日本の食文化を守るために変態技術を駆使しまくった結果   作:(´鋼`)

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1番守りたいのは食文化で、次に僅差で命

 

 

 

 特使としてブリタニアから派遣された面々は、観光や日本産KMFの開発生産状況を確認していった。特に日本産KMFが四脚であったことや今後開発されるKMFにキャタピラ走行のものがあると知りブリタニア側と一悶着あったみたいだがその場で収まった事なので特にそれ以外問題なく、あとは配備予定のKMFの操縦体験が出来るシミュレータへの搭乗をノネット・エニアグラムが行い、操縦方法や機体特徴を軽く教えただけとはいえ流石といわんばかりにナイトオブラウンズとしての実力を見せつけられた。とはいえまだ日本側も訓練期間は約6ヶ月ほど、それを見積もってもパイロットの腕前はかなりのものである事実もまた示された。

 

 そうして時間が過ぎて行き、何故かまた『大将』の青年との食事会が行われることになった。青年はこの自由奔放さに電話猫みたいになってしまったが、どうにでもなれとヤケっぱちとまではいかずとも何処か諦観した様子で鰻専門店での密会をする事になったとか。尚、またも心因性の胃痛を発症したがナノマシンで強制的に回復されてしまったという。

 

 

 

*─────*

 

 

 

 あ゙あ゙あ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙……鰻うめえ、タレが体に染み渡る。山椒の辛さっぱりしたアクセントが美味さをさらに引き立たせてやがる。白焼きも良いが蒲焼きのスタンダードさも良い、甲乙つけ難い罪な食材やでホンマァ! ()()は要らんがな!

 

 

「お、おう。そうか……」

 

 

 ウケナカッタ……ま、良いや。あーでも蒲焼きとか白焼きとかもいいけど刺身食いたくなってきた、また店に行こうかな。

 

 

「ちょっと待て、刺身? なんの?」

 

 

 鰻の。浜松の方に行けば提供できる店あるよ普通に。

 

 

「……血液に毒があるとか言ってなかったか?」

 

 

 言ったね。

 

 

「寄生虫なんかもいると言ってたよな?」

 

 

 言ったね。

 

 

「なぜ生で食べようとする?」

 

 

 美味しいから。

 

 

「 ? ? ? 」

 

 

 だって美味しいんだもの、鰻の刺身。食べたことあるけど寄生虫の被害にあってないし、中毒症状だって1度も出たことないし。逆に美味いのになんで食べようと思わないの?

 

 

「いや普通はそんな危ないもの食べないぞ?」

 

 

 え?

 

 

「えっ?」

 

 

 美味しいもの食べたくないの?

 

 

「食べて苦しみたくないだろう普通は」

 

 

 ……まぁ良いでしょう。でも美味さを知らないのはもったいないから次来た時ご馳走しますよ。

 

 

「遠慮しておこうかな」

 

 

 えっ?

 

 

「えっ、じゃないんだが?」

 

 

 

 

 

§─────§

 

 

 

 

 

 今はイツキと名乗る青年と、エネリアと名乗るノネット・エニアグラムの両名はレストランのような雰囲気のある鰻専門店の個室席にて食事会を行っていた。提供された鰻料理に舌鼓を打ち満足感に満たされていた時であった、うなぎの肝吸いを彼女の文化圏に合わせて音を立てないように慎重に飲みつつも至福の一時を味わっているような表情でまた飲もうと口に運んでいたところに彼女は「今のブリタニアを変えるために協力してくれるか」と一言。漫画のような反応で気管に汁が入って噎せた青年は水を飲んで暫くして漸く落ち着くと改めて彼女に問い質した。何故ブリタニアに反旗を翻すような発言をしたのか、と。

 

 彼女曰く、発端は現ブリタニア皇帝シャルルの行ってきた政策の歪さであった。ナイトオブラウンズに選ばれる前や選ばれた当初は領土の制圧による国家の繁栄に対して疑問に思うところは無かったもののエリア10、元インドネシア諸島の制圧に伴う各国の経済制裁から徐々に何かがおかしいと思い始めるようになったとか。その疑念が深まっていったのは日本への侵攻作戦が決定された時であった。なぜ自分の子どもを送り出したのにそんな決断をしたのか、日本への侵攻が青年ら含む鬼神兵団によって防がれ取り止めになったことで結果的に助かったとはいえだ。

 

 侵攻作戦中シャルル・ジ・ブリタニアに対する疑念は払拭されないまま皇帝の、命を軽んじるような思想に相容れなくなった。そしてふと敵である彼らに何かを見いだし始めた、もしかしたら……という考えから戦線へと赴くことを決め青年と戦った。そして1つの光明が見えた気がしたのだ、あの皇帝に対する切り札になりうる存在がこの国に居ることに。

 

 

「……で、あの皇帝を失権させたいから協力してくれと?」

 

「話が早くて助かる、そうだ」

 

「────はぁ……ブリタニアに協力者は?」

 

「居ない事もないが、あの皇帝を引きずり下ろすには心許なくてな。皇族の協力が欲しいところだが如何せん二の足を踏んでいる状況で、この日本に居られるルルーシュ様とナナリー様と接触しようと考えたが矢面に立たせようにもまだ若い。英才教育を受けておられるのは確かだがどうしても、な」

 

「なるほど」

 

「しかし、こうも早く返事をくれるとは思わなかったが良かったのか?」

 

「自分の独断で決めてることに?」

 

「それもある。あとは私が言った手前、テロに協力する意味になることに対してもだ」

 

「まぁ、あの皇帝サマに私怨があるのはそうだし。協力するのも吝かじゃない、色々と根回ししなきゃならんけど……連絡手段はどうするつもりだ? セキュア通信をするにしても、秘匿性が高く第3者の介入があってもバレないものじゃなきゃマズイぞ。協力者の中に通信技術に長けた人物は居るのか?」

 

「すまん、そこまでは……だが私が保護している協力者はある技術者をリーダーとした組織だ。確実に居るさ」

 

「……その自信はどこから来るのやら。ちょっと待って」

 

 

 青年は自身の首に取り付けられたチョーカーのような物体に触れ、暫く沈黙すると懐からメモ帳とペンを取り出し何処かのアドレスを書き出しそれを書き終えるとそのページだけ破り彼女に渡す。

 

 

「自分に連絡を取りたい時はこのアドレスを使えと言っておけ、発信元と受信先が違和感ない場所でランダムに決定される」

 

「ほぉ……分かった、伝えておこう。にしても」

 

「ん?」

 

「そのチョーカーに触れた途端にいつも不可思議なことが起こる。どういった仕組みなのか知りたいが」

 

「悪いけど、今は教えることが出来ない」

 

「そうか。とはいえ何となくあのKMFと同じものを感じるのだが」

 

 

 青年は内心、コイツどんな勘してやがると思った。確かにこのチョーカーは自身の肉体にあるナノマシンへ人工知能からの命令を受信するための装置であり、同時に人工知能への通信手段でもある。このチョーカータイプ以外にも別タイプの装置が鬼神兵団の面々には常に装着されており、そして鬼神兵に備え付けられた簡易版人工知能と繋がり様々な要請を受信し執行するための機器でもあるのだ。

 

 それは兎も角、食事会もとい密会はここでお開き。帰路へと着く前に青年は目を合わせて彼女に忠告する。

 

 

「しくじるなよ。そうなればアンタとの関わりを断たなきゃならん」

 

「お、心配してくれるのか?」

 

「そうじゃない。しくじればこの国の食文化が危ぶまれるからってだけの話だ」

 

「ぶれないな本当……」

 

「あくまで自分が第1に優先するのはこの国の食文化だからな。あの皇帝サマに失脚してもらう方が都合が良いってだけだし」

 

「ならば気を付けることにしよう。色々とな」

 

「では──帰るとしましょうか、エネリア様」

 

 

 今ここに密約は交わされる。打倒皇帝の意思が2人の間で結託し、どのような事が起こるのかはまだ誰も知らない。

 

 

 




国へ配備予定の日本製KMF
・四脚
・ガチタン(´神`)
・二脚

連載に変えるべきか、短編のままで良いか

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  • 短編

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