ウマ娘世界が地獄でも、住めば都です。   作:ジョンゲスト

25 / 82
ちょっとだけ怪しい話を含んでます~


府中の街で入学準備

今俺は府中市役所に来ている。

 

「こちらが戸籍謄本になります。」

 

発行手数料を支払って受け取る。

免許証に本籍地が記載されていないので府中の市役所でよかったのかわからなかったけれど、府中でどうやら合っていたらしい。

発行された戸籍謄本だけれども、両親ともに空欄。

ていうか、空欄だらけ。

いいのかこんなんで。

ここでも、例の運転免許証が威力を発揮。

ナチュラルに孤児扱いです。ハイ。

差別、とかじゃないよ?俺に向けられる、生暖かい、がんばってる子視線がもうね・・・

 

ハンコ屋に行って、ハンコも作った。

ハンコの中に入れる文字は何でもいいらしいので、『ラベノ』で。

年配のお爺ちゃんが店番してるカウンターだけのお店だったけど、そのお爺ちゃんがノートパソコンをささっと操ったら、見てる前でハンコが出来上がってきた。

彫刻刀みたいなのをいきなり差し出してきたので、何かと思ったら、

 

「ハンコの枠でも文字でもいいから、印影のどっか目立たないところ削って印付けておきな。

 ウチのハンコ作る機械はハンコ屋なら同じもんがゴロゴロしてっからな、ハンコも同じの作られちまうぞ?」

 

だってさ。

機械彫りの実印なんかにやること多い話だけど、子供だからっていい加減に扱わない誠実な爺ちゃんだな。

何気にウマ娘世界ってこういう人多い気がするんだ。

とりあえずお言葉に甘えて文字の一画の長さをお爺ちゃんの目の前でちょっとだけ短く削ったよ。

 

 

そして銀行巡り。

引っ越しの際に通帳を紛失したことにして再発行を要請したが、たづなさんの機転で助かった。

出かける前に、トレセンのジャージを着て行くように言われたんだ。

 

「たぶん、余計なトラブルが減りますよ?」

 

とのことだったが、その通りだった。

 

最初四井で再発行を頼んだ時、預金額が額なので、カウンターの奥からちょっとお偉いさんぽい人が出てこようとしたのだけれど、俺の着ているトレセンジャージを見て引っ込んだ。

トレセンなら稼ぐ子もいるか、そんな感じらしい。

四井、四菱、ゆうちょと回って、通帳の再発行完了。

 

 

まだ時間があるので、ちょっと街中から外れて30分ほど歩いてバイク用品店のバイク館へ。

ウマ娘用の耳収納付きヘルメットがあるらしいのでサイズとか実際に合わせてみることにする。

お店の中で、ウマ娘用ヘルメットのコーナーに行ってみたんだけど・・・

 

並んでいるウマ娘用ヘルメットって、帽体が一体成型してあるだけで、形はまんま昔流行ったネコミミヘルメットだな。

後ろ頭にかけて、耳を収めるためのネコミミみたいな流線型の出っ張りがある。

被る時にちょっと耳を中のくぼみに合わせるコツはいるけど、クッションに耳が潰されて痛くなることはない。

ただ、値段が張る。

ヒト用の同じシリーズのものより2万円くらい高い。

ウマ娘は自分の脚で走る人多いからバイク人口少なくて数が出ないんだろうな。

サイズはSだとぎっちぎちなので、Mが良さげだ。

SOEIのフルフェイスがいいな。

税金入れて8万円か・・・

トレセンのジャージでヘルメット試着していたからか、店員さんにいぶかしげな眼で見られてしまった。

 

あとはプロテクター付きのパンツ、下着のパンツじゃないぞ、ズボンの方、とジャケットだけど、消耗品と割り切って使うのでコスパのいいKONEMIにする。

パンツは、デニムのプロテクター入り。

プロテクターのふくらみ分、若干野暮ったいものの、いかにもライダー装備なジャケットを脱げば、遠目には普段着風なので、普通に出歩けるから楽でいい。

サイズはS。

・・・しかしよく俺こんな細いズボン履けるよな。

ビールっ腹になりかけてた男の時代だったら片足の太ももでいっぱいになりそうだ。

なぜかレディースのパンツのコーナーにワゴンに入ったカラフルな紐やCの字型の腕輪みたいなのが大量に詰んであったのだけど、バーゲンのアクセサリーだろうか。

 

ジャケットは赤くて前後ろに反射材がついたメッシュタイプ。

晩春~夏~初秋あたりまで着られる。

大型バイクはとにかくエンジンからの熱気がすごいので、夏場なんか服装を間違えると冗談抜きで気絶しそうになる。

渋滞になんかはまったらマジで死ぬ。

ジャケットのサイズはM。

プロテクターを全部入れるとSだとぴちぴちのぱっつんぱっつんになってしまう。

 

グローブを試着していると、若いにーちゃんの店員が寄ってきて、あれがいいですよ、これがいいですよと勧めてくれるのだけど、俺視点では全部ハズレ製品なんだそれは。

ナックル部分にハードプロテクター。

手の平に樹脂スライダー。

これがついてないと転んだ時にまるで手を守ってくれない。

 

いい加減鬱陶しくなってきたところで、この店員、ナンパしかけてきやがった!

うっわキモ!っていうギャルの気持ちがわかったよ・・・

 

もともと今日は実物試着してみたかっただけなので、何も買わずに退散する。

変な店員もいたしネット通販にするかな・・・

 

バイク館を出たあたりでお腹が減っていたので、国道沿いのちょっと先にある中華料理のチェーン店に。

 

ドカ盛りの八宝菜定食を食べているとウマホが着信を知らせてきた。

言わずと知れたたづなさんだ。

 

「用事は済みましたか?」

「ええ、あらかた終わって今ご飯食べてるところです」

「午後時間が空いてるなら、そのままURA医療研究センターに向かってくれませんか?

 連絡しておきますので、採血してきてください。」

「わかりました、医療研究センターですね。

 向かいます。」

 

採血?

たぶん入学手続きに必要なものなんだろうけど、何か病気にかかってないかとかそういう検査だろうか。

ウマホで場所を調べて、午後一で向かう。

 

脱臼した脚だけど、ようやく少し力が入るようになってきた。

平地を歩いている分にはほぼ気にならなくなってきたレベル。

坂道は、まだ辛いかな。

今日もガードレールに寄りかかって休んだりしながらマンションからの丘を降りてきた。

 

バイク館から、ちょっと距離はあったが、URA医療研究センターは何のことはない、URA総合医療病院の隣だ。

背の低い建物が、細い川の土手を背にしてひっそり建っている。

トレセン学園ほど広くはないが運動場なんかも備えた一見学校のような建物だ。

 

さほど大きくもない玄関の受付で名前を告げると、出てきた白衣の女性に書類を手渡された。

 

「自己血管理申請書?

 すいません、何ですかこれ。」

 

「あら、聞いてないの?」

 

「急に採血してきてって言われたもので。」

 

「輸血用の血を抜いて、ストックするための手続きね。

 トレセン生は年に2回、任意のタイミングで採血してストックすることになってるのよ。」

 

とりあえず、申請書にサインしながら話を聞く。

 

「ウマ娘の血って、血液型があってないようなもんだから、ウマ娘同士誰にでも輸血はできるんだけどね?

 大量に輸血されると、体質が劇的に変わっちゃうことがあるの。

 一時的ではあるんだけど、輸血後の体調がぼろぼろになったり、逆にドーピングしたみたいに能力が向上したりね。

 そういうのを防ぐために、公式な競技に出るウマ娘は、万が一輸血が必要な事態になった時、輸血にまず自分の血を使いましょう、って言う決まりがあるのね。」

 

ウマ娘って厳密な血液型がないのか。

ヒト同士からも生まれてくるって言うのに、本当にヒトとは違う別の種族って感じだな。

輸血による体質の変化って、半端に因子が混ざるとかそういうのだろうか?

ウマ娘の身体はいまだに謎が多いとか言われてるから、そんなに研究進んでいないんだろうなあ。

彼女は書き終わった申請書をチェックすると、採血用の椅子に俺を案内して、てきぱきと機材を用意する。

 

「一応、抜く血液は400mlで機材用意するけど、申請書の体重だと結構ギリギリだと思うから、気持ち悪くなったら言ってね。」

 

アルコール脱脂綿で拭かれた左腕に、ぷすりと太い針が刺される。

幾本かの小さな試験管に血を採った後、チューブがつながれて小さな機械がカタカタと動き出し、赤い血がチューブの中を抜けていく。

怪我した時はそうでもなかったけど、こうして血が抜かれるのを間近で見てると、この身体もちゃんと生きてるんだな、とから埒もないことを考えてしまう。

なんかね、やっぱりどこか、自分の身体って言う実感が足りないんだ。

風呂で鏡に映る自分の身体を見るたびに、マネキン人形感がぬぐえない。

でもこうやって血が通ってるのを直接見ると、少し、生きてる、って実感できる。

 

しかし点滴チューブに繋がれるなんて何十年ぶりだろう。

子供の頃はこれがいつも刺さっていた。

動くのに不便でいやなものだったはずなのに、こんなものに懐かしさを感じるとはね。

 

先に昼ご飯を食べていたのが良かったのか、特に気持ちが悪くなることもなく採血は終わった。

 

「はい、おしまい、お疲れさま。

 満量いけたから、今年はあと一回来ればいいよ。

 血液検査の結果は、トレセンに直接行くから。」

 

ん~、献血と違うからジュースとかはくれないのか。

椅子から身体を起こすと、やっぱりちょっと血が足りないのか一瞬目の前に白いカーテンが下りかける。

貧血だ。

こりゃ帰りはちょっと歩いて帰るのはきついかな。

 

自販機で買った飲み物を飲みながら、帰りのタクシーを呼ぶ。

 

夕ご飯は、俺のリクエストでレバニラと焼き鳥にした。

レバニラはたづなさんが、焼き鳥はタクシーで帰る途中いい匂いをさせていた店があったので寄って貰って俺が買ってきた。

血を作らないとな。

取っておいた鳥皮串は、ビールのおつまみにたづなさんに持っていかれた。

明日もたづなさんと街巡りだ。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。