輪廻 転生
とある何もない空間にて、一つの火の玉の様にゆらゆらと揺れる物体があった。それはあの世でいう“魂”だ。何故この空間に魂があるのかは定かではないが、その魂は何故か意識がありながら思考することができたのだ。
魂は思う。何故自分はこの空間にいるのだろう?いったい何時からだろう?そう思考が空回りしていると、この空間に声が聞こえた。
『目覚めたか……』
その声の主は何処か声が渋いというかごついというか、若〇ボイス風な感じだった。まるでここに来ることを待っていたかのように……
『貴様が此処に呼ばれたのは他でもない。貴様には別世界に転生してもらう』
その声の主は転生という単語を口走った。その言葉に魂はあることを思い出す。それはラノベ特有の“異世界転生”という奴なのだろう。…そうなると、魂はふと疑問に思う。それは、自分は
『賢しき愚か者め……貴様がそのことを知る必要はない。その代わり貴様に“技術チート”なるものをくれてやる』
何やら一方的に技術チートなるものを押し付けようとしてる。それ以前にだ。俺はいったい何処に転生させられるのかわかったものではない。
『貴様が転生される場所は“コードギアスの世界”だ。その世界で貴様がどのように生きるかは貴様の好きにせい。俗事など儂にはどうでもよいことだ…』
俗事……だと!?
声の主は魂だけの存在がコードギアスの世界に転生させることを俗事といった。これほどまでに怒りが沸いたのは初めてだった。怒りが沸きながらも意識が朦朧としていく。どうやら声の主の言うコードギアスの世界に転生させられるようだ。コードギアスのことはあまり知らないが、彼はもし死した後にこの空間に戻ってこられたらあの声の主こと呼称として神と呼ぶことにするが、あの神とまた出会うときが来れば神に一発ぶん殴るという落とし前を付けようと深く心に誓いながらも彼こと“武田 健一”はコードギアスの世界に転生するのだった。
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皇歴1993年 7月8日
この日、日本で一人の子供がこの世に生まれた。その子供こそ武田健一だった。彼が生まれた武田家は軍に所属する家庭だ。彼をこの世に産んだ母親は産んだ後に衰弱し、死んだ。その後の彼は父親の愛情のみで育てられるのだった。
彼は転生してからも記憶はリセットされていない。その結果、精神だけが成熟した人間としてこの世に誕生するのだった。それと関係ない事なのだが、彼の父親こと“武田 正利”は彼に対しては重度の親バカだった。
彼がこの世に生まれてから3年が経った。
彼が三歳になったこの年にて、何の前触れもなく彼の脳に膨大な情報量が送り込まれた。あまりにも多すぎる情報量に彼の脳は処理が追い付かずに破裂しかけた。その結果、彼は体調を崩して40度近い発熱に苦しまれることになった。彼の脳に送り込まれた情報は技術やエネルギー理論、その他の実現不可能な技術の情報だった。
まるで技術の情報というデータが彼の脳に集約された感じだった。その時に彼は転生する前に神から押し付けられた技術チートというものを思い出した。まさかこれがその技術チートなるものだと彼は思いもしなかった。
あの時に神が言っていたこの世界で好きにしろと言っていた。彼は神の言うことを鵜呑みにするつもりはないが、父親から聞いた話によると外国のある国家で日本の富士山しか採れない日本固有の鉱物資源“サクラダイト”の有用性を見出した国があるそうだ。その国こそが、前世の彼がいた世界ではアメリカ合衆国であったが、この世界ではアメリカは存在せず“神聖ブリタニア帝国”という国家が存在する。
なんでもブリタニア帝国は植民地政策として侵略した国を自国の植民地とし、侵略した国の自由と伝統、誇りと権利を奪ってブリタニアの植民地エリアとして統治されるそうだ。もしブリタニアが日本のサクラダイトを狙ってくると考えると、ブリタニア本国と植民エリアのブリタニア軍の物量に押しつぶされるのは時間の問題だ。ブリタニアはいつ日本に何かしらの理由を付けて宣戦布告してくる前に彼は、神から押し付けられた技術チートを駆使して生き残ろうと決意するのだった。
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皇歴1999年
彼が小学生の歳になった時に彼は技術チートを使い、戦術機の設計図と戦術機に乗るのに必要な衛士強化装備の設計図を作り出した。これ等を餌にして日本の各企業に売り込み、企業とのパイプを得ると同時に戦術機を開発することにした。しかし、現実は思った通りにはいかず、彼がまだ子供という事もあって子供の空想の発想としてほとんどの企業から無視された。だが、富嶽重工の社長だけは彼が設計した戦術機の有用性をいち早く理解し、彼を一度富嶽重工の会社に招き入れるのだった。その当時の彼の父親は、彼の才能を認めて将来が期待できる息子に育っていくことに嬉しさを感じていた。
富嶽重工の応接室で彼はこの会社の社長と対面し、彼が設計した戦術機の特徴や戦術機を運用するにあたって専用のOSを提示した。その時に社長は彼のこの世から逸脱した才能に驚きと畏怖を感じられた。何せ、まだ10代にも満たぬ子供が大人びたふりをしているのではなく。本当に大人として接しているのだ。これに畏怖しないのもおかしいものである。
彼の証言ではいつブリタニアが日本に宣戦布告し、攻めて来てもおかしくはないとのこと。普通ならありえないと言えるはずなのだが、ブリタニアは日に日に勢力を拡大しているため日本の固有資源であるサクラダイトが原因でサクラダイトを巡っての戦争が起こってもおかしくはなかった。その結果、社長は彼の設計図を受けとると同時に彼を戦術機開発担当責任者として富嶽重工に採用することとなる。この日を境に、日本で幼くも一人の鬼才が現れたのだった。
彼は無事に富嶽重工に戦術機、衛士強化装備の設計図を売り込むことに成功した。その際に彼は、これから先は忙しくなることを想定し、疲労やストレスに対する処置として量子コンピュータとAI開発を行い、暇つぶしという名のガス抜きとして彼は四体のアンドロイドの開発を自身の家で行うのだった。
富嶽重工に採用されてから彼は飛び級で小学校を卒業し、最年少ながら富嶽重工に就職するという異例を達成させた。そしてそこから彼は富嶽重工の技術者たちと共に第一世代である戦術機と戦術機に乗り込む際に必要なパイロットスーツこと衛士強化装備の開発を行うのだった。彼が作ろうとしている戦術機の全長は約18m位の筈だが、この世界の修正力が働いた影響のか戦術機の全長を4.5m前後にダウンサイズし、背中から大きく飛び出たコクピットブロック式に開発するのだ。それがブリタニアの人型起動兵器と同じ構造になってしまうことを知らずに彼は無自覚に設計し、開発を行うのだった。それから戦術機開発から数週間が経って昼の休憩時間で一人の技術者が同居の者と駄弁っていた。
「なあ、聞いたか?」
「何がだ?うちの会社に鬼才の子供が入ったということか?」
「そうそう。何でも、その子供はSFに出てきそうな人型機動兵器の設計図を作り出したとんでもない奴だろう?」
「まぁ、確かにな。その子供の指示で俺たちが作る戦術機って奴は現代の戦闘機を人型のロボットにしたようなものだからな」
その技術者の言う通り、戦術機は実在の戦闘機をモデルにした物が多い。その中で第三世代ジェット戦闘機の一つであるF-4“ファントムⅡ”をモデルに作られた戦術機、F-4J“撃震”を開発している。もはや技術の枠の範疇を斜め上に跳ね上がったと知った時には日本の技術者たちは卒倒しかかったそうだ。
更にはその先を見越してか第一世代戦闘機の開発と並行して第二世代戦術機の開発を行われていた。本来第二世代の開発は第一世代の実働データが必要とされるのだが、彼の技術チートの前では関係なかった。第一世代の戦術機はジェットエンジンで跳躍、飛行を可能とし、機動力を犠牲に重装甲による防御を主眼にした第一世代に対して第二世代はその逆で、装甲を削って機動性を重視した基本設計に仕上っている。
技術者たちにとって彼が設計し、開発する第一、第二世代の戦術機だけでもお腹いっぱいなのにも関わらず戦術機の実働データと総合データが纏まったら第三世代戦術機開発計画である“天岩戸計画”を行うとのことだ。この鬼才の能力を持つ彼に技術者たちは嫉妬ものもいれば恐怖するものもいるという状況だった。
「……うちの会社、本当に大丈夫だろうか?」
「さあな。あの鬼才の子供がこの会社に来てから日本全体に戦術機のことが広まったからな。問題は、その戦術機をどの国がリークしてライセンス生産を求めてくるかっていう話だな。聞いた話じゃ、ブリタニアには戦術機と似た機動兵器を開発しているっていう噂があるらしいが、それが本当かどうかわかったもんじゃないな」
そう駄弁っていると休憩時間が終わるチャイムがなった。技術者たちは再び開発現場に戻り、戦術機開発の続きを行うのだった。そして彼こと健一は事務室にて戦術機開発を行う際に生産する日本国内の機体生産、配備数の予測データと日本政府から戦術機の存在をリークされたこと。そしてブリタニアが密かに開発しているであろう人型機動兵器の三つに頭を悩ませていた。本来なら日本以外の国に戦術機の存在を明るみにするのは避けたかった。しかし人間というのは興味が魅かれるようなものを見たり、聞いたりすると無視できない生き物だ。
ある程度の戦術機が揃ったあたりで表舞台に出すつもりが、日本の諜報部を侮っていた。まさかこんな早くに戦術機の存在をリークされるとは思ってもいなかった。その結果、日本政府は富嶽重工に戦術機の注文が殺到した。恐らく日本陸軍と空軍に戦術機を配備させるための富嶽重工に対する先行投資のつもりなのだろう。
「えっと…撃震は第二世代の戦術機こと“陽炎”の生産を並行したとしてだ。この会社だけで1年で50機は生産され、このペースのまま5年も経てば250機は生産され、各基地に配備される。北陸、関東、関西、四国、沖縄の基地にそれぞれに10機が配備される。そして第二世代は第一世代よりコストが少し高値である分、今のペースで5年も経てば150機しか作れない。そうなると問題は資源だな。ここの会社……もとい、日本の資源だけで戦術機の開発、生産を同時に行うのは不可能ではないが限界があるな。日本政府にブリタニア以外の物資援助を求めつつも日本や外国の他企業にライセンス生産権を発行しないと生産が安定しないな。そうなれば日本政府はEUと中華連邦に戦術機のライセンスを売り込むだろうな。ここの会社の意思を無視して。……それらのことも考えて色々と対策しないといけないな」
そうして彼は社長に日本の企業に戦術機のライセンス生産権のことを話し、生産性の向上の案を具申した。社長も富嶽重工だけでは限界があると悟っていたため彼の案を採用することとなった。富嶽重工以外の企業を探すことになるが、彼が既に目に付けた企業があった。光菱重工、河崎重工、遠田技研工業の三つである。三つの企業に戦術機のライセンス生産権を売り込み、富嶽重工を始めとして光菱重工と河崎重工、そして遠田技研工業が戦術機の生産、開発工業として日本全体に知れ渡ることになる。
戦術機開発から一年が経って皇歴2000年
この世界で初の人型起動兵器である戦術機、撃震と陽炎が発表され、世界中に知れ渡ることになった。その結果世界中から日本の戦術機ライセンス生産の許可が殺到した。中華連邦を始めEU、インド、フランス、イタリア、ブリタニアなどが戦術機を欲した。しかし日本政府はおいそれと日本の技術を外に流出する訳にもいかず、戦術機の規定保持数や生産数に関する条約、もしくは協定が作られるまでライセンス生産は拒否した。
そうして日本は徐々に力をつけて軍備拡大されてから5年の月日が経った。
皇歴2005年
彼は第一、第二世代のデータを基に第三世代戦術機開発計画である天岩戸計画を実行する。第三世代の戦術機を開発するにあたって富嶽重工、光菱重工、河崎重工の三社が共同で第三世代戦術機の開発を開始する。その頃の彼は休暇を取って自宅にて休養を取っていた。その後に父親と一緒に外食したりと親孝行して父親との仲を深めた。
親孝行を終えた彼は自室にて休んでいた。戦術機開発や、戦術機を動かすためのOS開発まで彼が担っていた為に疲労とストレスが溜まっていたのだ。その結果ベットに寝込むくらいに疲労していた。そんな彼に声を掛ける者たちがいた。
「指揮官~。お疲れ様。相変わらず大変そうね?」
「あぁ。第一世代と第二世代のデータがようやく蓄積できてな。第三世代戦術機開発に乗り出すことができた。しかし、最も本格的に大変になるのはブリタニアとの外交問題だな。ブリタニアでは戦術機とは別のコンセプトの人型起動兵器を作っているという情報がある。余計に油断はできないし、気が抜けないのも辛いところだ」
「45姉、いる?あ…指揮官だ。お疲れ様~」
彼女たちは健一が作り出したアンドロイドこと“戦術人形”である。姉の“UMP45”とその妹の“UMP9”を作り出し、残りの二人は現在作り出し途中である。するとUMP45が彼をからかう様に声をかける。
「ねぇ指揮官、仕事が長引いたから私たちに会えなくて寂しかった?」
「まぁ45達にこの家の留守番を任せたとはいえ、寂しかったと言えばそうなる……のか?」
「もっと顔に出してもいいのよ?例えばちょこっと間抜け面とか……」
「いや、なんでそうなるんだ?」
「ふふ……そうそう、そういう反応よ、安心したわ。ふふーん……」
何やら45にいじられて、踊らされる健一だった。そして翌日の日に彼は再び富嶽重工に向かうのだった。その際に9からは……
「指揮官、でかけるの?じゃ家族として“いってらっしゃいのちゅー”をしてあげようか?」
「い、いや待て。いろいろ待て。何故その発想になった?」
「でも期待してたよね?目で分かったよ!」
「……なんでさ」
そんなこんなで彼は富嶽重工に出勤するのだった。彼にとってこのなんも変わらない日常が永遠に続けばいいと願ったが、5年後にその願いは儚くも砕け散ることを今の彼は知る由もなかった。