シンジュクゲットーでの戦闘から二日が経った。現在の彼はアッシュフォード学園の機械工学担当の教師“増田修一”として、今日も一日生徒たちを育て上げるのだった。
彼が名誉ブリタニア人でありながら何故ブリタニア人の学校で教師をしているのかというと、表向きとしては生徒に彼が積み上げた技術、主に日常生活に役立つ技術を教えるのと資金調達のために働いているのだ。最初の内は他のブリタニア人の教師から名誉ブリタニア人、もといイレブンに対する差別対象に白い目で見られていたのだが、彼は此処の教師達以上のスキルと実力で学園長から信頼を得ることに成功し、今に至るのだ。無論、これを面白くないと思う教師は少なからずいたが、その教師がどうなったかは、技術チートを持つ彼によって逆に返り討ちにあったのは言うまでもない。
そして裏向きの話がこの学園に通っているカレンの様子見兼護衛でもある。この護衛は扇からの頼みでもあり、接触はできる限り避けつつもカレンを守ってほしいとのことだった。
教師生活をしながらも健一は、シンジュクゲットーでの戦闘で突如と表れ、健一や扇たちに指示を出して戦闘を優勢に導いた謎の男について考えていた。
「(あの的確な指示、あの並外れた処理能力は普通の人間では中々成しえないことだ。あいつはいったい何者だったんだ?それに、声からしてまだ十代後半と若すぎるような気がするが……)」
そう考えていると、彼の目にはこの学園の学生であるルルーシュ・ランペルージと病弱設定のカレン・シュタットフェルトこと紅月カレンが何やら言い争っているような感じだった。男女との関わり合いにはできるだけ介入しない健一。だからここは迂闊に介入せず、見送ることにした。下手をしたら何かしらの社会的抹消対象になりかねないと判断した。
……要は面倒ごとはできるだけ関わりたくないのだ。
それとは別にこの学園にマリオとマーヤの姿があった。シンジュクゲットーにある孤児院が先のブリタニアのテロリスト掃討に巻き込まれてから二日間の間、学校を休んでいた。浸しくしていた子供が死んだとなれば悲しむのも必然。
教師として二人に無理はしないようにと気をかけるのだった。
「どうやら学園に通えるほどに回復したようだな。マリオ、マーヤ」
「…!先生……」
「増田先生……」
「あまり過去を蒸し返すつもりはないが、君たちが必ず出向いているシンジュクゲットーの孤児院がブリタニアによって巻き込まれたことは聞いている。……悲しいことは分かる。だけど、あまり思いつめすぎるなよ?思いつめすぎて死に急ぐなんてことがあっては、友人やクラリスさんが悲しむからな。……そろそろ授業が始まる頃だ。君たちも急いで教室に向かうように」
そう言い残して彼はこの場を後にしていつも通りに教師として生徒に座学や機械工学を学ばせるのだった。
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それから一日が経ち、戦術機こと不知火とXCIWS-2B試作近接戦闘長刀に付いた返り血を洗い落としていた。シンジュクでの戦闘の後で彼は避難民から人でなしやら人殺しと、様々な非難の言葉が彼自身に襲い掛かり、避難民に対して返す言葉がなかった。
だが、扇グループの一人“玉城 真一郎”が避難民に彼に対する非難の言葉を訴えるを止めるように怒鳴ったのだ。玉城は激情家でお調子者であるが、実際は仲間思いのある人物だった。健一がいなければ今頃自分たちはブリタニアに殺されていたことを言われて避難民は反論することが出来なかった。扇やカレンも彼を匿い、玉城が言うように彼がいなければ死んでいたことに賛同する。それを聞いた健一は少しだけ罪悪感による自身の嫌悪感が薄まった。戦術機と長刀の清掃が完了し、少し休憩していると。扇がやって来た。どうやら彼の様子を見に来たようだ。
「すまない健一、もし君があの場所に駆け付けていなかったら俺たちはあのままブリタニアに殺されていたかもしれない」
「気にするな。それに、相手がブリタニア軍だったとはいえ俺は戦術機越しで歩兵部隊を虐殺したんだ。これじゃあ俺も、ブリタニアと変わらない。同じ穴の貉だ」
あの時、彼はこうするしか他になかったと心の中で言い聞かせていたのだが、きっと心のどこかで楽しんでいたのかもしれない。
「……健一、あまり背負いすぎるなよ。もし何か困ったことがあれば俺たちのことを頼ってもいい」
「頼りすぎるのもアレだが……まぁ、その時は頼らせてもらうよ」
何気に扇のことを信用している彼は、その良心の言葉を受け取るのだった。気持ちの切り替えのメリハリが付いたその時に奥で何か騒がしい様子だった。健一と扇がその場所に向かい、皆が注目しているだろうテレビに目を向けると、そこにはブリタニアの第三皇子クロヴィスが何者かに暗殺されたと世間に報道されていた。しかも犯人は名誉ブリタニア人である枢木スザク一等兵がクロヴィス殺害容疑を掛けられて逮捕されたのことだ。
玉城は手柄をスザクに取られたと激情していたが、恐らく真犯人は通信してきた者があのシンジュクでの戦闘に紛れてクロヴィスを暗殺したのだろう。いったいどうやって敵本陣に忍び込めたのか定かではないが……
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カレンが戻って来たその日、学園でカレン宛に電話が届いたそうだ。その電話主はシンジュクで通信してきた者だそうだ。その通信してきた者曰く、明後日の16時、旧東京タワーの展望室に一人で来いとのことだ。これには怪しさが充満しているために彼も含め、扇や杉山、吉田がカレンの了承の下、密かに同行した。
旧東京タワーの展示館にて彼と扇たちは、見学客のようにあたりをうろつきながらもカレンに電話してきた者に対して考えていた。
「連絡してきたのは、枢木スザクだろ?」
「断言はするな」
「しかし、カレンに電話した後で捕まったのかも……」
「だとしたら、ここは危険すぎる」
電話してきた者がスザクだと吉田と杉山は予測するが、扇と彼は違っていた。変声機を使えばその可能性は低くはないものの、健一にとってその可能性はないに等しいものだった。
「いや、ありえないだろう。あの枢木首相の息子はその手の行動が嫌う傾向がある。恐らく、純血派の人間がわざと枢木スザクを犯人に仕立て上げたんだろう。事実、枢木首相の息子を犯人に仕立てることで他のレジスタンスや日本解放戦線をおびき出すためのエサとしてな」
「…そういえば健一、君は前枢木首相とは面識があったんだったな?」
「あぁ。……と言っても一度だけだ。日本とブリタニアが戦争を始め、日本が初戦を勝ち取った時に称賛という形で枢木首相とその息子のスザクとあったことがあるんだ。(…そういえば戦争が始まる前、ブリタニアから人質として送られた子供二人のブリタニア人がいたな。しかも皇族の息子と娘。彼らは無事だろうか?)」
そう考えている最中、館内アナウンスでカレンの学園での偽名“カレン・シュタットフェルト”の名が呼ばれ、落とし物が届いていると放送された。カレンはその落とし物を受け取りに向かい、健一たちも展望エリアに向かうのだった。
カレンが展望エリアのサービスカウンターから一つの携帯電話を受け取った後、健一たちと合流する。すると受け取った携帯電話から着信が入る。カレンはその送り主の名前の表示を確認した。名前には“ZERO”と書かれており、安全の為に警戒しながらもカレンは通話に出るのだった。
「はい、もしもし」
《環状5号線、外回りに乗れ。お友達も一緒だ》
「え……」
どうやら通信してきた者ことゼロは知ってか知らずか、こちらの動きを呼んでいたようだ。下手に無視することが出来なかったために彼らは、ゼロの言われた通り環状5号線の外回りのモノレールに乗るのだった。
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モノレールに乗ったカレンは周りを見渡し、扇たちが乗り込んでいるのを確認した。すると携帯電話から再びゼロから着信が入る。
「もしもし…」
《進行方向に向かって右を見ろ。何が見える?》
カレンは右の方を見る。右側はブリタニアが住む街の姿が目に映る。その反対ではイレブンこと旧日本人が住む廃墟の街があった。
「ブリタニア人の街だ。私たちの犠牲の上に成り立つ、強盗の街」
《では左は?》
「私たちの街。ブリタニアに吸い上げられた、絞りかすの街」
《いい答えだ。では先頭車両に来い!》
そこで電話が切れる。カレンは言われた通り先頭車両に向かう。彼と扇たちもカレンの後を追うように先頭車両に向かうのだった。
先頭車両に向かう際に健一は周りの乗客の様子が些か可笑しい様に感じた。全ての乗客の目の内の外回りが
「お前……なのか?」
「罠じゃ……ないよな?」
「罠だったらとっくに自分たちは捕まっている筈だ。そうなると、罠じゃないだろう」
「なあ、シンジュクのあれは停戦命令もお前なのか?」
「おい、何とか言えよ」
彼らの問いかけにゼロがこちらの方に振り返った。その姿は黒い衣装を纏い、素顔を隠す仮面を覆う謎の人物そのものだった。
「どうだ。租界ツアーの感想は」
「ツアー?」
「おい、こんなふざけた奴だったのか?」
「正しい認識をしてもらいたかった。租界とゲットー」
どうやらゼロは彼らを試している様子だった。健一は、このゼロという仮面の者に対して迂闊に敵対してはならないと第六感が告げていた。カレン達よりゼロを警戒する健一。その時に租界とゲットーのことを言われた扇が答える。
「確かに、我々とブリタニアの間には差がある。絶望的な差だ。だからレジスタンスとして――」
「違うな。テロではブリタニアは倒せないぞ」
「倒す?」
「テロなんて子供っぽい嫌がらせに過ぎない」
「なんだと!?」
「俺たちがガキだってえのか?」
扇の言うレジスタンス活動をゼロは子供っぽい嫌がらせと告げる。その言葉に杉山と吉田は反感を買った。しかしゼロは言葉を続ける。
「相手を間違えるな。敵はブリタニア人ではない。ブリタニアだ!」
「あっ……」
「やるなら戦争だ。民間人を巻き込むな。覚悟を決めろ!正義を行え!」
ゼロからの言葉に彼らは一時的に怯んだ。ゼロの言葉には何かしらの凄みを感じられた。
「ふ……ふざけるな。口だけならなんとでも言える!顔を見せられないようなやつのいうことが…「待て、紅月」っ?…武田さん?」
紅月の言葉を止めたのは健一だった。彼はカレン達の前に立ち、ゼロにシンジュクでの戦闘の手腕を話題に出す。
「ゼロ……だったか?シンジュクでの戦い、CPとして戦略と策略でブリタニアを追い詰めたのは見事だった。お前を敵に回すのは俺や扇さんたちにとって分が悪い。何しろ、クロヴィスを暗殺をしたのはお前だろう」
「っ!?」
「何だって?」
「ほう……?」
クロヴィスを暗殺したのがゼロだと知ったカレン達は驚いていた。ゼロは彼の推察の高さに驚きと感心を抱いた。
「それでお前は俺たちに何を望む?お前はブリタニアを倒す条件として俺たちを勧誘しているようだが、こちらのメリットは何だ?そのメリットを明かさなければ、仮面を外さぬ限り信じることは到底できない」
「…彼の言う通りだ。なあ、顔を見せてもらえないか?」
「わかった、見せよう」
「えっ!?」
「ただし、見せるのは顔ではない。力だ!不可能を可能にしてみせれば、少しは信じられるだろう」
ゼロは力を示すため、明日軍事法廷に掛けられるであろう枢木スザクを助け出すと宣言した。その言葉が本当かウソか定かではないが、彼はゼロが隠しているであろう何かに対して警戒し、保険を兼ねて
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一旦カレン達と別れて隠れ家に戻り、とある一室に入る。そこには人が入る位のカプセルが四つもあり、機械が多く設置されている。そのカプセルこそ六年半前に彼が彼女たちを封印したカプセルでもある。
「……彼女たちは戦う為に俺自身が
そう言い聞かせつつも彼はPCを起動させ、カプセルの開封作業に移る。パスワードを入力し、カプセルの封印を解いて彼女たちを起動させる。45に9、416にG11。彼女らは別名“404小隊”と呼ばれ、彼の前世の世界のドイツのヘッケラー&コッホ社(H&K社)製の銃で統一されている部隊でもある。
しかし、彼女たちの封印を解くということは彼が一番危険視した面倒どころか、大変なことになるということだ。何故なら、彼の作った彼女たちは90%人間に近い思想を持っており、ロボット三原則が当てはまらないのだ。
つまり、彼女たちは必要あらば人間を
そんな彼女たちの正体を知ってしまえばブリタニアどころか全世界が放っておくわけがない。そう判断した彼は、作られたばかりの彼女たちを守る為に説明し、カプセルで封印したのだ。彼女たちには彼が必要とされたときは、必ず起こすと約束して彼女たちを封印したのだ。
そして、その約束の時が来た。カプセルが開封され、彼女たちは
「う~ん…!よく寝た!指揮官、おはよ~!」
「そうね、あれから何年たったかしら?あ、指揮官。おっはよ!」
「指揮官、おはようございます。私たちが目覚めたという事は、私たちの力が必要なんですね?」
「ああ、おはよう。UMP9、UMP45。それとHK416、その通りだ。君たちの力が必要だ。……ん?G11は?」
彼はもう一人がまだ起きていないことに気付いたのか、416はG11がいるであろうカプセルの方に向かう。そこには、いまだに眠っていて夢の中にいるG11の姿だった。G11に対して416は……
「おい、起きろ」コン!
カプセルを蹴ってG11を無理やり起こすのだった。
「うぅ…蹴らないでよ。……あ。416…?なんでここにいるの?」
「寝ぼけているの…指揮官が私たちを起こしたのよ」
「相変わらずの寝坊助だな?G11……」
「あ……指揮官。おはよー……」zzz…
G11が返事した際にまた寝てしまった。それを見た416は、ギャグマンガの様にG11にゲンコツを叩き込み、再びG11を叩き起こす。その結果、G11の頭には大きなタンコブが出来上がっていた。
「一分間やる。過ぎても寝てたらばらして起こす」
「…だからって殴ることないじゃん」
「G11、いくら何でもそれは自業自得だぞ。それと416、ゲンコツはやりすぎだ。いくら相手が寝落ちしたからって約七年も封印され眠っていたんだ」
「七年……」
全員が無事に起きたことで彼は彼女たちに今の日本の状況と、今行う作戦について説明し、彼は彼女たちに表向きの
416は“エマ・ヴァイス”。45は“フィアサンク・スタイン”。9“ノイン・スタイン”。G11“ミア・グラストン”とそれぞれ表向きの偽名を付けた後に彼は、
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ゼロがレジスタンスの仲間を連れてくるのを待つとシンジュクゲットーの廃棄物置き場にて待っていた。そこにはカレンと扇、そして健一がここに集まっていた。
「そうか、お前たちだけか」
「すまない。もう少し時間をくれないか?ちゃんと話せば、他のみんなも……」
「いや、三人もいれば十分だ」
「なっ!?」
「バカ言うな。相手が何人いると思ってるんだ!」
「落ち着け紅月。それとゼロ、訂正することがある。参加するのは三人ではなく。四人だ」
「「えっ?」」
カレンと扇が彼の言う四人目は誰なのか考えるより先に、その四人目がカレン達の後ろから姿を現す。
「フィアサンク・スタインが来ました。呼びづらかったらフィアで良いよ?みんな、仲良くやりましょう~」
その女性は茶髪のポニーテールと顔の左目の所に切傷が特徴の女性だった。
「ほう。彼女が四人目か?」
「あぁ、彼女は俺の仲間の一人だ」
「仲間?待って武田さん、仲間って彼女以外にもいるの?」
「いる。彼女を含めると四人だ。今回ゼロが用意するであろう作戦に彼女が適任だから参加させた。まぁ、ゼロの力を見定めるにはちょうどいいだろう。ゼロ、改めて聞くが俺たち四人だけでも大丈夫か」
「問題ない。最低でも二人もいれば、条件はクリアしたも同然だ。明日までにこれを作れ。外側だけそう見えればいい。それと、フィアといったか?君には彼らとは別の協力者と行動してもらう」
ゼロが手渡した物は、なんとクロヴィス専用の御料車だった。これを外側だけそう見えるように作れという事は、彼は大胆かつシビアな行動に出るという事だ。そうして彼らはゼロの言われた通り外観だけをクロヴィス専用の御料車を作り上げるのだった。そして45ことフィアはゼロの指示の下、別の協力者と行動するのだった。
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翌日の夜中、ゼロの作戦通りにそれぞれ配置に付いた。フィアはゼロが用意した荷物こと発煙筒が入ったリュックを持ち、そこでゼロの協力者と思われる兄妹と共に民衆に紛れ込みながらタイミングを待った。扇は陸橋の下で民間用のKMFである“MR-1”で待機していた。そしてカレンと健一は、偽装したクロヴィス専用御料車でスザクを護送するルートに真正面に向かっていた。
「本当に、こんな張りぼてで……」
「言うな紅月。作戦通り、俺たちは喋らないようにしないと……」
ゼロの指示では、護送ルートで止まるように指示を出していた。そして護送車の前に立ちはだかるように停車するのだった。護送車の護衛をしているブリタニアの純血派の男ジェレミアが俺たちに警告する。
「出てこい。殿下の御料車を汚す不届き者が!」
ジェレミアの言葉を皮切りに御料車についているブリタニアの旗が燃え上がり、旗が燃え尽きると、そこには謎の仮面の人物ことゼロが姿を現す。これにはジェレミアと民衆は驚いた。
「むっ?」
「私は……“ゼロ”」
「ゼロ?」
ゼロの出現にブリタニアのリポーターはゼロはいったい何者なのか告げているが、カレンはブリタニアに捕まってしまう絶望の可能性に震えていた。彼も同じくブリタニアに捕まる可能性も考慮して彼女たちを目覚めさせたとは言えカレンと同様に不安を隠せないでいた。
「もういいだろうゼロ、君のショータイムはおしまいだ!」
ジェレミアが銃で空に向けて発砲すると、上空で待機していた輸送機から純血派仕様のサザーランドが降下される。降下したサザーランドは御料車を包囲し、彼らを逃げられないようにする。
「さぁ、先ずはその仮面を外してもらおうか」
ジェレミアに言われてゼロは仮面を外そうとする素振りを見せ、仮面は外さず上に向けてフィンガースナップを行うと、御料車の中から一つのカプセルが姿を現す。ジェレミアにとってそのカプセルに見覚えがあった。
「何ぃ!?」
「ジェレミア卿、あれは!?」
「(そうだよジェレミア。中身を見ていないお前にとってはこいつは毒ガスのカプセル)」
「違う、それは……ぐぁっ!」
スザクは何かを言おうとしたが、首輪の装置によって発言が出来ない状態にあった。ジェレミアはゼロが出した毒ガスのカプセルに迂闊に行動が出来ずにいた。
「こ…こいつめ。(ここにいるブリタニア市民を丸ごと人質に取った。…それも、人質に気付かせないまま…!)」
「撃ってみるか?判るはずだ、お前なら…」
まさに一触即発。下手に刺激すればブリタニア市民を毒ガスに巻き込んでしまう。完全にゼロに手の平で踊らされ、交渉のするほかになかった。
「…わかった。要求は?」
「交換だ。こいつと枢木スザクを」
「笑止。この男はクロヴィス殿下を殺めた大逆の徒。引き渡せるわけがない!」
「違うな。間違っているぞ、ジェレミア。犯人はそいつじゃない。クロヴィスを殺したのは……
この私だ!」
そうゼロが真犯人を名乗り出たことで民衆やリポーターは驚きを隠せない。しかし、このような派手なアクションの所為で逃げられる可能性が余計に薄まった。
「拙いな、これじゃあ逃げられそうにない……」
「指揮官、大丈夫かな?」
「無理だよ、もう…」
「イレブン一匹で、尊いブリタニア人の命が大勢救えるんだ。悪くない取引だと思うがな」
「こやつは狂っている!殿下の御料車を偽装し愚弄した罪、贖うがいい!」
ジェレミアの声掛けで御料車を包囲しているサザーランド達がアサルトライフルをゼロに向ける。
「いいのか?公表するぞ、
「ん?」
「なんだ、オレンジって?」
「さぁ?」
ゼロの言うオレンジ疑惑に混迷するなか、ゼロは御料車に合図を送る。そうして御料車はゆっくりと進み、ジェレミアのサザーランドに近づく。
「私が死んだら公開されることになっている。そうされたくなければ…」
「なんのことだ?何を言っている!?」
余計に困惑するジェレミア。その時、ゼロが告げる。
「私たちを全力で見逃せ。そっちの男もだ!」
そう告げて数秒後、するとジェレミアが予想外なことを告げる。
「フン、わかった。
「へっ?」
「何っ?」
まさかのジェレミアからスザクをこちらに明け渡すよう部下に指示を出したのだ。
「ジェレミア卿、今なんと?」
「その男をくれてやれ」
「はぁ?」
「い…いいのか?」
「しかし……」
「くれてやれ!誰も手を出すな」
「どういうつもりだ。そんな計画は……」
「キューエル卿。これは命令だ」
あまりにも予想外な展開に俺は、ゼロの持ちうる可能性を整理した。ゼロには何かしらの催眠術かなにかを持っている。もしくはオレンジという疑惑をジェレミアに付着させるためのブラフではなく本当の事という二つの線だ。前者はともかく後者は難しいだろう。前者なら日本で言う言霊みたいなものでジェレミアを催眠状態にしたとしか考えられなかった。そうしてスザクの拘束は解かれ、俺たちに引き渡されるのだった。
「君はいったい?うっ…」
「やはり、声を上げることができないようだな」
「ゼロ、時間だ」
「作戦道理に行こう」
「では、話はあとで」
ゼロは懐から何かしらの起動スイッチを取り出し、スイッチを入れる。するとカプセルから煙が放出される。これを見た市民は、何の煙なのか分からず混迷していた。
「なんだこれ!煙が!」
「なんの煙だよ!?」
混迷の最中、フィアは協力者の兄弟と共に発煙筒を使い煙を出して市民に大声で告げる。
「毒ガスよ!シンジュクゲットーで使われた毒ガスよ!」
「ええっ、ど、毒ガス!?」
「ウソよっ、そんなの!」
「逃げて!吸ったらどうなるか分らないけど、死ぬのは確実よ!早く逃げて!」
「逃げろ、出ないと死ぬぞ!」
「に、逃げろ!」
フィアと兄妹の言葉に市民はパニックに陥る。フィアと兄弟は逃げ惑う市民に紛れてこの場を離れるのだった。
「卑怯なイレブンめ!逃がすものか!」
純血派の一人、“ヴィレッタ・ヌゥ”がゼロたちを始末しようとサザーランドを操縦し、アサルトライフルを向けるが、途中でジェレミアの駆るサザーランドに阻まれてしまう。
「なっ!?ジェレミア卿、どうして!?」
「言ったはずだ、手を出すなと!」
その隙にゼロたちは陸橋から飛び降りる。それに感づいた“キューエル・ソレイシィ”がスラッシュハーケンを陸橋に引っかけて下に下ると、そこには扇の乗る民間のKMFがあった。既にゼロたちは下に泊まっていた車両に乗り込んで逃げていた為にキューエルは民間のKMFをテロリストの機体として発砲し破壊する。その時に扇は無事に脱出装置で無事に脱出する。
「愚か者め!警備網のど真ん中で!」
「キューエル卿!私の命令に従えないのか!?これ以上の行為は処罰の対象となる。いいな、全部隊に徹底させろ!全力を挙げて奴らを見逃すんだ!!」
こうしてジェレミアの命令でゼロたちはブリタニアからの追撃を受けることなく逃れることに成功する。これがゼロのいう力だというのなら、これはこれで敵に回したくないものだ。
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スザクの救出に成功した健一たち。ゼロはそのままスザクをこちら側に引き込もうと説得を試みようとする。その説得の際に健一も参加するのだった。ゼロも本来なら一人で説得するつもりだったようだが、彼にはどうでもよかった。