日本の食文化を守るために変態技術を駆使しまくった結果   作:(´鋼`)

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出汁の入った鍋を熱しましょう

 

 

 

 約束の日が徐々に差し迫っていく日々とはいえ、色々と予定のある青年は今のところ変わらぬ日常とやらを過ごしていた。そうして時間だけが経っていく中、約束の日は刻一刻と迫っていき遂に当日になった頃。またあの場所まで赴いてルルーシュの答えを聞き、そこで最終的な判断を下す。本来であればこのような対談は必要なくルルーシュ本人の願いも無視して作戦を行えばいい、けれどそうしなかったのは青年がルルーシュを識っていたからであろう。

 

 

 

*─────*

 

 

 

 3度目となるルルーシュとの対談、本来京都六家の会合場所とされるその場所に居るのはブリタニアから送られてきた、人質としての価値は塵芥ほどの残滓しか残されていないルルーシュ・ヴィ・ブリタニアと民間警備会社P.S.S.代表取締役社長の『大将』たる青年。そして意外にももう一人、現首相枢木ゲンブの息子である枢木スザクも居た。ただルルーシュとスザクの2人が顔に若干の痣を作っている事に関しては変としか言い様な無いだろう。とはいえ幾らか予想は出来る、なので聞いてみることにした。

 

 

「あー……2人とも喧嘩でもされました?」

 

「喧嘩ではない」 「喧嘩じゃないです」

 

「オーケー、意地のぶつかり合いって形で収めてほしい感じだなこれ。どう足掻いても喧嘩なんだけどねー」

 

「「喧嘩ではない/じゃないです」」

 

「頑固だねー君ら、ここまで来ると1周回って柔軟性あるよ……ま、その事は後回しにしようか」

 

 

 この様子からして青年には確信に近い予想を持っていた。枢木スザクがルルーシュにとっての良き理解者になれるだろう可能性を、ある程度識っていたからこそ賭けてみた。その結果はどうやら、一皮剥けたような様子を見せるルルーシュから確認できたが、それはそれ。最終的な答えを聞くまでが、この交渉の肝なのだから。

 

 

「では改めて聞きましょう、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア殿下。貴方は己の願いの為に大切なものを、全て賭ける覚悟を持つ事は出来ますか?」

 

 

 その質問から少しの間を置くように、ルルーシュから少し長めの息が吐き出される。それを終えた後に口を開いた。

 

 

「やろう、やってみせよう。それが俺に課せられた現実ならば」

 

「おやおや、前回前々回とは大違いの返答のようで。妹様と……スザク君から何か言われて心変わりしましたか?」

 

「……正直、今でもナナリーを危険な目に合わせることに関しては反対であることに変わりない。だが自分のやろうとしていることが結局、ナナリーの思いと関係なく巻き込んでしまう事を改めて思い知っただけだ」

 

 

 青年の表情は先の質問の時から変わらず、ただただ貼り付けたようには見えない笑顔のままルルーシュを見ている。その視線に耐えかねたのか、溜息をつきながらもルルーシュは答えた。

 

 

「ナナリーにも事情は説明した。最初は反対されたが、次第にナナリーの方も覚悟を持っていって、仕舞いには共に行くと言ってのけた。……ナナリーにはこれ以上重荷を背負ってほしくなかったがな」

 

「成程、お互い兄妹愛の強い仲のようで。覚悟はとうに出来たようですが、ついでにもう1つ訊ねても?」

 

「俺の欲望、だったか」

 

「ええ、それで合ってます」

 

「俺はナナリーと共に平和な世界を暮らしたい……今はそれだけだ」

 

「今は、ね。……了解しました」

 

「じゃあ!」

 

「ええ、スザク君の思っている通り。我ら鬼神兵団はルルーシュ殿下と、そして改めてシュナイゼル殿下と反皇帝派との協定を結びましょう」

 

「やったね、ルルーシュ!」

 

「では、自分はこれにて失礼させていただきます。近日中に会談が開かれるかと思いますので、そちらのご参加もお願いします」

 

 

 その場から立ち上がり、帰ろうとしていた所でスザクがルルーシュに対して掛けたであろう声のトーンが若干疑問を含んだようなニュアンスをしていた事が耳に入ったことで、青年はルルーシュの方を見た。それを合図にしたルルーシュは青年に向けて発した。

 

 

「P.S.S.代表取締役社長殿、ハッキリ言うと今までの事で貴方のことが個人的に嫌いになった」

 

「ルルーシュ!?」

 

「ほぉん……?」

 

「だが、貴方の軍団とその能力を俺は今、欲している。だからこそ最初に言っておきたい……俺は貴方が嫌いだ、個人的に馴れ合いたくはない程に」

 

 

 それだけを言って、少しの静寂が広がったがすぐに青年がそれをかき消した。

 

 

「で? お互い表面上の関係でいきたいと?」

 

「ああ、その通りだ。まかり間違っても貴方とは表面上の付き合いであり続けたいと思っている」

 

「ふふ、成程。ええ、それもまた有りでしょう。お互い利用し合い利用され合う……そんな関係も悪くない」

 

「俺からは以上だ。それと」

 

「うん?」

 

「……貴方には感謝している所もある。迷いを晴らしてくれたその礼はどのような形であれ返すことを約束しよう」

 

「律儀ですね。まぁ、頭の片隅にでも入れておきますよ」

 

 

 その会話を終えてようやく、青年は帰路へとつく。今ここに対談は終わりを迎えたが、まだまだ残された課題はある。しかし1つ先へと進んだことに対しては喜びを見せても良いだろうと、青年は車の中でニヤリと微笑んだのであった。

 

 

 

 

 

§─────§

 

 

 

 

 

 ふぃー、やーっと終わったよ。まぁルルーシュ君にはあれぐらいの覚悟を持ってもらわなきゃ話にならなかったんだし、ひとまずは色々と話もつきやすくなった事だし。今日はちょっと休憩がてら保管してた梅酒でも1杯……って、何か連絡きてる。しかもこのアドレス、またシュナイゼルからの対面通話のお誘いか。えーっとパソコン、は要らんわな。画面表示してルーム参加してと、よし繋がった。

 

 

『やぁ、息災のようで何よりだ』

 

 

 何か用件でも? 急なものだったら今すぐ言ってもらわなきゃならないけども。

 

 

『いや、君との話がついたとルルーシュから連絡が来てね。こちらからもお礼を言わせてほしい』

 

 

 あぁ、あれ。自分がお礼言われるような人間とは思ってないんだけどな真面目に、ただただ煽りまくって怒らせた博打にも近い手法だったし。アンタは特に何とも思ってなさそうなのがまた。

 

 

『これでも遠い異国に居る弟と妹を心配する人間だとも』

 

 

 ……ま、今の発言は本当にしといてやるよ。しっかしアンタも相当酷なことをさせたもんだな本当、自分がルルーシュの覚悟を折ってブリタニアに送還させるか別の国に亡命させるかの未来もあったのによ。

 

 

『否定はしない。その可能性も踏まえたルートも織り込み済みだったのは事実なのだし』

 

 

 そもそも今の人質としてのルルーシュに価値なんてあって無いようなものだろ。そんな状況でルルーシュが自身の身を売るような真似を仕向けたのは、アンタから何か告げ口でもあったのか?

 

 

『それは後日明らかになる。まぁ今はその日までいつもの日常を過ごそうじゃないか、大将殿』

 

 

 いつもの日常ねぇ……まぁ、そうさせてもらおうか。この脆くも儚い幻想のような日常を、今は堪能させてもらうとしよう。

 

 

『是非そうすると良い……ところで話は変わるんだが』

 

 

 あん?

 

 

『日本から雇える日本料理専門のシェフは居るか? あの時食べた、たまごふわふわだったか。あれと同じものを作ってもらったがどうにも味が違って物足りないのだが』

 

 

 ……せめて日本とブリタニアの仲が良くなってからじゃないと無理な話だな、それ。

 

 

『そうか……』

 

 

 また来る機会があったら食べさせてやるから。

 

 

 

 


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