シンジュク の 戦い
皇歴2017年
日本がブリタニアに敗れてから六年と半年がたった。唯依たちは日本が敗れた後、行き場をなくしてしまった為に今は健一が密かに用意した旧新宿ことシンジュクゲットーの隠れ家でお世話になりながらも再起を図るために拠点としていた。
唯依たち以外にもブリタニアに日本を占領されたといえど、各地で日本人がレジスタンスとしてブリタニアに対して反抗していた。そして生き残った旧日本軍はブリタニアの反抗勢力として日本の奪還を目時とした“日本解放戦線”と組織の名を変え、ブリタニアに抵抗していた。
しかし、ブリタニアとてバカではない。ブリタニアは日本を占領、植民地エリアとした後に残存する戦術機の接収を行った。第三世代は健一が保管している二機を除いてブリタニアとの戦いで全滅し、第一、第二世代の多くの戦術機はブリタニアに接収され、一部接収から免れた第一世代の戦術機は数多のレジスタンス組織に回収されていた。一部の噂ではブリタニアが回収した戦術機で新たな戦術機の開発を行っているとかなんとか。
「しかし……もう六年半か。六年半と言えば、
六年半前の横浜基地防衛戦で不知火・弐型はコーネリアのグロースターとの戦闘……というより健一が無茶な機動と墜落によって大破寸前にまで機体を壊しかけてしまった為に修理を含めて改修作業がだいぶかかってしまった。その結果、今の不知火の外見は“不知火・弐型 Phase2”のモノトーンカラーになっている。
武御雷はこの六年半、整備とOSのアップデートを繰り返したことで例えブリタニアの第六、第七世代のKMFが出てきたとしても問題はない。無論、不知火・弐型も武御雷と同様にOSをアップデートしているので問題はない。唯依たちの瑞鶴もOSをアップデートとそのOSを使用するハードウェアを新調してあげたので今ではOBWシステムのコンピューター処理速度を10パーセント向上させると同時に瑞鶴の運動性能を20パーセント向上させ、スラスター出力も5パーセント向上。とどのつまり準第二世代の瑞鶴が正式に第二世代並みの機動性を得る事が出来た。
できるなら唯依たちの機体こと武御雷を新たに新造してあげたいが、何分資材や設備、機材が少なく人手が足りないという状況だった。資材や設備、機材がそろえば技術チートを駆使して速攻で組み立て上げることができるのだが、下手に技術チートの無駄遣いになるのでしばらくの間は唯依たちは瑞鶴で頑張ってもらうことにした。
その健一はというと、表の世界でも活動できるように偽名とブリタニアの政治制度である“名誉ブリタニア人”という立場を利用してこのエリア11に建てられた私立学校“アッシュフォード学園”の機械工学担当の教師“増田 修一”として普通に生活しながらもジャンク品や日常品、食料を租界で購入してシンジュクゲットーのレジスタンスである“扇グループ”と物々交換をしてきた。
しかし、ここ最近ではブリタニアが日本人ことイレブンの弾圧が強くなってきていた。もうすぐここがブリタニアにバレるのも時間の問題だった。
「…そろそろ何処かに移動することを想定しておくか。その際は切り札の武御雷をどこかに隠しておかないとな。それはそうと扇さんたちは大丈夫だろうか?何やら大掛かりなことを行おうとしているようだが……」
そう彼が呟きながらも唯依たちがいるであろう彼が保管している戦術機の格納庫に向かうのだった。その扇たちの大掛かりな行動が一人の仲間のやらかしによって作戦がお釈迦になり、危険にさらされていることを彼は気づかなかった。
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一方の唯依たちは健一の拠点にて瑞鶴のシミュレーションで操縦訓練を行いながらも機体の各パラメーターの確認と調整を行い、整備点検を行っていた。唯依たちの瑞鶴は健一が提供した新OSとそのOSを使うハードウェアは唯依たちにとって驚く内容だった。その新OSは機体を動かす際、戦術機の動きが滑らかすぎたのだ。この新OSは健一曰く、ガンダムSEED世界のOSを基準に戦術機にMS用のOSをぶち込んだとのこと。
「うそ…!OSを変えただけでここまで動きが機敏に…!」
「前のOSと比べると動きが滑らかすぎる!」
当然唯依たちもこの新OSには苦戦していた。嘗て旧日本軍が使用していた戦術機のOSは健一が作った新OSよりも重く、動きが硬いのだ。そのOSで日本軍はブリタニアと対等に戦えたのは日本人特有の技術吸収力やその他諸々があったことが起因であろう。
しかし、何故健一はこの新OSを戦争前に開発できなかったのか?と疑問が浮かぶだろう。それはブリタニアが日本に宣戦布告する前に彼が富嶽重工の社長によって解雇されたことが原因だった。この当時の健一は新OSのアルファ版を開発していたのだが、タイミングが悪く新OSの開発は断念してしばらくの間は自宅や隠れ家を利用して新OSの開発をしていたのだ。
そんな新OSに苦戦する唯依たち。だが、徐々にであるが新OSに振り回されず自身の手足のように動かすことができるようになった。シミュレーションによる新OS訓練を終え、シミュレーションユニットから出たその時に健一と会うのだった。
「お疲れ。どうだ、新OSの性能は?」
「性能面で言えば良好だけど、最初のうちは新OSに振り回されるだろう。戦術機よりもスムーズに動く分、一つの判断ミスで事故につながる」
「その点は篁さんと同意だわ。前のOSよりも滑らかに動くし、滑らかすぎて逆に最初は動かし辛かったわ」
「遡行性が上がった分、機動力が向上したからな。早めに慣れてほしい。そうすれば、ブリタニアが後の第六、第七世代のナイトメアフレームを開発し、前線に導入されたとしても対等に戦えるはずだ」
そう言った後に健一は唯依たちの瑞鶴を見た後に格納庫に取り付けてあるテレビの電源を入れ、ニュースを見てみる。ニュースではシンジュクゲットーの交通ルートに規制が貼られていると報道していた。
「交通規制?…妙だな、普通の交通規制ならCMでも流せるはず。ニュースも規制理由を話さないとなると…」
健一は気になって不知火・弐型に乗り込み、レーダーを確認するとそこにはブリタニア軍がシンジュクゲットーを包囲していた。
「…どうやら面倒なことになったようだな」
「武田さん、どうしたの?」
「何やらよくないことでも?」
「大当たりだ。このシンジュクゲットーをブリタニア軍が包囲している」
「ブリタニアが…!?」
「最悪の場合のことを想定していたが、こうも早く来るとはな。唯依たちは瑞鶴で逃げ遅れた人たちを守ってくれ」
「わかった。…それで武田さんは?」
「俺は少し知り合いが無事かどうか確認してくる。無事だといいが……」
そうして健一たちはそれぞれ機体に乗り込み、武装を装備する。なお、健一は不知火・弐型で出ることにし、装備は87式突撃砲と“XCIWS-2B 試作近接戦闘長刀”を74式可動兵装担架システムに設置、懸架する。何故74式近接戦闘長刀ではなく試作接近戦闘長刀なのだとゆうと、ただ単に彼の剣の趣味である。
右手に突撃砲を持たせて出発の準備が整ったその時に、外から爆発音が響く。どうやらレジスタンスとブリタニア軍が衝突し、戦闘が起きているようだ。
「扇たち……無事だといいのだが。主に玉城のやらかしフラグ建築で大変なことになってなければいいが……」
そう考えていたが、実際のところ玉城のやらかしが災いしていることを彼は知る由もなかった。不安を抱きながらも扇達を安否を確認、あるいは助けるために跳躍ユニットのバーニアを吹かして戦闘地域に向かうのだった。唯依たちも逃げ遅れ、もしくは無抵抗の日本人を守るために出撃するのだった。
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跳躍ユニットで低空飛行しつつも網膜投影で映し出された映像とレーダーを確認していた。その時にレーダーにIFFの反応が三つもあった。一機は扇グループが所持しているグラスゴーで、もう二機はブリタニア軍の第五世代KMF“サザーランド”だった。どうやらサザーランドがグラスゴーを追いかけているようだ。彼は通信でグラスゴーのパイロットである“紅月カレン”に繋ぐ。
「紅月、聞こえるか?」
《えっ?武田さんっ!?どうしてここに?》
「話は後だ。俺が奴らの注意を向ける。その間に扇たちと共にここの人たちを連れて避難してくれ」
《でも…それじゃあ武田さんが《西口だ!線路を利用して西口方面に移動しろ!》…!?誰だ!どうしてこのコードを知っている!?》
《誰でもいい、勝ちたければ私を信じろ!》
通信中に何者かが割り込み、カレンに指示を出していた。いったい何者なのかと考えた瞬間、その声の主が彼にも指示を出していた。
《そこの戦術機、お前はグラスゴーを追うサザーランドの足止めしろ。可能なら撃破しても構わん》
「…何者なのか知らないが、一応味方で良いんだな?」
《味方と思っても構わない。私の指示に従えばブリタニアに勝つことが出来る》
「……了解した。あまり気乗りしないが、指示に従おう」
そうして彼は謎の声の主の指示通りに線路上を滑走するグラスゴーを守るためにサザーランドの足止めを行う為に線路上に移動し、接敵するのを待った。するとカレンの乗る赤いグラスゴーが線路に沿って移動し、その背後からはサザーランドが迫っていた。
《武田さん、後ろのサザーランドをお願い!》
「任された」
グラスゴーと不知火がすれ違った後にサザーランドに向けて突撃砲を向け、オープンチャンネルで通信を入れる。向こうも向こうで戦術機がこのシンジュクゲットーにいるとは想定もしていなかっただろう。
「__ブリタニア軍に告ぐ。戦闘行為を停止せよ。繰り返す__直ちに戦闘行為を停止せよ」
《イレブン風情が…何様のつもりだ?貴様らはテロリストとして認定されている。我々はテロリストをせん滅しているだけだ。ただ粛清されるのを受け入れろ》
「諸君の行為は重大な国際条約違反である。直ちに戦闘行為を中止せよ」
《フンッ__そう言わせて時間稼ぎのつもりか?通用すると思ったのか、こんな作戦に。お前はグラスゴーを追え》
《Yes,My lord!》
もう一体のサザーランドがグラスゴーを追う為に不知火を無視して移動しようとしたが、それよりも先に不知火の持つ突撃砲の大口径砲が火を吹き、グラスゴーを追うサザーランドに直撃し、爆散した。更には突撃砲の機関砲でもう一体のサザーランドの左脚部を破壊し、機動力を奪う。
《何っ!?》
「分からなかったのか?なら、分かりやすく言おう。ブリタニア軍に告げる。ブリタニアなどクソ食らえ。繰り返す__人を見下すことしか能のないブリタニアなどクソ食らえ!」
《き……貴様ぁーっ!!》
機動力を失ったサザーランドはアサルトライフルを不知火に向けるが、その不知火の背後から赤いグラスゴーがチャンスととらえたのか戻ってきたのだ。状況が不利と判断したサザーランドのパイロットことジェレミア・ゴットバルドは脱出レバーを引いて緊急脱出するのだった。不知火とグラスゴーの前に残されたのは中破したサザーランドの抜け殻だった。
《ありがとう。おかげで助かったよ》
「紅月も良いタイミングだ」
《うん。でも、さっきの通信は一体…》
そう考えている中、自動運転の輸送列車がやって来た。あの列車には見覚えがあった。それはブリタニアのナイトメアが積まれている列車だった。この時に彼は戦術機で列車を止める。列車を完全停止させたときに扇たちがやって来た。
「おーい!カレン、さっきの通信は何だ?」
《えっ?扇さんたちにも?》
「ああ。吉野達ももうすぐこっちに来るが、そこの戦術機はまさか…」
「俺です、扇さん。健一です。扇さんたちにも通信が入ったとなると…」
扇たちに挨拶したその時に扇のトランシーバーから通信が入った。どうやら扇たちや武田に通信してきた者のようだ。
《お前がリーダーか?》
「あ、あぁ…」
《そこの戦術機が止めた列車の積み荷をプレゼントしよう。勝つための道具だ》
「扇さん、紅月、この列車のコンテナにはナイトメアが格納されている。もしかしたら使えるかもしれん」
《そういう事だ。それを使って勝ちたければ、私の指揮下に入れ》
彼と通信してくる者の言う通り列車のコンテナに製造したばかりのサザーランドが数十機もあった。流石にこの数は予想外だったが、戦力増強としては十分だった。
《こんなに……どうやって?》
「分からん。だが、通信してくる奴はどうやらブリタニアにただならぬ恨みを持っているとしか言いようがないな《戦術機のパイロットとグラスゴーの女》…ん?」
《あ…はいっ!》
《お前たちはそのままだ。その機体はかく乱に向いている。エナジーフィラーは?》
《15分ほどなら…》
「こっちは稼働したばかりだからまだ余裕だ」
《分かった。グラスゴーの方はニューパックにしておけ。戦術機は予定通りかく乱を行え。10分後に次の指示を連絡する》
そうして一方的に通信が切られた。彼としては怪しさ満点の者の指示を聞くのはどうかと思うが、通信してきた者の的確な指示は確かなものだったので何とも言えず、とりあえず指示通り敵をかく乱する為に行動するのだった。
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一方のシンジュクゲットーのとある廃ビルに身をひそめるサザーランドに乗っている通信してきた者こと、ブリタニアの学生“ルルーシュ・ランぺルージ”が一息ついていた。しかし、それは表向きの名前で彼の正体は、神聖ブリタニア帝国の第17皇位継承者、第11皇子“ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア”である。彼は幼少期に母マリアンヌ皇妃を亡くし、その事を切っ掛けに日本への外交のカードして妹のナナリーとともに日本に送られる。この時の2人を引き取ったのが枢木家である。そこで幼少期を過ごす事となり、枢木家の子である“枢木スザク”と親交を深める。この後間もなくして、ブリタリアと日本の戦争が起り、スザクと生き別れになる。後にアッシュフォード家の後ろ盾もあり、ルルーシュ・ランペルージと名乗り、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとは別人として生きていく事となった。
しかしどういう偶然か、ルルーシュはテロに巻き込まれ、そこで生き別れたスザクと再会する。スザクは名誉ブリタニア人となり、ブリタニア軍に入って出世し、内部から変えて行こうとしたようだ。その時にテロリストがブリタニアから奪ったであろう毒ガスのカプセルがひとりでに開封され始めたと思いきや、そのカプセルから緑髪の女性だった。
その時にブリタニアの軍人がやって来てスザクにテロリスト…即ちルルーシュを討てと命令した。どうやらカプセルから出た女性がブリタニアにとって重要人物であり、それに関係した者は即座に抹殺対象と認定されたようだ。
スザクはこの命令を拒否した。その結果、ブリタニア軍の隊長に撃たれてその場で倒れてしまう。それを皮切りにカプセルを積んでいたトラックが爆発し、ルルーシュは爆煙を利用して緑髪の女性を連れて逃げ出す。
地下鉄構内を歩きながら、ようやく地上に繋がっていると思しき工場に到着した。ブリタニア軍がいないかを確認するために、ルルーシュはこっそりと工場から地上の様子を確認する。すると、工場の外で先ほどの隊長たちに射殺される日本人たちを目撃する事となった。
更に運が悪いことにルルーシュの携帯から着信音が流れてしまい、ブリタニア軍に見つかってしまう。ブリタニアの隊長に射殺されそうになったその時に先ほどの緑髪の女性が庇い、銃弾を頭部に受けて絶命してしまう。絶体絶命の窮地に立たされたルルーシュ。その瞬間、死んだはずの緑髪の女性の手がルルーシュの手に触れた。
その結果、ルルーシュは緑髪の女性から何かしらの力を得て、ブリタニアの軍人たちに命令した。“死ね”と。
ルルーシュが手にした力は“ギアス”と呼ばれるもので、その能力は“絶対遵守”自分の眼を見た相手(正確には目から出たレーザーが視覚的に侵入した相手)に命令を下し、それを必ず実行させるというもので、有効制限があるもののルルーシュにとっては条件さえ満たせば問題なかった。
ルルーシュはギアスを使ってブリタニアのKMFを奪い、テロリストに指示を出していたのだ。
「ふぅ…意外と疲れる。(しかし、やり遂げる決意が必要だ。これは命を賭けたゲームなんだからな。…だが、問題はあの戦術機だ。レーダーから見て数は三機。そのうち二機はここの住民を逃がすために別行動しているか。そしてグラスゴーとともにいる戦術機。恐らくだが、失われた筈の第三世代機の不知火の特徴に似てるからおそらくその改修、もしくは改良機だな。時期が時期だった為に少数しか生産されなかったのだろう。だが、空を飛ぶことができる戦術機がいるなら戦略の幅が広がる。……フフッ、思わぬ
そう推察しながらもそこらで拾ったチェスの駒を回しながらレーダーを確認し、次の戦略を練るのだった。ブリタニア軍の後衛陣地にいるであろうエリア11を管理する総督を討つために……
その決意を胸にルルーシュはテロリストにそれぞれのグループを作り、サザーランドに乗ったかどうか確認するためにP-1こと扇に連絡する。
「P-1、動かせるか?基本は今までと変わらないはずだ」
『君は何者だ?名前だけでも』
「それはできない。通信を傍受されたらどうする?」
ルルーシュはテロリストに自分の正体を明かすわけにはいかず正論で言いごまかす。すると健一が乗る不知火・弐型から通信が入る。
『…だったらせめて
「CP…か。わかった。それならいい。それとK-1、そちらはどうだ?」
『こっちは新OSのおかげで第五世代のナイトメアを簡単にあしらっているよ』
K-1こと健一の証言道理、健一の駆る不知火は、レーダー映る限り敵をかく乱しつつも敵を次々と撃破していた。
「(新OSか。なるほど……あの戦術機の異様な戦闘力はそれか…)そうか。K-1は引き続き敵をかく乱しつつも迎撃してくれ。それとP-1、Q-1が予定道理なら23秒後に敵のサザーランドがそこに行く。恐らく二機。壁越しに撃ちまくれ」
そう指示を下すルルーシュ。ここからルルーシュの小さな反逆が大きな反逆へと進むことになる。その先に何が待ち構えているのか、当時のルルーシュには知る由もない。
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その頃、ブリタニアの皇室専用陸戦艇“G1ベース”にて謎の戦術機が出現したとの情報にブリタニアの第三王子、“クロヴィス・ラ・ブリタニア”は戦況が有利に進む自軍に楽観してしていた。
「一般のイレブンに交じってテロリストが多少の抵抗をしているようですが、わが軍の圧倒的な優位に変わりありません」
「当然だ。それより…」
「分かっております。ガスのカプセルを「
「うむ、生死に関わらずな。…それより、テロリストの中に戦術機たちが紛れ込んでいるとの情報があったな」
「はい、ラズロー隊とグラーベ卿の通信によると敵はイレブンが開発した準第二世代の戦術機のズイカクと失われし第三世代のシラヌイの可能性が挙げられます。すでに我が軍のナイトメア部隊の一部被害を被っています」
戦術機という名が挙げられたことでクロヴィスは苦虫を潰した症状をしながらも警戒した。ブリタニアにとって戦術機はナイトメア擬きでありながら対ナイトメア戦を想定しただけのことあってその脅威は健在であった。表向きには公表されていないが日本との戦争が始まった緒戦で一度だけブリタニアは敗走したのだ。戦術機の第一世代はともかく、第二、第三世代の機動力に翻弄され、ナイトメアにはない飛行能力に苦戦を強いられたのだ。
これを重く見たブリタニア軍の上層部は、日本の戦術機に対する戦術及び戦略プランを立案。更には神聖ブリタニア帝国皇帝直属の騎士こと帝国最強の精鋭部隊“ナイトオブラウンズ”の活躍により日本との戦争に勝利した。この戦争で第三世代の戦術機は全て破壊され、残った第一、第二世代戦術機はブリタニア軍が押収、解体され、一部は特別派遣嚮導技術部に技術解析の為に数体送られたのだった。
そして現在、G1内の戦略マップに赤く表示されたIFFが四つ。一つはグラスゴーで、三つが戦術機の物だ。グラスゴーは陽動のためかワザとらしく動きを止めていた。
「陽動か?猿知恵…と思いたいが、戦術機もこともある。バトレー、わかっているな?」
「ハッ!ラズロー隊はそのまま直進、オイゲンとヴァレリーを向かわせろ!背後から叩く!」
バトレーの指示の下、オイゲン機とヴァレリー機がグラスゴーの方に向かうが途中でオイゲンとヴァレリーの機体の信号が消失する。
「オイゲン卿、ヴァレリー卿、ともにロスト!」
「む…伏兵か?」
これを切っ掛けに優勢だった筈の味方が逆に劣勢に立たされることを今のクロヴィス走る由もなかった。
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その一方で健一は跳躍ユニットによるかく乱機動で敵を翻弄しながらも突撃砲、もしくは長刀で屠っていた。レーダーでも敵ナイトメアと戦闘ヘリの数が確実に減っていた。どうやら通信してきた者ことCPがサザーランドに乗った扇たちに指示を出して敵を追い詰めているのだろ。確認しただけでもブリタニア軍一個小隊が全滅しただろう。すると敵の陣形に動きが見えた。包囲していた部隊を動かしているようだが、どうやら第三世代の戦術機が目当てなのかこちらに向かってきている。するとCPから連絡が入る。
《聞こえるか?K-1》
「聞こえている。敵さんどうやらこっち目当てに向かってきているようだ」
《…なら好都合だ。こちらが指定したポイントに移動してくれ。そのポイントに着き次第、敵が現れるまで待機。敵を目視で確認したらそのまま上空に向かって跳べ》
するとマップデータが送られ、確認してみるとそのポイントは旧市街の場所で、一部地盤が脆い場所でもあった。これを見た健一はCPの策略に気付く。
「(どうやら落とし穴作戦のようだな?)…分かった。今向かう」
そう言って指定場所に向かう彼は再びレーダーを確認すると、そこには多数のサザーランドがこちらに向かってきている。急ぎ指定ポイントに向かう。そして指定された第一ポイントに到着し、そこで待機していると、目視でサザーランドの姿が確認された。その数は多数で、今持っている突撃砲と長刀だけでは捌ききれない。
《…今だ、跳べ!》
「…っ!」
CPの指示で跳躍ユニットのエンジンを吹かし、そのまま上空へと飛翔する。地上からはサザーランドのアサルトライフルによる対空砲火に晒されるも、彼は回避に専念する。すると地上にいたサザーランド達の地盤が崩壊し、サザーランド達はその崩壊に巻き込まれる。これに連鎖してか不知火を包囲していた部隊も巻き込まれて次々と信号が消失していく。この落とし穴の戦略、彼は改めてCPの戦略眼、情報処理能力に驚かされていた。味方なら心強いが、敵に回せばこちらがやられるのは目に見えていた。
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場所は変わり、G1ベース内では敵の戦略によって被害が甚大になったクロヴィスは敵に恐怖した。
テロリストどもがこちらのKMFを奪い、あまつさえそれを使ってこちらを徐々に撃墜していく始末。まるでこちらの作戦を全て知っているかのような動きでブリタニア側のKMFが狩られていく。状況を打開すべく戦術機を追い詰めようとしたが、逆に追い詰めた部隊が全滅するという結果になった。
「(誰だ…私は誰と戦っている?こいつ……まさか藤堂よりも!?)……ロイド!」
《あ?はぁ~い?》
「勝てるか?お前の
《殿下……
こうしてクロヴィスは急遽兄シュナイゼル直属の特別派遣嚮導技術部、通称《特派》の新型KMFの出撃を決定するのだった。
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ランスロットが発進することが決まったその一方で、救急車両から一人の日本人が出てくる。その日本人の名は“枢木スザク”。彼は親衛隊隊長の拳銃によって撃たれたと思われたが、どうやらスザクが持っていた懐中時計が銃弾を防いでくれた。そのおかげで彼は一命を取り留めたのだ。
そしてスザクは特派所属の“ロイド・アスプルンド”と“セシル・クルーミー”の指示で特別派遣嚮導技術部による試作嚮導兵器こと第七世代KMF“ランスロット”のパイロットとして搭乗し、技術部たちがランスロットの初期起動を行う。初期起動を行い、すべてのパラメーターがオールグリーンと期待は良好だった。
「うん。ここまではデータ通り」
そうしてランスロットの発信準備が完了し、ランスロットのランドスピナーが地面につき、出撃準備を終える。
「ランスロット…MEブースト!」
スザクが詠唱のように口にしてランスロットのランドスピナーをフル稼働させる。
「ランスロット…発進!」
セシルの掛け声を皮切りに、ランスロットがフルスロットルで戦場へと急行するのだった。スザクはランスロットの機体性能に驚かされていた。
「マニュアル以上だ!これなら…ぐっ!」
スザクの受けた傷はまだ完全に癒えておらず、フルスロットルによる急発進で体に負荷がかかってしまい、受けた傷が痛みだしたのだ。しかしスザクは気力で痛みをこらえ、そのままテロリストのサザーランドを次々と戦闘不能にしていく。
スザクが駆るランスロットの活躍により状況が再び逆転した。これにはバトレーたちも歓喜の喜びであった。
「全く…いらん借りを兄上に作ってしまったな。しかしこれで…」
クロヴィスは勝利が確定した瞬間、絶対的な安堵を得るのだった。しかし、その安堵は数分後に一瞬で崩れ去ることを知ることはなかった。
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しばらくの間だけであるが敵は陣形を立て直すのに時間がかかるために今のうちに小休憩しようとした時に扇たちの仲間から通信が入った。何やら見たこともない敵の新型のKMF一機にやられているようだ。
休憩している場合ではないと彼は直ぐに行動に出た。跳躍ユニットで高速移動し、仲間の下に向かうのだった。そして到着した時には既に扇たちのサザーランドが全滅していた。幸いにもそのサザーランドたちは既に脱出された痕跡があった。どうやら敵は相手パイロットの命を取るつもりはないようだ。するとレーダーに反応が確認されたその反応した場所に目を向けると、そこには肩部と頭部のファクトスフィアが赤く塗られたサザーランドを追いかける純白の新型KMFの姿があった。