「...さて、諸君らに集まってもらったのは他でもない。現在我々が置かれている状況の把握のためだ。」
私はもうすぐ日が昇るであろう、淡い赤い陽を窓越しに受けながら、目の前の3人にこう言う。
「まず第一に、各員の船乗りの数はいか程で、様子に異変はないか?
カルロヴィッツ侯、シュバルツ伯。」
私が念のために確認を取っておくと、彼らもそこは承知のようで、答えてくれる。
「はッ、大公。我が艦『ヌエバ=グラナダ』中級帆船の乗組員は総員87名であります。
様子は至っていつもと変わらず、常に忠義に励んでくれております、カルラ卿。」
丁寧に答えてくれた手前、その次となったシュバルツ伯も若干気後れを感じているのか、辿々しく答えてくれる。
「わ、我が艦『サンチャゴ』も先程ペベレル副官が申した通り、62名...ぐらいだったと思います!
は、反乱とか、目立った行動はない......はずです!みんな頑張って卿に尽くしています!」
(『はず』って......まぁいいや。)
シュバルツ伯は確か大雑把な性格でもあったはず。この責任は創造主である私に起因するものだから、彼に怒るのは筋違いというもの。
「...わかった。各艦変わった様子もなく私としても安心できて何よりだ。
...さて、ここから少し議題が変わる。ペベレルから聞いてもいるだろうが...。
我々は今原因不明の異常の発生により、詳細不明の大海原にいる。」
事前にこの案件の事を耳にしていたのか、動揺する事はなかったが、やはり神妙な顔持ちで受け止める三人。
すぐには信じられないのだろう。海の目立った変化もなく、我々自体にも特に変化はなかったのだから。
だがそんな中、すぐに提案を行ってくれるのは、
「......ではまずは周辺の陸地か諸島を探すべきでは?そこを停泊地とし、周辺の海域の探索を行うのが適切かと具申致します。」
この場で最も冷静な判断を下せるカルロヴィッツ侯であった。
「わ、私もそれでいいと思います!はい!」
と、隣にいたシュバルツ伯も同意する。
「...よく言ってくれたカルロヴィッツ侯。その通りだ。まずは周辺の人間の住む港町か、陸地に目星はつけておきたい。
...それと、情報収集の為に周囲に航行中の船を見つけ次第、捕縛せよ。船員からあらゆる情報を引き出せ。
......戦闘は相手の敵対行動を確認した時のみとする。わかったな?」
私が簡潔に今後の方針をまとめると、彼らも承知したようで、
「「はッ、卿の仰せのままに。」なのです!」
一人返事が合わなかった者がいるが、まあ無視だ無視。仕方のない事なんだ...この子に悪気はないッ!
「それと、当然だが艦隊はしばらくの間三角陣を取る。二人とも互いに情報共有を怠るな。何かあればすぐに旗艦に報告を。」
「了解で「もちろんですよ!カルラ様!」...。」
了承を聞けた後、何かと不機嫌になったカルロヴィッツ侯を連れてシュバルツ伯達は船室を出て行った。
今は各艦に戻り職務に励んでもらっている。
「......はぁ。」
「...カルラ様、あの子が大変なのはいつものことですよ。」
「わかっている...わかってるんだが、な...。」
副官のペベレルがようやく口にしたのはその一言だけだった...。
それからしばらく、私は旗艦の更なる情報収集を副官にお願いして、執務室 兼 船長室?で書類仕事を行っていた。
「...コンソールがないとこんなに不便なんだな、全く...。」
こればっかりは現実世界の方で鍛えられた事務作業が役に立った。
どのNPCがどの職業を持っているか、手元で見るのに資料作成は不可欠だからだ。
記憶の中にある膨大なデータと照らし合わせて、どの兵がどんな職業とスキルを保有していたかを役割別に分類している。
「
確かこの人は生産系職業をマスタリングしてたよな......。
スキルは...
『クリエイティング・ブラックパウダー』か。
特殊火薬製造の責任者にでもするかなー。」
既に60名以上の、半分を消化し切ったところで、それは起きた。
ヒュゥゥゥゥゥ......
ガンッ!!!
急な砲撃音が鳴り響いたのに私は少し動揺したが、すぐに目の前の書類を机上にばら撒き捨て、甲板へと急ぐ。
「確か今の衝撃は......魔法攻撃を受けた時の防壁発動時の音。
...いや、確か低レベル装備の物理攻撃も防ぐんだったか。」
ドォォォンッ ドドォォォォッ
外では今の砲撃音を皮切りに、大量の聴き慣れたまた一風異なる砲撃音が次々に聞こえてくる。
「......第一村人発見が、まさかの賊だとは...。」
私は商船などを期待していたのに、恐らくこんな派手な戦闘を吹っかけてくるのは海賊くらいだろう。
てか、この世界に海賊いたのかと第一村人には違いない為、少し気分が高揚する。
そこへ、いつもの見知った顔が見えた。
「か、カルラ大公ッ!報告です!8時の方向から接近してきたあの愚か者共、急に砲撃を、」
私はそこまでいった副官ペベレルを制止した後、こう述べる。
「わかっている、ペベレル。...この程度の雑多な砲撃でそもそも我々が傷付くはずがないだろう?それに、もう既に連中は蜂の巣さ。」
私は優雅にそういうと、彼女もそれを納得したのか、少し微笑み私にこう返す。
「...そ、そうですよね...慌てる事などなかったです。すみません、卿を早くお呼びして差し上げようと思ったばかりに...。」
「いいさ、別に。それよりさっさと甲板に上がって、連中がどんな奴らなのか会いに行こうじゃないか。」
もう既に外からは砲撃音が一切聞こえない静寂が戻ってきており、戦闘自体は私が出向くまでもなく瞬殺で終わったことが窺える。
それを理解した私達は早速この朝だというのに薄暗い船室を後にするのだった。
海賊ってオバロにいるんですかね...?