迷子AGEのハンター日誌   作:Sillver

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 普段よりちょっと長くなってしまいました。お気に入りやUAが少しずつ上がっていて、本当にありがとうございます。


8頭目 操竜と料理

 昨日の白雲と白雪の夕飯のメインを決める仁義なき戦いは運を味方につけた白雪の勝利で終わった。今日の夕飯は白雲に約束した通り、お肉にしようと考えているとウツシさんに話しかけられた。

 

「やあ、愛弟子。今日は他のハンターがモンスターを捕まえてきてくれたんだ。だから、これから操竜の訓練をしようと思うんだけれどいいかな?」

「構いませんよ。準備が出来たらどこへ行けばいいですか?」

「では、集会所へ来てくれるかい?」

「分かりました」

 

 すっかり、愛弟子呼びに慣れてしまっているなぁとさくさく準備しながら思う。とはいえ、私も未だにウツシさんを教官呼びではなく、出会った当初のさんづけのままだ。人それぞれの距離感や呼び名があるのだからそれでいいのかもしれないが。

 借り受けている水車小屋で着替えやアイテムの補充なんかをすませて外に出る。今日もいい天気だ。やる気になってきたところで集会所についた。集会所は大きな桜の木が中に生えていて外の桜とも相まってとても美しい。

 

「ウツシさん」

「来たね、愛弟子!早速、俺と一緒に闘技場へ行こう。今日の訓練はそこでやるからね」

 

 そう言われて移動すること暫し。闘技場に着いた。闘技場とはいえども人が観覧出来る感じではなく、言うならば決闘するための場所に思える。そして、いつも通りに予備の武具等を置けるキャンプもあった。雰囲気のせいでどちらかというと控え室の様相だ。

 

「今日やる操竜という技術だけど。これはモンスターに鉄蟲糸技を当てていくと段々と翔蟲の糸が絡みついてきてね。モンスターの動きが止まることがあるんだ。そして、モンスターの上に乗り自在に操れるんだよ。もちろん、一定のダメージを相手モンスターに与えるか、乗っているモンスターに与えるかしないと振りほどかれてしまうんだけどね」

「翔蟲って綺麗なだけじゃなくて本当に頼りになりますね」

「残念ながら、環境の問題なのか今のところカムラの里近辺でしか見かけないんだけれどね」

 

 一通りの操竜の仕方を教わったところで闘技場へと降りる。降りたところでウツシさんの声が響く。こっちでは無線通信機なんてものは無いが故にだいたいは大きな声での伝達か何かしらの道具を使った音によるものだ。

 

「アオアシラを放つよ。闘技場に同じく放っておいたクグツチグモを使うか、鉄蟲糸技を何回か当てて操竜待機状態にするんだ」

 

 少し馴染んできた太刀を構えてアオアシラを迎え撃つ。向こうのアラガミ基準だと小型か中型の間くらいの大きさだろうか。ぱっと見では可愛らしいが、その動きは余り可愛くはない。立ち上がり、その剛腕で周囲を薙ぎ払ってくる。動きに既視感を覚えて回避しながら思い出す。……あれは、ハンニバルやカリギュラがやる薙ぎ払いにそっくりだ。

 なら、対処は容易い。全力で走り、背後を取る。そして、ハンニバルやカリギュラには尻尾があるが、尻尾を持たないアオアシラに桜花鉄蟲気刃斬を決める。そして、回避で痛みから暴れるアオアシラから一度距離を取った。

 しかし、存外小回りが利くようで回避も迎撃も間に合わず一撃を貰ってしまった。というか、ぬいぐるみがぽてんと尻もちをつくような動きをする生物がいるとは思わなかった。そんなことをやりながら、四度目の桜花鉄蟲気刃斬を決めた時だった。かなりはっきりと糸がまとわり付いたのだろう、アオアシラがそれまでの動きが嘘のように大人しくなったのだ。その隙に、翔蟲たちを飛ばすと私はアオアシラの上に飛び乗った。

 

「私に従ってもらおうか」

 

 そして、振り払おうとする動きを糸を使って上手くいなしながら前進させる。というか、前進させるので今は精一杯だ。

 

「くっ……、こ、のぉ!」

 

 苦戦しつつ、どうにか乗った状態でもダメージを与えるべく奮闘していると何を思ったのかアオアシラが壁に激突した。咄嗟に手綱を捌くようにして落ちることは防いだ。アオアシラには自傷といえどかなりのダメージが入ったようだ。

 

「なるほど。なんとなくわかった」

 

 手綱にしていた糸の限界を悟った私は今の要領でアオアシラを壁に激突させると離脱した。そして、残っていた糸は地面に張り付いたかと思うとそのままアオアシラを拘束した。その好機を逃すはずもなく、攻撃をしていく。長くは続かなかった拘束を振り払うと、アオアシラは薙ぎ払いをしてきた。

 

「お生憎様。その動きは向こうでさんざん見て慣れてるの」

 

 見切り斬りでそのまま躱して気刃大回転斬りを決める。それまでのダメージの蓄積からか、明らかに弱った様子で逃げた。とはいえ、狭い闘技場に餌場があるわけでもない。すぐに追いつくと止めに気刃斬りを決めた。

 アオアシラは最後に雄叫びを上げるとそのまま動かなくなった。動かなくなったアオアシラに軽く手を合わせてから剝ぎ取りナイフを取り出して素材を入手していく。解体していくと大量の血が流れた。その中に、光る玉のような物が見えた。

 

「モンスターにはコアなんてないと思ったけれど、違うのかな?んー、よく分からないや」

 

 とりあえず、珍しそうなので手元に置いておこうかと剥ぎ取った。それは、血をふき取るとより輝きを増したように見えた。青くきらきらと光を反射していた。私がそれに魅入っているとウツシさんが降りてきた。

 

「どうしたんだい?ずっと動いていなかったから様子を見に来たよ」

「あ、いえ。珍しい剥ぎ取り結果を手に入れたので眺めてただけで何かあったというわけではないです」

「見せてごらん」

 

 ウツシさんに渡してみると、ああというような表情をして返してくれた。曰く、獣玉といってアオアシラなどの獣種から採れる貴重な玉で、体内の分泌物が凝縮されて結石となった物なんだとか。

 

「これは、今後武器や防具なんかの強化にも使えるし単純にお金に困ったときにも売れるから大切にするといいよ」

「分かりました。じゃあ、売りに行こうかな」

「いや、今すぐに売らなくても」

「現状、全てをウツシさんが賄ってくださっていますし。貴重なものといえど暫くは出番がなさそうなので換金してしまおうかなと」

「俺は気にしてないし、弟子はそういうものだと思ってるよ。特に、君は事情が事情だし」

 

 こう言ってくれているのに、固辞するのは逆に失礼になりそうだ。独り立ちをしたらきちんとお礼をしようと心に決めて獣玉は大切に持っておくことにした。

 

「では、いつか使います」

「それがいい」

 

 空を見上げると、夕暮れになりつつあった。こちらの空は本当に濁りが無くて綺麗だなと思っているとお腹が鳴った。なんだかんだでクリサンセマムからこっち、きちんと食事をしているせいか腹時計が出来てしまったようだ。

 こちらの食事は極東の文化らしく、米が主食だ。欧州ではパンが主食であったが、これはこれで美味しい。ウツシさんが食材を下さっているから成り立っている。そうだ。

 

「ウツシさん、今日は白雲のリクエストでお肉を使うのですが、食べていかれませんか?」

「おや、いいのかい?」

「いつものお礼と言っては何ですが、是非」

 

 水車小屋まで戻ると、一度ウツシさんと別れた。流石に着替えが必要だしウツシさんもウツシさんで残った仕事や諸々を片づけるのだそうだ。血で汚れた衣服を洗い(こちらには血の汚れが驚くほどよく落ちる石鹸がある)、お風呂に入り普段着に着替える。

 

「お肉を使うとなると、私の好物にしちゃおうかな」

 

 まずは、付け合わせから作っていく。各種野菜を貰っていたから、ざっと洗い手でちぎりサラダに。緑ばかりでは面白みがないから、トマトを櫛切りにして飾る。

 玉ねぎ・人参・じゃがいも・生肉を一口大に切っておく。鍋に水を入れ、切った玉ねぎの1部とじゃがいもを入れる。フライパンは油を敷き、鍋も火にかけて放置。白雲には焼く前のお肉を用意する。白雲はいっぱい食べるので、1cmほどの厚みの肉を3枚ほど用意する。足りなければ、また用意しよう。深めの器を用意してそこへ卵をいれてかき混ぜて溶き卵を作る。米はおひつにあるので問題はない。下準備をしているうちにフライパンも良い温度になった。

 

「白雪、今日のご飯はお肉使ってるけどどうする?」

「一緒に食べるニャ」

「じゃあ、私達と同じメニューでいい?」

「ニャ!」

 

 向こうでは、寝子(ねこ)は専用のご飯を食べていたけれど、こちらでは同じものを食べても特に悪影響はないらしい。世界が変われば細かいところも似ているようで結構違って面白い。食材の味や見た目は似通っている。ここだけはさほど変わらないのは謎だ。

 温まったフライパンに、玉ねぎを入れ少し透明になるまで炒める。色が変わってきたら今度は生肉を入れて火を6割ほど通す。通ったら、今度は米を入れて塩コショウ。米にも火が通り、肉も程よい焼き色がつき始めていたらケチャップを入れて香りだたせる。一度、火を止めて人数分の皿を用意して盛り付け。再度、フライパンに油を敷き湯気がでるまで加熱する。

 その間に、鍋が沸いているので火を緩めてコンソメキューブ・塩コショウを少々。味見をして加減をする。オムライスの方も味があるのでこちらは心持ち薄めにしておく。塩分の過剰摂取はよくないし。そのまま、弱火で味を浸透させておく。

 

「いい匂いだニャ」

「ありがとう、白雪」

「くぅーん、わふ」

「待ちきれないって白雲が言ってるニャ」

「もうちょっとで完成するから、ね?」

「ニャ!」

「ワン!」

 

 待ちきれないオトモたちのためにも完成させよう。事前に溶いておいた卵をフライパンに流し入れ、半熟になったところで先程作ったご飯とチーズをフライパンに入れる。そのまま、くるっと巻いてお皿に盛り付けていく。と、トントンと戸を叩く音がした。

 

「いい匂いだね」

「おや、ウツシさん。グッドタイミングですよ。ちょうど、夕飯が出来たところなんです。配膳をするので座っててください」

「ごちそうになるのだし、それくらい手伝うよ」

「お礼の食事なので、お客様は座ってて頂いていいのですよ?」

 

 なんともグッドタイミングで来てくれた。これで、夕飯が冷めずに済む。ウツシさんが手伝おうとしてくれたが、お客様なので却下。席に着いてもらった。作っておいたスープとオムライス、サラダを並べる。白雲用のご飯も渡す。お茶もテーブルにある。皆に食事が行き渡ったのを確認して、私も席についた。

 

「では、どうぞお召し上がりください」

「いただきます」

「いただきますニャ~」

「わふわふ」

 

 オムライスを一口。こちらの世界で作るのは初めてだが、いつも通りの味になったようで一安心。コンソメスープも食べる。こちらは比較的あっさり目に作ったが、程よくオムライスの濃厚さを流してくれる。サラダはさほど手を加えていないが、向こうの世界の物と違って味が濃く美味しい。

 

「この料理、初めて食べるけれどとても美味しいね。なんていうんだい?」

「オムライスというそうです。簡単な割に美味しいのでよく作るんですよ」

「料理は誰かに習ったの?」

「ルルっていう仲間がとても上手でその子に」

 

 穏やかに会話をしながら食べていくとやがて完食してしまった。すっかりきれいになったお皿を見て、嬉しくなった。クリサンセマムの皆もこうして綺麗に食べてくれていた。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様でした」

「流石に、食事の後片付けくらいは手伝わせてね」

「えー、別に大丈夫ですよ?」

「いいからいいから」

「では、お皿を拭くのをお願いします」

 

 二人して洗ったり、拭いたりしているとちょっと笑えて来てしまった。思い出し笑いをしていると、ウツシさんに変な顔をされてしまった。

 

「どうしたんだい?」

「いえ、ルルがクリサンセマムにきちんと同乗するのが確定する前を思い出しまして」

 

 ルルは、元々クリサンセマムの乗員では無かった。あるきっかけが元で仲間になった。それまではお客様対応だったが、今のウツシさんのように食事の後片付けだけはこちらが断っても手伝ってくれていた。どことなく頑として手伝うぞという雰囲気が同じで微笑ましかった。

 

「では、戸締りをきちんとしてゆっくり休むんだよ。今日は本当にごちそうさま」

「いえ、いつものお礼ですからお気になさらず」

「では、また明日の修行で」

「はい、おやすみなさい」

 

 誰かと食事をするというのが随分と久しぶりだった私は、その夜クリサンセマムの皆とご飯を食べる夢を見たのだった。




 料理に使っている野菜とか調味料とかが割とそのままなのはそういうものだといことでお願いします!!だって、モンハンワールドの猫飯ムービーとか見ましたけど割と現実と同じ感じだったんだもん!
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