ヤンキー王国のヤンキー魔導士 作:ただの半グレ
目を開けると、そこには紺青色の空と太陽が広がっていた。地面は遥か遠く、おそらく今俺は人類の中で最も高い位置にいるだろう。
「あのババア!よりにもよって空中に転移しやがった!」
俺は叫びながら、どうにかして地上に降りようと必死に足掻くが、どうしようもない。仕方ないので、手に持つ木製バットで地面に向かって空間系スイング『エア・フォール』を放った。
「うおっ!」
その瞬間、激しい衝撃波が発生して、周囲に砂埃を巻き上げた。幸いなことに、近くには誰もいなかったので被害はなかった。
「ふぅー……なんとか生きてるみたいだな」
俺は安堵のため息をつくと、改めて自分の身体を見下ろした。服装はそのままで、自慢の金髪リーゼントは無事であった。そして、手にはしっかりと愛バットである『グラン・フォース』が握られていた。
「よし、まずは状況を確認しよう」
俺は冷静になって周囲を見渡した。周囲には誰もおらず、代わりに小さな建物がいくつか建っているだけだ。しかし、そんな場所に俺は一人ぼっちで立っていたのだ。
「どうやら、ここは森の中みたいだな」
俺は杖に魔力を流し込むと、周囲の地形を把握しようとした。その結果、この場所は鬱蒼とした森に囲まれていることが分かった。仕方ないので、ひとまず近くの街を探すことにする。
「それにしても随分と高いところから落ちたもんだぜ……」
俺はため息をつきながら、自分の感覚を研ぎ澄ませていた。
「1、2、3、……6体か。ちょっと面倒だな」
さっきの音を聞きつけたのか、低く唸り声を上げた何かが俺に忍び寄ってきていた。俺は舌打ちをしながら、腰に差している木製バットを引き抜いた。
「チッ、やっぱり普段からバットに釘を刺しておけばよかったな……」
俺は、愛用の釘がこの場にないことを恨む。
その瞬間、俺は後ろから迫ってくる気配を感じ取ると、すぐさま横に飛んで回避した。すると、先ほどまで俺がいた場所に大きな口が現れて、そのまま獲物を飲み込もうとしていた。
「こいつは……確か、ボアっていう名前だったかな?」
それは巨大なイノシシ型の魔物だった。体長は3メートルくらいあり、鼻先がとても鋭利になっていた。そのことから、こいつがただの雑魚ではないことがわかる。
「だけど、俺だって負けちゃいないんだぞ?」
俺はそう言うと、ボアに向かって飛びかかった。まずは、火炎系スイング『ファイア・アロー』を発動させる。すると、俺の振ったバットから火の矢が放たれ、それが猪の頭に命中した。
「ブモォオオオ!!」
「ちっ!」
しかし、相手はタフなようで、全く怯んではいなかった。それどころか、俺に対して敵意を向けると、突進を仕掛けてきた。それを俺は横に飛び退いて避けると、再びスイングを放つ。
「これで終わりにしてやるよ!氷結系スイング『フリーズ・ショット』!」
氷の弾丸がボアの胴体に向かって一直線に飛ぶ。すると、命中する寸前で、奴は急停止をして避けてしまった。
「なに!?」
俺は驚きながらも、すぐに次の攻撃に移る。だが、奴は俺が次の攻撃を始めようとする瞬間、奴は石化して動かなくなってしまった。
「やっほー。お兄さん大丈夫?」
そこには、手にキャンバスと筆を握った一人の小柄な少年がいた。年齢は10歳前後といったところだろうか?栗色の髪と瞳をしており、まるで妖精のような雰囲気だった。
「ああ、助かった。ありがとう」
「どういたしまして!それで……あれってあなたのペット?それともそれとも、人を襲ったりするの?どっちなのかな?ボクとしては、前者であって欲しいんだけど」
「いや、今こいつに襲われている」
「そっかー。なら、殺さないとね」
「え?」
俺が疑問の声を上げるよりも早く、彼女は持っていたパレットナイフをボアに向けて投げつけた。そして、見事に首元に突き刺さると、そのまま倒れ込んでしまった。
「ふぅ〜危なかったね!怪我はないかい?」
「あ、ああ。君のおかげで無事だよ。本当に感謝している」
俺は素直に感謝の気持ちを伝えた。正直言って、あの一撃がなければ俺は間違いなく死んでいただろう。だから、彼女が助けてくれなければ俺は今頃あの世行きであった。
「いいよいいよ。困った時はお互い様だし!それに、あんなところで何してたの?」
「実は、道に迷ってしまったんだ。この辺りに街はあるか?」
「ううん。ないよ」
「そうか……仕方がない。自分で探すとするか」
「ねえ、お兄さん。もしかして、この国に来たばっかりなの?」
「まぁな」
「じゃあさ、よかったらボクの家に来なよ!」
彼女の提案に、俺は少しだけ考える。そして、結論を出した。
「わかった。君の家に連れて行ってくれ」
「では、ちょっとついてきてね」
「はいよ」
俺は彼女について行くことにした。そして、森の中を進んでいく。しばらくすると、目の前に大きな屋敷が見えてきた。
「ここがボクの家だよ!」
「これはまた随分と立派な建物だな」
「ふふふ、でしょ?」
俺は感心しながら、屋敷を見上げていた。すると、中から数人の男たちが出てきた。おそらく、使用人たちであろう。彼らは俺の姿を見ると、驚いたような表情を浮かべていた。
「お嬢様。その方は一体……それに、どこにいらっしゃったのですか!」
「この人は森で魔物に襲われていたんだよ。だから、ここまで連れてきたんだ!」
「森……まさか、例の森のことでしょうか?」
「そうそう。なんか、変な魔物がいるみたいだよね」
「はい。我々も警戒を強めています」
「なるほどねぇ……」
俺は彼たちの話を聞きながら、改めて周囲を見渡した。どうやら、この森の中には危険な生物が生息しているようだ。俺は気を引き締めると同時に、先ほどの会話を思い出す。
「そういえば、まだ助けてもらった恩人の名前を聞いてなかったな。あんた、なんて言うんだ?」
「ああ、ごめんなさい。ボクの名前はセレーナ。よろしくね」
「俺の名はアレン。冒険者をしている。こちらこそよろしく頼む」
俺たちは固く握手を交わした。