きさが1尺も満たない文字通りの少女がそこにはいた。

「あっ!!起きた起きた!」

小さな少女は笑いながらそう言う。

僕は驚きのあまり飛び起き眠気が消え失せた。

 

 

 

それから僕は小さな少女と向き合い挨拶を交わす。

「え〜 初めまして… そして…おはようございます…」

「うん!おはよう! よく寝てたね!」

少女は元気よくそして太陽にも負けないほどの明るさの笑みで僕の挨拶を返す。

「僕は想真、霊夢さんの従者としてここに置かれております」

「うん! 話は聞いてたけどご飯食べたらすぐに寝ちゃったから昨日は挨拶出来なかったね! 私は少名針妙丸!見ての通りの小人だよ!」

そう自己紹介をした少女は自分の大きさを示すかのように両手を目いっぱい広げ、小人だと語った。

「昨日からおられたのですか?」

「うん!霊夢に晩御飯の味見で出されたものを食べたらおなかいっぱいになっちゃて寝ちゃったの!だから、一緒にご飯食べれなかったんだよねぇ」

少女の言葉を聞き、納得した。霊夢さんが味見をしている様子がなかった事と食器棚にあったあまりにも小さすぎる茶碗の数々、それはこの方 少名針妙丸さん専用の器だったことと察するのは容易だった。

「ね〜、私お腹空いちゃった〜」

彼女はお腹を抑えながらそう言う。その言葉を聞き僕は少し考える。

(うーん 簡単なものを用意することはできるけど…)

そう思っていると居間の襖が開く。隣の部屋から寝間着の状態の霊夢さんが現れる。少し眠たそうだ。 欠伸をしている。 髪が少しだけ跳ねている。

「おはようございます。霊夢さん」

「霊夢〜、おはよー」

「あぁ、おはよう 2人とも」

「霊夢さん、針妙丸さんが空腹を訴えております」

「そうだぞ〜 私はお腹が空いたぞ〜」

「ん わかったわ、顔洗ってくるから少し待ってなさい」

霊夢さんはそう言うと、井戸の方へ向かう。再び僕と針妙丸の2人になる。少しの間沈黙が続くが先に沈黙を破ったのは針妙丸さんだった。

「霊夢って意外とだらしないところあるんだよねぇ〜」

「そうなんですか?」

「そうだよぉ〜 例えばね〜 」

針妙丸さんが霊夢さんの様々な話をしてくれた。最初の印象が薄れてしまう様なことや年相応だと思うようなものまで色々な話を聞いていると霊夢さんが戻ってくる。

「さて、ご飯にしましょうか……なによ?」

「いーや、なんにも?」

針妙丸さんはにやけながら霊夢さんの問いに答える。まさか自分がいない間に自分の恥ずかしい話を話されていたなんて夢にも思うまい。

知らぬが仏。言わぬが花だ。

「そんなことより ごーはーんー」

「はいはい、少し待ってなさい 想真」

「はい、かしこまりました」

「針妙丸はあうんを起こしてきて」

「はいはーい、りょーかい」

針妙丸さんは霊夢さんの指示に応の返事をするとその小さな身体を巧みに使い器用に襖を開け、隣の部屋を入っていった。

「さて、想真 昨晩の復習よ 晩御飯の料理を作ってみなさい そこまで難しいものはなかったはずよ」

「はい、覚えております お任せ下さい」

僕は霊夢さんにそう言い台所へ向かう。昨日の料理の様子を脳内で振り返りながら

 

しばらくして私は自分のしたことを自覚した。

私は朝御飯を従者である彼に丸投げしてしまった。従者だから料理出来るようになれとは言ったがほとんど大したことを教えてもいないのにいきなり1人で作れと命令してしまった。鮭の下ごしらえとして昨日から捌いて保存していたものがあったが、それでもできない事もあるだろう。私は起きたばかりとはいえ彼に無理難題を押し付けたと思った。

 

そんなことを思いながら彼がいる台所に向かう。その時に廊下で私の嗅覚が美味しそうな香りを知覚する。昨日も嗅いだこの香り

 

まさかと思い彼の様子をみる。彼は竈の火を火吹竹で強めていた。彼の周りを見ると鮭の切り身は網の上で焼かれ囲炉裏には鍋が吊るされており中からは味噌の香りがする。

彼は昨日ほんの軽く教えた程度の知識で昨日の料理の工程を再現してみせた。その事に驚きを覚えながら彼のことを見ていた。すると彼はこちらに気づき、笑みを返す。

 

「霊夢さん、もうすぐ出来上がりますので、しばしお待ちください」

「全部…あなたが…やったのよね…」

私は彼に確認の言葉を紡ぐが、上手く舌が回らず所々途切れてしまう

「はい、上手くいかない部分もありましたがなんとかできました」

「そう…作り方とかほとんど詳しくに教えてないのによく出来たわね…」

「どうやら僕は今までの記憶を失っている分、記憶能力が優れているようで昨晩の霊夢さんの為されていたことを思い出しながら行うことができました」

 

つまりは彼は昨日の料理の工程を全て目で見て覚え再現してみせたというのだ。私は彼の行ったそれに対して舌を巻いていた。

 

「さあ、出来ましたので居間の方へお向かいください 後ほど料理を運ぶのでそれまでお待ちください」

「あぁ…うん 頼むわね」

私は彼にそう言われ釈然としない気持ちで居間へ向かう。料理のことをほとんど教えてもいないのに私は彼に作れと命じ、彼はそれをやってみせた。 私は無理難題を彼にふっかけたことに申し訳なさが募るばかりなのに彼は私の命をみごと成し遂げた。

 

「あっ 霊夢〜 ご飯まだ〜? …なんかあったの?」

針妙丸は私の様子を察してか心配してくれた。

「いや、大したことはないのよ 私がちゃんとしてなかっただけだから それよりももうすぐ朝御飯が来るわよ」

「ふーん まあいいや それよりも今日の朝ごはんは? 」

「あー まあ昨日の晩と同じよ」

「もう作ってあるの?」

「ええ、想真が作ってくれたわ」

「……大丈夫なの?昨日来たばかりでしょ?」

「…そうね 私も言った後にあんまりだと思ったわ」

「じゃあなんで手伝ってあげないのさ?」

「後から彼のところに手伝いに行こうとして向かったんだけどもう出来てたのよねぇ 朝御飯」

「へぇ 仕事が早いね そんなに適当だったの?」

「見てみればわかるわよ」

霊夢は勿体ぶった言動をし、私 針妙丸は、む〜 っと頬を膨らまし不満を訴えるかのような行動をしていた。そんなことをしているとあうんが部屋に入ってきた。

 

「おはようございます…」 少し遅めに起きたからか恐れ入るかのような態度で挨拶をする。といってもこの博麗神社は基本的に早起きだ。

普段は6時前ぐらいに起き、遅くても7時程だ。つまり遅く起きても咎める必要はあまりないのである。私と霊夢は気にせずに「おはよう」と

彼女に投げかける。

それからお茶を飲みながら会話をしていると襖が開き我らが博麗の巫女の従者がお盆の上に料理を載せた状態で部屋に入ってきた。

 

「あうんさん、おはようございます」物事を行っている最中でも挨拶を交わす辺りやはり礼儀はしっかりしていると再認識する。

それから私は肝心の彼の作ったというお盆の上の朝食を覗く。そこには昨日の晩に霊夢が作ったものをそのまま持ってきたかのような出来栄えの料理がそこにはあった。 ちなみに霊夢は料理はちゃんと出来る。彼女の作る料理は博麗神社の中での楽しみの一つだ。

そんな彼女の晩御飯を昨日来たばかりの記憶喪失の従者が再現して見せたとはにわかには信じがたい。 そんな事を思いながら彼の様子を眺めていた。

そして彼は私たちそれぞれの席に配膳をし、朝食を食べる準備を済ませた。私には私特製の小さな食器がしっかり使われていた。

 

「さてとそれじゃあ食べますか」

想真は自分の席につき、そう言いながら料理に向けて手を合わせる。それを見て私達も同じように両手を合わせる。

「「「「いただきます」」」」

私はまず鮭の塩焼きといっても私は身体が小さいから切り取られた部分だがそれを私の大きさに合った箸でつまみ口へ運ぶ。

「美味しい…」

味は霊夢が作る料理と言われても気づくことができないほど似た味わいだった。霊夢は味噌汁からあうんはご飯から食べて始めていたが同じように「美味しい」と零していた。

そんな中少し不満げな顔がひとつあった。

 

想真だった。

 

彼は自分が作った料理にどこか満足いかなかったようだ。私たち3人はそんな想真の顔色を伺う。

「どうかしたの?美味しくなかったの?」

私の疑問を代弁するかのように霊夢が彼に問いかける。

「いえ、美味しくないわけではないんですけど…なんか霊夢さんが作ってくれた時とはなにか違くて……そう…なにか暖かさがないんですよね」

 

想真がそう言うと私たちは料理の器に触れる。出来たてだからちゃんと温かい。

「普通に温かいじゃん」

「いえ、物理的な温かさではなくなんといいますか精神的な感じのものでしょうか?」

「? どういうこと?」

「あの時の料理は食べると心の底から安心する感じがしてとても暖かく感じたんですよね。どうすればあれを再現できるのでしょうか?」

「確かに霊夢さんの料理はなんか安心できますよね」

「なんかわかる気がするわ」

想真が言ったことに私とあうんは共感する。しかし霊夢はあまり納得できていないようだった。

「別に大したことしてないわよ。想真の調理の様子を見たけどちゃんとできてたじゃない」

「確かに霊夢さんの調理を見よう見まねではありますが、再現したつもりなんですけどね。やはり作る人の想いでしょうか?」

 

想真がそんなことを言うと霊夢は「は?」と言いたげな表情をしていたが、私とあうんはなるほど思った。

 

「私は普通に料理を作ってるだけよ。別に特別な思いで作ってるわけではないわ」

「それでも針妙丸さんとあうんさんの為に作っておられるはずです。人を思うことが霊夢さんの料理を暖かくする要因だと思います」

「そう…かもね…」

霊夢は煮え切らない返事を返していた。まだ彼の言い分が納得いっていない様子だった。そんな彼女を差し置いて彼は言う。

「それを僕の手本にさせてください。これから人を思う気持ちをこの身に染み付けさせるためにも」

彼はそう言い、ご馳走様をして自分の茶碗などを台所へ持っていった。

食べるの早いな。男だからかな?

そんなことを考えながら私は味噌汁を啜る。

 

 

僕は朝ごはんを食べたあと台所へ持っていった茶碗等をたわしで洗い、傍に置いて乾くのを待つ。その間に僕は自分が寝ていた場所へ行き、布団を押し入れの中に入れる。まだ布団が入りそうな空間があったので他の方が使っていた布団もその空間に押し込む。

それから僕は寝間着から霖之助さんに頂いたもうひとつの方の着物を着る。やはり少し大きい。僕はそれに着替えた後一応木刀の入った袋を左肩から右足にかけて斜めに背負い境内に出て竹箒で境内を軽く掃除する。

目立つ枯れ葉などをあらかた集め、息をついていると空から声が降ってきた。けっして例えなどではなく実際に。

「おはようございます」

空を見上げるとまるでカラスのように黒いそして綺麗な翼を持った少女が僕を見下ろしていた。彼女は境内に降り立つと僕の傍に駆け寄る。

翼を持つところを見ると人間ではないと判断した僕は恐怖心からか無意識の内に左肩の木刀に右手を伸ばしていた。

「あややや!そんな物騒なものを持とうとしないでください!怖いですよ!安心してください。何もしませんから」

彼女にそう言われ僕は右手を元の位置に戻した。確かに初対面の方に対して大分不躾な行為をしていた。いくら恐怖心があるとはいえ誰彼構わずに行うことではないと後から思った。

僕が警戒を解き、改めて彼女の姿を見る。上から下にかけてその姿を一瞥する。山伏を思わせる赤い帽子。白い清潔感のある服と首あたりにある黒いリボン。手には古めかしいカメラ。黒いヒラヒラとしたスカートを装っていた。

まだ幻想郷の事をよく知らないのでこれが普通の格好なのかと思った。

 

僕が自分のことを確認し警戒を解いたと思った彼女は口を開く。

「どうもはじめまして!私の名前は射命丸 文 。鴉天狗の新聞記者です!早速ですが取材させてもらってもよろしいですか?」

彼女はカメラを首にかけ手帳と万年筆を手に持つ。僕は彼女がこちらに対して友好な関係を築こうとしている事を察し、彼女の取材にたいして是と答え自分の名前を名乗る。

「ほうほう、想真さんというんですね。これからいくつか質問をさせていただくんですが、想真さんを外来人と聞いています。外の世界ではどのような生活をしていましたか?」

僕はなんで知っているんだと疑問に思ったが問われているのはこっちなのでまずは相手の問いに返す。 記憶喪失であることを話すと彼女は少し驚いた表情を見せた。それから彼女は申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。

「すみません、知らなかったとはいえ無神経なことを聞いてしまいました」

「いえいえ、言ってなかった僕が悪いですよ。それに気にしていませんから。どうぞ質問を続けてください」

「ありがとうございます!それでは次の質問ですが、あなたはここ博麗神社でなにを為さっているのですか?」

「僕は霊夢さんの従者になったので霊夢さんのお手伝いをさせてもらっています。といってもまだ2日目で大したことはしてないんですけどね」

僕がそう答えると文さんはとても仰天した様子だった。彼女の心境を表すように彼女の手にある万年筆は手帳の上を文字を書くために激しく駆け巡っていた。

「それはとても驚きました!!まさかあの霊夢さんが従者を雇うとは……あっそれだったら!」

それから僕は彼女の火のついた好奇心による質問攻めにあい、僕自身も彼女の知的好奇心に驚きを覚えて途中から空を呆然と見上げ質問に答えていた。 雲ひとつない見事な快晴であった。

「それでは最後の質問ですね」

やっと終わるのかと心の中で安堵のため息を漏らしながら文さんの質問を聞くため耳を傾ける。

「あなたはこの幻想郷を見てどう思いましたか?」

文さんは幻想郷に住む住民だからかそのような質問をしてきた。僕はその質問をされて少し考えた後に境内から幻想郷を見下ろす。季節は春だから桜の桃色が所々見受けられる。遠くの方では町のようなものも見え、その左の方には迷いの竹林がある。その反対方向には大きな湖が見え赤い舘が見える。そしてその2つの間には大きな森もある。

とても自然が豊かなのだろうと思った。そして文さんの方へ向き直し質問を返す。

「言葉にできない…形容し難いほど美しくそして少し怖いと思いました」

「なるほど…怖いと思われたのはどういった理由からでしょうか?」

「僕はこの博麗神社に辿り着く前に妖怪…と思しき少女に襲われました…そしてその少女に喰われる直前で霊夢さんに助けていただきました。ですが、仮にこの神社を訪れることができず、霊夢さんからまたは他の方に助けられなかったと思うとゾッとします。恐らく僕以外にも外来人と呼ばれる外の方がいらっしゃることがあるでしょうがその方々が僕のように運良く誰かの助けを得られたとは思えないのです。それ故…」

僕はそこで言葉を紡ぐのをやめる。この先の言葉の続きを語るのも恐ろしいと思ったからだ。もしも自分もその1人だったとしたらと考えざるを得なくなる。まだ理由を話している途中だったことを思い出し、話す内容を切り替える。恐らく文さんも察してくれると思ったから。

「美しいものには棘がある。その言葉を表すかのような場所だとこの幻想郷を見て思いました」

「なるほど……ありがとうございました」

文さんはそう言うと手帳をパタンと閉じ、万年筆とともにしまう。そして空いた両手に首からかけたカメラを持ちこちらに向ける。

「写真を1枚取らせて頂いてもよろしいですか?」

「どうぞ」

僕が承服すると文さんはカメラ越しにこちらを見据え、パシャリと音をカメラから鳴らした。

「本日はありがとうございました!とても良い記事が書けそうです!」

「それはよかった。僕なんかでよければいつでもどうぞ」

僕達はお互いに礼をし、文さんはそれへ飛び立っていった。僕はそれを見届け集めた花びらや枯れ葉などを処理して霊夢さんたちの元へ戻る。

霊夢さんたちは既に朝食を済ませており自分の食器は自分たちで片付けたようだった。

「おかえり、遅かったわね」

「境内の掃除をしておりました。その際に射命丸文という方に記事の取材をしたいといわれました」

「文が来てたの?やっぱり耳が早いわね。来るとは思ってたけどここまで早いとは」

霊夢さんは呆れた様子で言う。どうやら文さんは速さを大事にしているようでなにかネタになりそうなことがあればいち早く駆けつけるのだそうな。そんな彼女は天狗の中で随一の速さを持つそうで彼女が博麗神社を去る際も目にも止まらぬ速度で去っていったのを思い出す。

「誰かから僕のことを聞いたのでしょうか?」

「多分、永遠亭辺りじゃないかしら、それか霖之助さんから直接聞いてるかもね」

確かにそれなら幻想郷に来たばかりの僕のことを聞くのは納得がいく。

どうやら彼女は記事を書くために日々様々な場所を飛び回っているようだ。それなら僕のことを知る人たちのところへ辿り着くのも考えられなくはないものだ。その事を考えていると霊夢さんがお茶を入れてくれた。緑茶だった。湯呑みを手にし、それを飲む。

「美味しい…」

緑茶の濁りの中にほのかな苦味と甘みが共存していて思わず感嘆を漏らすように言葉が出る。

「霊夢が入れるお茶はすごく美味しいんだよ〜」

針妙丸さんがそう評価すると横であうんさんもうんうんと頷いていた。

「そんなに褒めても何も出ないわよ

頬を掻きながら霊夢さんは照れ隠し故か顔を背ける。可愛らしい。

今度はお茶の入れ方も学ばないとなと僕は心の中で思うのであった。

 

 

昼に入る前に僕たち4人は共に洗濯をしていた。

ここ、博麗神社では働かざる者食うべからずだそうで自分のことは大体自分で行えるようにするのだとか。各々がそれぞれの桶に井戸水を汲み自分の服を洗う中僕は霊夢さんに洗い方を教わっていた。

「力は強すぎず弱すぎない程度でね」

「はい、わかりました」

といっても別に大したことはする訳でもなくただ力加減を気をつけながら服を洗濯板で擦り汚れを落とすものだった。それから洗い終わったものを物干し竿で干していく。針妙丸さんはやはり専用の大きさのものてま行っていた。

僕は自分が着ていた外の世界の服と霖之助さんに頂いた着物を干し終えると霊夢さんに声をかけられる。

「想真、木刀を持ってついてきて」

霊夢さんはそう言い終えると境内の方へ踵を返す。僕は近くに立て掛けておいた木刀の袋を肩から背負い霊夢さんを追う。

霊夢さんは境内でお祓い棒を手にし空を見上げていた。僕が来たことに気がつくとこちらに来るように手を招く。

「木刀を抜いた状態で飛んでみて」霊夢さんは空を指し示しながらそう言う。恐らくこれは空を飛ぶ練習だろうと僕は察する。そして言われたように僕は手に木刀を持ち、以前空を飛んだようにイメージをして霊力を扱う。僕は宙に浮かぶが、まだ慣れていないので少しよろめきながら空を飛ぶ。

「やはりまだ慣れませんね」

「いずれ慣れるわ、慣れたら無意識の内にスイスイ飛べるようになるわよ」

「頑張ります」

僕はしばらく身体に空飛ぶ感覚を染み付けさせるために空を飛ぶ。時に下から上に、上から下に急上昇、急降下をしてみたりしてみる。慣れてくると最初は気にする暇もなかった空からの景色を眺めながら飛ぶことも出来た。まさしく鳥になった気分である。

そんな僕を見て霊夢さんは白い光の玉を僕に目掛けて撃つ 。空の景色に見とれていた僕はそれに反応することができず、まともに喰らい撃ち落とされる。

 

「なんですか?!いきなり!!」

僕はなんとか落ちる直前に体勢を整え、着地し霊夢さんに向けて怒鳴るように聞く。しかし、霊夢さんは悪びれる様子もなく、「ごめんごめん、慣れたみたいだからそろそろ次にいっても大丈夫かなと思って」

と言う。

この人はいつもいきなりだなと思う。僕の霊力を目覚めさせる時もなにか少しでも説明してからすればいいのにいきなりお祓い棒で殴ってきて今回も何の説明もなく見事空飛ぶ僕を撃墜してみせた。

「次ってなんですか?」

「いまさっき私が飛ばした玉よ、これを避けるの。」そう言うと霊夢さんは手のひらになにかを発生させた。僕のことを撃ち落としたにっくき光の玉である。先程は白いものだったが手のひらにあるものは赤いものだった

「霊力で作った玉なんだけどね、これの扱い方は今度教えるとして今は私のこの玉を避けてちょうだい。」

まあ、12発程度なら不意打ちで撃たれない限りは避けられると僕は思い、「わかりました、避ければいいんですね」と返す。

霊夢さんはニコッと笑いながら「それじゃあ、がんばってね」といい自身の周りに赤と白の玉を数え切れないほど発生させる。

僕は自分の思っていたことと違うことがわかり、「ちょ、ちょっと待ってください」と霊夢さんに言うが遠慮のない彼女がそれで止まってくれるはずもなく博麗神社に僕の叫び声が響き渡った。

 

 

そんな珍事の間に博麗神社へ向かう箒に跨る人影1つ。人里で配っていた文々。新聞の号外を手に心躍らせる白黒の魔法使いが1人。

「まっさか、あの霊夢が従者を雇うとはなぁ ましてや男を。」

風に靡く先が尖った帽子を片手で押さえ向かうべき場所を見据える。その手には新聞が握られている。

「どんな奴か楽しみだぜ、その想真ってやつはよ」

手にしている新聞の写真を見ながらそう独りでに呟く彼女の顔は好奇心に満ち溢れていた。




いかがだったでしょうか?なにかおかしな部分があれば教えてくれると幸いです。次回の投稿も不定期です。気長にお待ちください。
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