迷子AGEのハンター日誌   作:Sillver

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6頭目 真白の雪

 私の初のオトモガルクは白雲に決まり、次はオトモアイルーを選ばなくてはいけないのだが、これが酷く難しい。というのも、アイルーは個々で得意なことに差が大きく狩りの戦略も変わってくるからだ。

 

「どうしようかなぁ」

 

 目の前のもふもふに心奪われてそのまま戯れ倒したくなるのを抑えて考える。私はどんなサポートを望むのか?火力?それとも素材の入手?傷の手当て?そこまで考えた時に浮かんだのはクレアの顔だった。

 クレアはクリサンセマムの医官でもあり、戦場での傷の処置に長けたゴッドイーターだ。何度も何度も戦場で傷を負ってはクレアに手当をしてもらった。前線に立って戦うにしても、もっと己の身を大切にしろと怒られながら。メディカルチェックをなんやかんや理由をつけて避けていたアインさんにもお説教をしていた。

 心は決まった。私の最初のオトモアイルーはヒーラータイプにしよう。もちろん、そのタイプの子が私のオトモになってもいいってなってくれたらだけれど。

 

「イオリさん、私のオトモになってもいいよって言ってくれている子の中にヒーラータイプはいますか?」

「ふふ、皆と同じように『イオリくん』でいいよ。で、質問の答えだけれどもちろん居るよ!」

「では、紹介をお願いします」

「分かった。任せて」

 

 暫くして、イオリくんが連れてきてくれたのは白雲と同じように真っ白な毛並みのアイルーだった。まるで、極東地域にあるという雪に覆われた鎮魂の廃寺のような清冽な印象。向こうの世界との繋がりがまだ切れてないのだという希望が持てるような気がした。……もしかしたら、私は若干ホームシックなのかもしれない。とはいえ、ずっと見つめているわけにもいかない。アイルーは獣人ということで人の言葉が話せるので挨拶をする。

 

「こんにちは。あなたのお名前は?私はシルバー・ペニーウォートと言います」

「旦那さん初めましてニャ。僕に名前はないのニャ。だから、僕をオトモにしてくれる人につけて欲しいのニャ。これを言うと、何故かハンターさんは僕じゃない別の子を選ぶのニャ」

「それはまた不思議な。私は貴方がそう望むのであれば名前を差し上げます。そして、オトモになって欲しいです」

 

 私は既にこのアイルーに贈る名を考えていた。鎮魂の廃寺の雪。真白の雪。そして、先にオトモになってくれた白雲と同じ白。

 

「私は貴方に『白雪』って名前を贈ろうと思うんです。いかが?」

「しらゆき、白雪。うん、気に入ったのニャ!僕は白雪。これから旦那さんのオトモアイルーになるニャ」

 

 無事に気に入ってもらえたようだ。良かった。互いの了承が取れたところでイオリくんが何かを差し出してきた。何だろうと思っていると、それはオトモの登録票らしい。

 

「これにシルバーさんのオトモたちの名前を書いて欲しいんだ。そうしたら、この子達はシルバーさんのオトモだってギルドに登録されるから」

「分かりました。では、お借りします」

 

 差し出されていた登録票と筆を借りて書く。こちらの文字はまだ綺麗に書けないので元の世界での字だが。ミミズが這ったような字でずっと残る書類を書くのははばかられる。向こうでは極東地域やそれ以外の地域のゴッドイーターやAGEと通信が復活するかもしれない事を考えて各地の言語を覚えることも仕事だった。そして、二人は極東地域の漢字で名を記入した。もし帰れないのだとしても忘れてしまわないように。

 

「うん、大丈夫。問題ないよ。ただ、僕らは読めないから読み方を教えてくれるかな。横に読み方を書いておくから」

「ガルクのほうが白雲、アイルーのほうが」

「白雪ニャ!」

「ん、大丈夫。書けた。これで登録は完了です。後でゴコク様に報告をしておくね」

「ありがとうございます」

 

 無事に登録が終わり、ずっと見守っていてくれたウツシさんにもお礼を言おうとすると何故かストップをかけられてしまった。何でだろうと思ったら、唐突に鞘に入った小型のナイフを投げ渡された。とりあえず、上手いことキャッチはしたものの危ないし驚いた。

 

「わ!?」

「うん、咄嗟の時もちゃんと動けているね。驚かせてごめんね。それは剥ぎ取りナイフ。狩猟が終わった時に使うものだよ」

 

 こちらの世界では、狩った獲物から素材を得る方法が剝ぎ取りというのだそう。死んだ獲物にナイフを使って解体して選別する。その際、一度に得られる素材は3つまでなのだという。

 

「何故、3つまでなのですか?全てを得たほうが良いようにも思えますが」

「君の世界のアラガミと違ってこちらの世界のモンスターは生態系に組み込まれているからね。死した後の肉なんかも普通の動物や木々の栄養となる。ハンターは生態系を保護するもので破壊するものではないんだ」

「なるほど」

 

 確かに、ハンターにならないかと言われたときもそんな事を言っていた。そういう理由なら全てを得てしまうのも良くないのだろう。

 

「その代わり、戦闘中にモンスターの頭が壊れたり、尻尾なんかが切れることがあってね。そういう時に落ちた素材は得てもいいことになっているんだ。そういう部位を壊さないとそもそもモンスターにダメージが通らなかったりするしね」

「結合崩壊を起こしたとしても、素材を落としたりしないアラガミと違ってモンスターは本当に生き物なんですねぇ。アラガミから素材を得ようとするならば討伐後に神機で捕食するしかありませんよ。迂闊に触れればアラガミを構成しているオラクル細胞に喰われてしまいますから」

 

 モンスターもモンスターで厄介なのだろうけれども。しみじみと、アラガミの厄介さを認識し直しているとウツシさんが不思議な顔をしていた。

 

「結合崩壊?」

「アラガミも特定部位を攻撃するとそこが壊れるんですよ。オラクル細胞の結合が断ち切れた事で起きるんですが、攻撃が通りやすくなったりするので」

 

 うっかり、向こうの世界での言い方をしていた。そりゃ不思議な顔もされる。少しずつこちらの世界での動きを知らないと。帰るためにはいろんな人や場所に行かないといけない。そのためには知識が必要だ。どんなに大変だったとしても。私の家族は、あちらの世界にいるのだから。

 

「なるほど。こちらではそういうのは部位破壊っていうんだ」

「そうだったんですね。うっかりしてました。けれど、世界が違うのに似たような事をしてるのって面白いですね」

「うん。不思議だけれどね」

 

 異なる系統の生物が環境要因などで選択肢が限られていった結果、似かよった形態へとそれぞれ進化を遂げるような現象がある。それを収斂進化というらしい。ペイラー・榊博士という極東支部の技術開発部長であり、支部長を勤めていた人の論文で少し読んだだけの知識だが。しかも、読んだのも随分前だから結構忘れてしまっている。もしかしたら、オラクル細胞が出現しなかった場合は元の世界でもこちらの世界のようなモンスターが出現したのだろうか。

 オトモ広場での用事が終わり、里へと戻りつつ私はそんな事を考えていた。全てはたらればでしかないのだけれど。

 

「さて、一通りの準備は出来たかね。明日からは、里の事をもっと知ってもらいつつハンターになるための訓練をしよう」

「分かりました。よろしくお願いします」

 

 たたら場の前で私はウツシさんと別れて、オトモになった二人との親睦を深めるべく今日を過ごすことにした。2人のことを知らなくてはいけないし、逆に知ってもらっていた方が狩猟でも上手く連携を取ることが出来るはず。戦略を練り、なるべく死の危険性が無いようにしなくては。傷薬や各種薬がそろっていると言っても死ぬときは死んでしまうのだから。




22/11/13 読み書き出来ない〜のくだりを変更しました。話の大筋に変更はありません。
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