ヤンキー王国のヤンキー魔導士 作:ただの半グレ
彼はヤンキーであった。
彼の周りの人もヤンキーであった。
彼女は、半グレだった。
ババアは極道だった。
「……うっ」
頭が痛い。まるでハンマーか何かで殴られたような痛みだ。
「ここは……どこなんだ?」
俺は周囲を見渡す。どうやらどこかの部屋にいるようだが、暗くてよく見えない。とりあえず立ち上がって部屋の外に出ようと思った時、部屋の扉が開かれた。
「目が覚めたかい? 兄ちゃんよぉ!」
現れたのは筋肉質の男だった。顔には傷跡があり、全身にタトゥーを入れている。こいつはヤバそうだ……。そう思った瞬間、男はニヤリと笑った。
「おいおい、そんな警戒すんなって! オレぁアンタを殺しに来たんじゃねぇんだからさぁ!」
「じゃあ一体俺はどうしてこんな場所にいるんだ……」
「まあまあ落ち着けって。まずはこれでも飲んでくれよ」
男が差し出したのは水の入ったコップだった。毒が入っている可能性もあったが、今の俺にとっては喉を潤すことの方が重要だったので素直に受け取った。そして一気に飲み干した。
「ふぅー……生き返るぜぇ」
「へへっ、そりゃ良かったな。それで早速だが本題に入らせて貰おうか」
男はベッドの横にあった椅子に腰掛けた。
「アンタの名前は『レイトン』で間違いないな?」
「ああ、そうだ」
「組織内での階級は?」
「下っぱの下っぱだよ」
「そうか、それならいいんだ。グレイが組織の命令を無視して勝手に動いたせいで組織は大混乱に陥っている。だからオレたちみたいな下っ端まで駆り出されてあいつを始末しろって命令が来たわけだ」
「なるほどね」
つまりコイツらは組織の暗殺部隊という訳か。そして、ここは彼らの拠点の一つであるみたいだ。しかし、どうして俺はこんなところで寝ていたのだろうか?
「ちなみに聞きたいんだけど、なんで俺はここに居るんだ?」
「ああ、それはアンタの上司であるブラックの命令で連れてきたからだ。なんでもブラック曰く、アンタのことを気に入ったらしいぜ」
「マジかよ……」
あのクソ野郎め、絶対ロクなこと考えてないだろうな。不気味な笑顔で笑う試験管を振り回すBBAが俺の脳裏によぎった。どうやら、俺はあのクソ野郎に気絶させられ、連れてこられたみたいだ。
「それで、俺はどうしてここに連れてこられたんだ?」
「簡単な話だ。これからアンタにはある任務についてもらう」
「どんな内容なんだ?」
「とある女を殺して欲しい」
「……え?」
俺は思わず間抜けな声を出してしまった。だって仕方がないじゃないか。いきなり人殺しをして来いだなんて言われたら誰だって驚くだろう。しかも相手は女性ときたら尚更だ。
「無理そうな顔をしているけど大丈夫なのかい?」
「正直、気が進まない……」
「へぇ〜、意外だな。アンタも一応人間なんだな」
「どういう意味だよ!?」
「言葉通りの意味さ。魔導士なんて、人のことを虫けら程度にしか思ってないやつしかならないと思ってたからな」
確かに彼の言うことは一理あった。だけど、俺にも言いたいことがある。
「だが、どうして組織は暗殺者であるお前たちに頼まずに俺に頼むんだ?」
「それが一番合理的な選択だったからさ」
「なるほどな……」
組織に属するしがない魔導士である俺が選ばれた理由はわからない。ただ、俺にも組織に属している理由があり、従わざるを得ないだろう。
「それで、彼女はどこにいるんだ?」
「上から伝えられていることはひとつだ。隣の部屋にある書類の通りに行動せよ」
「分かった」
俺は立ち上がると扉に向かって歩き始めた。すると背後から呼び止められたので振り返ると筋肉質の男が立ち上がっていた。
「そういえば自己紹介がまだだったな。オレの名はルークっていうんだ。よろしくな」
「ああ、こちらこそ」
握手を交わした後、俺たちは別れた。この組織に属している以上、明日お互いが死んでいることもあるだろう。
「それじゃあ俺は行くとするよ。またどこかで会おう」
「ああ!」
俺は筋肉質の男たちと別れた後に部屋を出た。そして通路を通り抜けて別の部屋に辿り着いた。そこには大量の資料が置かれており、机の上には俺の愛用の杖が置かれていた。
(とりあえず言われた通りに行動するか)
俺は資料を読むと、次のように書かれていた。
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名前:グレイ(偽名の可能性あり)
年齢:16歳
身長:152cm
体重:50kg
所属:不明
性別:女?
階級:6等級
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これは、俺の殺すべき相手の情報のようだ。他にも色々と書いてあったが、特に重要なことは書かれていなかった。わかるのは、女であることと俺よりも二歳年下であることだけだった。そして、最後の一行に、俺への指令が書いてあった。
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この書類は、読み終わると自動的にあなたを転送します。
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あのクソババア!俺がそう思うよりも少し早く、俺の視界は真っ白に染まった。