日本の食文化を守るために変態技術を駆使しまくった結果   作:(´鋼`)

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飯の好みが合わないのは問題ではない

 

 

 

 『大将』たる青年が口にした人物の名前は本来日本、もっと言うと青年自身に関わることはまずないと思っていた人物の名前であった。画面の向こう側に居るであろう男は何も言わないが、彼は補足情報という前置きにして昨今の情報化社会の利便性を軽く唱え皇族の家族関係や基本的に公開されている情報などを検索し、様々な予想を巡らせていった結果ある程度の人物像が定まったと伝える。ブリタニアという国の政治などを担当する人物、王位継承権1位のオデュッセウスの予想される人間性、現皇帝であるシャルル・ジ・ブリタニアの今までの言動や行動を鑑みた総評として、こうして今青年の前に居る人物は1人ぐらいしか思い付かないと伝えた。それらの予想に対し目の前の人物が取った行動は──答え合わせと提案であった。

 

 

 

*─────*

 

 

 

『──どうやら私は、君を少し誤解していたらしい。P.S.S.代表取締役社長コウs』

 

 

 おっとそこまでだ。今アンタの居る場所でその名前を誰かに聞かれちゃ面倒になりかねん、念には念を入れて自分のことは……そうだな、大将ってのは避けた方が良いかい? アンタらブリタニアにとっちや忌むべき名前だろうしな。

 

 

『そこまでの配慮はしなくても構わないとも、大将殿。寧ろ今の私にとって君の協力は欲しいものだからね』

 

 

 とうとう正体も本音も隠さなくなったな。願ってもない、ってことはアンタも反ブリタニア……いや反シャルル派に就いてるって様子だな。となると一応協力関係を結べる相手ではあるわけだ。

 

 

『そうだ。そしてここまで予想出来た君なら、私が結ぼうとしている取り引き内容も容易に思いつく筈だ』

 

 

 ……生死不問でのシャルル・ジ・ブリタニアの失権、またはシャルル派の滅亡……かな、多分。で対価として鬼神兵の情報と……自分らの使用した魔法じみた何かに関する情報の提供とかか? 他にも何か要望したいことはあるんだろうが、今挙げたものは入ってるだろうな。それとも世界征服でもするつもりかい? 世界の半分を分け与えよう、とか言ったら今世紀1番どころか歴史上最大のジョークになるぞ。

 

 

『ハハハッ、中々面白いことを考えるな大将殿は。案外それも面白そうではあるがね』

 

 

 うーわ、“自分ならまあやれるでしょ”みたいに言ってやがる。末恐ろしいなアンタ、絶対敵には回したくないわ。

 

 

『褒め言葉として受け取っておこう。本題に戻らせてもらうが、確かに君の言った通り対価として鬼神兵団に関する情報の提供を行い、君らには我が父シャルル・ジ・ブリタニアとシャルル派の失権に協力してもらいたい。無論これはあくまで契約の一部に過ぎない、とはいえ日本側にも得をする条件での取引内容も揃えている。如何だろうか?』

 

 

 ……正直なところ、自分らや日本側があの音楽家のカツラみたいな髪型してる偉そうな皇帝サマを宰相のアンタと協力して失権させるのは至極簡単だろうな。だが悪いな、魅力を感じないから協力する意味が無くなりつつある。自分らも場合によってはブリタニアと戦って完膚無きまでに叩き潰せる戦力を揃えてる、何なら協力者も中華連邦かEU連合のどちらか又は両方と組んで世界大戦やったって良い。態々ブリタニア内の反シャルル派と組むメリットはあまり無い、というのが自分の考えではある。

 

 

『それで?』

 

 

 アンタも人が悪いな。……とはいえ協力しなかった場合、自分らにとって1番厄介なアンタが敵に回ることになる。アンタの手の平の上で転がされようと無理矢理ぶち壊すことも出来なくはないが、こちらもタダじゃ済まないだろうな。何なら中華連邦やEU連合と提携して日本潰しなんて事も有り得る可能性もある、そうなったら後々面倒にしかならない。それを踏まえると自分は気乗りしなくともアンタと手を組まざるを得ない選択肢しかないんだが、違うかい?

 

 

『そこまで気付いているのなら、最早君に出来る選択肢は決まったようなものではないのかな。大将殿』

 

 

 ────ハ…………ハハハハハッ! ハハハァッ!

 

 

 

 

 

§─────§

 

 

 

 

 

 突如として響いた『大将』たる青年の()()声により、場の空気は一変する。青年の笑い方は今、自身の無力さ故に嘆いて笑うのでもなく相手の考えが上手であった事に対する恐怖の感情が含まれたような笑い方でもなく。やがてその笑い声が消えて静まり返った途端、青年は普段は見せることも無い怒りを含んだ表情と瞳孔が開いた瞳をシュナイゼルに見せつけながら静かに言った。

 

 

「調子に乗るなよテメェ。自分らを甘く見すぎてるな」

 

『……どういう意味だろうか?』

 

「テメェはその知略をもってして自分らを操ろうとしてる訳だが……自分らがテメェの策略に嵌るような奴だと思い込んでねぇか? それは全くの間違いだクソッタレ、ただの人間如きのテメェに操れる力じゃねぇ。自分らは時代に颯爽と現れたイレギュラー、自分含めたイカレ野郎どもをそう簡単に操れるわけがねぇんだよこのヴァアカ!」

 

 

 それは到底皇族相手に使って良い言葉遣いではなかった。しかしこのような青年を初めて見たのはシュナイゼルだけでなく、同じ部屋にいたラクシャータもそうであった。本性いや、彼自身の側面とも言うべき姿を隠していたことに対して、シュナイゼルもこれは予想の範囲外だったのだろうか少しだけ眉が上がっていた。

 

 

「大体、テメェはどこの誰に頼もうとしてるのか知ってて言ってるのか? 何千年も前からこの日本という島国で内乱ばかりやってきたイカれどもの末裔だぜ? そして各々が別々の思想や理念を持ち、守るべき物が違う中でブリタニアへ反抗する意志を掲げて勝利をこの手に掴んだバカどもだ! テメェが手の平の上で操ろうにも、その土台ごと消し去って終わらせることぐらい訳ねぇんだよ阿呆が!」

 

 

 そうやって語る彼の口は、とても人に見せる様なものではなかった。ただひたすらに口角を上げて瞳の奥に狂気を宿した笑みがそこにはあった。

 

 

『ではどうするつもりだね君は? 与えられた選択肢は2つ、私らと協力するか協力しないかだ。君らにとってマシな未来がどれか分かるはずだが?』

 

「協力ゥ? 協力してほしいのはテメェらの方じゃねぇか。自分らはしようがしまいが自分らで片付けられる。なら本当にテメェがするべきが何なのか分かってる筈だと思うんだがなぁ? ()()()()したいんだろぉ? それと協力が欲しいつったのは誰だ? あ?」

 

 

 打って変わって攻勢に出て、やけに協力と要請の部分だけ力強く念押しするようにシュナイゼルの問いに答える。あくまでも自分たちは依頼を受ける側であり、依頼をする側はそちらであると位置づけさせる文言を唱える。暫くの沈黙が流れたあとシュナイゼルは答えた。

 

 

『確かに、こうして君たちに頼み込んでいるのならば相応の形で尋ねなければならなかった。改めて君らに、いや日本という国へ依頼したい。シャルル・ジ・ブリタニアの失権を手伝ってほしい』

 

「──国に頼むのなら少し待ってろ、首相と話し合って決めさせてもらう。だがP.S.S.としてはその依頼、受諾した。契約内容や条件などはこちらで決めさせてもらう、良いな?」

 

『ああ、それで構わないとも』

 

 

 この一連の話を終えて、シュナイゼル側が退出してオンライン通話が終了すると一変して青年は疲れた様子を見せてゆっくりとラクシャータの元へと歩み有無を言わせず膝枕を強要した。

 

 

「ちょっと」

 

「さっきので疲れたー、自分寝るから膝枕使うー」

 

 

 その直後、静かに寝息を立てはじめ、結局ラクシャータも動こうとはせずに2時間が経過したという。

 

 

 


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