ウマ娘世界が地獄でも、住めば都です。   作:ジョンゲスト

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ふへ~30話続くとは思いませんでした~
これからもよろよろです~


ウマ娘たるもの、ご飯は最優先

起床した。

が、ベッドから出られない。

動くと、全身くまなく襲い掛かる激痛。

 

・・・そう、筋肉痛だ。

 

いかにウマ娘の若い健康な身体とは言っても、いきなり3時間もぶっ続けで普段動かしていなかった筋肉をダンスで酷使したんだ。

正直、アドレナリン大放出状態の狂った頭で、ノリノリにカワイイ笑顔とかも作っていたものだから顔の筋肉まで痛い気がする。

思い出すほどに、恥ずかしくて顔に血が上る。

 

枕に顔を埋めて悶えていても埒が明かないので、痛みをこらえてロボットみたいな歩き方で洗面所に向かって、顔を洗う。

 

リビングに向かうと、ソファーの前のテーブルに、ちょっと分厚い古めのノートパソコンと数冊の本、メモが置いてあった。

 

『試験の結果、社会常識が穴だらけだったので、暇なときにそれで勉強してください。』

 

本は、ちょっと使い込まれた感じの慣用句・ことわざ辞典と国語辞書。

ノートパソコンの方は、ブラウザのブックマークにたづなさんチョイスらしい地理やら歴史やら、日本の国体の解説ページ、マナー講座なんかの常識実用系から、知っておくと便利ですよ的な幼児向けの昔話やらジョーク集、果てはウマ娘の身体の秘密、なんていう興味深・・・いや、怪しげなページまで網羅されていた。

 

これは、フリなんだろうか。

 

赤ちゃんはどこから来るの?って聞いてみようか、と一瞬考えたけれど、昨日の体験ダンスレッスンににこやかに放り込まれた件といい、最近たづなさんの遠慮がなくなってきてる気がするのでキャベツから生まれてくるんですよとか言いながら笑顔のままチョップを振り下ろしてきそうで怖い。

 

まあ冗談はさておき、古めとはいってもノートパソコンを置いていってくれたのはありがたい。

ウマホは便利だけど画面が小さいから広げて見たいページなんかは操作が面倒くさい。

これでマウスもあれば楽だったんだけどね。

 

しかし、この置いていってもらったノートパソコン、たづなさんには悪いけど、本当に古いぽい。

重くて分厚くて、バッテリーが取り外せる形式だ。

しかも長い間使っていなかったらしい。

見た目はきれいだから、買ってすぐ使わなくなってしまいこんでいた、とかそういう類のものじゃないだろうか。

検索エンジンをHayoo!からあっちの世界で使い慣れていたものに変えて・・・あったあった、これだろ、ウマグル。

 

今日は一日中、パソコン相手にお勉強することにした。

 

・・・・・

 

・・・

 

 

夕方。

腹が減って目が回りそう。

 

朝食兼昼食を、と思って、キッチンを漁ったら、たづなさんが買い置いていたシリアルが切れていた。

困ったことに、たづなさん自炊はする気がないらしくて、キッチンには他の食材が全くなかった。

冷蔵庫の中には、大量のビールと牛乳、氷とアイスノンくらいしか入っていない。

 

身体中痛くて着替えるのも億劫だったので、夕ご飯くらいまで保つだろ、と思ったが、甘かった。

 

空腹を感じて冷蔵庫の牛乳を飲みつくしたものの、焼け石に水状態。

 

想像以上の速さで空腹度合いが進み、空腹から飢餓感へ、そして動く気すら起きなくなった。

 

テーブルに突っ伏したままぐったりと動けなくなっている、それが今の俺。

 

 

 

 

「もう、ご飯くらいちゃんと食べてください。」

 

帰って来たたづなさんが買ってきたお弁当を貪り食べる。

 

「いや・・・もぐもぐ。

 こんな動けなくなるなんて思わなかったし・・・もぐもぐ。」

 

「ウマ娘はヒトよりも力がある分、燃費悪いの忘れないでくださいね?

 ウマ娘は食べられなくなった時が死ぬとき、って言われてるくらいなんですから。」

 

「ふえ?」

 

それも、ウマ娘世界の格言みたいなものなんだろうか。

 

「ウマ娘はヒトの3~5倍以上食べるでしょう?

 逆に言えば、それだけ代謝が激しいんです。

 ヒトの真似して、1週間水だけ絶食ダイエット、なんてしたら干からびて死んじゃいますからね?」

 

「冗談ですよね?え?違うの?」

 

もう本当にこの子は、というまなざしが突き刺さる。

 

「その辺も含めて、勉強してください。

 あなたはもう、ウマ娘なんですからね?」

 

・・・ウマ娘の身体の秘密、ってジョークでも何でもなかったらしい。

実は真っ先に見るべきだったのはこのサイトだったのかもしれない。

 

とはいえ、今はご飯だ。

空きっ腹にカロリーがしみわたる。

ああ、食べられるって素晴らしい。

 

 

さて、お風呂に入った後、いつもやってる傷の手当てをだいぶ減らした。

脚のあざはだいぶ薄くなったし、あごやあばらの擦り傷はかさぶたが完全に張ってパッチを剥がしても汁が染み出たあとがない。

傷パッチは肘だけにして、包帯は全部取った。

身体が若いからだろう、治りが早い。

若いを連呼するとたづなさんのジト目が飛んでくるので口には出さないけどね。

 

お風呂上がりのまったりタイムに、ノートパソコンでバイクウェアの販売ページを見ながら、トレセン学園で買った荷物を直接受け取って貰えないか、たづなさんに聞いてみた。

バイクがトレセン学園の駐輪場に置きっぱなしなので、全身分のヘルメットやらジャケットやらをここで受け取っても運ぶのが厄介なのだ。

 

「ん~、大荷物ですとさすがに事務方で扱うのは置き場所に困りますから・・・美浦寮宛てに送っちゃってください。

 寮長とはもう顔見知りですよね?

 もうすぐ入寮の連絡行くでしょうし、たぶん取り置いてくれますよ。」

 

おおっと、何気に新事実発覚。

俺美浦寮に入ることになるっぽい。

俺が三女神像の台座にはまったドタバタに寮長のヒシアマさん関わっちゃったからそのせいかな?

でもまあ全く知らない相手じゃないからバイクウェアは遠慮なく送らせて貰うことにして、購入ボタンをポチっとな。

 

学園がらみの雑談をしてると、昨日の筆記試験の他にやった驚音試験、あの狭い部屋に入れられて目玉と爆音が突然出るやつ、は問題なしだとか。

あれでびっくりして激しく暴れてしまうようだと、特別カリキュラムが組み込まれるらしい。

あの試験を受けただけで入学を取りやめるウマ娘もいるそうだから、ああいうびっくりに弱いウマ娘は思った以上に多いんだろうな。

 

「そう言えば、先日の試験の論説問題の答えを見て、理事長が学園の畑の一部でサツマイモ育ててみる、って言って早速耕運機入れてましたよ?」

 

ビール片手にたづなさんがまた爆弾を落とす。

危うく飲んでいたジュースを吹き出しそうになった。

 

確か、予算が足りなくて食糧買えなかった時の解決策だせ、みたいな設問だ。

冗談めいた設問だったので、いくつか思いついたことを忖度無しに書いてみた中で、サツマイモは甘くてカロリーもあって収量も多く、過去に何度も飢饉を救った優秀な作物だから作ってみてはどうかは書いたけど。

そのあとにサツマイモで作れる料理やスイーツを羅列したのがまずかったんだろうか。

 

「残りの案は、『本人は喜んで協力するだろうが一人の生徒を搾取するようなものだ、継続性もない』と却下されました。

 もう一つは、URAの利権に絡んでまして。

 実現すると逆に学園への補助金削られちゃうので手が出せないんですよね。

 理事長、スレた社会人の発想だ、って苦笑いしてましたよ?」

 

そりゃスレた社会人でしたし?

シンボリルドルフ会長を説得して、生徒の食事事情改善の為に、と支払先企業のCFに出演してもらって、対価に不足分の食料供給してもらう案はボツか。

もう一個は、GI以外のレースで体操服にスポンサー広告つけろ、って奴だ。

 

まあ、詳しい事情も知らずに短時間でポッと思いついたものが役に立つなんてことはほとんどない。

・・・ないはずなんだけどね?

作り始めちゃったか、サツマイモ畑。

秋においしい焼き芋が出てくることを期待するよ。

 

・・・て言うかさ、ホントに大丈夫なの?

トレセン学園の財政。

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