復活の神樹様   作:ほろろぎ

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第六話 星団と蛇遣いと最後の進化

 九体のバーテックスが、獅子座──レオを中心に(つど)いはじめたのを見て、風は焦りの声を上げた。

 

「ヤバい……皆、攻撃の手を止めないで!!」

 

 このままでは不味いことになる。それも、予想を大きく上回る大惨事になることは必死だ。

 

 風の声を聞いた防人たちは、三十二の銃口から弾丸を乱射した。

 犬吠埼姉妹と夏凛、東郷は、バーテックスの集合をはばむため銃剣のブレードを展開し斬りかかる。

 

「なにしてんの!? アンタも奴らを止めなさいよ!」

 

 風が叫んだ相手は、なぜか攻撃の手を止め、事態を静観する姿勢を見せたオフィウクス。

 これから起こるであろう惨劇を知っているはずなのに、友奈の表情はひどく涼し気だった。

 

 全員一丸となっての妨害もどこ吹く風。

 怪物は獅子座を核として融合を果たし、超巨大バーテックス──『スタークラスター』を誕生させた。

 スタークラスターは十年前の戦いで、勇者たちに甚大(じんだい)な被害をもたらした強敵だ。

 しかも今回の個体は、十年前のものより合体したバーテックスの数が多い。

 つまり、単純な戦闘力も増していると考えて差し支えないだろう。

 

 対して人類側の戦力は、量産型勇者の防人が(おも)

 スタークラスターを相手にしては、もはや勝ち目はゼロに(ひと)しかった。

 

「みんな、落ち込むことないよ。アイツさえ倒しちゃえば、戦いは終わりなんだからさ」

 

 友奈が発したその言葉は、()しくも十年前にスタークラスターと対峙した時に、本来の友奈が言った台詞と近しいものだった。

 

「って言っても、あんなのとどうやって戦えば……」

「私が行くよ」

 

 十年前のスタークラスターの力を知っている元勇者たちは、経験が(あだ)となり恐れを抱いて動けない。

 そんな夏凛たちにオフィウクスは、自分が戦うと言いだした。

 敵とは言え、無謀な行いに思えた夏凛は止めようと声をかける。

 

「待ちなさい! いくらなんでも、アンタだけじゃ」

「私がなんで天の神に封印されていたか、教えてあげようか?」

「え……」

「『強い』からだよ。バーテックスの中では格段にね。……だからこそ、人間側に傾倒(けいとう)するかもしれない可能性を恐れて、封じられてたの」

 

 ニヤリと口の橋を上げ笑みを見せる友奈。

 その姿は、自らの力に絶対的な自信を持つ者の様相だった。

 

 友奈の体からオフィウクスの持つ闇のオーラが、紫色の波動となって溢れだす。

 地を蹴り、スタークラスターに突っ込んでいく友奈は、黒い流星という言葉がふさわしい。

 

「勇者キーック!!」

 

 弾丸、いや砲弾のごとき質量を持ってぶつかったスタークラスターは、百メートルを超す巨体が大きく揺さぶられ地に落ちた。

 たったの一蹴りでスタークラスターの体表は砕け、内部の心臓に当たる弱点──御霊が見えている。

 

「な……ッ!?」

 

 勇者の強化システムである『満開』を使用した時以上の破壊力……。

 風たちは初めて、オフィウクスの存在に恐れを抱いた。

 

 友奈の戦闘力に呆気に取られていたのは、防人たちも同様だった。

 その間にスタークラスターの傷は、一瞬で修復されてしまう。

 

 感心したような顔の友奈の中で、オフィウクスは神樹に呼びかける。

 

「なるほど、回復力はあるみたいだね。……東郷さん」

「……なんだ」

「一緒にやろっか!」

 

 スタークラスターの超回復能力を面倒に思ったオフィウクスは、神樹に共闘を持ちかけた。

 返事を待たずに、友奈は再びスタークラスターに飛びかかる。

 

「百回連続、勇者パアアアアアアンチッ!!」

 

 マシンガンのような速度で連射される必殺の拳は、ドリルのようにスタークラスターの体表を削り取る。

 スタークラスターは抵抗する間もなく、ものの数秒で御霊をむき出しにされた。

 

 さらに、友奈は両手でガッチリと御霊をつかむと、怪物の体内から無理矢理外に引きずり出す。

 

「今だよ!!」

「……ッ!」

 

 神樹は銃剣に力を集中させ、一気に解き放った。

 まぶしく輝く閃光弾は、一直線に御霊を貫通。

 心臓を失ったスタークラスターの巨体が、(はし)の方から砂となり崩れ始める。

 

「か……勝っちゃった……」

 

 あまりにも呆気ない勝利に、樹が呆然とした顔でつぶやいた。

 崩壊するスタークラスターを見た防人は、勝ちどきの声を上げ喜びをあらわにする。

 

「待っていたよ、この時を!!」

 

 喜びをあらわにしたのは、オフィウクスも同じだった。

 

 なにかを迎え入れるように両手を広げた友奈。

 その体に、砕け散ったスタークラスターの御霊や、先に倒され崩壊したバーテックスたちから発生したエネルギーの流れが、吸い込まれていく。

 

「貴様……一体なにを!?」

 

 予期せぬオフィウクスの行動に目を開く東郷。

 エネルギーをすべて吸収し終えた友奈の体に、異変が起きる。

 

 闇色の勇者服が変質し、友奈の体をすっぽりと包み込んだ。

 布状の衣装はまるで筋肉のように変化し、禍々(まがまが)しいオーラを放つ。

 

 変化が終わり現れたそれは、もはや人であった面影を残さない……『人のシルエットに近い異形の怪物』といった形態をとっていた。

 

「なんなの……こいつは。なにが起きたの……!?」

 

 突然の出来事に、事態を見ていることしかできなかった夏凛や防人たち。

 

 彼女たちの眼前に立つそれこそが、全十三星座完全融合進化体──『ゾディアック・バーテックス』。

 

『ついに……ついに全ての力を手に入れたぞ! これで私は、天の神に匹敵する存在となったのだ!!』

 

 歓喜に打ち震えるゾディアック。

 世界を神樹、そして天の神から奪い取るために、十二体のバーテックスの力を強奪(ごうだつ)することこそが、奴の狙いだったのだ。

 

『……それじゃあみんな、さようなら』

 

 手をふるゾディアックの体が太陽のように輝き、目を開けていられないほどの臨界に達した時──。

 

 まるで西暦時代に作られた、忌まわしき『悪魔のような殺りく兵器』のごとく起きた大爆発によって、讃州市一帯は壊滅した。




スタークラスターさんが嚙ませに…パワーバランスこわれる
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