日本の食文化を守るために変態技術を駆使しまくった結果   作:(´鋼`)

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一先ず食文化は守れたけどまだ油断出来ないので策を練る

 

 

 

 ブリタニアが日本への宣戦布告を行ってから5ヶ月後、皇暦2011年1月12日にこの戦争はブリタニア側の停戦申し込みによって終わりを迎えた。2つの国はお互いに停戦協定を結び、生き残った捕虜全ての返還と釈放金の支払いという交換条件を達成したことで日本は事実上の勝利を勝ち取った。この戦争の終止符を打たせた切っ掛けとなった民間警備会社【P.S.S.】所属の精鋭50人と彼らの所有するKMF鬼神兵の功績を称え、特別勲章として鬼神兵の使用したMURASAMEとHINAWAを交差させたサクラダイト製の勲章と【鬼神兵団】という称号を賜り、彼らは一躍日本の英雄となった。

 

 また同日、ブリタニア側の導入したKMFが見せた現行兵器を凌駕する戦闘能力への対策として日本もKMFの配備と、パイロット部隊の設立を宣言。これによりKMFの研究開発生産技術を本格的に行うべく、特務機関の設立を確約しP.S.S.に協力していた技術者ならびに鬼神兵団の面々を所属させることが決定した。そして現在、英雄と称された1人である『大将』は今───温泉に浸かっていた。

 

 

 

*─────*

 

 

 

 あ゙え゙え゙え゙ぇ゙ぇ゙ぇ゙いぃぃ゙ぃ゙……最っ高に気持ちえぇ。ここ最近の疲れがどっと抜け落ちてくぅぅぅ。このままだと溶けるぅ、溶けてもいいねぇ。いやぁこれから益々大変になっていくのは分かってるんだけどねぇ、戦勝記念祝いだしぃ。首相からの直々のお誘いだしぃ。京都六家の重鎮様方も来られるって言うしぃ? 仕方ないよねぇ!? ま、1人だけ楽しむ訳にもいかないし他のメンバーには慰安旅行の手配しといたから文句言われる事は無いでしょ。にしても良い景色だわぁ、目の前に広がる森林と美しい川のせせらぎ、時折聞こえる野鳥たちの演奏もまた乙なもので。ホント、この景観が潰されかねない状況下だったってのが嘘みたい。

 

 

「よく寛いでいるようで何よりだ、大将殿」

 

 

 あぁ首相……って、トップの貴方がその呼び名を自分に使うのはまずいでしょうよ。普通に名前で呼んでくださいな。

 

 

「ははは、いやいやすまない。どうにも呼びやすくてな」

 

 

 少し離れた場所で同じく温泉を楽しんでいる枢木ゲンブ首相は悪びれる様子なく告げた。多分あれ直す気ないな、恐れ多くて寿命減りそう。それはそうと長く浸かりすぎてそろそろ逆上せそう、あと少し楽しんだら出ていこうか。今日の夕食、良いものを用意したとか言ってたけど何が来るかなぁ。

 

 なんて思いながら夕食まで待ってたら食事会場の机の上に置かれた料理が見たことないぐらい豪勢なんだけど。うわ伊勢海老が まだビクって動いてる、多種多様な活き造りもそうだけど惣菜の種類も豊富。これハナビラタケか? 見た目和風出汁で味付けされてるみたいだな、おー のれそれ*1もあるー! しかも……露地物スダチ使った醤油和えだこれ! 絶対美味い! 見た感じ国産牛のすき焼きもあるしかなり期待できるぞこれ!

 

 

「君のお眼鏡には適ったかな、大将殿。君の両親から聞いた話だとなんでもかなりの食通だというじゃないか、ならば下手なものは出せんと用意してみたんだが」

 

 

 最高です! ありがとうございます!

 

 全ての料理が並び終わって、全員席に着いたところで首相の音頭を皮切りに食事をし始める。まずは前座におひたしを……ほほぉ、岐阜産のほうれん草に粟内蔵醤油さんの限定品紫。1年に1度にしか仕込みしてないものを、贅沢やわぁ。自然的な旨味と甘味それとコクが噛む度に口の中を支配してくるぅ。イカ刺しは……長崎のカミナリイカだこれ! うほーモッチモチしとるぅ! これに別皿にあるさっきの紫にほんのちょっぴりつけて、あ゙あ゙ああ美味い! 最高!

 

 このハナビラタケは……あーダメ! 最高すぎてバカになりゅ! 指宿(いぶすき)の本枯節を薄めにとった出汁がハナビラタケ本来の味わいを強化してやがる! 伊勢海老! 三重産の伊勢海老あまぁい! なんの味付けもなしにこれは反則やって! 少しさっぱりしたいのでのれそれを……紫と露地物スダチの対比を8:2、スダチは汁と皮の対比を1.4:0.6の組み合わせが美味ぃぃいい! ここは天国か? 幸福な現実だよ! やったね(ry

 

 

「ぜ、全部当たっている……匂いと味だけで産地まで分かるのか……!?」

 

「なぜ割合まで理解出来ているんだ?」

 

 

 

 

§─────§

 

 

 

 

 満足気な様子で出された料理の全てを食べきった青年は今まで誰も見たこともないほどの幸せの絶頂期にいるような表情を浮かべて焙じ茶の入った湯呑みを持ち、注がれた焙じ茶を飲んでいく。湯呑みの半分まで減ったところで机の上に置いて6名の人物に視線を向けた。首相と他財閥企業のトップ5名、彼らに対してこれから話すのは単純明快、今後のKMF戦力に関することであった。

 

 中立という立場を保つこの国は、この地球の陸地の3分の1を国土とする大国ブリタニアに攻め込まれた。確かに停戦協定は結んだが、何れまた同じことが起こらないとは限らない。そもブリタニアという国に対して、先の戦争の5ヶ月間に投入された戦力の多さを鑑みれば、対抗するための力を欲するのは至極当然のことであった。そして同時に国土面積の違いによる保有可能数の限界という問題にも直面せざるを得ない。

 

 そこで青年がナノマシンによって形成した、現在企画段階に入ったKMF開発計画資料を提示する。現在は水中での稼働が可能である機体開発に向けて技術者たちと意見を出し合っている最中だという。国土の狭さに反し、島の数による領海の広さに注目し水中からの奇襲を想定したものとなっている。また現段階では水中で現行のフロートシステムを使用した際に発生する塩素被害を考慮し、別種の推進装置について議論しているとのこと。

 

 またブリタニア側に公開するKMF技術に関しては、ある程度計画は進んでおりシミュレーション実験に移行されていることも伝えた。これらの計画は日本にとって必要不可欠なものであると念押しし必ず訪れるであろう未来に備えて行動に移さなければならないことを認知させたところで青年は計画名を告げた。

 

 

 

プロジェクト : AYAKASHI

 

 

 

 それが青年の、ひいては日本の求める力の名であった。

*1
アナゴの稚魚

連載に変えるべきか、短編のままで良いか

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