強欲者の目指すヒーロー? 作:強欲同盟下っ端
「あの、ワンフォーオールをどうやって使いこなせるようにするんですか?」
「そうだな。一応最適な奴がいるんだが、そいつは忙しいし、ワンフォーオールの事を知らない。何よりドライアイのせいで個性の連続使用が難しい奴なんだ。だから……」
オールマイトがタンコブから湯気を出している中、緑谷が個性の使い方を私に聞く。本当はワンフォーオールすら使えなくする『抹消』の個性を持つ相澤先生にやらせたいが、あの人は諸々の事情で誘わなかった。グラントリノに関しては、連絡はしたものの、移動の準備などがあるため数日は無理。だが、やり方は本人に教えられているのでそれを代わりに私が実践する。
ブゥン!!
「え? うわあああ!!」
「ほう、今のを避けたか。危機管理能力は十分だな」
尤魔の先割れスプーンによる殺人的な一撃を間一髪で身を屈めることで回避する緑谷。尤魔はそのまま次のテストに移る。
「んじゃ、次はちょっとした質問だ。個性とはどんなものか、お前のイメージで答えてみろ」
「えっと、教科書とかだと肉体の延長線上のものって言われてますよね……でも、僕からしたら特別なものです」
「……なら意識を変えるべきだな。個性を持っている奴からしたら、自分の個性ってもんは自分の手足を動かしたり、食べ物を食ったりするのと大して変わらない。だが、今のお前の場合は見たことも聞いた事も無いボールに触れているような状態だ…どこをどう使うべきかも、どこまでが自分の意思で動かせるかも、何もかも分からない状態だ」
尤魔が緑谷の周りをグルグルと歩きながらそう説明し、先割れスプーンの先端を向ける。
「まぁ結論だけ言えば、個性の使い方だけ赤ん坊になった状態だな。柔道で言う白帯。これから手取り足取り教えるから…しっかりついてこいよ」
ここから先は、昨日までやっていたゴミ掃除など比べ物にならないほどの地獄であった。
緑谷は様々なイメージでワンフォーオールを使おうとし、暴発の可能性が少しでもあれば尤魔が先割れスプーンでぶっ叩いて止める。
尤魔の妨害が間に合わなかった時はリカバリーガールによって無理やり治され、体力回復用のハッカを尤魔によって口に詰め込まれる。
ある時はゴミの1部から発想を得ようとし、またある時はワンフォーオールの100%が尤魔の顔面に直撃して尤魔の顔が物理的にへこみ、拳で海を割り、蹴りで大地を砕き、ゴミを粉砕した。
それをひたすら繰り返し、ボロボロに、そして尤魔にボコボコにされ、緑谷は世紀末もかくやと言わんばかりの傷だらけの体になった。勿論軽い打撲痕なのでリカバリーガールによって治せる範囲。
そんな地獄がひっくり返るような特訓により、緑谷は5%だけなら意識的ではあるがワンフォーオールを全身に使えるようになった。
雄英受験前日。砂浜にてオールマイトとリカバリーガールが見ている中、尤魔と緑谷が向き合っていた。
「よし、最後に私と模擬戦だ。ワンフォーオールを無意識に使えるようにしろ。攻撃食らって解除なんて話にならないからな。……来い!」
尤魔が先割れスプーンを槍のように構える。
「はい! 八木さん!」
力を込める緑谷の身体に赤い粒子が血のように流れ、周囲に緑電が迸る。
そのまま緑谷が真っ直ぐ駆け抜け、尤魔に殴り掛かる。だが、尤魔の先割れスプーンによっていとも容易く防がれる。ならばと力を込めて押し切ろうとするが、先割れスプーンはビクともしない。
「お前は真っ直ぐすぎる時が仇になる。時には搦手も使うように。……なに、今は意識的で構わない。よっと!」
逆に尤魔の先割れスプーンによって腕を弾き上げられて凄まじいスピードで何度も突きを入れられる。その気になれば簡単に緑谷を突き殺せるが、尤魔の卓越した技術によって大怪我にはならないが戦闘に支障が出る威力に調節されている。一撃でも当たる訳にはいかない。
「ホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラホラ!!! もっと感覚を研ぎ澄まさせろ!」
「くっ……!」
最初こそ完全に回避していたが、少しづつ尤魔の攻撃が掠って傷ついていく緑谷。
「そこだ! うああああああぁぁぁぁぁぁ!!!」
苦し紛れに緑谷は今出せる限界の6%で尤魔の攻撃の隙間に向けて攻撃を放つ。……が、すんでのところで拳を掴まれて勢いのままぶん投げられる。
「あぐっ!?」
そのまま砂埃を巻き上げて仰向けに倒れる緑谷。それを覗き込むように尤魔が見下ろす。
「……ま、及第点だな。合格にしといてやる。……明日はいよいよ受験だ! 胸張って行ってこい!」
「はぁ、はぁ、はぁ……はい!」