現代ダンジョンに転生ガチャはずれSSRなTS?男を突っ込む 作:レモンをかけるおそれあり
俺は、今宇宙を漂っていた。いわゆる神様転生というやつで、長命で食っちゃねした生活がしたいと願ったら、地球外生命体、それも星に寄生して、その命を吸いながら生き長らえるはずれSSRみたいな生物になってしまった。地球がいいなぁとは言っていたので3億年くらい神様に呪詛を送り続けて帰ってきた答えは、あと何十億年か漂ってればいつか出くわすよ、とのことである。てゆうか地球に巡りあったとしても、地球の命を食い尽くすことになるんですがそれは。
とはいえ、もう前世で生きた時間より、こうやって星に寄生しながら生きてきた時間の方が長い。暇に殺されそうではあるが、だいぶ慣れてきた。90億年くらい生きてきて、学んだことは寝てれば案外時間は過ぎていくということだ。というかそれしかない。前世で大した知識を仕入れても来なかった俺が、いくら時間だけがあったことで何か学べるということもなく。強いてあげるなら、食事の方法くらいか。星の命を一気に吸ってさくっと滅ぼしてみたり、他の星の命を注入してかさまししてみたり、食べ残してみたり、まぁ食事と寝るくらいしか娯楽がないのでいろいろ試しはしていた。
俺の体は不定形だが、前世のこともあって基本的には人型を外形にしている。なぜか前世の俺の見た目ではなく、神様の見た目、白髪赤目ののじゃろり風味にしか変化できないが。前世の容姿は中の下くらいだったし、愛着というものもないので、特に気にすることでもない。
とかなんとか考えをめぐらせていたら。良さげな惑星を見つけた。まだできたばかりの星で、表面はマグマに覆われている。暇だから食事を続けてきたが、この体は食いだめができるらしく正直言ってお腹が空いたことなんか最初の1億年ぐらいしかない。この星で冬眠的なことをして起きたらどんな風になってるか見てみるのも面白いかもしれない。まぁ結局食いつぶして滅ぼすんだが。
―――――
「ふわぁぁあ………………」
眠りから覚め、マントル付近にある本体から地上まで人型の分体を伸ばす。すると表面にマグマしかなかった星はずいぶんと様変わりしていて、自然にあふれた感じになっていた。森ができ、川があり、草が生えている。
「ふむふむ、これは当たりか………………?」
これまで食ってきた星に森なんかがあるのは見たことがなかった。大抵はガスで覆われていたり、なんか燃えていたり、砂ばっかりだったりした。生命が生きていける星というのは何かしらの条件があって珍しいらしいし、この星が地球説というのは案外あるかもしれない。それにあののじゃろり神様は、地球地球なー-、わかったわかった、みたいな適当なノリだが了承はしていたので、地球と巡り合えるように調整はしていたのかも。たぶん。
「ということは………………、これ、やばいのか?」
さっきまであまり気にしていなかったが、遠くの空は灰で覆われており、今はもう見える空の半分以上を灰が覆っていた。
「にげろ、にげろー-!!」
ヒト型複数人がこっちに向かって走ってきていた。火山が噴火する音、響きがここまで伝わってきている。こいつらが逃げ切れるかどうかなんかは分からないが、地球人っぽいし、元ではあるが同じ人間のよしみだと思って、助けることにする。
「おい!お嬢さん!もうこっちにまできてるんだ!はやくにげるぞ!」
他のやつらは俺を避けるようにして、さっさと行ってしまったが、殿を務めていた若い男は俺の前にとどまってしまった。黒髪黒目に懐かしの日本語だ。服はずいぶん原始的だが、ほぼほぼ間違いなく日本人だ。ということはここは地球だ。と気づいて、しばし茫然と数十億年ぶりに地球に戻ってきた感動に浸っていると、
「大丈夫か!クソっ!時間がない!すまんが、しょっていくぞ!」
という言葉とともに体が担がれて、視界が一気に移り変わる。しかもかなり揺れる。
「おい。童よ。何をやっている。私を下ろせ」
「すまんが、今は逃げるのが優先だ!」
断られてしまった。やはりこの口調がいけないのだろうか。独り言ならまだしも語り掛けようとすると勝手に口調が変わってしまう。食っちゃねしている時に、適当に演技した時でもそうだったのだ。だが、まぁこの騒動が収まればこの人間は勝手に俺を下ろしてくれるだろう。
「喰らえ」
その言葉とともに、頭部が巨大に変形して、灰のエネルギーを喰らう。位置エネルギーから運動エネルギー、灰それ自体の持つエネルギーさえも飲み込んで、ついでに火山を丸ごと飲み込んだ。
灰に覆われ、暗雲の空はすっかり快晴になり、太陽が燦燦と大地を照らしていた。私を肩に担いでいる人間は逃げるのに夢中で気づいていないようだったが。
「童。もう脅威は去った。はよう私を下ろせ」
「はぁ!?そんなわけ!?………………!」
「こ、これは………………?」
人間の男が、瞬く間に超自然の脅威が去った風景に驚きを隠せない様子でいるのがはっきりと分かった。灰に覆われた森も、灰のかぶった草原も、原因となった火山すらもない。というか、うがたれた土が、水平線を超えても広がっているだけで、本当に何もない。
「な、なんだこれは………………?」
「私が喰らった」
「食べた?」
「そうだ」
まぁ多少大雑把だったかもしれないが、誤差の範囲内だろう。地層一層分くらいだ。対したことじゃない。
「お、俺たちの村が………………」
人間の男が膝をついてくずれ、それと同時に俺の体もべしゃッと地面にたたきつけられた。
「む。村があったのか」
「あ、ああ………………」
………………なんか罪悪感があるな。助けてやったといえばそうだが、適当にやりすぎたのは俺の過失だ。
「おい、立て。私がなんとかしてやる」
「何言ってんだ。ガキにそんなことできるわけが………………」
「ガキだと?私をなんだと思っている」
俺は何十億歳なんだが。
「太郎さん!よ、妖怪が………………、山よりでっけぇ頭で全部全部、食っちまった……」
「よ、妖怪……?」
「私は妖怪ではないぞ」
俺は断じて妖怪ではない。失礼な奴だ。ついさっき一目散に逃げていた連中が集まってきて、俺とさっきまで俺を担いでいた人間を囲む形になった。
「そ、そいつだ………………!小さくなってるが、確かにそんな顔だった!」
「ひ、ひぃ!くわれるぅ」
「どうかお助けください、どうかどうかぁ」
矢継ぎ早に人間たちが跪いて首を垂れる。土下座だ。俺が生きていた時よりずいぶん昔っぽいし、土下座は案外軽いものなのかもしれない。
「どうしたんだ………………?おまえら」
「そいつ、い、いや。そこのお方が火山どころか、全部くっちまったんでさぁ!」
「まあ、そうだな。私がやった」
「ど、どうかお助けを………………」
「………………いいだろう。ついでに力も与えてやる。それでおぬしらの村でも再興するんだな」
「お前は一体………………?」
「どうでもいいだろう、少なくともおぬし達とは全く異なるものだ」
少なくとも人間とは呼べないな。うん。この体も、本体でもなくただの擬体だしな。
―――――
火山が噴火したつい先日、出くわした少女は今、新しくなった村の一番でかい家。神社に崇め奉られていた。あの日をきっかけにして、力が何倍ほどにもなった村民たちが必至こいて立てていた。自分たちの家よりもあの神社を優先していたくらいだ。
「なぁ、メシをもってきたぞ」
「ご苦労だな。さっさとよこせ」
「おまえ………………」
村民から神様と呼ばれているこいつは、今のところ食っちゃねしているだけだ。畏れ多いとかで、一応は村長の倅である俺にメシを運ぶ役が押し付けられた。正直俺は、こいつがなんかしたところを見たわけではないので懐疑的だが、火山がなくなったのは事実としてある以上、村民に逆らうこともできなかった。
「なんだ太郎。文句があるのか。お前のメシが豊かになったのは、私のおかげだろう」
「それは、そうなのかもしれないが」
確かにこいつが来てから、村民の力が増加して、狩りの具合も良ければ、作物も豊かになった。ついでに言えば夜中に襲われることも無くなった。
「ふわぁぁあ」
「眠そうだな。食ってすぐ寝たら牛になるぞ」
「私が牛ごときになるものか」
「それもそうか」
「………………しかし頃合いだ。もうこの生活にも飽いた。時がくるまで寝て待つこととする」
「!?どういうことだ!?」
「お別れだということだ。以後捧げ物はこの皿に捧げよ」
「お前、寝ながらでも食うのか………………」
食っちゃね神様は、何もないところから白い妙ちくりんな皿を取り出して、俺に押し付けてきた。
「というか寝るって、寝るのか」
「ああ、何百年かくらいだ。うたたねくらいだな」
「うたたね………………」
「お前の献身は覚えておく。にぎりの分くらいは子孫をたすけてやろう」
「………………そりゃありがたいな」
どうやら本当に寝てしまうらしかった。何百年って、こいつはまじもんの神様なのかもしれない。
「ではな」
という言葉とともに、土に引き込まれるようにして、消えてしまった。後には白い皿だけが残っている。
「………………にぎりくらいは置いといてやるか」
しんとした部屋で、一人と皿ひとつ。
「どうやって説明したもんかな………………」
とはいえ、目下の悩みはこのことを村民たちにどうやって説明するかであった。
続きは期待しないでください。