日本の食文化を守るために変態技術を駆使しまくった結果   作:(´鋼`)

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一波乱起きそうでまた食文化の危機が迫っている気がする

 

 

 

 日本がブリタニアに勝利した。これは事実であり、言い訳しようのない歴史の一コマとして刻み込まれた。しかしその事実は良いことばかりではなく、時として面倒なことを引き寄せることにも繋がる。否応なしに直面する更なる問題とはブリタニアへの対策案であったり、後々起こるであろうブリタニアとの交流関係も視野に入れなければならない。そして忘れてはならないのが、インドネシアを占領した際に経済制裁を行った中華連邦とEU連合の国々への対応である。

 

 地球の陸地の3分の1を占める大国を一方的に壊滅させた日本に対して、戦争中に食料・軍事支援に動いた見返りとして遍く兵器を蹂躙してみせたKMF鬼神兵の情報公開を求めるのもまた必然であった。

 

 

 

*─────*

 

 

 

 鬼神兵の情報開示ぃ?

 

 

『うむ』

 

 

 無理です。

 

 

『うむ……ん? 無理?』

 

 

 はい、無理です。具体的かつ重要な要点を申し上げてもよろしいですか?

 

 

『あ、あぁ。構わんが』

 

 

 では。まず第1に鬼神兵に使用されているナノマシン、現在我が国では医療分野での活躍が期待されているのはご存知ですよね。

 

 

『知っているとも。外科的手法による悪性腫瘍の切除、つまり外部から癌細胞などを切除するのではなく内部から分解させる手法による治療を行えると』

 

 

 ええ。他にもナノマシン投与による運動能力や五感能力の補助など、公開されているのは医療的用途が大半になります。そのナノマシンを医療用ではなく戦闘用に調整しKMFでの使用を可能としましたが、ここで問題となってくるのが第三者が医療用ナノマシンと戦闘用ナノマシンを区別していない情報を取得した場合になります。結論から申しますとナノマシンに対する風当たりが強くなり普及率の低下を招いてしまう事態が起きかねません。

 

 また、我々のチームは人工頭脳有りきですが綿密な精査を行っております。異常のあるナノマシンが培養されることはままある事でして、これらを放置した場合その異常性を持ったナノマシンが他の正常なナノマシンにその異常性を伝搬させかねないのです。早い話が、これらを行わない国々に技術を提供すると粗悪品が世の中に出回りかねないのです。そうなった場合、民衆はますますナノマシンに対して悪感情を抱いてしまう。

 

 

『成程……』

 

 

 ナノマシン以外にも先述した人工頭脳の簡易版を鬼神兵に搭載させてあります。ただ簡易版ゆえに、それらのコピー品を搭載させたとしても鬼神兵のような動きを再現出来る訳ではありません。親となる3つの人工知能と簡易版、そしてナノマシンを投与した搭乗者があって初めて成り立つ代物です。まぁ仮にこの親たる3つの人工知能の情報を開示したとしても同じ性能のものが出来上がることは万が一、どころか恒河沙が一にもありませんが。

 

 

『……なぜ恒河沙なんだ?』

 

 

 鬼神兵に使用されているナノマシンの数が8恒河沙なので。

 

 

『1機にか?』

 

 

 はい。

 

 

『なぜそんな数に……』

 

 

 いやはや、ミサイルの生成とか減衰領域とか榴弾砲の生成とか機体の自動修復とかその他諸々を実現させるにはこのぐらい必要だと結論が出まして。

 

 

『バカじゃないのかね君ら』

 

 

 技術者からすると褒め言葉になりますよそれ。

 

 

『…………で、他にも何か理由はあるのか?』

 

 

 ありますよ。あぁでもその前に、鬼神兵の情報開示を優先的にしてほしいと言ってきたのはEUと中華のどちらです?

 

 

『我先にと電話が来たのは中華連邦の方だ。君らのところにラクシャータ・チャウラー女史が居るだろう、KMFの開発生産技術を供与したため優先的に鬼神兵の情報開示を行う義務があるとかでな』

 

 

 中華かぁ……やだなぁ。上層部の腐敗が横行してるってラクシャータ本人から聞かされて絶対渡したくないんですよねぇ。粗悪品ナノマシンがより出回りそうで怖いんですよねぇ、やりかねませんよあそこ。まだマシなのEU連合だけなんですよねぇ。それでも鬼神兵の情報を出すのはマズイのがまた……。

 

 

『そうか……うぅむ、ひとまず両者には妥協案を出して交渉してみることにしよう。とりわけ中華連邦側にはな』

 

 

 お願いします。

 

 

 

 

 

§─────§

 

 

 

 

 

 通話を終えて長い長い溜息をついた青年は重い足取りで座り心地の良いオフィスチェアに倒れるように座り、チベットスナギツネみたく目を細めながらリップロールをする。この問題に直面することは予想していたが、そのまま単なる心配のしすぎで終わってしまえばどれほど良かったのかは想像に難くない。そして視線を同じ部屋で寛ぐ人物に向けた。先程の会話に出ていたラクシャータ・チャウラーその人である。この部屋にあるおやつ保管庫からじゃ○りこを取ってきてずっと食べている最中だが。

 

 

「ねー」

 

「んー?」

 

「インド軍区に戻ろうとは思わないの? 」

 

 

 そう言いながら部屋のおやつ保管庫の扉を開けて中身を物色し始めた彼、それを尻目にじゃ○りこを食べる手は止めず質問に答えた。

 

 

「こっちの方が居心地良いの、今更戻ろうなんて思わないわよ」

 

「ウチの変態どもが頭痛の種のくせに?」

 

「それはそれ、これはこれ。あとあなたもその枠組みに入ってるわよ」

 

「自分はまともですぅ。アイツらよりかまともですー」

 

「どの口が言うのやら」

 

 

 選んだイカのスルメお徳用ボックスを持って彼女の向かい側の席に座り、蓋を開け1本取り出して食べる。ただ無心で咀嚼し続け時間をかけてその1本を味わい終えると新たなスルメを取り出してまた食べ始めた。

 

 

「飽きないのね」

 

「じゃ○りこ食う手止めてたらブーメランじゃなかったぞ今の発言」

 

「そこは“お前が言うな”で良いでしょ。1本もーらい」

 

「ぬぁー。スルメの仇ー」

 

「そんな事しなくてもあげるわよ」

 

 

 お互い間の抜けた喋り方の状態でスルメとじゃがりこをトレードすることになり、交換したそれらをお互い食す。彼女、ラクシャータと青年の関係はかなり深く、彼が最初に鬼神兵の開発に協力を仰いだのも彼女だった。かれこれ10年以上の付き合いとなる2人の関係性は奇妙にも姉と弟のような様相を見せている。血筋や人種、両親さえも違うのは当然の事実なのだが、まるでそうとしか見えない間柄であるのはこの関係性を知る者たちに周知されている。2本目のスルメを食べ終えた青年が立ち上がりながら口を開く。

 

 

「チャイでも用意してくる」

 

「あら、良いの? 日本茶じゃなくて」

 

「偶には飲みたくなる気分もあるんだよ」

 

「この前みたいな失敗はしないでよ?」

 

「いつの話してんだよ。分かってるから期待して待ってな、()()()()()()

 

 

 青年は彼女の方を1度も見ずに部屋を出て給湯室の方へと歩いていった。そんな後ろ姿を見送って、彼女はまた1人じゃ○りこを食べ始めたのであった。

 

 

 

連載に変えるべきか、短編のままで良いか

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