最初で最後の刑務所勤務
新人刑務官side
私は今日配属された刑務官。それも、収容されている囚人は弱くて最上級悪魔、強くても中位の神クラスというかなりレベルの高い刑務所。
この刑務所にはらあらゆるエリート刑務官が集まる。それも、そのほとんどが魔王クラスの者ばかりだ。当然、能力による物もあるが、私は後者の『能力による才能』であらゆる困難極まる試験を突破してこの刑務所に配属された悪魔だ。
この刑務所は和平締結前から、才能のある者を採用するという異様な刑務所でもある。しかし、それは囚人のレベルが高すぎる余り、上も余裕が無いという事。そんな、高レベルの刑務所に私は配属された。
そして、運が良いのか悪いのか、本日新たに囚人が収容されるという。しかし、先輩から聞いた話では1ヶ月程しか居ないらしい。なんの為の収容なのだろうか・・・?それも彼女の為だけに作られた檻だとか。
私は今日配属されたと言うこともあり、後学の為参加させてもらえる事となった。そして、私は囚人の姿を見た瞬間絶句した。
当然、急遽渡された資料にも目を通している。なんでも、元人間の『バグスター』という新種の種族らしいが、運び込まれた際のあまりにも厳重過ぎる結界。
年端も行かぬ少女が、あらゆる魔術が雁字搦めで拘束されていたのだ。驚かないはずも無い。現に先輩達も絶句している様子だった。
私は幾つかの刑務所で働いた事があるが、そのどこも共通のルールが存在した。囚人に話しかけられても決して答えを返してはいけないということ。
声を掛けてしまえば、小さくとも情が生まれるからだそうだ。少女の名前は『兵藤聖』と言うらしい。犯した罪は『極秘』と書かれたていたがここでは日常茶飯事なのだろう。先輩方は誰も気にしている様子はなかった。
この刑務所には1〜10までのレベルがあり、数字が下がっていく事に危険度が増していく。そして、この少女のレベルは10。相当の大罪を犯したのだろう。
部屋への移送の際、彼女は喋りはしなかったものの、ずっと私・・・というよりは私の胸に視線を注いでいた。確かに私の胸は大きい方ではあるが、女性・・・それも少女に見られるのは初めてであった為、困惑はしたもののなんとか反応しないように頑張った。
そして、少女を収容したのだが、恐ろしいまでに素直だった。これまでの囚人は何かしらの抵抗はしてきたのだが、彼女はまるで家に入るかのように入る。それが不気味で仕方なかった。私達が出た後、電子の檻が降りて重々しい扉が閉まる。
少女を収容した後は、数時間に渡りこの刑務所のルールを学んでいく。
まず一つは、絶対に囚人のいる部屋を開かないこと。檻の中に居るとはいえ、1階層でも腐っても最上級悪魔クラスの化け物が居るため、決して開けるなと言われた。
次に仕事内容だが、廊下の掃除と見回り、記録に食事の用意、配膳がある事を教えられた。他にも細かい仕事がある事を先輩から教えられ、1時間程した頃、なんの突拍子も無く脱走のブザーがけたたましく鳴る。
私と先輩が急いで急いでフロアに向かうと、囚人が全員、廊下に出ていたのだ。この刑務所が出来て数百年。脱走犯な一人も居なかったこの刑務所にだ。
先輩刑務官「新人!!連絡室に行って、至急助けを呼べ!!」
新人刑務官「で、ですが、先輩は!?」
先輩刑務官「早く行け!!俺が食い止めておく!!走れ!!」
私はその言葉を聞き後ろを振り返らずに、先輩のいる場所とは反対方向に走る。しかし、他のフロアも脱走者がいたのか、囚人がうようよといた。
私は恐怖を覚え、無我夢中で走った。今、この場所が何階層なのかも分からず無我夢中で走った。
そして、開いていた檻の中へ入り、少しだけ扉を開けて一息着く。
まずい・・・。ここが何階層なのか分からない・・・。それに、もしかすれば通信室を通り越してしまったのかもしれない。
聖「ねえ、お姉さん。人の部屋に入る時はノック位するものだよ?」
私は背筋が凍った。あらゆる部屋が開いていたにも関わらず、まだ囚人が居たのだ。私はすぐさま後ろを振り付き、魔法で拘束しようとしたが、その囚人は私より早く動き口を抑えられる。こ、殺される・・・!!
聖「しー。静かに。何かしらの緊急事態なんでしょ?もしそうなら頷いて。違うのなら、首を振って。」
正直、私は言う通りにするしか無かった。ここで機嫌を損ねれば殺されると思ったからだ。優しい声の持ちの主の顔も見ずに、私は私は頷くしか無かった。
聖「そっか・・・。嫌な日に当たっちゃったね。でも、大丈夫。私がいるから。」
そう言って、女性は私を優しく抱き締めて頭を撫でてくれた。振りほどこうにも恐怖で振りほどけず、私はされるがままとなる。
撫でるのに満足したのか私を離して、私自身も恐る恐る目を開くと、今日収容された少女だった。悪魔である私が言うのも変だが、まるで聖女の様な微笑みを浮かべていた。
聖「さ、こっちのベットに座って、とりあえず深呼吸して。ほら。」
私はまだ恐怖で固まったままであったが、やはりされるがまま。ベットに移動し、座らさられ深呼吸するも、更なる恐怖が襲ってくる。なんせ、私の目の前にはレベル10の犯罪者が居るのだから。
新人刑務官「あっ・・・あっ・・・」
聖「・・・そっか。そういや、私は犯罪者だったね。」
少女は狭い牢獄ではあるものの、出来るだけ私から距離を取る。多分、彼女なりの優しさなのかもしれないが、もしかすれば油断させる為の罠かもしれない。
そう思った瞬間、牢屋のドアが破壊されたと思ったら大柄の男が入ってきた。あの顔は見た事がある・・・!!SSS級のはぐれ悪魔、カラサヌーワ!
自身の王や仲間を食い、討伐隊も食ったと言われる化け物・・・! それに、その後ろにいるのもSSS級のはぐれ悪魔・・・!!
カラサヌーワ『ほう。まさか、女が2人いるとはな。丁度いい、かなり溜まっていたところだ。』
新人刑務官「あっ・・・あっ・・・」
私は情けなくも恐怖から失禁してしまった。もう、この場で私は死ぬ・・・。そう確信したからだ。
しかし、囚人である少女ははぐれ悪魔の前に立ちはだかる。まるで、私を守るかの様に。
聖「・・・あのさ。ここ、今は私の部屋なんだけど?女の子の部屋にノックもしないなんて、どんな環境で育ったわけ?」
カラサヌーワ『なに、女は所詮、俺たち男の性処理道具だ。礼儀なんていらんだっ!?』
その瞬間、少女がカラサヌーワを殴り飛ばした。い、今、腕が黒くなったような・・・?
そして、私は気付いてしまう。これでも私は悪魔であると同時に魔法使いでもある。先程まで感じた、雁字搦めの魔法が一切感知出来ないのだ。
聖「この、ゴミ共が。ここがどの神話領域かは知らないけどあなた達に見せてあげる。冥界では見られない本当の地獄を。」
少女の手に真っ黒な球体が出来たと思ったら、カラサヌーワを含むSSS級はぐれ悪魔が闇に飲まれた。
少女は真顔で私に近付いて来る。しかし、私の体は動かず、それどころか声すら出ない。
聖「刑務官のお姉さん。別に私を信用しろとは言わないよ。でも、生き延びたいなら私に付いてきて。」
それだけ言って、少女も抜け出してしまった。
私は刑務官でありながらも大罪を犯してしまった。なんせ、恐怖からその少女について行ってしまったのだから。