日本の食文化を守るために変態技術を駆使しまくった結果 作:Haganed
食文化の布教の為には色々と手を尽くさなきゃならない
特使の派遣からしばらくして青年のもとに一通の電子メールが届いた、発信源と受信先を調べると以前ノネット・エニアグラムに渡したアドレスを使用した状態での結果であることが確認できた。何の取りとめもないデータに対しステガノグラフィーによって偽造されたメッセージであると人工知能キャスターの分析で判明し、これまたキャスターによって解析して彼はメッセージを受け取ることとなる。簡潔に纏めると亡命を行いたいという旨のメッセージであった。すぐさま枢木首相に連絡を取り、亡命者の迎え入れを行ってほしいと伝え、青年もまた彼らの亡命を手助けするためにいそいそと準備を行っていくのであった。
くあ……はふ、もうそろそろ到着しそうな感じっぽいかね。
「ええ、このまま何も問題なければ予定通りの到着となります」
何も起こらないことを祈りたいものだけどね。わざわざイギリスに来てまで余計に目立つことは避けたいし、何より時差の影響でちょっと眠い。この輸送車両に長く居るのもちょっと飽きてきた。
「今のは聞かなかったことにしておきますよ、大将」
そりゃどーも。ま、仕事は仕事だしね。向こうでなんかあったらヘリで行けるように手配はしておいたけども、出来るなら使われない未来が来ますようにーっと。────って、こういう時に限って通信が来るのフラグってやつなの? はいはい、どうした?
『大将、ちょーっとマズイことになりました。目的の客船に海賊が取り付いてます』
まーじで? あーもうこんな時に、すぐにヘリ出せる準備して今からそっちに向かう。
「了解です、お気をつけて」
あーあ、こんなことなら国際免許取っとくべきだった!
ナノマシンにより強化された『大将』たる青年は走って近場のヘリポートに停められていたヘリに乗り込み仲間とともに飛び立つ、しばらくして海上に佇む客船を見つけると既に海賊と思しき人間が占領している様子を目視で確認した。今このヘリ内に居るのは全員P.S.S.の人間であるため特に隠し事をすることもなくナノマシンを介した情報共有を行う。
「確認できた海賊の人数は現時点で甲板に7名、また監視カメラへのジャックによればラウンジに人質全員と海賊8名、操舵室に乗組員5名と海賊5名は居るものと確認されました。こちら船内見取り図になります」
彼らの視界に、もっと言うならば網膜にナノマシンによる情報投影が行われる。船内見取り図に配置されている敵の位置を確認し段取りを急速に行った。
「先に甲板の可及的速やかな制圧、次に2人はラウンジにいる奴等を。自分は操舵室の方をやる、最優先で護衛すべきはウィルバー・ミルビル博士とその他技術者計12名。ただし可能なら乗客全員守れ、それぐらい出来るだろ」
「無茶言いますね大将。中々骨が折れますよ」
「なんだ、出来ないのか? ウチの社員ともあろうものが」
「そうは言ってないっしょ」
挑発気味に尋ねた青年にそう答えた秀川、その答えに対し2度ほど頷いて少し満足そうな青年は言葉を続ける。
「そうそう、そういうのでいいのよ。とはいえ必ずやれるって豪語するぐらいはして欲しかったけど」
「大将、確かに俺らナノマシン適合手術受けて人外じみた能力ありますけど。全員守って制圧はまた別の話といいますかね?」
「でもやれない事でもないし出来ないことでもない。もうとっくに自分らは人を捨てたんだ、人に出来ないことなら大抵できるから要らん心配はしなくていい。あ、でも」
「緊張感は捨てるな、でしょ? 耳タコっすよ」
「分かってるならオッケー、これ以上自分からは何も言わない事にしよう。さ、準備済ませるよ」
「「了解」」
それを皮切りに青年は首に取り付けられたチョーカーに、他2人はそれぞれ指輪とイヤリングに触れ「ミラージュ」と唱える。これにより周囲のナノマシンがメタマテリアル光歪曲迷彩に変化し彼らに纏わりつくことで風景と同化することが出来るのだ。このヘリ内に居る人間は全員ナノマシン適合手術を受けていることで、それを見るための状態に変化できるため姿は見えたままだがそれでも人の目を誤魔化すにはうってつけと言える。
次に靴裏に何やら拳大ほどの大きさの穴のあるものを形成すると佐倉と呼ばれる男がヘリのドアを開けた。風が室内に向かって流れ服や髪などがその影響を受けるが、ナノマシンの方には全く問題なく機能していることを運転席の人間が確認すると「問題なし」と言った。
「じゃ、いっちょ行きますか!」
「ご武運を」
なんの恐れも持たず彼らはドアから飛び降り客船目掛けて落下しながら移動していった。そして靴裏に形成した機械が起動し彼らの肉体を客船の方へと向かわせていき、甲板に近付くと姿勢を立て直し緩やかに落下エネルギーを殺して着地する。そのさい佐倉と秀川は直立した状態で着地したが、青年だけは右手と両足を付けるスーパーヒーロー着地もとい三点着地をした。そして着地の際に下げていた頭をゆっくりと上げて────
「スーパーヒーロー着地って膝に悪いよね」
「バカなこと言ってないで行きますよ大将」
「はーい」
青年は跳ねるように飛び上がり姿勢を正して立つと、3人それぞれの手にナノマシンの形成による武器が出現する。佐倉と秀川の両名は刺突性能が付与された凧形の盾とククリナイフのように湾曲された刀身の剣、ではなく特殊警棒を装備。青年のみ前腕と肘が隠れるほどの大きさの長方形の盾に刺突用の杭が取り付けられたものを装備した。勿論、他の者には見えないようになっている。とはいえ大なり小なり音を出してしまったことに変わりはないため、何事かとアサルトライフルを所持した海賊と思しき3人が彼らの居る方を見た。しかし何も見えない、何も分からない。
ゆっくりと海賊達は彼らの元へと近付いていき彼我との距離が接近戦に有利な状況へとなったところで佐倉と秀川が海賊の後ろに回り込み特殊警棒で力強く叩く。海賊達からすればいきなり衝撃がやって来て何故か倒れたことになるのだが、その理由はP.S.S.の人間にしか知るよしが今の所ない。呆然とする残った1人に向かって勢いよく突っ込み腹部目掛けて殴り抜けると、その海賊は漫画のように吹っ飛び甲板の先端まで飛んでいった。
この物音を聞いて甲板にいた残りの海賊4名は何事かと駆けつけたが、彼らの目に映るのは何故か倒れ伏して吹っ飛ばされている自分達の仲間だけ。誰によって倒されたのか、何によってやられたのかも分からないまま、ただただ見えない存在である3人に甲板へ投げ飛ばされていった。久方ぶりの
「それじゃあ作戦通りに、ヘマしないでよ2人とも」
「大将こそヘマしないでくださいよ。生身の活動は随分と久しぶりじゃないすか」
「誰に物を言ってるのさ。社長たるもの社員の手本となるべし、を掲げてる自分だよ?」
「なら大丈夫そうですな」
そうして3人は別れ、それぞれの持ち場へと急いで行った。
【人工知能】
・ライダー
“騎乗者”の名を冠した人工知能。ライダーの統治下にあるナノマシン制御装置を取り付けることでKMFの操縦や乗り物に騎乗している際に反射神経が鋭くなる。また他にも緊急用プログラムとして適合者の意識が無い場合ライダーの統治下にあるナノマシンを介し適合者を操縦できる。
・キャスター
“魔術師”の名を冠した人工知能。キャスターの統治下にあるナノマシン制御装置を取り付けることで物体の形成や、ナノマシンを介して相手を自分の支配下に置けたりすることが可能。
・アサシン
“暗殺者”の名を冠した人工知能。アサシンの統治下にあるナノマシン制御装置を取り付けることでナノマテリアル製光学迷彩機能、身体能力や精密性の上昇機能、恒常的に殺気などへの反応を高める機能を使用できる。