ウマ娘世界が地獄でも、住めば都です。   作:ジョンゲスト

10 / 82
閑話風味です~

2022/7/29
改稿
文体を40話前後の書き方に統一しました。


パソコンルームでオグタマと遭遇

沖野トレーナーと別れて、ボケーっと学園生の練習を眺める事1時間程たった時だ。

ちょっと座る体制を変えた瞬間、突然悪寒が下半身を突き抜けた。

 

「尿意ッ!速やかにトイレに向かえ!」

 

突然訪れた避け得ぬ下半身の欲求に、頭の中で理事長が扇子を掲げて踊り狂う。

ガチャの激熱演出、大当たり確定だ!

いやまて、出てしまっては大惨事、出ないでくれ!

 

急激に高まりを見せるそれに耐え、下半身を刺激しないようにトイレを探して動かぬ脚でよたよたと駆け回り、ようやく駆け込んだトイレでどうやっても濡れたトイレの床についてしまいそうになる尻尾の毛の処置で頭を抱え、理事長室に飛び込んでたづなさんに泣きついた件に関しては割愛する。

 

さすがに見ず知らずの学園生に、ウマ娘としてのおトイレの仕方を教えてくださいなんて言えねーよ!

 

トイレの友は尻尾バンド、トイレの友は尻尾バンド。

重要なことだから二度言いました。

大事な尻尾を汚さないために、ウマ娘に受け継がれた英知があるのです。

わかりましたか?

 

ひしゃげて回らなくなった職員用トイレのドアノブ?

何のことかわかりませんね。

 

 

 

 

ハァハァ・・・取り乱しまして失礼しました。

この身体の尊厳の一大事だったもので。

 

下半身の危機を乗り越えた俺は、まだたづなさんとの約束の時間には間があるので、図書室に隣接するパソコンルームで暇をつぶすことにする。

パソコンルームの入り口の受付には誰もいない。

入り口のドアは開けっ放しなので、ご自由にお使いください、ってことなんだろうか。

 

パソコンルームの中には、40台くらいの年季の入ったパソコンが仕切り板で1台ごとに区切られて並んでいる。

ルーム内でパソコンを使っている者は誰もいない。

スマホ、じゃなくウマホか、あれが全盛だからパソコンでわざわざインターネットする学園生もいないってことなんだろう。

 

壁にはでかでかと注意書きが貼られている。

 

・R18コンテンツは制限されています。

・有料コンテンツへの支払いは禁止されています。

・閲覧したデータはすべてログに残ります。

・フリーメール、一斉同報メールサイトへのアクセスは制限されています。

・動画や音声はイヤフォンを使用すること。

・端末へのデータの持ち込み、また持ち出しは管理者に依頼してください。

・印刷は譲り合って順番に。

 

・・・女子校とはいえ、思春期のウマ娘、やることはいっしょか・・・

アレなページを見て、詐欺サイトに引っ掛かって、ちょっとした恨みからメールボムしまくって、クリックしたら恥ずかしい動画が大音量で流れて、手持ちのPCやウマホで足がついたらまずいデータをやり取りしたがった、と。

 

 

 

 

苦笑いしながら端っこの1台に陣取り、電源を入れるとパソコンが立ち上がる。

 

『Umantu』

 

・・・Linuxかよ!

 

使い慣れないグラフィックインタフェースをマウスでつついてブラウザを立ち上げる。

いつものつもりでマウスのボタンをクリックしたら、ミシッと不穏な音がしたので冷や汗が出た。

力加減を意識しろ!と自分に言い聞かせる。

 

表示されたブラウザのトップページはHayoo。

HayooはHayooのままなのか。

なんかホッとする。

 

俺は昔からキーボードはバシバシと叩く性質なので、うっかりするとキーボードを壊しかねない。

今回は検索とかはしないでクリックで見られるニュースサイトだけ見ていく。

どうせ暇つぶしだし。

 

ニュース一覧をざっと眺めてみたが、芸能人にウマ娘が多いなーってのと、あっちの世界で起こっていた地域紛争などの戦争の話題がない。

平和そのものだ。

 

それ以外は似たり寄ったり。

バイクや車なんかも見てみたが、環境保護の為の機器はほぼ同レベルだが10年くらい遅れていると思われる部分もある。

その他の分野では情報そのものが見当たらないものがある代わりに、明らかにあっちの世界より進んでいる分野もある。

ウマ娘世界では兵器等物騒なものが進歩していない代わりに、コンピューター関連が異常に発達している。

フルダイブ式のVRゲーム筐体なんかがe-sports喫茶なんかに置いてあるらしい。

 

あっちの世界と全く同じ進歩をしてるっていうわけではなさそうだ。

 

目に付く悪いニュースは、ウマ娘孤児や、ストリートチルドレン化したウマ娘が多いとか、歳をとったウマ娘の孤独死が結構多いということか。

社会福祉とかどうなっているんだろう。

ウマ娘になって、女性の身体になったとはいえ、男と結婚して家庭を持つ、ってのはちょっと想像ができない。

もともとゲイでも何でもないから、男に抱かれて掘られる、ってのは勘弁願いたい。

そういう意味じゃ、独身を貫くなら、一人暮らしの老ウマ娘の生活事情はちょっと気になるな。

 

 

カチカチとマウスであちこち突ついてニュースサイトを巡っていると、パソコンルームになんかやかましいのが入ってきた。

 

「あ~!パソコンルーム、管理のおっちゃんがおらへんやんか!」

「タマ、管理のおっちゃんがいないと何かまずいのか?」

 

オグタマコンビだ。

何千人もいる学園内でこう有名なウマ娘と遭遇するとは珍しい。

ちらっと振り返ってみたけど、なんか二人とも白い毛並みで、同じ白い毛を持つ身としてはちょっと親近感湧くな。

しかし、タマモクロスちっさ!

これでGI何度も獲ってるのか。

目の前にしてみると信じられないね。

この二人が何を話してるのか興味がわいたので、ウマ耳の能力頼りっきりで盗み聞きする。

 

「オグリの言うてるページは見られるんやけどな、ここのプリンター癖があって印刷の仕方がようわからんねん。

この前印刷したらいつになっても生えてこんから何度か試したんやけどな、あとで何十枚も同じもんが出てきた言うておっちゃんに怒られたわ。」

 

印刷あるあるだなー。

ジョブがたまって、忘れたころに全部出てくるの。

100部とか大量に指定したやつで、事務の若い子がやらかして涙目になってたっけ。

 

「タマがわからないなら私はもっとわからないぞ?

 スカイツリー限定麩菓子は、ファックスでしか注文できないんだ。

 締め切りは明日だし・・・

 注文用紙を印刷できないと、とても困る。

 故郷のみんなに送ってやりたいんだ。」

 

オグリキャップは故郷のお世話になった人に何かお菓子を送りたいらしい。

あっちの世界でも頑なにインターネット受付をせずにファックスだけ注文受付って言う老舗のお店はあった。

彼女が注文したいお店もたぶんそういう類のお店なんだろう。

 

「あ、あかん、他に人がおった。

 オグリ、ちょっとトーン落してな。」

 

俺に気づいたのか急にひそひそ声になるタマモクロスに、ひらひらと手を振って気にしてないよ~とアピールすると、なぜか彼女が寄って来た。

 

「なー、アンタ、パソコン詳しいか?

 管理のおっちゃんが席外しててな?

 困ってるんや。 

 わかるんやったらちょっと教えてほしいんやけど・・・

 

 あれ?お客さんやったか?

 邪魔してもうたか?」

 

「いいよ。

 俺もあんまり詳しくないけど、わかる範囲でだったら。」

 

「おおきに。

 じゃ、このページのな、この注文用紙を印刷したいんや。

 一部頼めるか~?」

 

注文用紙の表示されたオグリキャップのウマホを見せられたが、このページをパソコンに表示させなければ始まらない。

でも、このちょっと古そうなパソコンには、赤外線通信もQRコードを読み取る装置もついていない。

と、なると、この長いURL打つの?俺が?

 

安請け合いを後悔しつつ、『キーボードを壊さないように小指で』一文字一文字ポチポチと打ち込んでいく。

それを見ていたタマモクロスが、すぐにイライラをため込み始めた。

そしてそれはすぐに爆発する。

 

「・・・だ~!まどろっこしいわ!貸してみ!」

 

キーボードを奪ったタマモクロスがズダダダダとすごい勢いでURLを打ち込んでいく。

あれ?実はキーボード結構頑丈?

 

「ほい、出たで。

 この真ん中の注文用紙を頼むわ。」

「はいよ。

 サイズA4でいい?」

「ええよ。」

 

用紙指定をして印刷ボタンを押す。

部屋の壁際にあるプリンターはうんともすんとも言わない。

 

「出てこんな。」

「出てこないね。」

 

プリンタに近寄ってみると、何かが印刷されないまま、プリンタが保留状態になっていた。

用紙はある。

トナーもある。

前の人の用紙サイズ指定間違いかなと、保留になっている印刷ジョブをプリンタのパネルを壊さないようにそーっと操作してキャンセルすると、ようやくお目当ての注文用紙が生えてきた。

 

「は~。

 小指でポチポチやりだしたときは人選まちごうたかおもたけど、プリンタ動かんのはわからんかったわ。

 助かったで。

 しっかし、アンタ痛々しいカッコしとるけど、なんや、あれか?

 ケガの療養期間つこうて転入の下見かなんかに来とるんか?

 このオグリも笠松からの転入組やで!」

 

「オグリキャップだ。

 印刷の手助け、感謝する。

 地方からの仲間が増えるならうれしい。」

 

どうも、この学園ジャージ+来賓プレートって言う格好でうろうろしていると、転入予備軍とみなされるみたいだ。

普通のウマ娘にすらなれていないって言うのに、入る前からこんな学園のトップクラスにマークされるとか勘弁してほしい。

これもあの駄女神の仕込みかね?

 

「あ~、わけありってやつでね。

 ちょっと今は答えられないかな。

 ごめんね。」

 

「なんや、はっきりせんな。

 ま、ええわ。

 縁があればまた会うこともあるやろ。

 おおきにな。」

 

「助かった。

 また会おう。」

 

煮え切らない返事に微妙にタマモクロスはちょっと眉をひそめたけれど、本来接点もないはずの間柄だしね。

名乗ってくれたオグリキャップには悪いけど、こっちは名乗らずにスルーさせてもらった。

縁があれば、また話すこともあるだろう。

 

二人が去りパソコンルームに静寂が戻る。

先ほどのタマモクロスの鬼のようなタイピングを思い出す。

タマモクロスがあれだけ激しくキーボードを打って壊れもしないなら、このキーボード、俺でも普通に使えるのかもしれないな。

さすがトレセン学園のウマ娘仕様。

 

ひとしきり感心して、小指などではなく、10本の指全てを使って、気兼ねなくキーボードを叩いてみる。

 

タカタカタカタカ・・・スパーン!

 

もしかしたらメンバー全員がウマ娘だったりするかも?と、この世界でのかのグループに期待を抱きながら、検索キーワードにアイドルグループ『JKB48』を打ち込む。

トドメのENTERキーを叩いた瞬間、ENTERキーが外れて天井高く舞い飛び、俺の背後に落ちた。

耐えられなかった、だと?!

 

そして、画面には不適切なコンテンツにアクセスした為アクセスが制限されましたという表示がずらずらと並ぶ。

まれに規制されなかった画像が出てくるけれど、どれもこれもモザイクがかかった肌色な画像だ。

 

・・・もしかしてウマ娘世界ではJKB48ってアイドルの名前じゃない?

どこか悪質なサイトが含まれていたらしく、画面にどんどん新しいウィンドウが開いて動作が怪しくなっていく。

俺はそっとENTERキーを元あったキーボードの位置に乗せると、パソコンの電源を落としてパソコンルームを後にした。





  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。