九体のバーテックスが、獅子座──レオを中心に
「ヤバい……皆、攻撃の手を止めないで!!」
このままでは不味いことになる。それも、予想を大きく上回る大惨事になることは必死だ。
風の声を聞いた防人たちは、三十二の銃口から弾丸を乱射した。
犬吠埼姉妹と夏凛、東郷は、バーテックスの集合をはばむため銃剣のブレードを展開し斬りかかる。
「なにしてんの!? アンタも奴らを止めなさいよ!」
風が叫んだ相手は、なぜか攻撃の手を止め、事態を静観する姿勢を見せたオフィウクス。
これから起こるであろう惨劇を知っているはずなのに、友奈の表情はひどく涼し気だった。
全員一丸となっての妨害もどこ吹く風。
怪物は獅子座を核として融合を果たし、超巨大バーテックス──『スタークラスター』を誕生させた。
スタークラスターは十年前の戦いで、勇者たちに
しかも今回の個体は、十年前のものより合体したバーテックスの数が多い。
つまり、単純な戦闘力も増していると考えて差し支えないだろう。
対して人類側の戦力は、量産型勇者の防人が
スタークラスターを相手にしては、もはや勝ち目はゼロに
「みんな、落ち込むことないよ。アイツさえ倒しちゃえば、戦いは終わりなんだからさ」
友奈が発したその言葉は、
「って言っても、あんなのとどうやって戦えば……」
「私が行くよ」
十年前のスタークラスターの力を知っている元勇者たちは、経験が
そんな夏凛たちにオフィウクスは、自分が戦うと言いだした。
敵とは言え、無謀な行いに思えた夏凛は止めようと声をかける。
「待ちなさい! いくらなんでも、アンタだけじゃ」
「私がなんで天の神に封印されていたか、教えてあげようか?」
「え……」
「『強い』からだよ。バーテックスの中では格段にね。……だからこそ、人間側に
ニヤリと口の橋を上げ笑みを見せる友奈。
その姿は、自らの力に絶対的な自信を持つ者の様相だった。
友奈の体からオフィウクスの持つ闇のオーラが、紫色の波動となって溢れだす。
地を蹴り、スタークラスターに突っ込んでいく友奈は、黒い流星という言葉がふさわしい。
「勇者キーック!!」
弾丸、いや砲弾のごとき質量を持ってぶつかったスタークラスターは、百メートルを超す巨体が大きく揺さぶられ地に落ちた。
たったの一蹴りでスタークラスターの体表は砕け、内部の心臓に当たる弱点──御霊が見えている。
「な……ッ!?」
勇者の強化システムである『満開』を使用した時以上の破壊力……。
風たちは初めて、オフィウクスの存在に恐れを抱いた。
友奈の戦闘力に呆気に取られていたのは、防人たちも同様だった。
その間にスタークラスターの傷は、一瞬で修復されてしまう。
感心したような顔の友奈の中で、オフィウクスは神樹に呼びかける。
「なるほど、回復力はあるみたいだね。……東郷さん」
「……なんだ」
「一緒にやろっか!」
スタークラスターの超回復能力を面倒に思ったオフィウクスは、神樹に共闘を持ちかけた。
返事を待たずに、友奈は再びスタークラスターに飛びかかる。
「百回連続、勇者パアアアアアアンチッ!!」
マシンガンのような速度で連射される必殺の拳は、ドリルのようにスタークラスターの体表を削り取る。
スタークラスターは抵抗する間もなく、ものの数秒で御霊をむき出しにされた。
さらに、友奈は両手でガッチリと御霊をつかむと、怪物の体内から無理矢理外に引きずり出す。
「今だよ!!」
「……ッ!」
神樹は銃剣に力を集中させ、一気に解き放った。
まぶしく輝く閃光弾は、一直線に御霊を貫通。
心臓を失ったスタークラスターの巨体が、
「か……勝っちゃった……」
あまりにも呆気ない勝利に、樹が呆然とした顔でつぶやいた。
崩壊するスタークラスターを見た防人は、勝ちどきの声を上げ喜びをあらわにする。
「待っていたよ、この時を!!」
喜びをあらわにしたのは、オフィウクスも同じだった。
なにかを迎え入れるように両手を広げた友奈。
その体に、砕け散ったスタークラスターの御霊や、先に倒され崩壊したバーテックスたちから発生したエネルギーの流れが、吸い込まれていく。
「貴様……一体なにを!?」
予期せぬオフィウクスの行動に目を開く東郷。
エネルギーをすべて吸収し終えた友奈の体に、異変が起きる。
闇色の勇者服が変質し、友奈の体をすっぽりと包み込んだ。
布状の衣装はまるで筋肉のように変化し、
変化が終わり現れたそれは、もはや人であった面影を残さない……『人のシルエットに近い異形の怪物』といった形態をとっていた。
「なんなの……こいつは。なにが起きたの……!?」
突然の出来事に、事態を見ていることしかできなかった夏凛や防人たち。
彼女たちの眼前に立つそれこそが、全十三星座完全融合進化体──『ゾディアック・バーテックス』。
『ついに……ついに全ての力を手に入れたぞ! これで私は、天の神に匹敵する存在となったのだ!!』
歓喜に打ち震えるゾディアック。
世界を神樹、そして天の神から奪い取るために、十二体のバーテックスの力を
『……それじゃあみんな、さようなら』
手をふるゾディアックの体が太陽のように輝き、目を開けていられないほどの臨界に達した時──。
まるで西暦時代に作られた、忌まわしき『悪魔のような殺りく兵器』のごとく起きた大爆発によって、讃州市一帯は壊滅した。
スタークラスターさんが嚙ませに…パワーバランスこわれる