日本の食文化を守るために変態技術を駆使しまくった結果 作:Haganed
敗戦国となった国と戦勝国となった国、その事実が刻まれたときその国々に住まう人々にも変化が起こる。否応なしに起こってしまうのだ。それは人種差別という問題として現れ、国の方針に対する不信感として現れ、敗者は勝者に対し恨みを抱き……元来そこに在った環境の崩壊が必ず起きてしまうのは避けられない。家族との別れというのは特に顕著である。国が出してきた情報には死亡の印を押された兵士、その事実を信じられないと嘆く兵士の家族が居た。しかしよくよく考えてみれば、戦死者は本当に戦死者であるのかと疑問に思う者も出てくる。意外にもそんな予想は日本で明らかとなるのだった。
「まず君たちは、ブリタニアに戦死者として認定された殉職者であることを念頭に置くように! 要は貴方たちはブリタニアに裏切られました!」
『大将』と呼ばれる青年が会社の武道施設で堂々とそう言ってのけた。彼の目の前に居るのは計30人は居るであろう
「いやぁ改めて思うけど、最初に“捕虜の釈放金がかかるから向こうで勝手に死亡扱いされた”って聞いた時の君たちの顔といったら、信じられないような物を見た顔してたね! そんな居場所がない君たちに色々と融通効かせるのには苦労しました! ちょっとは褒めて!」
「色々とうるさいぞ日本人! 人をおちょくる事しか出来ないのか?!」
罵詈雑言が彼に向かって飛び交うがそんなことはお構い無しに両腕を天高く上げて褒められるのを待っており、そんな様子を遠くから何故だか微笑ましく眺めている鬼神兵団の仲間の1人(192cm/128kg)が静かに立っている。ちなみに当人は至って何もする気は無いのだが、他の元ブリタニア人はただ立っているだけの何もしないムキムキマッチョマンにかなりビビっていたりする。
全く褒められる気配が無かった為しょんぼりと項垂れ溜息をついて両腕を下ろした青年は、今度は彼らに対して呆れたような視線を向けて嘲笑しつつ口を開く。
「ま、良いや。君らが幾ら何を言ってもこの現状は変わらないし自分が雇わなかったら路頭に迷って誇りだのなんだのどうでもいい、そこらの乞食と何も変わらない生活送る事になってただろうし。別に君らを雇わずに見捨てても自分は良かったんだけどね」
「ぐっ……!」
徐々に何も言えなくなり全員押し黙ったところを見計らい、表情を笑顔に戻した青年は声色を朗らかなものに変えて語り始めた。
「でも安心するといい! 君ら30人は日本国籍を得てウチで働けることになったんだからね! 今回限りの支給金15万に冷暖房エアコン付き風呂トイレ別の社員寮、P.S.S.での仕事の円滑化のために1ヶ月間マンツーマンでの研修指導期間を設けました! この1ヶ月と追加で2ヶ月の研修期間は初任給含めて月60万の給料だけど、それを過ぎれば月80万ぐらいの給料が貰えちゃうしボーナス金も年2回! ついでに勤務内容が良いと判断されれば昇進だって叶えられちゃう! こんな破格な会社そうそうないよ!」
「自分で言うことですか社長……」
先のムキムキマッチョマンが青年の文言に対してツッコミを入れるも、特に気にかけることもなく語り続ける。
「ついでにウチの警備会社は要人警護の4号業務と輸送警備の3号業務の機会がかなり多いから、場合によっては特別手当も割り当てられて月300万以上稼いでる奴も居るよ! 更には社会保障なんかも完備! 病院代が全額分の1、2割で済んじゃうし入院代の保証なんかもしちゃう! 待遇は悪くないと思うけど文句のある人居るー?!」
「……あれ、軍より待遇良い?」
ともあれ先ずは、今回集まってもらった彼らに会社の案内を社長自らがするという形で行われていく事となった。
3ヶ月前……
「元ブリタニア軍人の雇用ですか?」
うん、首相に融通効かせてもらって30人ぐらいここで雇うことになったのよ。あの戦死者扱いされた捕虜たちを。
「ああ、例の。ですが社長、なぜ彼らの雇用といった考えに?」
そのままにしとくと後々面倒になること間違いなしだからかな。
「面倒ですか」
うん。首相の話だと、彼らには日本国籍は与えず新薬の臨床被検体としての扱いだとか低賃金での雇用だとかって話が政府で出てるみたいだけど、これを本当にやるとなるとブリタニアの方が黙ってないしね。違法な労働環境でブリタニア人が酷使されてるって情報をリークされてまた戦争の火種が生まれてくるだろうし、今度は経済制裁が自分らの身に降りかかりかねないだろうしね。
「しかし、彼らの処遇はブリタニア側が決めたことです。情報の整合性が合わなければ怪しまれるのは向こうなのでは無いでしょうか」
それはそうなのよ。でも過酷な労働環境下にブリタニア人を置いているってことがリークされたらブリタニアはそこだけをクローズアップしかねない、彼らを使い勝手のいい情報戦略の駒として扱う想像が目に見えてる。たとえそれが戦死者として扱われた自国の軍人であったとしてもね。何ならブリタニア人っていう人種だけに注目させてブリタニア人の誰それって報道することは無いでしょ。
「やりかねないと思えるところがブリタニアらしいですね」
正確にはシャルル皇帝らしい、だろうね。で、この問題に対する対策案のテストケースとして財閥側の手引きもあってウチもやることになったのよ。ついでに今じゃウチ含めて12社が日本に都合のいい人材を育成できるのかって張り合い始めてるところ。そんな訳で専務取締役と常務取締役の皆にこの件を手配してもらいたいんだけど手伝ってくれる?
「了解しました、最優先事項として全部署に通達させておきます。……ところでふと思ったのですが」
なに?
「社長、今考案なされているそれは?」
ん? ブリタニア人の好みにあった料理メニューだけど。
「わざわざ? いえ、社長の食への執念もとい食キチ具合は十二分に存じておりますが」
日本人の味覚とブリタニア人の味覚を比べると、美味しさを感じるものにも差異が出てくるのは当然だからね。もう祖国には戻れないなら、せめて故郷の味でもと思っただけ。あとで調理担当者にこれ作れないか聞いてみるつもり。
「社長……」
でもって故郷の味がどれだけ尊いものであったかを再認識させたところで、本人たちの寛容さを育てながら日本食文化を徐々に浸透させて日本食なしでは生きられないようにしてやる計画なのだ!
「……社長」
ヌハハハハ! 精々日本食の異質さと底なし沼に溺れてしまうがいいわ!
連載に変えるべきか、短編のままで良いか
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連載
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