トレーナーである貴方とライスシャワーの日常   作:雅媛

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ライスシャワーと温泉

レース明けに、貴方はライスシャワーと温泉に行くことになった。

数日間宿泊して、レースの疲れを癒し、怪我を防止するためのプチ湯治である。

 

「楽しみだね!」

「そうだな、ライス」

 

トレセン学園からそう遠くはない、山の中にあるウマ娘向けの温泉に、二人して向かう。

今回の湯治はトレーニングの一部であるため、トレーナーである貴方も一緒に行くことになったのであった。

 

 

 

電車とバスで1時間程度行った東京西部の山奥に、目的の温泉宿泊所はあった。

鄙びた温泉旅館、という風であるが、建物の横に小さなコースがいくつかあるのが特徴だ。

湯治中といっても、怪我をしていなければ多少動いた方が体にいいため、そういう設備も併設されている、ウマ娘湯治専用の宿泊所であった。

 

入り口に入ると、和服を着たウマ娘の仲居さんが何人かいた。

 

「いらっしゃいませ。ライスシャワー様とトレーナー様ですね。どうぞこちらに」

 

そのうちの一人が笑顔で挨拶すると、荷物を受け取って貴方たちを案内するだろう。

顔だけで相手に分かってもらえるぐらいにはライスシャワーも有名になってきているらしい。

そうして貴方たちは、奥の部屋に案内された。

部屋付きの温泉がある和室である。

 

仲居さんは荷物を置くと、お茶を入れ始める。

仲居さんへのお心づけを貴方が用意する間、ライスシャワーは部屋の中を見回り始めている。意味もなく押し入れやクローゼットを開けたり、どんな部屋があるか扉を開けて中に入ったりしている。

 

「お部屋に温泉ついてるよ!!」

 

部屋付きの温泉を見つけたらしいライスシャワーが喜びの声を上げる。

仲居さんは微笑みながら、貴方に一通り説明をすると部屋から出ていった。

 

「ほらライス。まずは落ち着いて、お茶でも飲みながら休憩しよう」

 

貴方が声を掛けるとライスシャワーは照れながら隣に座る。

仲居さんが入れたお茶を飲みながら、お菓子を食べ始める。

小さなお饅頭をその小さな口で、ちびちび…… なんてことはなく一口で食べるライスシャワー。彼女は体格に反してすさまじく大食いだ。

だが、もっきゅもっきゅとお菓子を食べる姿はそれはそれでとても可愛らしかった。

 

「この後どうするの?」

「お茶を飲んで休憩して、荷物を整理したら早速温泉に入ろう」

「わかったよ」

 

湯治は1日3回、時間を分けて入るのが通常だ。

少し休憩して落ち着いたら、最初の入浴は済ませた方がいいだろう。

お茶を飲み干したライスシャワーがカバンを漁って準備を始める背中を見ながら、貴方も準備を始めた。

 

 

 

温泉の入り方の指導もあるので、貴方は当然ライスシャワーと一緒に入ることになる。

もちろん裸ではなく、湯着を着てということになるのだが……

 

「どう、似合うかな?」

「可愛いと思うよ」

 

ライスシャワーが用意していた湯着は少しセクシーすぎた。

黒い薄手のワンピース型なのだが、ノーショルダーのもので、腕や鎖骨はもちろん、胸の谷間まで見えるものだ。

色が黒いせいで、彼女の白い肌が余計際立っている。

下も、太ももの真ん中ぐらいの丈で、その美しい脚がほとんど丸見えだし、しゃがんだら中が見えてしまいそうな短さである。

少し無防備すぎるように思えて、貴方は非常に心配になるだろう。

まあ、一般に広く開放されている温泉に入るわけではなく、部屋付きの温泉に入るだけの予定であるか、今回は問題ないか。貴方はそう思って、ライスシャワーと二人、浴室に入るのであった。

 

「まずは、お湯を十分に浴びるところからスタートだ。かけるぞ、ライス」

「ふわぁい」

 

桶でお湯を掬った貴方は、ライスシャワーの頭からお湯をかける。

それなりの勢いで、二回、三回とかけ、お湯に体を慣らしていく。

ライスシャワーは大人しくお湯を浴びており、それ自体は特に問題がないが、彼女の湯着がさらなる問題を生じさせた。

非常に薄い生地なのだろう。濡れたら体にぴったりくっついて、彼女の体の線をあらわにし始めたのだ。

筋肉に支えられた、体格の割には大きく形の良い胸部。

走り続けることで鍛えられた、引き締まりつつしっかり大きな臀部。

細いながら折れそうということもなく、締まっている腹部。

そういった、理想的な体型が布越しながら浮き上がってしまっていた。

それ自体は、貴方のトレーニング指導と、ライスシャワーの努力の結晶であり、その美しさは感動するようなものである。

だが一方で、明らかに無防備すぎる。貴方と二人だからよいが、多数がいる場所にこの格好で言ったら大問題だ。

後で注意しなければならないと心に決めながら、十回ほどかけ、十分にお湯がなじんだだろうところで、タオルを渡した。

 

「頭と顔を軽くふいたら、湯船に浸かるといいよ」

「はぁい~」

 

若干お湯ですでにふやけている彼女は、おとなしく湯船につかり始めるのであった。

 

そのまま、かけ湯後に湯船に続いた貴方と二人、ぼんやりとお湯に漂う。

温度は少し熱め。

酸性が強めの湯で、肌が少しピリピリする。

ライスシャワーは完全に気が抜けた表情をして、ぼんやりと浸かっている。

特に会話もなくぼんやりと入浴をし続けていたが……

 

「そろそろ5分だな。一度上がろう」

「ふわぁい」

 

あまり長湯しすぎるのもよくない。

一度上がって休憩をするべく、貴方はライスシャワーに声をかけるのであった。

 

 

 

湯船から上がった貴方は、ライスシャワーの髪の毛を洗い始める。

彼女の髪は、硬い質でまた量も多いため、なかなかまとまりが良くない。

洗うのも大変らしく、トレーナーになってからよく貴方は彼女の髪を洗っていた。

 

毛先から丁寧にシャンプーで洗っていく。

量が多いので、一度に全部洗うのではなく、部分部分に分けて洗っていく。

硬い髪といっても手触りはなめらかで、張りのある生糸のような手触りである。いつまでも触っていたい滑らかさがある。手入れしているので、指通りも非常に良い。

そんな素晴らしい髪をきれいにする作業にやりがいを感じながら、毛先から真ん中あたりと洗っていき、最後に最難関の耳周辺にたどり着いた。

 

ウマ娘の耳の構造は明確にヒトとは異なっている。

下手に洗うと中に水が入ってしまい、場合によっては中耳炎などの病気になってしまうこともないわけではない。

特にライスシャワーは耳が大きい体質なので、異物が入る可能性が大きく、より気を遣う必要があった。

とはいってもすでにあなたにとって慣れたものである。

少しずつ、慎重に、ていねいに、耳の周りから耳本体へと洗っていく。

ヒトの耳たぶと違いウマ娘の耳は薄く、触り心地も独特である。短い耳毛でビッチリおおわれているので、丁寧に洗う必要があった。

 

水を勢いよくかけてしまうと耳の中に入ってしまう可能性もあるので。少し水をかけては濡れたタオルで丁寧にシャンプーを拭き取ってゆく。

 

普段だとこの後さらに髪の手入れをするのだが、再度入浴予定であるし、手入れは入浴後にしよう。

そんなことを考えて、貴方はライスシャワーの髪を洗うのを終えた。

 

「いつもありがとう」

 

嬉しそうにそんなお礼を言うライスシャワー

 

「トレーナーだからね。いくらでも頼ってよ」

 

貴方は照れくさくなりながら、そんなことを答えた。

 

そして、そのまま2回目の入浴である。

また湯船に浸かり、五分間待つ。

使っている間のライスシャワーの表情は蕩けている。

目を細めて、口が半開きで、いかにも脱力していますという雰囲気だ。

時々、

 

「ふぇぇぇぇ」

 

とか

 

「みゅうぅぅ」

 

とか、謎の鳴き声を上げる。

とてもかわいい。

ゆらゆら揺れたりとか、細かく動くライスシャワーを5分間眺め、貴方とライスシャワーは湯船から上がった。

 

「次は体を洗うぞ。手でこすって落とすんだ」

 

石鹼を手に塗った貴方は、ライスシャワーの顔を洗い始める。

まず一番広いほっぺをぷにぷにしながらやさしく洗っていく。

とても柔らかく、肌理も細かい肌を優しく指先で撫でるように擦る。

そのまま、閉じた口元を洗う。ふっくらした唇は柔らかいが、一番肌が弱い場所の一つなので、一回触るだけで済ませる。そのまま鼻から目の周りを洗ったら、水で流し落とした。

 

「体も洗って~」

「自分で洗いなさい」

 

ライスシャワーが甘えてそんなことを言ってくるが、さすがに拒否をする。

トレーナーでもさすがにそれはやばい。

やってはいけない一線はあるのだ。

 

ちょっとだけむくれながら、自分で洗い始めたライスシャワーを見て、貴方も自分の体を洗い始めるのだった。

 

 

 

「お背中流すよ~」

 

少し経ったら、ライスシャワーの声が後ろから聞こえてきた。

次の瞬間、背中に小さな手が触れている感覚が伝わってくる。

ライスシャワーが背中を洗ってくれるのだろう。

丁寧にやさしく、一生懸命洗ってくれているようだ。少しくすぐったくもある。

 

「ありがとう。終わったら尻尾洗ってあげるからね」

「よろしくね♪」

 

人間の背中と同じく、尻尾の根元なんかもウマ娘にとっては洗いにくい場所である。

走るのにも影響が出るため、貴方がちゃんと洗ったり管理していた。

 

背中を流してもらった後、貴方はライスシャワーの尻尾に取り掛かる。

バスマットを敷いて、うつ伏せになったライスシャワーの膝裏上にまたがり、貴方は尻尾の根元に触れた。

尻尾は非常に繊細な器官だが、ライスシャワーの場合、髪質が固いので比較的ケアが難しい。強くやってはだめだが、弱すぎると全く綺麗にならないのだ。

 

「んっ……」

 

尻尾の裏側に手を差し込み、優しく持ちながら、根本をゆっくりブラシで梳かし始める。強すぎず、ブラシが通る強さで梳かしてから、薬剤をそこにしみこませる。

薔薇の香りが漂い始める中、再度ブラシを尻尾に通す。

先ほどよりはずいぶん滑らかにブラシが通っていく。

 

「ふゃぁぁぁ」

 

気の抜けたライスシャワーの声が響く。今回もうまくいっているようだ。

そのまま先の方へとブラシを動かしていくが、ある程度以上行けば、尻尾は毛だけになるので難易度は下がる。

こうしてあなたは今日も、ライスシャワーの尻尾をきれいにしたのであった。

 

 

 

綺麗になったら3回目の入浴を済ませ、温泉をシャワーで流してから上がる。

さすがに酸性が強いので、洗い流さないと肌を痛めかねない。

そのままライスを洗面台の前にある椅子に座らせて、髪と尻尾のケアを始める。

 

丁寧に水をふき取り、その後に香油を刷り込んでいく。

ライスシャワーの好きな薔薇の香油である。ちょっとお高いが、彼女の実家から送られてくるので遠慮なく使用することができた。

 

「髪型はいつもみたいに軽く流しておくだけでいい?」

「んー、今日は違う感じがいいかな」

「どんな感じ?」

「ロブロイさんのみたいな感じがいいな」

「じゃあ前髪もいじってみようか」

 

幸いライスシャワーの前髪はかなり長い。三つ編みにして前の方で編み込むこともできそうな長さである。

問題は髪質の硬さだが……

丁寧に香油を塗り込んで柔らかくしてからどうにかこうにか、苦戦しつつ編み込みを進めていく。ポイントポイントで、髪を結わえるために細い白リボンを使ってアクセントにしていく。

こうして出来上がったのがいつも隠れている右目がはっきり見える髪型だ。

そのまま前髪で作った三つ編みは、前を通して左の三つ編みに編み込む。

ゼンノロブロイが良くしている髪型に似た感じになったと思われる。

 

「変じゃないかな?」

「すごくかわいいよ」

「えへへ」

 

いつも前髪で顔を隠しているライスシャワーだが、顔が悪いわけではない。というか、顔が良いウマ娘の中でも一番かわいいと、貴方は信じている。

隠しているのはもったいないと思う一方、こうやって照れつつはにかむ彼女が可愛すぎて、他人に見せたくない気持ちも生じてくる。

複雑なトレーナー心であった。

 

「尻尾はどうする?」

「尻尾も編み込みしてほしいな」

「今日、もう走らない?」

 

尻尾を編み込むというのはウマ娘でもかなり上級者向けのおしゃれであるとともに、トレーニングをする場合などはお勧めされないものである。

走るとき、尻尾でバランスをとるのだが、編みこんでしまうと動きがわずかに阻害されるのだ。日常生活には問題ないレベルだが、一瞬を争い続けるトレーニングやレースの際には避けるべきであった。

とはいえ、非常にかわいらしいのも確かだ。

よく、アグネスデジタルがオフの時に編み込んでいるが、あれはかなり注目を集めている。本人は他人を推し続けているが、彼女が推しているウマ娘より、基本的に彼女の尻尾を追いかけているファンのほうが多い。

それくらい注目を集めるファッションであった。

 

「走ったほうがいいかな?」

「休養だし、走らなくてもいいから大丈夫だよ」

「じゃあ、お願い」

 

貴方は三つ編みをしながら、合間合間に白いレースのリボンも一緒に編み込んでいく。

ライスシャワーの黒鹿毛だと、編み込んでもいまいち変化が目立たない。

なので白リボンを混ぜることで、編み込みを強調する。

さすがに尻尾の編み込みは初めてであったが案外うまくできたような気がする。

 

「わあ、きれい!」

「ただ、初めての編み込みだから、変なところがあったらすぐ言ってくれ。調整するから」

「わかった!!」

 

くるくると自分の尻尾を追いかけるライスシャワーの姿はひどくかわいらしかった。

 

「そう言えば、この後どうするの?」

「特にこれ以上は決めてないよ。昼過ぎと夜に、また入浴するのと、12時と6時に食事の予定があるだけ」

 

休むのがメインなので、特にスケジュールなどは決まっていない。特に今日は余裕があった。

 

「じゃあさ、少しお散歩しようよ」

「喜んで、お姫様」

 

髪型と尻尾でおしゃれしたからには、外に出たいのだろう。

洗面所から出てお茶を淹れながら、貴方はライスシャワーとどこに散歩に行くか、相談をし始めるのであった。

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